プラグイン・プリウス日記-2
私の足としてプラグインプリウスが、ゴールウイーク直前の4月28日に納車され、使いだしてから1か月半が経過しましたので、この間の燃費、電費、CO2、EV走行比率、その感想をお伝えしたいと思います。
4月29日(金)から6月19日(日)まで52日間の走行ログを図1に、燃費、電力消費、ガソリン・電気走行比率など解析概要を表1に示します
クルマ屋の私は、ヘビーユーザーを自認し、休日も山、海、川、街とさまざまなところをクルマで走り回り、走りを楽しむとともに、そのクルマの長所や欠点、改良点を洗い出すことを、仕事にしてきましたので、今のその習慣は変わらず、日本の平均的なユーザー優に倍以上の距離を走り回っています。
ガソリン燃費は31.1.km/l
5月には2度の欧州出張があり、また車での宿泊出張もありましたので、クルマを使わなかった日、充電できなかった日も多くありましたが、それでも53日間で総走行距離3,772㎞、月間では2,000㎞を超える距離を走っています。地方都市に住んでおり、仕事の関係でも、一般交通機関を使うと不便な名古屋地区、三河地区への出張にもクルマを使うことが多く、このような走行ログとなっています。この間3回のガソリン給油をし、その総給油量は123.59L、満タン法による燃費値は31.1km/l、仕様は少し違いますが、これまで使ってきた2代目プリウスの3年間総平均燃費、1年半使ってきた3代目プリウスの総平均燃費どちらも同じ19.2㎞/l(燃費重視の運転は行わず、少し走りによったユーザー平均の走り方を心掛けていました)と比較すると約60%の燃費向上との結果になりました。
この間の外部電力による電池の総充電量は169.89kWh, 5月末までの1カ月の充電量は94.11kWh、この充電電力エネルギーによる走行分がガソリン消費の削減量になるわけです。しかし、充電ケーブル/漏電検出回路~車両充電系~電池までの充電効率が判りませんし、クルマの実際の電池放電による電力消費値も表示されませんので、実際にどれくらいガソリン消費削減になったのかを正確に算定することはできませんが、充電電力量と満充電からEVモード走行をし、電池の充電エネルギーを使い切りエンジンが起動するまでの距離を調べたデータの平均値からの概算では949㎞となり、総走行距離に対する比率は24.9%でした。この数値が当たらずとも遠からずと思います。長距離ドライブが多く、年間走行距離もダントツに多いヘビーユーザーとしての比率としてはまずまずのEVモード走行比率だったと思います。
渡しの場合、自宅は三島市の箱根山麓にあり、また現役時代に勤務していたトヨタの研究所は富士山山麓にありましたので、クルマの使用環境としては山岳路とまではいきませんが、ある程度アップ・ダウンのあるルートが使用環境です。この生活環境をイメージしてプラグインのEVモード走行を試してみていますが、電池充電エネルギーの所定量を使い切り通常のハイブリッド走行になるまでのEVモード走行距離は、その走行パターンにより、最短13.7kmから、最長27.7kmまでとほぼ2倍と大きくばらつく結果となっています。上り坂や流れの速いバイパス路、都市内の低速かつ発進/停止が多い渋滞ではエネルギー消費が多く、EVモード走行距離は短くなります。スムースな流れの郊外や市内の一般路、下りや平坦路ではエネルギー消費が少なくEVモード走行距離は長くなります。満充電からの平均EVモード相応距離は20.57㎞と、JC08モード走行による公式値23.4kmよりは短い結果となりました。EV走行域の最適化や、EV走行キャンセルボタンの設定などなど、改良の余地はまだまだあるように感じます。
利用しやすい充電インフラの整備を
電池の充電拠点は、自宅のガレージに設置した100Vコンセントから、この1カ月半の使用で、自宅以外で充電したのは東京有楽町の国際フォーラム駐車場での1回のみで、残りはすべて自宅です。名古屋や豊田、さらには京都への出張でも、充電できる駐車場があるホテルや、公共駐車場を探しましたが、やはり簡単ではありませんでした。しかし、PHVは充電できなくとも、普通のハイブリッドとして走ることができるのが特徴、ロングドライブでも全くクルマを使う上での痛痒は感じません。豊田市では宿泊したホテルのすぐ近くに市の立派な充電ステーション(写真1)がありましたが、使用時間の制限、事前連絡が必要、また京都にも充電器つき駐車場プランをうたっているホテルがありましたが、宿泊時の占有ではなく、充電が終わったら一般駐車場へ移動する条件が付けられていたりと(これでは、ホテルでものんびり食事のビールも楽しむことができません?)、まだ環境啓蒙活動の域をでない状況に感じました。もちろん、充電量を増やせば増やすほどEV走行比率を高めることができますが、そのためにクルマの使い方に制約をつけては普及の阻害因子になるばかりです。充電しなければ走れないEVではありませんので、充電インフラもEV用とは別に議論していくことが必要です。
日当たり走行ロググラフとの対比では、名古屋地区や東京へのロングドライブは別として、日常の通勤、ショッピング、リクレーションなどでのクルマの使い方の私の生活パターンでは、一日一回の自宅での充電だけで、一日の行動距離をカバーするにはちょっと不足している感じ、これはフランス・ストラスブールでの実証試験ユーザーからの声と一致しているようです。ストラスブールでは、フランス電力公社とタイアップし、契約先の役所、会社の駐車場での充電設備に加え、そのクルマをつかう従業員の自宅の何か所かにも充電設備を設置し、夜間駐車中の充電と、勤務中の充電で使用電力量を増やし、EV走行比率を増やそうとの試みをしています。電池本体の改良、クルマとしてのEV使用域の最適化などによりEV走行レンジの拡大とともに、勤務先ともタイアップした充電設備の設置などを行っていくことにより、EV走行比率を増やすことは可能との感触を持ちました。
もちろん、自宅と勤務先駐車場での充電設備設置の費用も受益者負担が原則ですので、プラグイン自動車の価格だけではなく、充電設備の費用も、もっと低価格にしていくことが前提です。手前味噌ですが、長距離ドライブでは高効率本格ハイブリッドの強みを発揮し、さらにプラグイン化として充放電効率が高く、エネルギー量の大きいリチウムイオン電池を搭載しているためか、高速巡航燃費が電池と充電系、高圧ケーブルの搭載で通常プリウスよりも150kg以上も車両重量が重くなっているにも関わらず、かなり向上している感じです。それほどエコに徹した運転はしていませんが、電池充電ができなくとも、2代目、3代目プリウスでは実現できなかったレベルの燃費を実現しています。EV走行比率を高めること以外にも、電池の充電エネルギーを有効に使って、エンジンを使ったハイブリッド走行時の燃費もさらに高めることもできるように思います。
しかし、実証段階だとはいえ、40年以上もクルマの開発エンジニアとして、クルマの基本性能として欧州勢を追っかけ、また15年以上もハイブリッド進化の前線にいて、常にそのクルマのあら捜しを続け、品質の細部に目を配ってきたシビアな見方からは、このプリウスもまだまだ数多くの要改良点を感じてしまいます。いま、次の普及拡大にむけ、さらなる改良に取り組んでいるはずですので、燃費、電費など環境性能の改善ばかりではなく、プラグイン化によって悪化したクルマの基本性能についてもその改良に取り組み、ユーザーにサプライズを与えるレベルに進化させてくれることを期待しています。