フランス・ストラスブールから
クレベールプロジェクト、ユーザーミーティング
今週の日曜日の深夜に羽田を発ち、今回はパリからのTGVを使わずに、シャルルドゴール空港からの乗り継ぎでストラスブールに来ています。目的は、このHPかブログでご紹介したストラスブールでフランス政府やストラスブール市の後援で実施している、プラグインプリウスによる自動車電動化のマーケットトライアルプロジェクト、通称クレベールプロジェクト(KLEBER)に参加いただいているユーザの方々とのレビューミーティングと懇親会への出席です。
クレベールというのは、ナポレオン戦争時代の有名な将軍の名前です。彼はストラスブールを中心とする地域・アルザス地方の出身で、ストラスブール旧市内の中心部にある広場がクレベール広場と名付けられているほどこの地方出身の英雄として記憶されている人物で、このプロジェクトにもストラスブールで実施することからフランス電力公社(EDF)スタッフの提案でこの名前がつけられました。
このクレベールプロジェクトは、環境に優しい街づくりとそれを支える新しい交通ネットワークを築いていこうという、ストラスブール市の方針と、それを強力に推進しようとする現在のリース市長のサポートにより、フランス政府の支援も得られ、この地ストラスブールで昨年4月にスタートし、1年が経過しました。その1周年として企画されたイベントで、リース市長、トヨタとEDFの代表者による地元メディアへの報告会につづき、ユーザーミーティング、懇談会開かれました。
その1年間の活動状況と実際にプラグインプリウスをお使いいただいたなかで得られたデータをトヨタとフランス電力公社で分析し、それぞれその分析結果の報告がありました。昨年4月から順次このプロジェクトに応募いただいたお客様にプラグインプリウスを配車し、現在では約80台のクルマがこのストラスブール周辺で使われており、これまでに延べ走行距離は約60万kmを記録、年間走行距離換算で平均19000kmとフランスの自家用車平均走行距離を超える走行距離でユーザの実際の用途に使われています。
ここでは、詳しい報告結果はご紹介できませんが、この平均として年間19000kmも使われていること、これこそがこれまでのクルマの代替として同じように使ってもらっているとの証と考えられます。平均燃費値としては、4.33L/100km(23.1km/l)、アンケート結果からは70%以上のかたから好評価をいただいていますが、電池充電をあまり実施していないクルマがあるなど、PHVの狙い通りの燃費がでていないユーザもおられました。
ユーザの苦情点も充電関係に集中しており、先週のブログでも紹介したように、充電ケーブルが重く、扱い憎いとの苦情で、欧米のように屋外駐車があたりまえの状況では充電ポイントからクルマまでケーブルを引っぱりだすときに、汚れたケーブルで服まで汚れてしまうといった苦情も聞かされました。自宅でも充電できることは好評ですが、これまでやらなかった充電作業を毎日1回以上と高頻度で行う代物ではないとのご意見です。これは、プラグインプリウスに限ったことではなく、充電型自動車全体の充電系にいえることで、最近話題になる非接触まではいかなくとも、もっと軽く、使い勝手が良く、暗いところでも簡単に接続できる充電系にする必要があります。
日当りの充電回数の平均は0.9回、2回近いかたもおられますが、少ない方では週に1回以下とのかたもおられました。日当り1回充電では、一日の走行距離のうちでEV走行としてカバーできる比率は大きくなく、もう少しEV走行距離を延ばして欲しいところです。いくつかのユーザに対しては、自宅とオフィス駐車場の2ヶ所に充電ポイントを設置しましたが、通勤使用で日当り2回の充電が行えるとEV走行カバー率が増加、燃費削減効果も大きくなるとの結果でした。
市のスタッフの声でも、会社のリースカーとして、メンバーを募りガソリン代会社持ちのような使い方では、面倒と思う充電は行わず、通常のハイブリッド車として使う例が多かったとの話を聞きました。このような例も多かったようですが、ある面、充電をしなくても普通に使えるクルマとの狙い通りとも言えます。
今回のプラグインプリウスでは、通常プリウスが採用しているような EVボタンは採用しておらず、フル充電からスタートすると電池を使い切るまで100km/h以上の高速走行や急加速などでエンジン運転が行われない限りEV走行のままになってしまいます。これに対し、ドラバーみずからがEV走行を選べるようにEV セレクトボタンの採用を強く要望されました。これは私も同意見です。従来プリウスでもEVボタンはトヨタハイブリッドの特徴として実用性はともかく好評です。PHVでは、市内や住宅地の中はEV走行したいなど、ドライバーセレクトの実用性は高いと思います。採用できなかった、何らかの理由があったのでしょうが、次は是非、この機能を採用してもらいたいと思います。
今ユーロ安もあり、フランスのガソリン大も日本以上に高騰しています。リーッター1.5ユーロ弱、円高もあり円換算するとそれほど高く感じませんが、史上最高値に近づいています。今回のプロジェクトの一部にあった、リース代、燃料代を会社や団体が負担し、グループメンバーが無料で使うケースでは、ガソリン削減を意識しない使い方もありましたが、個人の財布から燃料代を負担するケースでは、日本よりもさらに安い電気代で電池を充電し、ガソリン消費を減らすこのPHVを受け入れる余地は大きいように感じ、販価しだいだが実用的で現実的なクルマとの生の声をお聞きしたのも収穫でした。
EV走行距離をもう少し長くして欲しいとの声も聞かされましたが、無理矢理重く、かさばる電池を搭載するのではなく、電池の進化、使い方の工夫、クルマの効率向上でその要望に答えて欲しいものです。
この出張の機会に、市内を走っているトラムにのり、郊外のパーク&ライドや自転車など新交通システム整備への取り組みを見て回ってきました。
前にも紹介しましたが、近郊都市圏含め人口40万程度の中規模な都市としてはトラム網が整備されています。最近も新線が開通し、6路線、その郊外ターミナルには多くのパーク&ライド駐車場が整備されています。写真の路線図にあるP+Rがパーク&ライド駐車場のあるターミナル駅です。
パーク&ライドの使用料は、一日利用でトラム一日チケットとセットで3.2ユーロ、ひと月の利用料としてトラム/バス定期券あわせ50ユーロとかなりお得な設定になっています。ちなみに、通常のトラムチケットは2.7ユーロ、一日利用券が4ユーロです。この運営には、国や地方自治体からかなりの補助金が投入されているようです。
このような新交通システムの整備を行い、クルマの市街地への乗り入れを抑制しながら、クルマとの共存をはかっていこうというのが、ストラスブール市の方針で、この面からもプラグインハイブリッド実証プロジェクトに対し、積極的なサポートをいただいています。
今のご時世、あまり強調はできませんが、原発75%、水力と会わせると95%が低カーボン電力である、さらに原発により発電余力があるため安い夜間電力を使い、経済性とともに低カーボン効果の大きいことも、フランスでの実証テストの狙いの一つです。原発大国フランスだけに、福島原発事故の行方には大きな注目を寄せていることを今回もひしひしと感じさせられました。