LEAFをレンタカーで借りてみました

先日、日産LEAFをレンタカーとして借り、都心をドライブしてみましたので、今日はその雑感を書いていこうかと思います。

本当は今年のはじめの、出始めに借りようとは思っていたのですが、なかなか上手くその時間が取れず、ようやく実際にその実力を見る機会を得ました。もちろん、様々試乗会など(ディーラーのものも含めて)もあって、ただ乗るだけであればいくらでも機会があったのですが、僕としては自動車、特にプラグイン自動車に関しては、自由度と利便性を測るためにもある程度の時間を自由に自分の意図で乗ってこそ真価が図れるものと考えています。ですので、出来る限りレンタカーなどで借りて、自由に乗ってからそのクルマを判断しようとの意図のもと、今回も短いですが半日の時間を取って乗ってみることにしました。

なお、僕は電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PH(e)V)などの情報に日常的に接する環境にいますので、LEAFが完成度の高いEVであるとは知っており、また三菱のiMievやスバルのプラグインステラのドライブ経験がありますので、ある程度はEVの特性も知っていたという前提の印象の点はまず留意していただけると幸いです。

実際利用してみての印象は?

さて、乗ってみての最初の印象ですが、都心および都市高速(首都高・京葉道路)を走ったところ、走りの点に関しては評判通り、全く不満の無いものだと思います。もちろん、これは走りそのものを目的としたスポーツカーや高級サルーンではないので、おそらくドイツのアウトバーンのような200km/hに迫るような速度域に対応できるとは思えませんが、日本の国内の公道でこのLEAFの走り不安を覚えるような状況はほぼ無いと言っていいと思います。走行モードとして、通常のドライブモードと「ECO」モードが設定されていますが、都心の一般道では「ECO」モードで十分で、ドライブモードの加速は先ほど述べたように「走りを目的と」してはいないこのクルマにはちょっと不必要なレベルで加速するなという印象すら受けました。ブレーキについては、普段プリウス(2台目)に乗っている僕はほぼ違和感を覚えませんでしたが、回生ブレーキを経験していない方は違和感を覚えるかもしれません。

車体はかなり大きいものの、売りの旋回性能の良さによるものだと思いますが、混み合ってターンの多い都心でもその取り回しに苦労することは全く有りませんでした。評判が良いというのも納得のクルマです。

リーフの視界

リーフの視界

また車内も、EV専用車を位置から設計したというのもありますが、しっかりと作っているなと感じられました。バッテリに原価の多くを奪われるクルマですから、実際はかなりコストを抑えた作りにはなっているのですが、特に安っぽさなどは感じさせないように工夫されていると個人的には思いました。また、表示も「エコ」をアピールするような、雰囲気はあるのだけれども実質的に意味のないゲージは少なく(ゼロではない)、データをしっかりと表示する電算計的なものを何種も用意しており、その思想には好感を持ちました。運転中の視界の中で、見やすさの順番をつけると、1.速度計、2.残り走行距離、3.油温計?、4.エネルギー消費計、5.インパネ内カスタム表示域となっており、3については「たぶん他に入れるものなかったんだろな」とは思いましたが、他社のエコ走行サポート表示については安全の面から疑念を持っている僕としては納得の配置となっています。特に1.2.についてはその重要度が他の順番になってはいけないでしょう。(だからエコサポート表示には懐疑的)

今回は特に荷物も少なく、後部座席も使用していないので、その部分を使用しての感想はできません。トランクは車体のサイズにしては小さいのですが、まぁこれは仕方のない部分でしょう。後部座席は見た目の印象では、十分なスペースが確保できているのではないかと思います。

さて、そして最も重要な部分である実走行距離です。レンタカーを借りる時にスタッフの方がまず仰ったのもこの部分でした。結論から言うと、「Eco」モードでエアコン無しで「130~140km」走るというスタッフ方の注意には間違いなく、エアコンを入れて「10~20km減」、ドライブモードにして「10km減」、つまり走行距離全く意識しない旧来型のクルマのように使用すると夏場の実走行可能距離は「100kmちょっと」程度でしょう。これは日産のスペック「JC08モードで160km」という数値から見ても、特に悪い数字ではなく極めて妥当なものです。また、ナビで電気消費画面を開くと、駆動系・電装系と分けて電気消費を表示し「エアコンを切ると+13km」など、必要な情報を教えてくれますし、そことインパネ内に表示される残り走行距離はあくまで印象ですが「かなり説得力のある数字を正直に表示している」と感じました。驚かれるかもしれませんが、このクルマ以前のプラグイン自動車の残り走行距離は、あまり信頼できないようなものが多かったのです。もちろん、誤魔化しているというよりも、その計算式なりが現実に即していなかったのでしょうが…

ナビ画面

ナビ画面 電費情報画面撮るの忘れてしまいました

EVの決定版だけど…

僕の感想は、「現時点ではこのクルマはEVの決定版」というものです。もちろん、もっと売価の高いEVもあり、そちらはLEAFよりも優れた走行性能などを持っているのかもしれませんが、量産販売を目的としたEVとしては、個人的にはLEAFは図抜けた完成度を誇っていると思います。
ただし、あくまでも「EVとしての」という点に注意してください。僕はここまで書いてきたように、LEAFを非常に高く評価していますし、これを創り上げた日産のエンジニアの皆さんの努力と矜持に感銘を受けています。ただ、僕は正直言って、知人・友人にこのクルマの購入を勧めはしません。それはもちろん、走行可能距離の短さがネックになっているからです。もしこのクルマの販売価格が今のままで、走行可能距離が「300km」であったのであれば僕は「ガソリンエンジン量販車の終焉」を確信し、「500km」であれば「EVが中心となる未来の道路」を確信します。ただし、僕がLEAFを乗って感じたのは、このクルマが「誠実にしっかりと作られた高い完成度を誇る車」だからこそ「現時点でのEVの限界」を感じずにはいられませんでした。

走行距離は、多くの指摘がある通りで、EVに関してはバッテリの能力に起因するものです。僕は何度も繰り返しますが、日産のエンジニアの方々は現時点では出来る限りの努力をされたと感じています、ですがバッテリに関してはクルマ作りの努力によってなんとかなるものではありません。(あと、これは代表も何度か書いていることですが、値段が安くなれば多く積むことによって走行距離を伸ばせるという意見を見ることがありますが、多く積むと重量が重くなり電気を移動エネルギーに変換する効率が急激に悪化し、今でも重いクルマとなっているのにこれ以上となると実用に耐えないレベルになる可能性が高くなります。大型車が電気自動車となる可能性が極めて薄いことと考えれば、そう簡単な話ではないのは容易に想像がつくはずです。)
バッテリに関しては、景気のいい報道だけは多いものの、確実で明るい未来はまだ見えていない領域です。個人的には自動車用の駆動電池に関しては次の本命(何かは解りません)が量産体制を整えるのが10年後、それも決して急激な能力向上をもたらすものではなく、そのために不断の努力を続けていってゆっくりと能力を向上させるものだと思っています。

僕はLEAFを「遥かに」凌駕するEVが近い将来現れる可能性はゼロだと思います。それだけLEAFは出来の良いEVで、日本の自動車産業がEVというものに出した現時点では最高の回答でしょう。ですが、LEAFには申し訳ないのですが、良いクルマを作ったからこそ、皮肉にもLEAFはEVの「期待感のバブル」を弾けさせた一針になったように感じられてなりません。

EVの限界

これは僕だけの感想ではないと思います。実際に、LEAFの販売は低迷していますし、僕が乗ったレンタカーも年初に導入されているにもかかわらず、走行距離は僅か「1300km」だけでした。またグローバルに見ても、イギリスの運輸省が先月発表した今年度のインフラ計画で、EVを重視した「公共急速充電器」の全国配備という以前の計画を軌道修正して、PHVやコミューター等を重視する家庭や職場などでの充電設備配備を主眼に置くという内容を発表しました。
自動車の環境負荷を下げるためには、環境性能の優れた自動車を多く販売し、既存のクルマを置き換えていかねばなりません。残念ですが、LEAFの販売が上向くのはありえないことでしょう。LEAFの足元にも及んでいない電気自動車は、なおさら、一般消費者にまともに販売される機会はほとんどないでしょう。そんなことを考えたLEAF試乗でした。

最後にくどいようですが、お金に余裕があって「20~30km」以上ドライブするのは絶対に無いという方には、LEAFは本当にオススメなクルマです。一度、乗って体験するのをオススメします。もちろん、自分である程度の距離(電池を使いきって充電するくらい)と時間をかけてですが。