次世代自動車、2012年備忘録

明けましておめでとうございます。
いつもCordia Blogをお読み頂き有難うございます。
2013年が皆さまにとってよりよき年となることを祈っております。

さて、普段このブログを書いています代表・八重樫武久には正月休みを頂いて、今回は八重樫尚史が代筆させて頂きます。今回は自動車全体の2012年の個人的なまとめを書いていこうかと思います。

2012年はプラグイン車にとって「2年目のジンクス」?

2012年はまずはプラグイン車としては、プリウスPHVの一般販売が開始され、北米でもフォードからPHEV・C-Max(Fusion) Energi、バッテリーEVとしてはフィットEV、テスラ・モデルS等が発売された年でした。その前年の2011年が実質的に「プラグイン車元年」だとすると、「プラグイン車飛躍の年」とその前には期待されていた年です。

そしてそれらのクルマは世界の道を走り始めましたが、残念ながらそのスタートダッシュは鋭いものではありませんでした。それにはインフラ等を含めた様々な要因があるかと思いますが、あくまで数字的結果だけを言えば、年間販売目標を超えたモデルは殆ど無い状況です。スポーツには華々しい活躍をした新人が2年目には苦戦するという「2年目のジンクス」という言葉がありますが、そうした言葉ですっきりとまとめて忘れ去りたくなるような年です。

ただし産業・技術の世界は、もちろんスポーツとは違いますので、2012年についてしっかりと検証して、今後の普及に向けての糧とすることができなければ、今後のプラグイン車の未来を切り開くことは難しくなるでしょう。

様々なクルマが登場した2012年

一方で2012年はプラグイン車以外の、自動車の次世代技術が多く登場・紹介された年でもありました。マツダはSky Activeで日本のディーゼル乗用車市場を切り拓きはじめ、これを搭載したCX-5はみごと日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。また、以前より欧州勢を中心として取り組まれてきた燃費向上の為の小型化エンジン+過給器のシステムは更にバリエーションを増やし、日本でも日産がCVTとこれを組み合わせたノートを発売し、こちらはRJCカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

欧州では近年の欧州市場でトップを支配し続けているVWゴルフがフルモデルチェンジを行い、上記のシステムの熟成と大幅な軽量化によって、現状の王座つまり今のスタンダードカーとして評価を続けていくとみられています。

一方の日本勢では、日本市場は販売台数でトヨタのプリウスとアクアが独走している状態で、アメリカでもプリウスが記録的な年間販売台数を達成しました。ホンダも秋にハイブリッド3種を取り揃える意欲的な技術発表会を行い、これからの巻き返しに期待が持たれています。

軽自動車分野でも、ホンダがN-BoxとN-Oneを投入し大きくシェアを拡大して、大激戦の様相となっています。こんな中でスズキがアイドリングストップから一歩踏み出したene-chargeを搭載したワゴンRを発売し、ダイハツも既存のガソリン車の燃費を向上させ更に軽自動車に衝突回避支援機能を搭載するなど、活気のある争いを繰り広げています。

衝突回避支援機能のパイオニアであるスバルは、トヨタと共同開発して作ったスポーツカー86/BRZが注目を集めたのに加え、一年を通じて好調な販売を維持し、東証の主要銘柄のうち株価上昇率で一位を取るほどの一年でした。また、VWが販売した小型車UP!も、いままでのドイツ車からすると驚くような値段で日本でも発売開始され、こちらもその価格で衝突回避支援機能を搭載していることが注目を集めました。

自動車用リチウム・イオンバブルの崩壊

上の章タイトルは、今年秋に見かけた自動車コンサルタント会社の北米支部が出したレポートのタイトルです。2012年は自動車用バッテリー、特に駆動用リチウム・イオンバッテリーを製造している会社にとって極めて厳しい一年となりました。

プラグイン車のスタートのつまづきは、まるで高速道路で先頭のクルマの軽いブレーキが後ろでは大きな渋滞を作ってしまうかのように、そのままこれらの会社の業績に直結し、特に北米のベンチャーはEner1からA123まで軒並み破産申請をして倒産するという事態となりました。またベンチャー以外の企業も業績が厳しく、資金余裕のある会社が他社の電池部門を買収・吸収するというニュースが多く飛び交いました。

これは、自分たちの手で出口の商品(クルマ)を開発できず、普及予測や販売・生産予測をベースにせざるを得ないながらも事前に多大な投資を必要とするという、自動車駆動用電池の産業の難しさを実感させるものでした。

また、なかなか成果を出せないこうした企業に対して眼が厳しくなり、アメリカ政府の投資が急速に絞られたことや、シェール・オイル、シェール・ガスといった新エネルギーの期待が膨らんだことなどが重なった末の「リチウム・イオンバブルの崩壊」でした。ただし、まさに「バブル」というのが象徴しているように、「期待」だけによってパンパンに膨らんでいたのも事実で、厳しい目で言うと単に実態が伴っていなかったからに過ぎないということもできます。

2012年は振り返ると、これ以外にも中国での暴動による影響や、新興国市場に地歩を築こうとする各社の鬩ぎ合いなどもあり、自動車業界にとって刺激的な年だったのではないでしょうか?この2012年を受けた2013年は、おそらく次への一歩を見通す為の一年になりそうです。