トヨタ&レクサスハイブリッド車累計800万台突破と4代目プリウス発表
先月21日、トヨタ自動車からトヨタとレクサスのハイブリッド車の世界累計販売台数が7月末で800万台を突破したとの発表がありました。
http://newsroom.toyota.co.jp/en/detail/9152370
図1に1997年からのトヨタ&レクサスハイブリッド車のグローバル累計販売台数推移と年間販売台数推移をしめします。(トヨタ ニュースサイトの年度別販売台数データから作成)
トヨタの公式サイトには、1997年12月「プリウス」の誕生から、7月末にグローバル累計販売台数800万台突破と書かれていましたが、これは正確な表現ではありません。トヨタの市販ハイブリッド車の初号車は、このプリウスの1997年12月発売の前、8月に少量販売を開始した小型バス「コースター ハイブリッドEV」が最初です。クリーンを売りに、ディーゼルエンジンに換えて、当時のサブコン車「ターセル」などに搭載されていた4気筒1.3リッターガソリンエンジンを搭載、そのエンジンで発電機を回し、その電力で最大出力70 kWの駆動モーターで走らせるシリーズハイブリッド方式のハイブリッド車でした。
これが、1997年12月「プリウス」発売を前に数台か十数台が、大都会の幼稚園バスや観光地の送迎バスとして販売されていました。
私自身は、初代「プリウス」搭載のハイブリッドシステム開発がハイブリッドに携わった最初です。この「コースター ハイブリッドEV」にはタッチしていませんので、トヨタの公式サイトの表現を使いたいのですが、個人的には残念ですがトヨタハイブリッドの1号車はこの「コースター ハイブリッドEV」です。
もちろん、この800万台に至る量産ハイブリッド車のスタートは「プリウス」であることは間違いありません。この「プリウス」に採用し、洒落た名前が思い付かないまま、私が文字通りのトヨタ・ハイブリッド・システム=略してTHSとそのまま名前をつけたハイブリッドが、トラックのハイブリッドなど、ほんの一部のハイブリッド車を除き、同じコンセプトのまま今も使われています。
このTHSコンセプトを、”遊星ギアの三軸に、エンジン、発電機、モーターを接続、このモーター軸からチェーンを介しデフギアへ、デフからドライブシャフトによりタイヤを駆動してクルマを走らせる方式”、”クラッチもトルコンも、変速ギアも、リバースギアすらなくクルマを普通に走らせるユニークなハイブリッド”と説明したことを覚えています。いくつかのバリエーションはありますが、遊星ギアの三軸にエンジン、発電機、モーターを接続するコンセプトは今も変わりはありません。
このプリウスの初号車が、累計販売台数の何台目に当たるか判りませんが、1997年12月10日にトヨタ自動車高岡工場から初代プリウスが車両運搬トレーラーに乗せられて、多分東京か愛知の販売店にむかってからまもなく18年が経過します。国内での正規白ナンバー登録は、国交省から認可をいただき、9月末にライントライ車両の社内評価車両に付いた白ナンバーがプリウス1号車だと思いますが、このトレーラーで運ばれた車のどれかが、お客様の手に渡った第1号車になりました。2000年5月の初代マイナーチェンジを機に、米国と欧州販売を開始し、グローバル市場へと拡げていきました。
車重の思いミニバンや大排気量エンジン搭載の上級車では、すぐにプリウスTHS方式を適用することができず、メカCVT変速機を使ったTHS-CのエスティマHV、エンジン補機ベルト駆動のオルタの変わりにモーター発電機とし12V補機駆動鉛電池とは別に36V鉛電池を搭載したマイルドハイブリッドTHS-Mを使ったクラウンHVも開発しましたが、マーケットから本格ハイブリッドの要望が強く、またMGやそれを駆動するインバーターの高出力コンパクト化が進み、それらも遊星ギア方式のTHSコンセプトに置き換えられていきました。プリウスに続く、THS第2段はハリアーHV、エスティマTHS-Cで開発したリアモーター駆動のAWDを採用したTHSです。これがレクサスHVの始まりで、レクサスブランドのグローバル展開に合わせRX400hとして発売され、トヨタ、レクサスでのハイブリッドラインアップ展開は始まりました。このトヨタ・レクサスハイブリッドが累計800万台を迎えました。
その内の、400万台以上が「プリウス」、またレクサスCT200h、 ノア/ボクシーHV、英国工場で生産しているAuris Hybridなどに使われ、累計800万台の60%以上がこの1.8Lエンジンの同じファミリーのTHSパワートレインを搭載しています。
そのプリウスが、2009年発売を開始した3代目プリウスから6年半ぶり、いろいろ合ったようで少し間があきましたが、今年末にフルモデルチェンジを行い4代目となります。詳細スペックは発表されていませんが、ハイブリッドもこの4代目プリウス用として大きな技術進化が織り込まれているようですので、どこまで進化したのか今から楽しみにしています。日本のJC08燃費 40 km/l 、ユーザー実走行燃費に近いと言われる米国EPA公式燃費では都市とハイウエーのコンバインド燃費で55 mpg(23.38 km/L)、燃費バージョンで60 mpg(25.51 km/L)との噂がニュースに登場しています。
プリウスの使命は、初代から21世紀のグローバルスタンダードカーとして、他の追従を許さない燃費/CO2を目指すクルマでした。3代目の企画まで現役として付き合ってきましたが、もちろんグローバルスタンダードカーとして我慢のエコでは問題外、燃費/ CO2性能の向上はもちろん、クルマとしての走る魅力の向上、さらに世界に拡大していくためのコスト低減が絶え間なく取り組んできた開発課題でした。。
この4代目が、この初代からの志しを継いでくれているか、これも現地、現物、現車で見極めていきたいと思っています。この4代目から新しいプラットフォームTNGA採用第1号となりますので、シャシー系も、欧州Cセグメント系とガチンコ勝負ができるのではと期待しています。(写真1 4代目プリウス ワールドプレミア トヨタサイとより転載)
遠からず、このTNGAでも足りないと言わせるぐらいの、ハイパワーバージョンTHSの登場を期待しています。もちろん、クラスとして燃費チャンピオンが前提です。
1年2ヶ月ほど、お休みしていたこのCordia Blogを、このトヨタ&レクサスハイブリッド車グローバル販売800万台突破と4代目プリウス発表を機会に、再開いたしました。
800万台突破といっても、10億台を越える世界の自動車保有台数の1%にも届いていないレベル、ほんの第一歩を歩みだしたに過ぎません。また、このところのエコカー販売停滞も気になるところです。よく言われた、ハイブリッド車はショートリリーフ、電気自動車、水素電池自動車が本命との声も実態は風吹けと、鞭をたたけど(規制)、飴をばらまけど(インセンティブ、補助金)踊らずが現状で、アメリカでは大型車回帰でCO2が増加に転じてしまいました。
昨年のグローバル小型自動車(Light vehicle)販売8,720万台です。このクルマを低燃費、低CO2のクルマに切り替えて行くことが何と行っても最優先です。今の延長線程度の電気自動車や水素燃料電池自動車には、次世代自動車の主役としてのバトンを渡す訳にはいきません。その内燃エンジン車を低燃費、低CO2へと進化させるコア技術はハイブリッドです。軽自動車まで、アイドルストップでは不十分と減速回生、モータアシストとハイブリッド化の道を辿り始めています。内燃エンジン車のハイブリッド化をリードしてきたのは、日本勢です。このアドバンテージをさらに拡げて行って欲しいものです。
このアドバンテージを多くの現場スタッフ、エンジニア達と作りあげてきた、日本のパワートレインエンジニアOBとして、これからも辛口のコメント、叱咤激励を続けていきたいと思っております。 [jwplayer mediaid=”1808″]
ブログは、お休みしていましたが、ハイブリッドプリウスの開発、次世代自動車のゆくえなど、今もいろいろな場所でお話をさせていただいております。
また、TEST 2015 第13回総合試験機器展 東京ビッグサイト 西ホール 2015.9.16(水) ~18(木)
の17日(木)13:00~14:10まで、特設会場Aにて「プリウスが切り拓いた低CO2自動車のこれまでと、これから」との題目でお話をさせていただきます。見学、ご視察のご予定がございましたら、お立ちより下さい。
今後とも、よろしくお願いいたします。