フランクフルトモーターショーとプラグイン自動車

プラグイン・プリウスの詳細が発表されました

今開催されているフランクフルトMSでも様々なEVやPHEVの発表があり、まだまだプラグイン自動車ブームが続いている印象です。トヨタも来年に市販予定のプラグイン・プリウスを発表しています。この発表を前に、アメリカでもこのクルマの発売予告があり、アメリカでの諸元概要を発表しています。これによると、電池エネルギー容量は今私が使っている実証試験フリート車用の5.2kWhから、4.4kWhへの少なくしていますが、EV走行レンジはこれまでのレベルをキープしたようです。プラグインではありあませんが初代プリウスでも当初1.6kWhのエネルギー量を、2000年のマイナーチェンジで電池の使い方を工夫し、アシストパワー、回生受け入れエネルギー量を増やしたうえで、電池エネルギー使用幅を拡大し、1.3kWhまで下げましたが、今回も同様に電池保護制御を強化しながら、電池エネルギー使用幅(SOC Swing rate)を拡げたのではと推測しています。
 アメリカでの販売価格は、スタンダードモデルで$32000、日本での報道では今の円/&レート換算で234万円と報じられておりますが、今の円高レート換算で日本での価格を推測されると、これからも厳しい原価低減活動を続ける、開発、生産のエンジニアや、また次ぎの厳しい原価目標で活動をいただく部品メーカーさんには大変切ないことにはるのではとOBとして心配しています。しかし、これで、トヨタのPHVに対する本気度を感じていただけるのではないでしょうか?アメリカでは、補助金を含めたユーザーの実負担額ではLEAFやGM Voltよりも少し低い額で設定されたようです。

2012_プリウス-プラグイン・ハイブリッド

2012_プリウス-プラグイン・ハイブリッド


 
プラグイン・プリウス日記として、このブログでも使用記を紹介しているように、私の使用環境では欲を言うともう少しEV航続距離が長いと、日常の大部分のショートトリップ用途がカバーでき、また長距離ドライブのカバーレートも上げられ、充電電力エネルギー走行割合を増やし、ガソリン消費割合を下げることを期待していますが、この販価を考えるとそれは次ぎへのお楽しみかなと思っています。

フランクフルトモーターショーで紹介されたクルマ

さて、今回のフランクフルトMSは、パリMS、ジュネーブMSとならぶ欧州三大MSの一つ、パリMSと交互に2年に1度開催されています。特に、地元ドイツ勢が張り切って次ぎのモデルを展示することで知られており、今年もBenz、VW、BMWのBig3 がそれぞれEVを発表しました。このドイツ勢3社が3社とも、小型コミュータークラスのEVを発表したことに、予想通りながら、今のEVの現状と将来を見た思いをしました。やはり、今の電池実力ではフルサイズの今の自動車の代替にはならず、ショートレンジ専用の小型コミューターしかマーケットはないとの読みだと思います。

その、3社の中で、発売間近を思わせたのがBenzの子会社Smart社が発表したSmart ForTwo Electric Driveでした。税抜き販売価格はドイツ国内で€16,000以内、航続距離は欧州基準で140km、夏のエアコン、冬のヒーター運転を考慮に入れた実走行航続距離は100kmを切るレベルと推測しますが、都市内のショートレンジに限定した用途ならば、補助金が今後も得られ前提で、かなりの台数の伸びが期待できるように感じました。
現在のデモプロジェクト用EVまでは、アメリカ西海岸のEVベンチャーのテスラ社と技術提携をして、そのEVドライブと電池供給を受けていましたが、今回からドイツメーカー製の専用品に切り替え、これもBenz Smartの本気度を見る思いをしました。

2012_Smart-ForTwo-Electric-Drive

2012_Smart-ForTwo-Electric-Drive

VW社は今回のMSで、従来のルポラインアップに替わる、VWとしては一番小型クラスに位置づけられるUP!シリーズを発表し、このラインのEVとしてe-UP!を発表しました。前回の2009年にもE-Up! EVコンセプト車を発表していましたが、コンベ車のラインアップベースのEVとして、これまでのNew Beatle EVやGolf EVのデモモデルでお茶を濁してきたVWもそろそろお尻に火が付けられたのかな?と感じました。
 

E-UP_EV-Concept

E-UP! EV-Concept

BMWもi3と名付けた小型EVを展示しましたが、これはカーボンコンポジット製の軽量ボディーを採用、このカーボンコンポジット材料は航空機用素材の転用らしく、アメリカ西海岸航空機産業が盛んなワシントン州の会社から購入し、ドイツで成形と加工を行うと発表しています。これはまだまだトライアルフェーズのようですが、これまではMini EV
をデモ用として使っていましたが、これより小さく軽量なEVを目指す意思表示ではないかと勘ぐっています。

もともとこのEVコミューターとしては、このSmart ForTwo EVとインド タタ車のナノベースのEVに注目していました。Smart ForTwoがここ価格で登場すると、EV Ventureの出る幕はなくなってくるのではないでしょうか? いくら都市内のショートレンジ用EVコミューターといえどもクルマはクルマ、いちどフランスでMini EVとSmart TorTwo EVにチョイ乗り程度ですが乗ったことがありますが、やはり欧州自動車メーカーの作ったEVはしっかりとしたクルマとの印象でした。

このようにEVコミューターの方向が見えてきましたが、やはりショートレンジ用途に限定、日本なら軽のジャンル、欧州では場合によってはキャノピー付きのEVスクーターが対抗馬、の価格に極めてシビアなマーケット、どこが生き残るか気になるところです。ブランドでの欧州勢から、低価格帯得意のインド、中国、その中で日本勢がどのようにこのジャンルで闘うのか、気になるところです。

実効性のあるクルマと戦略を

 ドイツのE-Mobility政策の中で、従来自動車の代替としてはPHVにシフト、中国もHVとPHVをスキップしたEV推進政策からHV/PHV/EVへの転換を発表しました。ドイツ勢の今回のフランクフルトMSでのEV攻勢は、この政策転換のディシジョン前に企画をスタートさせたものと思いますが、EV普及をめざすならEVコミューターからとの方向は定まったと思います。しかし、このEVコミューターの実用化が進んだとしても、これでは脱石油燃料、低CO2との観点から力不足であることは明かです。

ピークオイルが迫り、このところ立て続けの大型雨台風の襲来に地球温暖化&気候変動の顕在化が心配になりはじめた現在、石油燃料消費の削減、低カーボ自動車へのシフトは待ったなし状態、BEVや水素燃料電池自動車でのデモカーでお茶を濁せる時代はとうに終わりを告げています。従来車を代替する低カーボン自動車への転換を急ぐ必要があり、低燃費コンベエンジン車の登場は朗報ですが、そのエンジン技術をさらに進化させたHV,さらにはPHVの普及に力を注ぐ必要がありそうです。EV競争と同様、HV/PHVも激烈な競争をくぐり抜け、日本勢がその競争の先頭に立ち続け、次世代自動車技術をリードしていって欲しいものです。トヨタにもプリウス・プラグインの次ぎは、燃費、低CO2性能に加え、クルマとしても、その基本性能も時代の先駆けを感じさえるサプライズを与えてくれることを期待しています。

また自動車のエンジン屋がルーツの私としては、HVがEVや水素燃料電池車へのショートリリーフではなく、エンジンHV,エンジンPHVがまだまだこれからの主役座を務めることになりそうなことに、まったくの想定内ではありますが、胸をなでおろしています。