気候変動対応に積極姿勢を見せる中国と米国:あせる(?)欧州
エネルギー大国、言い換えれば、温室効果ガス排出量が最も多い1位、2位の中国、米国の動きが今年の注目点だ。米国は、トランプ政権では、この動きとは正反対の既存の石炭、石油・ガス産業を重視する政策が取られてきたため、気候変動のイニシアティブを放棄した形になっていた。
そのためエネルギービジネスでは世界のリーダとしての力を失った欧州が、気候変動では何とか挽回したい、との意気込みもあり世界をリードする活動を進めている。
昨年末になって中国の習主席が2060年実質排出量ゼロを宣言した事で、この気候変動に関する政治的な動きに今年は大きな転換点が来る可能性が生じてきた。米国もバイデン大統領となってこの分野に力を入れ始めたことが、欧州が必死の努力で作って来た実質ゼロ(net-zero)の国際的な流れを中国、米国が追随し、後押しをするとの楽観的な見方が主流だ。しかし、中国は気候変動そのものより、リニューアブル、電気自動車ビジネスを重視、バイデン政権も、理想に走るより、実質的な面を重視する姿勢も見えている。
欧州環境派の“既存エネルギー業界をぶっ壊して気候変動に対応可能な世界を作る”、との流れが、経済超大国である両国に飲み込まれてしまう可能性もあり、世界基準をリードして優位性を保つ事に必死な欧州の影響力が吹き飛んでしまう可能性もある。
昨年12月には、日本の経済界も「日本が排出量削減について世界をリードする立場になる必要があり、さもなければ、欧州主導で設定される基準が世界で主導権を握ってしまう」との懸念も表明している。菅首相や環境省の小泉大臣は欧州の影響が強いように見えるが、日本政府は欧州主導ではなく、バイデン政権寄りの方向で進む可能性も高いのではないか。
ただ、バイデン氏自身は、民主党内でも比較的保守的な考え方を持っているものの、副大統領とも微妙に立場が異なり、党内にはグリーンニューディールを掲げている環境急進、過激派の民主党議員もいる。米国内が大きく分裂している今、“すべての人々の意見を聞く”、ともバイデン大統領は言っているが、大統領選や連邦議会の選挙結果も僅差で、共和党だけでなく、民主党内でも気候変動対応について大きな意見の違いが表面化しており、どこに落ち着くのかは極めて不明確な状況だ。今年の注目点だろう。