新東名開通 高速走行とハイブリッド

新東名開通

4月14日(土)新東名高速道路の御殿場~三ヶ日区間162kmが開通し、運用を開始しました。全国ネットのTVでも取り上げられていましたが、こちら静岡ローカル局では、開通前からお祭りムード、SAの出店紹介など町おこし、県のPR含め盛り上がっています。

私はかねてから近場で新しい道路ができると、機会を見つけては走りにでかけていました。今回は地元も地元、自宅から沼津長泉インターまでわずか7km、これも2年前にできた沼津インターから伊豆、箱根をつなぐ伊豆縦貫道を使うと10分足らずで新東名に入ることができる近さで、さっそく開通の次ぎの日、15日の日曜日に早速、愛車プラグインプリウスにのって走りにいってきました。また、新東名はトヨタ開発拠点、富士山の麓にある東富士研究所の敷地内もトンネルで通過しており、在職中もその工事の進捗をいつも見ておりましたし、仕事柄、愛知や東京方面へクルマででかけることも多く、その開通を待ちに待っていた道路です。

この新東名は法改正を併せて最高速度120km/hとすることを見据えて計画、設計された道路です。一説には、設計値として最高速度140km/hで計画との話もあるように、東海ベルト地帯の大動脈として、移動時間の短縮、輸送量の拡大をめざし、かつ走行の安全度を高めようとして計画された道路です。

バブル期の前に計画がスタートし、右肩上がりの経済成長の中で、東名がすぐにでもパンクすることを想定し、当初は片側3車線、また最高速度アップも想定して計画した道路で、道路公団民営化やバブルが弾けたあとの構造改革の中で、一時工事が凍結さらその完成が危ぶまれていた道路です。
Wikipedia『新東名高速道路

ストレスを感じない高速道路

沼津長泉インターから入り、新清水から清水連絡路を通り(旧)東名に入り、富士川SAのスマートICで下り、一般路で新富士ICまで走り、新富士ICから沼津長泉ICにもどる2時間足らずの走行でした。ただし車好きの方には共感いただけるかとは思いますが、高速道路は特に走って面白い路ではありません。安全に、安心して走れることが肝心ですが、さすが新しい企画、基準で作り、最小曲線半径3,000m,最大勾配でも2.0%と、法律にも規定されていなかった最高速140km/hを設計速度として道路ですので、なによりも走りやすく、走っていてストレスを感じない路でした。

従来よりも山側を通し、カーブを少なく、直線、勾配も少ない設計ですから、必然的にトンネル、橋も多く、その距離も長いものが多くなりますが、一部3車線、大部分は2車線での運用でも、橋、トンネル部は3車線設計のため待避部が広くとってありそれもまた安全走行、安心走行には役にたつように感じました。

昼間の走行でしたので、道路の照明がどうかは判りませんが、トンネル内の照明にはLEDが使われており、色合い、照明方向、透過性など、視認性が従来に比べはるかに良くなっている印象でした。カーブが緩く、勾配も少なく、トンネル内照明の視認性にも優れていますので、安全走行にとって重要な前後、左右のクルマの走行状況、挙動をかなり広い範囲で確認することができます。これも走りのストレスを大きく減らす要因、事故発生を抑制することが期待できるでしょう。しかし、反面やや退屈な運転になることは確か、運転に集中する工夫もお願いしたいところです。

新東名 沼津長泉 ― 新富士間

計画段階では、最高制限速度120km/hに高める議論もあったようですが、事故防止と環境(CO2排出抑制)のため従来通り最高制限速度100km/hとなったのは、クルマ屋としては残念ですが、いまのご時世、やむを得ない判断だったのでしょう。

道路もクルマの安全や環境に与える影響は大きい

ドイツのアウトバーンなど欧州の高速道路、アメリカのフリーウエーなど、いろいろな道路を走りましたが、アウトバーンの速度無制限区間を含め、いずれの道路よりも、安心してストレスなく走れる道路のように感じました。曲線、勾配、車線の広さ、ドライバーの視線移動や視認性など人間工学的なところまで考えた最新設計の道路です。さすが、バブル期の計画、行革議論で問題になった工事費が高くついたことが頷ける道路でした。できるだけ早い、全通が待たれます。

自動車の燃料消費削減、CO2排出削減の観点からみても、まず渋滞緩和による効果を筆頭に、曲線が大きく、勾配が緩く、前後の視認性が高い設計から、クルマの流れがスムーズになり、速度変化が抑えられ、カーブや上り坂での速度低下、そこからの加速の繰り返しなどで燃費は大きく悪化しますので、大きな改善効果が期待できるでしょう。特に、大型トラックでは、速度低下したあとの加速の繰り返しで燃料を多く使っていますので、一定速度を維持しやすい道路の効果は大きいと思います。流れがスムーズになると、車間キープも比較的用意になり、車間を詰められてヒヤヒヤすることも減り、運転ストレスが少なくなるばかりか、追突事故抑制にも効果がでることを期待します。

ハイブリッドは、停車中や低速走行中のエンジンストップ、減速時のエネルギー回生とその回生エネルギーを次ぎの加速での再利用、さらに加減速などでもエンジン運転点が燃費最適になるようにするCVT運転を行うことにより、燃費を向上させており、渋滞が少なく、クルマの流れがスムーズとなる運転では、燃費向上率が少なくなり、ハイブリッド効果は減少してしまいます。しかし、流れが良くなるとハイブリッド車でも絶対燃費は向上しますので、従来車と燃費が逆転してしまうことは決してありません。

この高速走行燃費に大きく影響をするクルマ側の要因は空気抵抗とタイヤの転がりです。空気抵抗は、クルマの外形デザインできまる空気抵抗係数Cdと真正面からの前面投影面積Aと走行速度Vで決まります。その走行抵抗は速度の三乗と、速度が高くなればなるほど急激に増加します。この空気抵抗に打ち勝つパワーを出してクルマは走っていますから、高速道路での走行で、強い向かい風で燃費が大きく悪化すること、大型トラックの後ろに車間をつめて走ると燃費が向上する理由として良く理解できるのではないでしょうか。

速度制限のない区間があるドイツのアウトバーンでは、150km/h以上、場合によっては200km/h以上の連続走行を行いますと燃料を大きく消費してしまいます。確かに、アウトバーン走行は短い時間で長距離移動ができますし、また全てのクルマが速度無制限、アクセル全開で走っているわけではありませんが、自動車のCO2抑制の点では?です。それでも最高速制限を行わないことは、成熟したクルマ社会の快適な移動手段を放棄したくないとの世論の後押しによるものと思いますが、環境にやさしくないことは明かです。また、高速での走行からの減速では、この空気抵抗と、タイヤの転がり抵抗により、発電により回生できる減速エネルギー自体も減少し、これもハイブリッドの燃費向上率を目減りさせる要因です。

エコと経済復興を両輪で

 今回の走行では、開通の次ぎの日の日曜日もあり、私のように物珍しく試しに走ってみたといったクルマも多かったようで、またサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)で、新しく趣向をこらし開業したショッピングゾーンへの見物客が押しかけ、そのかなり手前から長蛇の列ができ、渋滞を引き起こしていました。それ以外の渋滞はあまりなかったようですが、新東名、(旧)東名合計として通行の絶対量も増えていたようで、長引く不況、昨年の大震災後の計画停電や、観光自粛ムードで大きく落ち込んだ、伊豆や箱根、静岡の観光地も、この新東名開通による、人出が増えることへの期待が大きいようです。

直接CO2を減らすには、クルマを減らし、交通量そのものを減らすことが効果的ですが、不況脱出、復興にはやはり経済成長が不可欠、経済成長の原点は、人が動き、物が動き、その物を作り配るためにまた物が運ばれることが牽引力だと思います。人、物が実際に動くことで社会活動が活発になり、活気がでてきます。その活動にはエネルギー消費がついて回る、そのエネルギー供給源となる化石燃料燃焼によってCO2が発生します。しかし、日本の活性化とCO2削減の両立させる、さまざまなイノベーション技術創出にいまこそ日本はしっかりと取り組むことが必要に思います。

ちなみに、今回の試乗では、プリウスPHV(2010年登録の限定車)を電池フル充電から走らせ、総走行距離125km、クルマの表示燃費として28.9km/Lでした。少し、飛ばしすぎたかも知れませんが、ほぼ燃費3倍、今の電力は化石燃料発電の比率が増えていますので、我が家の東電エリアではCO2排出削減にほとんど寄与できてはいませんが、ガソリン削減効果として大きな効果を上げています。