次世代車解説 プラグインハイブリッド車(PHV) 第2回

前回はハイブリッド車のざっくりとした歴史を紹介したところで終わってしまいました。今回は、ハイブリッドの機構を簡単にご説明します。プラグインの話だというのにハイブリッドの話が続きますが、これをしっかりと踏まえないと、「プラグイン」という事が何を意味しているかが曖昧になり、EV等も含めた次世代自動車技術を見極める目が霞んでしまうと思いますのでお付き合いください。

ハイブリッドの分類

歴史に触れる中でも一部紹介しましたが、ひとくちにハイブリッドといっても様々なアプローチによるシステムが開発されています。そもそもハイブリッド車というものの定義も、複数のエネルギーを利用して動く車というものですから、エネルギーの発生のさせ方によって無数の種類がありますし、現在乗用車用として実用化されているガソリン・電気のハイブリッドに中でもその動力の合わせ方によって大きく分けて3つのハイブリッドシステムがあります。

ハイブリッドシステムの種類

上の図にある3つが、現在実用化されているハイブリッドです。

シリーズハイブリッド

それぞれを簡単に説明しますと、一番左のシリーズハイブリッドというのは、エンジンで生んだ動力がすべて発電機を通して電気に変換され、充電池を電力の調整に使用して、車の駆動はすべて電気モーターで行うものです。前回私がハイブリッド車の歴史の中で書いた、過去の多くのハイブリッド構想の多くはこのようなものでした。なお北米での販売が間近に迫っている、GMのChevrolet Voltはこのタイプのハイブリッドで、電気自動車の拡張としてのアプローチから生まれたものです。実際にGMもVoltをハイブリッドとは呼ばすにEnlarged Range Electric Vehicle(EREV)つまり走行距離拡張版電気自動車と呼称して、電気自動車の1ジャンルであると説明しています。

また、電気自動車からのアプローチですので、古い時代からシリーズハイブリッドはプラグインであることを前提に開発されてきました。

パラレルハイブリッド

次のパラレルハイブリッドは、シリーズハイブリッドとは逆に従来のエンジンからアプローチしたハイブリッドです。このタイプのハイブリッドは、従来のクルマと同じく基本的にはエンジンの動力がトランスミッションを介してタイヤに機械の動力として伝えられ、それに並列に電気モーターによる駆動が付加されたものとなります。一般販売されたものですと、本田技研のインサイト等に搭載されているHonda Integrated Motor Assist System(IMA)やベンツのSクラスに搭載されているブルーハイブリッドなどがあります。

パラレルハイブリッドは小型でコストが安く済むことが長所であると言われることが多いのですが、エンジンの駆動をダイレクトに利用しますので、従来のクルマとの違和感が少ないなどの長所もあります。

シリーズ・パラレルハイブリッド

最後が私が開発に携わったプリウス等に搭載されているトヨタのTHSを代表とするシリーズ・パラレルハイブリッドです。トヨタの他にはFordのEscape等に搭載されているハイブリッドがこのタイプに分類されます。シリーズタイプのようにエンジンの動力を電力に替える発電機と車を駆動する電気モーターをそれぞれ持ちながら、エンジン動力の一部をクルマの駆動にも使用する上記2つの特性を合わせたタイプとなります。

充電状態やクルマの速度などにあわせて、エンジンを発電機として充電しながら電気自動車として走る、エンジンとモーターをどちらも利用して加速するなど最適なモードをクルマが判断してモードを切り替えて利用できるのが特徴です。

さて、ではプラグインでこれらのハイブリッドがどう変わるのでしょうか?プラグインハイブリッドとは「外部から充電できる」ハイブリッドです。なお、電気自動車についても一部の記事などで「プラグインタイプ」の電気自動車という表現が散見されることがありますが、これは技術的に見ればおかしな表現で、水素燃料電池等の電気を発生させる機構をクルマに積んでいない充電池のみで走る電気自動車(専門的にはバッテリー駆動の電気自動車を意味するBattery Electric Vehicleの頭文字を取ってBEVと呼びます)は、自分で電気を生むことがないので「プラグイン」して外部から電力を貯めなければ動くことはありません。つまりいま電気自動車と呼ばれているクルマは原則「プラグイン」ですし、同じく上にも書きましたがそれの派生形という出自を持つシリーズハイブリッドも基本的に「プラグイン」を前提としたクルマです。

今回はここまで。

次回はプラグインも含めたハイブリッドの今後の可能性、そして私の思いなどを書きたいと思います。