新プリウスPHV日記-1

新プリウスのFirst Impression

先週のブログで紹介したように、4月19日に新しいプリウスPHVが納車され、私の足として走り始めました。自動車取得税と自動車重量税の免税となるエコカー減税の他、CEV補助金(クリーン・エネルギー自動車導入促進対策費補助金)という通常のエコカー補助金とは別の補助金45万円が頂くよう、現在申請手続きをとっています。この補助金を申請すると、6年間の保有が義務づけられていますので、長い付き合いになりそうです。TVコマーシャルを時々見かけるようになり、ジャーナリストの方々の試乗記を見かけるようになってきましたが、まだ実際に走っているところを見かける機会は少なく、これが今のプリウスのようにポピュラーになっていくにはもう少し時間がかかりそうです。

見た目はノーマルプリウスとほとんど一緒で、プラグインであることをちらっと見て識別することは困難ですが、横側面にあるPLUG-IN HYBRDバッジ、2代目プリウスから使い出したハイブリッド・シナジー・ドライブ(HSD)バッジがコンセントをあしらったものに変更され、右側面の後方に設置されている充電コンセントリッドぐらいが見分けるポイントで、あとはリア、フロントのカラーリングぐらいの違いです。

HV/PHV普及支援の応援団のつもりの私としては、走っていても、駐車中でもPHVであることがわかりやすいように、写真に示すオプション設定のカラーリングとPlug-inマークを追加して貰いました。

納車以来、新東名の試乗を初め、三重県への往復700kmの日帰り出張など、いろいろ走り回って、いじわるな姑のようにあいかわらずのあら探しをしています。これまで使っていた、限定バーションのプラグインプリウスでも、数多くの指摘をさせてもらっていましたが、着実の改良が進んでいるようで、量産への心意気を感じさせられました。
東京から三島まで、さらに三重往復など、高速道路の走行が比率として多く、まだインパネ表示上のEV走行比率20%は少なく、私の使い方での燃費ポテンシャルを掴むことは出来ませんが、使い出した一瞬の印象、限定バージョンからの改良点について触れてみたいと思います。

上の図は5月1日にとった、インパネの走行ログ表示です。総走行距離1285kmのうちEV走行267km、そこで使った外部充電電力28kWh、HV走行1018km、ガソリン消費45リッター、EV走行比率20%です。電力消費、燃料消費の算出方法、またその精度は判りませんが、外部充電電力28kWh分が267kmの走行に使われ、約1kWhの電気エネルギーで10km弱の走行ができたとの結果です。HV走行の燃費はこの表示上は22.6km/Lとなりますが、実際の燃費実力はもう少し走り込んでから報告したいと思います。

改良点1:タイマー機能

大きな改良点の一つは、タイマー充電機能です。これは、あって当たり前、電気自動車に限らず、プラグイン自動車の充電は出来る限り、発電余力がある夜間で行い、普及期にも電気自動車用の発電能力増強をギリギリに抑えることが必要との議論がありました。 
日本では、これにCO2削減からも原発比率の高い夜間電力を使うとさらに低CO2が計れるとのシナリオでした。しかし、限定車には、コンセント側にタイマーを設置してもらうことを想定したのか、設定がありませんでした。ほぼ同時期に発表された日産LEAFにはしっかりタイマー機能とスマホとの連携でそれを制御する機能が付いていました。さらに昨年の3.11の福島原発事故以降、日中の電力ピーク時に新規需要であるプラグイン自動車の充電を行うのは避けるべき、このためにも充電タイマーは必要不可欠なデバイスです。

我が家では、6年前のリフォーム時にオール電化にし、電化上手(季節別時間帯別電灯)の契約で使っています。7月から一般家庭用も値上げとなりそうですが、現在の料金では夜11時~朝7時までの夜間電力が1 kWhあたり9.17円、午前10時~午後5時の昼間が夏33.37円、その他の季節で28.28円、それ以外の朝晩が23.13 円となっています。基本料金、いくつかの割引制度がありますので、実際の電力料金としてどうなるかは判りませんが、昼間の充電と夜間電力での充電では、充電電力料金にも大きく影響しますので、カストマーファーストの視点からも標準装備が求められていました。

将来的には、自動車単独でタイマー機能を持つのか、スマートメーター機能とセットでコンセント側に持つのか議論は残ると思いますが、いずれにしてもその充電制御を行うことは安全の観点からも必要です。電力需給の安定化と効率向上、CO2削減を目的として自動車充電コンセントがスマートメーターを介し接続されるスマートハウス、スマートコミュニティへのシナリオが描けると思います。ピーク時に充電がカットされても、タンクにガソリンが入っている限り、低燃費で走れるところが、電気自動車とは違うプラグインハイブリッドの特徴、これを生かさない手はありません。しかし、残念ながらこのスマホと連携したピーク時充電カット機能はオプション、プラグイン普及期には標準化が必要と思います。

改良点2:EV/HV切り替えボタン

次ぎに重要な変更は、EV/HV切り替えボタンの設定です。これで、自宅からでてすぐ高速に乗るようなケースや、急な坂を上るようなケース、また出先の都市内走行用に充電電力を残しておきたいときには、ドライバーの意思によってEV走行/HV走行を切り替えて使うことができるようになりました。

数年前にアメリカで2代目プリウスの電池を充電容量の大きな電池に載せ替えプラグインに改造する、改造ビジネスがはやっていました。前大統領がアメリカのガソリンがぶ呑み中毒解消を叫び、オバマ大統領がグリーンニューディールを掲げて大統領選に挑んだときも、この改造プリウスプラグイン車が輸入石油の中東依存脱却キャンペーンとして右から左までのNGO団体に使われ、ワシントンDCの連邦議会前、ホワイトハウス前の政治イベントに使われていました。

この改造ハイブリッドプリウスが、今のプラグインハイブリッド自動車、電気自動車ブームの切掛けとなりました。さまざまな改造プラグインプリウスが作られましたが、その全てにはEV/HV切り替えボタンが付けられていました。2代目プリウスの日本版と欧州版には、今もノーマルプリウスなどに採用されているEVボタンが付けられており、EVボタンを押すとエンジン停止ゾーンを拡大させるようになっていました。アメリカ向けには、ゼロエミッションに近いクリーン度が求められるATPZEVに対応するため、EVボタン採用を見送りましたが、HVコンピュータにはそのボタン信号が入るとエンジン停止ゾーンを拡大する制御ロジックがそのまま残っており、それがハッカー達に見破られ改造が行われるようになってしまいました。

しかし、高圧電池を使う、ハイブリッド車が容易に改造されるようでは、改造が自己責任ではあっても安全上問題です。その後は改造されないように、設計変更が行われ、以降のハイブリッド車では、プラグイン改造車は作られていないようです。ノーマルプリウスでもEVボタンを付けたように、電池にエネルギーが残っている状態で、エンジンを出来る限り掛けないEV走行モードの設定ニーズは強く、プラグインハイブリッドの当初企画でもドライバーの選択によるEV/HV切り替えの考え方はありました。

初代プリウスを発売するときに、開発以外で苦労した点として、排気のクリーン度、燃費、ブレーキ性能などクルマの性能、機能など、商品としてのクルマを発売し、それが法規制に合致しているかの試験、届出書作成があります。それまでにどこからも発売されたことのないハイブリッド車では、その試験法、届出書作成の様々なルールまで、届出官庁とすり合わせ、決めていく必要がありました。アメリカ、欧州で発売する場合も、日本でやったように、各地域の法規制に合致するかどうかの試験法、届出項目などをすり合わせ、決定してもらい、それに乗っ取った試験に合格し、決められた基準に沿った届出と認定、認可を受ける必要があります。エンジンがどのような条件で掛かるのか、特定できないEV/HVボタンの採用では、排気クリーン度の試験法もなかなか定まらなかったのではないかと推測しています。

しかし、欧州からもEV/HVボタンの採用は強く求められており、この様々な交渉を乗り越え量産モデルとして採用したことは大歓迎です。ボタンの位置、このシーケンスにもまだまだ改良点があり、またナビ連携、標高データを活用したEV/HV自動切り替えなどの研究も世界中で進められており、この将来も楽しみです。

改良点3:回生充電

三つ目の改良ポイントは、降坂時回生充電の改良です。限定車では、一度、電池の充電電力を使い切りHV走行に切り替えられると、ノーマルHVに比べ大容量の電池を搭載しているにもかかわらず、ノーマルHVの回生シーケンスそのままを採用していたようで、電池充電量が増えても、もう一度EV走行モードに復帰することもやっていませんでした。
また長い降坂時にもPHV電池への回生充電量をあまり増やせていませんでした。今回の量産型では、容量が増えたPHV電池に対応し、これが大きく見直し、回生充電量を増やし、さらに長い降坂で充電量が増加すると、もう一度EV走行モードに戻すように改良されています。

ノーマルハイブリッドもプリウス始めトヨタ・ハイブリッド・システム(THS/THSII)では、目一杯の燃費向上を果たすため、フルハイブリッドを採用し、さらにぎりぎりまでの減速回生発電を行うため、回生発電ブレーキと油圧ブレーキへの切り替えを高精度で行う、本格的な回生協調ブレーキを採用しています。しかし、プラグインに比べると小容量の電池ですので、長降坂ではすぐにフル充電状態になり、エンジンの連れ回し(エンジンブレーキ効果)で残りは捨てていました。プラグインでは、容量を増やした分だけ、捨てずに充電に回せることになり、そのエネルギーは再度のEV走行に使ったり、HV走行でも燃費向上に役立てることができます。わが家の近くの箱根へのドライブで、この機能を試してみました。もちろん、三島から箱根の登りではすぐに充電電力を使い切りHV走行に切り替わります。わが家の標高約140メーターから、箱根峠の最高標高846mまで駆け上がる訳ですから、電池充電状態からスタートさせても、峠付近では燃費表示がリッター20kmを大幅に切ってしまいます。

ここから、芦ノ湖湖畔まで下ると標高723m、帰路はそこから、もう一度箱根峠まで登り、あとは新しくできた東駿河湾環状道路の入り口まで約14kmの下り一方の長い降坂になります。ノーマルプリウスでは、この長い降坂ではすぐに電池フルになり、燃料噴射はカットしていますので、ガソリンは使っていませんが、エンブレ状態のHV走行で下ることになり、登りで悪化した燃費を回復させることができず、平地で通常走っている燃費からいつも大幅に悪化させていました。前回の限定車でもこのシーケンスは変わらず、箱根の長降坂ではノーマルとほとんど同じ、回生エネルギーはあまり回収できていませんでした。

今回の量産モデルでは、エンブレ走行には入らず電池容量が増えた分だけたっぷり回生充電が行われ、電池の表示としては東駿河湾環状道路の入り口までに、EV走行距離13kmまで回復、自宅までに使い切れずに残量を余した状態で帰宅しました。燃費としても、このコースのドライブでは、限定車に比べ大幅に向上していました。

しかし、ちょっと心配になったのが、電池寿命への影響、基本的には充電であれ、放電であれ、電池容量あたり、その電池を通過する電気エネルギー量の積算値で寿命は支配されると言われています。もちろん、電池そのものの改良による寿命伸張、さらに電池温度や充電状態によるきめ細かい充放電制御により、寿命保証をしていると思いますので、途中交換を心配することはノーマルプリウス同様にないとは思いますが、”ハイブリッド用電池は携帯電話やPC用とは作り方も寿命保証の考え方も全く違います。途中交換前提の設計はしていません“と言い切り、その後の電池の改良と、クルマとしての電池の使い方、その充放電制御の改良で、実際のマーケットでも信頼を獲得してきました。この考え方は、守ってくれているものと信じています。

日産LEAFの説明にも、電池寿命にやさしい充電量80%カットモードの説明がありました。これもリチウムイオン電池の電池寿命を心配しての表現であれば、その普及拡大には心配の種、さらなる技術進化への取り組みが必要と思います。

苦戦するプラグイン車、まずは家庭や職場での充電環境整備を

 日産LEAF、GM VOLTなど、日本だけではなく、アメリカでも充電型プラグイン自動車の販売がやや低調、プリウスプラグインの販売も、ノーマルプリウスやアクアの絶好調の影に隠れ、やや低調のスタートのようです。

補助金をいただいてもまだ販価が高く、経済メリットがまだまだ出せない理由以外に、充電コンセントなど充電設備の設置がネックになっているように思います。個人住宅でも、駐車場所によっては配線工事とコンセント設置の工事が必要で、それもそれほど安くはありません。またマンションなど、集合住宅では、新設のマンションで充電設備付をうたい文句に売り出すケースを見かけるようになってきましたが、まだその数は少なく、それもCS活動の域を超えません。フランスでは、集合住宅新設時には駐車場の一定割合には自動車用充電設備設置義務付けの法規制が本決まりになっているようです。

既設集合住宅への設置支援、その標準化と低コスト化、家庭/オフィス用設置支援、さらに官庁/会社での従業員駐車場への設置支援など、クルマの購入そのものへの支援も重要ですが、充電設備をどのように設置していくかも、普及拡大の鍵を握るように感じます。

安い、低CO2電力が使えること、充電設備の普及、車両の低価格化、電池長寿命化の進展が前提ですが、移動の自由、旅の自由、“Freedom of Mobility”“Freedom of Travel”の手段であり、ドライブそのものにも楽しみを与え続けMobilityであり、ポスト石油さらに低CO2の社会要請に応える次世代自動車として、”プラグイン自動車にその未来を見た“と言えるまでもう一息と感ずることができました。