『次世代自動車』とは何かを改めて考える

今回は代表の武久に代わり、尚史が書かせていただきます。登板は二度目になりますね。
僕は技術者ではないので、あくまでも技術的素人としてその立場から将来の自動車、ひいてはモビリティについて書いていければと考えています。

さて、今回は『次世代自動車』という『言葉』について、ちょっと纏めてみます。父が中心に書いているこのブログでは、技術者らしくというか『次世代自動車』というと明確な自動車の種別としてその動力源によって分別されたHV/PHVやEV、現時点では影が薄くなってはいますがFCEV(燃料自動車)などが指し示されます。報道等においても基本的には、次世代自動車というとこのような自動車が表すことが多いですし、このブログを読んでいただいている方でこの言い回しに戸惑う方は少ないかと思います。

ですが『次世代自動車』という言葉の射程を考えると、その言葉が指し示すものは僕個人は上記のような技術的な分類によるものだけではないと考えています。というのも、単純な話ですが『次世代自動車』にとって『次世代動力源』ということはその一部でしかない筈だからです。『次世代自動車』が指し示すものは、その発言者の立場やスタンスによって異なり、そのギャップが(意図的にかもしれませんが)埋める努力のなされぬまま、様々な事象が進行しているように僕には感じれられます。今回はこの『ギャップ』についての僕のちょっとした頭のお遊びに、少しお付き合いしていただければ幸いです。

『次世代自動車』が指し示すものの具体例

言葉を正式に定義するという作業は非常に難しいものですが、簡易的に『次世代自動車』の言葉が指し示すものを次の通りの4種に分類してみました。

(1)自動車技術的に見た場合の『次世代自動車』
(2)自動車産業・経営的に見た『次世代自動車』
(3)環境・政治的に見た『次世代自動車』
(4)ユーザーサイドから見た『次世代自動車』

では、それぞれを具体的に考えていきましょう。勿論、それぞれは互いに重なりあい結びついているものです、ここではあえて極端に視点を移して、それぞれを分解して行きたいと思います。そうすることによって先程言った『次世代自動車』の言葉のギャップがより明確に浮かび上がるのではないかと思います。

(1)自動車技術的に見た場合の『次世代自動車』

これは上述した通りで、自動車の技術発展史から導きだされる次世代自動車です。これに関しては日頃、代表の書くのブログで触れていますのでここではこれ以上触れる必要はないかと思います。ただ、あえて書くとすれば、より効率的で便利かつ安全な自動車を求めることは、技術者にとって永遠の目標であり続けるということです。つまり、次世代車ですべてが解決するものなどではなく、次々世代、次々々世代と永遠に繰り返される技術革新の一つでしかないということです。

(2)自動車産業・経営的に見た『次世代自動車』

近年のアメリカビッグ3の凋落に代表されるように、自動車産業が産業界の王に自動的に君臨した20世紀は終わり、自動車産業もしくは個々自動車メーカーの経営が新しいやり方に変わるもしくは変えざるをえなくなる時代が迫ってきている事は、この産業に少なくとも関わるものの共通認識となっています。ここで語られる『次世代自動車』とは、次世代も自動車産業がその地位を守るための「キラーコンテンツ」となる『自動車』もしくは『自動車システム』となります。
アメリカ政府が国庫を利用してGMを救済したように、いまの世界経済は産業の王が急激なモーダルシフトを迎えることを求めてはいませんし、実際にそれが起きたときのリスクを考えると、その判断は妥当と言える可能性が高いものと僕は考えています。
日本においても、昨年来のエコカー減税等によって国内販売の支援等が行われているものの、長期的にみれば自動車販売台数は減少を続けており、少子化や都市への人口集中などによってそのトレンドは容易に変わることがないものだと思います。そこから考えると日本でも「キラーコンテンツ」としての『次世代自動車』が産業界に求められているというのは間違いないことでしょう。

(3)環境・政治的に見た『次世代自動車』

一般の方々の認識はどちらかというとこれに近いのかもしれません。いわゆる『エコカー=次世代自動車』という考えですね。ただ、もう少し視点を広げてみると、単に地球に優しいという側面以外での『次世代自動車』の像が浮かび上がっていきます。例えば、ピークオイルの問題は世界が一緒に考えていかなくてはならない問題であるのと同時に、石油という地政学的には決して平等とはいえない分布をしている資源に依存するという、経済的にも安全保障的にも良くない状態を解決する努力をするという、特に資源に恵まれていない日本のような国にとっては非常に重要な問題です。
また地球温暖化を含む環境問題についても、複雑な要素が絡み合った問題です。CO2の排出量を減らさなければならないというのは、もはや常識というか世界のスタンダードとなっていますが、題目や綺麗な部分だけを見て、政治的な面も含めての環境問題であるという点を見落としてはいけないと僕は思います。誤解を生む表現ではありますが、地球温暖化をたてに、新興国にCO2の排出を伴わない経済成長を求める手法は非常に巧妙な手法とも言うことができます。
ここで『次世代自動車』を考えても、様々な問題を伴いながらも勃興してくる新興国の自動車産業にとって、これより必須とされる『次世代自動車』は大きな障壁となることでしょう。

(4)ユーザーサイドから見た『次世代自動車』

最後に実際に自動車を購入し利用するユーザーサイドからの『次世代自動車』について考えてみます。僕はこの視点が、ほとんどの関係者はユーザーでもあるので一番わかり易く見えるようで、実は最も『ギャップ』があるのではないかと考えている部分です。
ここで根本的な疑問を投げかけてみます。
「僕らが自動車に求めるものはなんでしょうか?」
(1)で挙げたような安全で効率的なクルマであることに加えて、消費者としては安価かつ使いやすいクルマであって欲しいと考えるのは当然だと僕は考えるのですが、いかかがでしょう?これは(2)でも書いたことに重なりますが、日本の若者特に都市部の若者が『クルマ離れ』しているのは、正しい『次世代自動車』が現れていないからではないでしょうか。

前回、途中となっていますが、父がパリ・モーターショーで見た、次世代車が一般客に何も訴えかけていないのではないかという疑念は、この『次世代自動車』に求められる(4)の側面について自動車産業・各国政府・関係各者があまりにも軽視しているから起こったことではないかと僕には思えます。

本当に求められている『次世代自動車』がなにか、少し考えていただけると様々な情報をより多面的に見ることができると思います。それは難しいことではありません(4)のユーザーとして、地に足がついた意見を持つだけで、色々な見方をできるのではないでしょうか?