プラグインハイブリッド時代の到来か?

ホンダのプラグイン・ハイブリッド

昨年11月、2010ロサンゼルスモーターショー開幕を前に、ホンダアメリカはプラグインハイブリッドの技術モデルを公開し、2010年内に日米における実証試験の開始、2012年の発売をめざすと発表しました。

とはいえ、この段階ではエンジンおよび発電機とモータが入っているハイブリッドトランスミッションとそのパワーコントロールを行うインバータなどハイブリッド・パワートレーン部のモックアップの展示をしたのみで、どのようなハイブリッドを使っているのか、その時公表された資料を読んでも詳細は不明なままでした。

その後12月に、正式に日本と米国で実証試験の開始を発表し、日本では12月20日に、このプラグインハイブリッド車や、これも昨年2012年の発売目標を公表しているフィット電気自動車、さらには電動スクーターや電動シニアカーなどを用いて、埼玉県と共同で次世代モビリティの実証試験の実施することを発表しました。

このプラグインハイブリッド車は既に白ナンバーを取得し、公道を走れる状態の試作車で、現地ではハイブリッドシステムの説明とデモ走行を実施したとの記事が流れていました。

フィットハイブリッド発売に続く、プラグインハイブリッドの発表と、ホンダのハイブリッドに対する本気度を感じ、現役時代には良きライバルとして常に意識しながらエンジン、そしてハイブリッドと開発してきたエンジニアとして久しぶりにエキサイトし、嬉しくなりました。

その内部機構に関しては、まだ不明な部分も多いのですが、伝え聞く限りにおいてはトヨタのTHSやGMのVoltなどとは違う独自方式のプラグインハイブリッドに仕上がっているようです。
燃費効率を高めるため、プリウスと同タイプのアトキンソンサイクルエンジンを採用したことは予想通りとして、プリウスより大きい中型乗用車クラスにGM Chevrolet VOLTよりは遙かに小さい6kWhの電池を搭載し、高速走行ではエンジン直結のパラレルパスを持つシリーズとパラレルを切り替える方式をとっているようです。

比較的小さく、コンパクトな電池を賢く使うコンセプトはプラグインプリウスと同じ、またアトキンソンサイクルエンジンを採用し、エンジン運転時の燃費効率を高めるとの考え方には、クルマとしての実用性を重視した考えかたとして、PHVに対するホンダの本気度を感じて心強く思いました。

最大航続走行距離というものさし。

ホンダから発表されたNews Releaseでの主要諸元表記では、最大航続走行距離の表現にもまた本気モードを感じました。2009年12月に発表した、トヨタプラグイン・プリウスのNews Releaseでは、このクルマの基本商品機能として重要な最大航続走行距離の表記はなく、電池の充電電力を使ったEV走行距離だけを表示していました。

公表内容に対し、関連官庁からのご指導があったかどうかは定かではありませんが、クルマの商品機能として電気自動車の一充電航続距離に対応する指標はプラグインでは、エンジンのハイブリッド運転も含めた最大航続走行距離が比較対象ではないでしょうか?

昨年、わたしが「ハイブリッド自動車プリウスの開発とサステーナブル自動車のゆくえ」との題目でおこなった講演でも、プラグインハイブリッド車の特徴として図に示すスライドを使い、電池の充電電力を使い切ったあとでもハイブリッド車として普通に低燃費に使えますと説明をしています。また、普及への課題として、電池寿命、信頼性、安全性に加え、コスト、重量、搭載スペースを上げています。

プラグインハイブリッドの特徴

プラグインハイブリッドの特徴

そのためにも出来るだけ少ない容量の電池を搭載して、それとハイブリッドの特徴である高効率クリーンエンジンを賢く使い、お客様、販売店、自動車メーカー、部品・材料メーカー全てのWin-Win関係が成立するコスト/商品力を目指してこそ、石油資源消費を抑え、低カーボン社会実現にむかう早道と信じています。

GM Chevrolet VOLT、トヨタプラグインプリウス、ホンダプラグインハイブリッドなどプラグインハイブリッドを取り上げたNewsやWebでのブログで、シリーズ型のハイブリッドシステムが簡素で低コスト、トヨタ方式はシステムが複雑で高コストなどの解説が見受けられますが、それは誤解です。電池の充電電力を使うプラグインハイブリッドでは、エンジンを停止してモータだけで走行するEV走行機能が必要です。
さらに充電電力を使い切り電池がカラになったときにはエンジン発電によりエンジン動力を電気に変換して走行していますので、シリーズであろうが、プリウスやVOLTのようなシリーズ・パラレルであろうが、モータ発電機(一つでどちらの働きもするタイプを使っており、英文表記ではMG モーター・ジェネレーターと読んでいます)を2個使うことが前提です。
この2個のモーター・ジェネレーターを制御するパワー素子を使ったパワーコントロールユニットと、プラグインハイブリッド用の電池が基本構成で、これもどのプラグイン方式でも変わりはありません。コストポテンシャルもこの基本構成でほぼ決まります。あとは、燃費、環境性能、信頼性、クルマとしての走行性能、や静かさ、ドライバビリティやルームスペースやラゲージスペースといった商品性能、その上でリーズナブルな販価を実現するためのコストの勝負です。

この商品力を競い合ってこそ技術が進化し、マーケットが加速していきます。日本勢どうしの激烈なクルマとしての商品力競争と、ユーザや社会にメリットをもたらすコスト、品質、信頼性競争をやって欲しいと思います。いまも、ハイブリッド技術は世界をリードしています。リードし続けるためには、厳しい競争を続け、先頭を譲らず走り続けるしかありません。日本勢負けるな!

その上で、協調も必要、小容量電池を使ったプラグインハイブリッドでは、自宅やオフィスでの従来低パワー電力での深夜充電が主、またオフィス、ショッピングでの追加充電も従来コンセントからの低パワー充電でも短時間で済ませることができます。また、電池がからになればエンジン走行ができますから、公共充電インフラ、ましてや急速充電設備はそれほど必要はありません。それでも、充電コンセント、カプラー、ケーブルは重く、ごつく、使い勝手も悪い上に高コストです。安全で、軽く、使い勝手が良い充電ケーブル、コンセント、カプラーを、さらに安くしていくことが、その普及の後押しとなります。
この低パワー充電系の次期型こそ、協調して優先的に開発に取り組むべきテーマ、これこそお客様目線、マーケット目線で取り組み、早く良い提案が纏められて、それができた先に世界標準への路があるように思います。