自動車販売台数からみた2012年

グローバルでは拡大の一途の自動車産業

2012年の日本での新車販売台数は、エコカー補助金の後押しもあり547万台と4年振りの500万台越えました。アメリカもリーマンショックからの回復が顕著で1446万台と、これも5年振りの1400万台突破、また中国では前年比2.5%増と過去がないほど低い伸び率でしたが1850万台を記録、欧州を除くと自動車マーケットとしては拡大基調の一年でした。

今年については、昨年は前年比2.5%の低い伸びに留まった中国も、いよいよ2,000万台の大台を超えるだろうと言われおり、アメリカでも財政の壁を乗り越えれば、景気回復も期待され新車販売の1500万台越えが期待されています。世界全体としては、政治、経済情勢に突発的な大問題が発生しなければ、更なる拡大を予測する声が高まっています。

日本の自動車業界も昨年の大震災やタイ洪水の影響から脱却しました。トヨタは尖閣問題による日中関係の悪化から年後半に中国販売が大きく低下した影響もあって世界1000万台越えは来年に持ち越しとなりましたが、販売台数世界1位に復帰したようで、富士重がアメリカで4年連続販売新記録を更新するなど全体としては先行きに明るさがでてきた1年だったように思います。しかし、足下ではエコカー補助金が切れたあとの販売落ち込みが続いており、なにか浮揚策がなければまた縮小モードに入っていく懸念が強まっています。

今日の話題の次世代自動車への転換を日本勢がリードしていくためにも、その開発拠点である日本マーケットが元気にならなければ開発人材含めてパワーが損なわれてしまいますので、それが気がかりな点です。

ここまで書いてきたように、グローバルで見ればモータリゼーション拡大が続き、保有台数も増加する一方という状況です。日本では保有の長期化、高齢化、若者のクルマ離れなどにより保有台数が減少に転じ、欧米もその伸び率が小さくなっていますが、世界全体では保有台数も大きな伸びを示しています。

図1
図に示すように、2009年には保有台数が10億台を突破し、世界景気の低迷で途上国の保有台数の伸びが小さくなっていますが、景気回復によってはまだまだ大きく伸びることが予想されています。グローバルな視点では、自動車産業はまだまだ伸び率の大きな成長産業ということがお分かりただけるかと思います。

次世代自動車の普及はまだまだ

一方この増加分のほとんど100%のクルマが石油燃料を使うガソリン・ディーゼルといった内燃エンジン車で、保有台数の増加につれ自動車用燃料として消費する石油消費もどんどん増えています。新しい石油資源開発が進み、シェールガス&オイル革命と言われる従来油田ではない石油系資源も開発され、増加する需要をまかなっていますが、いずれ枯渇する地球資源です。また石油を燃やすと地球温暖化の主因である二酸化炭素を排出します。資源的にも環境的にも遠からず今のクルマの延長では成り立たなくなることは明かです。それだけに省資源、低カーボンの自動車の普及を加速させることが待ったなしです。

日本の次世代自動車販売統計は出ていませんが、今日の自販連の発表では、2012年の車種別販売台数1位は4年連続のプリウスで年間317,675台、2位がアクアの年間266,567台とプリウス兄弟で58万台を突破しました。トヨタ/レクサスでのHV比率は40%台となった模様です。

日本全体としては、一昨年にHV比率10%を達成したところですが、2012年は9月までで17%台でありシェアが大幅な増加となっています。一方、PHV/BEVのプラグイン自動車の販売は、結構な額の補助金がついているにも関わらず期待したほど伸びなかったようです。販価、BEVでは航続距離、充電インフラなど普及への課題とその克服をもう一度考え直す時期にきていると思います。さらにHV/PHV/BEVだけではありませんが、補助金だよりの普及には限界があり、エコだけではないクルマとしての魅力アップと販価ダウン、その上でこれからの景気浮揚に期待を掛けたいと思います。

アメリカでは、今週初めに車種別販売台数データが公表されました。

図2

図3

昨年はトヨタHVの復調、Fordの新型HVの発売もあり、2007年35万台を越え、年間50万台に迫る販売新記録となりました。PHV/BEVを加えた次世代自動車全体で、48.9万台と50万台越えには至りませんでしたが普及への勢いがついてきたように感じます。

図2に示すように、2007年には35万台を突破し、日本を越える勢いで販売を伸ばしていたHVも、2008年秋のリーマンショック、さらにトヨタの大規模リコール問題、一昨年の大震災、タイ洪水の影響で販売台数を落としていました。この間、オバマのグリーンニューディール政策の一翼を担うプラグインハイブリッド車GMシボレーボルト(GMはレンジ・エクステンダー型電気自動車EREVと名付けています)や日産リーフの発売がありましたが、販売台数低下を食い止めることがでませんでしたが、2012年はそれに歯止めが掛かった年でした。全米の年間新車販売台数1446万台のシェアでも、2007年の2.99%から3.38%まで増加しています。図3にメーカー別シェアを示します。

昨年は供給不足もあり、60%を切ったトヨタHVシェアも、今年はFordの新型HV車登場もありましたが、プリウスが経年車品質NO1を確保するなどHV品質への信頼回復と、ブランド力で67%までシェアを回復しています。2012年の日本勢としては、ホンダHVの元気のなさが気になりますが、日産と合わせて合計73%と圧倒的シェアを占め、アメリカの次世代自動車マーケットをリードしています。

他のエコカーとしては、CNGが年間1,462台(ホンダシビックCNG)、クリーンディーゼル車が152,255台で、HVの足踏みもあり、まだまだ圧倒的に多いのがガソリン自動車です。車種別販売台数上位は、相も変わらずFord Fタイプに代表されるフルサイズピックアップトラックが占めています。この大型ピックアップと、大型SUVの販売が好調なことが、アメリカ勢の収益回復の源ですが、プリウスの燃費(よくブログでとりあげるEPAラベル燃費)50mpg(約21.3km/リッター)に対し17mpg(約7.2km/リッター)と3倍もガソリンを消費するこのような大型車(これでも小型車のジャンルに入ります)と省エネ・低CO2にどう切り替えていけるかが大きな課題です。

アメリカもPHV/BEVに大きな補助金を出し、日本以上にその普及に力をいれていますが、プラグイン自動車販売台数トップがGMボルトの23、461台、2位プリウスPHV 12,750台、3位日産リーフ9,819台、話題のBEVテスラ社のモデルSの年間2,400台を含め年間総計は図2にあるように5.3万台と、日本同様にその勢いはありません。昨年は、アメリカのBEVベンチャー、それを当て込んだ電池ベンチャーが市場から続々と退場していきました。ユーザー・メリットが不足していることに加え、やはり充電が必要なことが、設置場所の確保、工事費用など普及へのハードルの高さになっているようです。

欧州では、BEV化のかけ声は大きいですが、ここもまだまだ伸び悩み、HV車すら競合相手が現れず米国同様伸び悩みが続いていましたが、昨年はオーリスHVやヤリスHVの現地生産も本格化し上昇に転じたようです。欧州勢のHV車も限定車としての販売はスタートし、ジャーナリス評価は高いですが、価格が高いせいか販売は伸びず、本気度が疑いたくなります。CO2規制対応として、ダウンサイジング過給、アイドルストップ、減速エンジン停止、オルタネータによるベルト駆動回生と、ハイブリッド化の狙いでもあった教科書通りの低燃費メニューを増やしてきていますので、みかけは従来車の燃費向上と見えますが、どこかで本格ハイブリッドに舵を切る必要が迫られると見ています。
中国は2011年の公式発表では年間HV2,580台、BEV 5,579台と、まだ普及シナリオを議論する段階ではありません。昨年の公式発表はまだありませんが、中国政府筋が、次世代自動車普及モデル都市(北京、上海他25都市)として、BEVを中心とする新エネ自動車が計27,400台、そのうち個人所有が4,400台、他はすべて公共サービス分野と公表しました。中国での普及拡大は容易ではありません。しかし、年間1850万台販売と世界一の自動車マーケットでの次世代自動車転換を加速する必要があることも確かです。

このように、2012年の次世代自動車販売では、日本勢が圧倒的なリードを示しています。日本に続き、アメリカもHV普及へと舵が切られそうです。次世代自動車普及への今年の主戦場はアメリカだと思います。ホンダ・アコードHV、ホンダFitクラスの新型スポーッHV、デュアルクラッチCVT方式の日産アルティマHV、これにFord Fusion、トヨタカムリHV、プリウスといったミッドサイズセダン系HVの激烈な競争を期待しています。

次世代自動車の本格競争時代はこれから

マクロに見ると、プラグイン自動車普及の前に、従来型低燃費車の普及、さらにノーマルハイブリッド車の普及拡大が先決です。一時は、「日本のハイブリッドはガラカーか?」とも揶揄されましたが、従来の改良と先の電気自動車や燃料電池自動車への期待先行で次世代自動車への先送りは許されなくなってきます。「トヨタのHV」とまでは言いませんが、「ガラカー」どころか普及する次世代自動車には何らかの「ハイブリッド技術」が欠かせなくなると断言できます。

トヨタがHVでシェアを67%も獲得している現状は、他社がHVに本気で取り組まなかった裏返しです。やっと本格的な競争時代、いかにエコが大事とはいえ、個人の自由な移動手段であるパーソナル・モビリティを将来も残していきたいとの思いでハイブリッドプリウスの開発に取り組んできました。「がまん」「もったいない」も必要ですが、時にはそれを忘れ、山道を、海が見える峠道を、また速度無制限のアウトバーンでのドライブなど、個人の自由な移動空間としての次世代自動車、モビリティの実現を期待しています。このモビリティへの実現には、日本の自動車エンジニアのハード・ワークと知恵の結集、さらにはクルマへの熱い想い、将来モビリティへの夢が必要です。

2013年は、その将来自動車へ向かっての重要なターニングポイントになるような予感がしています。