新プリウスPHV日記-3
外で充電することは殆どない
少し間があきましたが、昨年4月から使っているプリウスPHVの近況をお伝えしたいと思います。一昨年の2011年度はトヨタにお願いして限定車を1年使い、昨年2012年4月に量産車を購入し足がわりに使っています。
最近では、この界隈(静岡県東部地区)でも日産リーフが走っているのをたまに見かけるようになり、プラグイン自動車自体も珍しいものではなくなりましたが、プリウスPHVはちょっと目で従来プリウスと見分けが付けられず、プラグイン車普及へのアピール効果としては残念ながら小さいようです。
限定モデルからの通算でほぼ2年、約30,000キロの走行ですが、一言で言えば「通常のプリウスと何も変わることがない普通のTHSハイブリッド車」という感覚です。限定版のPHVではAC100Vコンセントで充電をしていましたが、クルマを入れ替えるタイミングでカバー付きのAC200Vコンセントの設置工事を行い、AC200Vでの充電を行っています。
コンセントカバーには勝手に開閉されないように鍵がついているので、鍵をかけて充電ケーブルはコンセントに差しっぱなしにして使っています。限定車でやっていた充電ケーブルをクルマに積み、充電の度にいちいちクルマから取り出してコンセントと車両の充電ポートの両方に接続、充電後はそれをかたづけて収納バッグにいれてクルマに積みこむといった作業は止めました。
限定車での経験でも、また実証試験の調査結果でも、ガソリンでも走ることができるPHVでは、なにも無理して外出先でケーブルを持ち歩いて充電先を探し回る必要はありません。この2年間で自宅以外の充電では、充電ケーブルを用いて通常コンセントで充電を行ったのは友人の別荘で試しにやってみた1回のみで、充電ステーションでの充電も今も時々クルマででかけるトヨタ本社地区への出張時に充電器付きの駐車スペースが空いている場合だけです。そのスペースも、最近ではトヨタ周辺のPHV台数が増え、先を越されて開いて無く充電ができないケースが増えてきています。
今回の政府補正予算で、電気自動車用の公共充電設備の設置に大盤振る舞いがされるようですが、高額な急速充電器を増やすぐらいなら、電気自動車、プラグインハイブリッド用として同じ予算で100台ぐらいの設置が可能な通常AC200Vの公共充電コンセントを増やす方が大きな石油消費削減効果を得ることが出来ると私は考えています。勤務先、集合住宅、ホテルなど宿泊施設、ショッピングセンター、公共施設駐車場への通常充電コンセントを増やすほうが、クルマ全体で考えると石油消費削減につながることは間違いありません。AC200V充電なら、プリウスPHVでは1時間半でフル充電、約20キロ分を電気走行に置換えることができます。また、これでメリットを得るのはPHVだけではありません、AC200Vであれば都市内の小型コミュータや電動スクーターの充電にも使えますので、こうした通常充電コンセントの設置が効果的と思います。
脱線してしまいましたが、次ぎにこれまでの燃費、電費データをご紹介します。
図1は新プリウスPHVの最新走行ログを以前使っていたプリウスPHV限定車およびその限定車での充電電力を使わないノーマルHVとの燃費、電費、CO2の比較表です。電池エネルギー搭載量は限定車の5.2kWhから4.4kWhへと少し減っていますが、電池SOC(State of Charge: 電池充電状態)の使用幅を拡大し、またEV走行許可域を見直しJC08基準の公表EV走行距離は拡大しています。実際に使ってみると、あまり大きな違いはないようです。
200V充電に変えた効果は大きかった
詳しい分析は、1年経過してからしっかりと報告したいと思いますが、これまでのデータから現状に触れてみたいと思います。充電をAC200Vにしたのは正解のようで、100Vでは3時間かかっていたフル充電時間が半分の1時間半で済み、またフル充電付近では充電電力を落としてスロー充電を行っているので、1時間弱で80%充電はできるようです。また充電効率も200V化によって大幅に改善されています。これからプリウスPHVの購入をお考えなら、購入時に併せてAC200Vコンセントの設置をお勧めします。
月間走行距離がこれまでより少なくなってきているせいか、電力走行比率は増え、ガソリン燃費が向上していますが、年換算では充電電力による電力走行距離はほとんど変わらず、結局はどれぐらい充電できるかで定まってしまいます。電池エネルギー搭載量を大きくしなくとも、勤務先、出先でAC200V充電器が増加していけば充電頻度を高めることができ自ずと電力走行比率を増やすことができます。私のような長距離ドライブ頻度も多いケースでも、38%程度の電力走行ができていますので、外出先で充電ができるようになるとそれほど遠い将来ではなく、50%越えは可能と感じました。
写真1に車両ディスプレーに表示される通算の燃費、電費ログ表示を示します。
このプラグイン化によって、ガソリン消費量は充電電力量に応じて減っていきますが、図に示すようにCO2排出量はそれほど大きな減少にはなりません。発電電力のCO2として昨年の発表データである450g_CO2/kWhを使いましたが、今の状況ではさらに火力発電シフトでかなり増加しているはずです。またこの観点でいえばアメリカ、ドイツ、さらに中国、インドではCO2排出面からは電気自動車やプラグインハイブリッドは逆効果をもたらし、さらに中国についてはPM2.5 排出の側面を見ても電気自動車拡大が果たして環境に良い効果を持つのか極めて疑問です。
いまはまだ電気代が安く、ガソリンの代わりに電気走行に置換えていくことではランニングコストとしてメリットがありますが、それもガソリンには多額の税金がかかっている状態での比較であり、また深夜電力料金が脱原発/縮原発のなかでどうなるかも心配する必要があります。
しかし簡単に充電ができるようになると、プラグインPHVの販価が下がっていけば充電した電力分だけガソリン走行分を電力走行に置換えていく現実解であることが実感できます。私のケースでも1回の給油で平均1000km程度走れていますから、どんな長距離ドライブでも給油、充電をあまり気にせず走り回ることができることも大きなメリットです。
ただし先回も書きましたが、電池が安くなり販価が下げられてもガソリンの節約だけもとを取るのは楽ではありません。手前味噌ですが、ノーマルHV走行の燃費が良く、このノーマルHVに対抗して燃費削減だけが売りではまだまだ力不足です。プラグインならではのアピールポイントが必要に思います。このプリウスPHVを使ってみて、充電電力を使わないHV走行燃費の重要性感じました。レンジ・エクステンダー方式など、充電電力を使わないHV走行燃費をあまり重視していないプラグインもありますが、長距離ドライブ・高速ドライブではHV走行燃費の重要性を強く感じます。
自動車エンジニアには楽しみな時代
今年は温暖化?が吹っ飛ぶような寒い冬、つくづく感ずるのはハイブリッドやこうしたプラグイン自動車のヒーター性能の低さです。ノーマルHVでもヒーター水温確保のためだけにエンジンを掛けざるをえなくなり、プラグインでも電池があってもヒーターのためのエンジン運転が頻発します。
それでも、従来エンジン車に比べ絶対燃費は悪くありませんが、燃費悪化率の大きさには愕然とします。3代目プリウスでは、排気熱再循環装置を採用、サブマフラーに冷却水パイプを通し排気からの熱回収をおこなっていますが、プラグインではこれでも不十分、この熱源確保もプラグイン自動車のこれからの大きな課題です。電気自動車ではこのヒーター熱源を全て充電電力でまかなうので電力走行距離はさらに短くなってしまいます。シートヒータもありますが、手の足の凍えには役にたちません。我慢のエコの押し売りではない解を期待しています。
まだまだ自動車エンジニアが取り組むべきテーマは山ほどあり、こういった課題が目の前にありこれに取り組むことができるこれからのエンジニアが少しうらやましくなっています。