新プリウスPHV日記―2
前回から少し間があきましたが、いま足として使っているプリウスPHVの使用記を取り上げたいと思います。昨年の4月末からトヨタにお願いして法人リースとして使わせてもらっていましたが、それをお返しして入れ替えとして1月末発売を開始した量産タイプのプリウスPHVを購入、4月20日に納車してもらい丁度3ヶ月となりました。
この3ヶ月の印象としては、毎日充電コンセントで電池を充電して使う以外は、使っていてノーマルプリウスとほとんど変わらない極めて現実的な低燃費自動車であるという点です。このブログでも、また様々な講演会でも申しあげてきたように、電池の充電ができなくとも、また忘れていても、普通以上の航続距離を持つクルマとしてプラグインを意識しないでも使えるところです。
確実に向上した燃費
5月に新プリウスPHV日記-1で紹介した改良点の
- 充電タイマー機能
- EV/HV走行切り替えボタン
- 回生充電量によるEV走行復帰機能
は、確実にプリウスPHVの燃費向上、機能向上につながっていることを実感しています。
① 充電タイマーをクルマ側の機能とするか、外部の充電設備側の機能とするかの議論はありましたが、いまの日本の電力事情から、また電力代からも必須の機能です。我が家は今となっては少し早まったと後悔していますが、耐震リフォームを機に温水床暖房を含む冷暖房と給湯、さらにIH料理器セットのオール電化に切り替えましたので、200V系深夜電力での充電が経済的にも好都合です。さま、このご時世、梅雨明けを迎えた今、タイマー機能でピーク時の充電を避けることは欠かせません。
② EV/HV走行切り替えボタンも、充電電力がまだ残っている時の高速道路走行などでうまく使うと高速道路を下りたあとの市内走行燃費を改善したり、この機能をうまく使ってHV走行中の充電量を増やすことができるなど、面白い使い方ができます。
③ 回生充電によるEV走行復帰機能もある意味、電池の搭載エネルギー量を増やしたプラグインでは当たり前の機能、ノーマルプリウスではエネルギー量が少なくすぐに電池フル充電となり、回収せずに捨てざるをえなかった長い下り坂の減速エネルギーをしっかり回生発電として回収し、溜まったところでEV走行に復帰させる機能はプラグインならではの機能です。
難しい回生ブレーキの制御
余談ですが、ノーマルHV開発で苦労した一つが搭載する電池エネルギー量と回生量の決め方です。電池パックの重量、体積はクルマの車両重量を増加させ、また乗員スペース、荷室スペースを減らしてしまい、またコスト増の大きな要因となるハイブリッド化の最大のデメリット部分です。
エンジン停止EV走行域の拡大、減速エネルギー回生量の増大は、もちろんハイブリッド化による燃費向上機能の重要部分です。さらに、燃費向上も日本の10-15モードなどカタログ燃費だけの向上を目指している訳ではなく、加速度も減速度もおおきく、また長い上り坂、下り坂、2000mを超える高地など実際の使用環境で使われた実燃費の向上が目指すところであったことは確かです。この実走行での燃費向上を意識しながら、ギリギリの電池エネルギー量を決めてきました。
初代プリウスでは、エンジンブレーキの効きが悪いとのご指摘をいただきましたが、電池に充電余地があるときは駆動モーターの回生発電で充電し、その発電パワーがエンジンブレーキの制動力となります。しかし、長い坂が続き、電池充電量がフルに近づくと連続して回生発電を続けることはできません。
ノーマルプリウスをお使いなら、電池充電表示がフルに近づくとエンジン回転数が高くなりエンブレが強まるようなモードに遭遇することを良く体験されると思います。このモードがエンブレモードです。回生で発電した電力を、この状態では通常走行とは逆に発電機をモーターとしてエンジンを高い回転で空転させて消費し、エンジンブレーキ量を維持させています。エンブレ量を増やしている訳ではありません。初代ではエンジンの最高回転数を4000回転/秒としましたので、4000回転/秒での空転で消費させる電力量がエンブレ量です。
2000年のマイナーチェンジ、2003年の2代目とエンジン最高回転数を高めてきたのは、もちろんエンジン出力を高め、走行性能を向上させる狙いもありましがた、効きが悪いといわれたエンブレ量を増やすために、発電機でのエンジン空転回転数を高めたかったとの狙いもありました。
電池容量の増化によるメリットが
プリウスPHVでは、長い降坂時にもこのようなエンジン空転による電力消費をやらなくても充電量を増やすことができます。我が家の近くの箱根峠に上がった後の降坂では、登坂時に使い切った充電電力を下りでは回生発電で回収し、麓までにインパネに表示されるEV
走行距離が13kmにも回復することを確認しました。
これはプラグイン化による実走行の回生エネルギー回収量をうまく増やす大きな効果の一つです。高速道路などでの回生回収量を増やすにも役立てているようで、JC08モード燃費だけではなく、実走行燃費の向上にもつながっているようです。
写真1として昨日(7月17日)にとったプラグインモニターの画面を示します。
この3ヶ月での走行距離は、この表示にあるEV走行距離1,417km、HV走行距離2,900kmの合計4,317kmです。先週10日ほどの欧州出張などでクルマを走らせない日も多いのですが、月平均1,500kmとこれもこれまでの使い方とほぼ同じペースです。
この表示では、充電電力の使用総量が178kWh、EV走行比率は32%でエンジンを起動させたノーマルHV走行の比率が68%でした。この走行でのガソリン総消費量は125L、この値から算出した総合燃費は34.5km/Lとなり、ノーマルHV走行だけの燃費では23.2km/L
と、タイヤ諸元などの違いはありますが、以前に使っていた3代目ノーマルプリウスや、Webの実燃費サイトのユーザー平均燃費よりは少し上回っているようです。実際に給油した累積給油量は125.7L、その燃費は34.3km/Lと表示燃費とほとんど変わらない結果でした。
現時点では金銭的に元を取るのは難しい?
EV走行の走行距離あたりの電力消費(電費)は125.6Wh/kmとなります。このクルマのインパネで表示される電力消費量は、あくまでも充電された電力の消費量ですので、電気代を算出するには充電コンセントから電池までの効率を考慮し、家の(もしくはオフィス駐車場充電器)の電力計での値で課金されます。
我が家では、昨年のプラグインプリウスを使う時の充電設備工事で瞬時電力メモリー機能を持った電力計を入れましたので、その値とこのパネル表示の値から充電効率、実際に充電に使った外部電力量が計測できるようにしました。
また、充電ラインも従来の100Vから、この新しいプリウスPHVの切り替えに合わせ、200Vに切り替えました。100Vラインから200Vラインへの切り替え、および新しいプリウスPHV充電系および充電制御の改良で、充電効率も大幅に向上したようで、昨年までの100V充電で充電効率がほぼ70%程度だったのに対し、新プリウスPHVと200V充電の組み合わせでは充電効率87%との結果になっています。
この電力計の計測結果では、4月の納車からこれまでの総充電量は211kWh、内訳は夜間充電が72.5%の153kWh、昼の充電が27.5%の58kWhとの結果となり、値上がり前の東電電力料金としては、僅かとはいえ充電に使う電力料金も安くなってきています。表1に今の電力料金とガソリン価格でのEV走行およびHV走行での走行1km当たりの走行費用比較を示します。
電力料金には基本料金や、値上がり前にもかかわらずじわじわと高くなってきている燃料費調整分、太陽光促進付加金は考慮していません。ここから電力料金がさらに高くなると、夏のピーク時に充電するとガソリンでのHV走行燃費との差がさらに少なくなります。今のリッター140円を切るガソリン価格でも、燃費が良いハイブリッドといえども夏のピーク時でも走行費用は安くあがります。
しかし、今回の購入で頂けるプリウスPHVのCEV補助金(クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金)45万円とエコカー減税分、エコカーグリーン税制での減免分を入れても、販価アップ分とかかった充電工事費用の回収はほとんど絶望的であることも現実です。
写真1に示したパネル表示にあるように、総走行の32%が充電電力によるEV、そこで削減できたガソリン量は56.5Lとなり、このペースで走ると年間の総EV走行距離は約5,700km、私の場合、愛知や三重への出張や週末の長距離ドライブが年間走行距離を伸ばす要因ですから、日常のショッピング、気晴らしのドライブなどショートトリップではほとんどEV走行でまかなうことができそうです。
年間1万キロ走行程度の平均的ユーザーならこのEV走行比率は私のケースよりも増えると思いますが、EV走行の絶対値はこの出先での充電機会が増えないかぎりそれほど増やせないのではと思います。
ノーマルハイブリッドにないサプライズを
以前のブログでも書いたように、仮に電気自動車を保有していたとしても長距離ドライブには使わず、従来車を使うでしょうから、年間の走行距離もそれほど伸びないのではと推測していますが、これはハイブリッド屋の勝手なセリフでしょうか?プリウスPHVでは、長距離ドライブの最初の20km程度もEV走行となり、この分も確実に充電が使えます。
この3ヶ月で、自宅以外で充電した回数は2回、いずれもトヨタ本社に出張した時に、以前の二人乗りコミューター電気自動車e-Comの時代に設置した充電設備がある駐車場を、プリウスPHVの充電ができる来客駐車場が設置され、打ち合わせ中に充電した2回です。
会社や官庁で職員、従業員用にも充電コネクターのある駐車スペースの整備や、宿泊するホテルなどでも充電できるようになると、搭載する電池のエネルギー量を増やさなくともEV走行距離、比率とも増やすことができ、石油枯渇、石油代替エネルギー時代への備えとして販価、充電設備工事費用を除くと実用レベルにあるクルマとの確信を強めました。
上の写真は、我が家に今回設置した200V充電用コンセントです。今年発売されたパナソニック製キー付のコンセントカバーがついた簡単な200V用コンセントです。今回から、普段の時には充電ケーブルはコンセントに差したままにしてあります。このケーブルも収納できる大型ケース付のコンセントがある充電ボックスも各社から発売されていますが、まだまだ割高なのが難点です。
電気自動車含め、プラグイン自動車の普及には自動車そのものの販価アップの他にこの充電工事や充電コンセント、充電ボックスの費用も走行費用の削減分から回収する必要があることを忘れてはなりません。
さらに、先回のまとめ、今回の結果から明らかなのは、これまた手前味噌ですが、費用対効果の点ではノーマルハイブリッド車の経済効果が大きく、それをベースとしたプラグインHVでは、その上での効果が小さくなってしまい、経済メリットが出しにくくなってしまうとの現実です。まだまだノーマルハイブリッドも進化の余地が大きいですので、それを頑張り、その上でプラグイン化を充電設備の普及拡大と歩調を合わせステップ・バイ・ステップで進めるのが確実な道ではないでしょうか?
日本でもアメリカでも、前評判ほどは外部充電が必要な電気自動車やプラグインハイブリッドの売れ行きが芳しくありません。
経済性、充電設備の整備、さらに毎日の充電操作自体もまだまだ販売抵抗となっています。
折角のプラグインハイブリッド車ですので、燃費以外にもサプライズを期待しましたが、これは空振り、エンジン停止エリア増えたことを除くとノーマルプリウスと変わるところはほとんど感じられませんでした。サプライズを感じるような商品魅力を負荷することも普及へのステップ、電池のエネルギー量アップなど、大きな販価アップに見合うプラグインならではの新しい商品魅力の創出に期待します。