GM再建にまつわるGMとの思い出

米政府のGM株売却で再建に一区切り

12月9日に米政府は、リーマンショック後に経営破綻したGMを救済する為の政府資金投入の担保として取得した株式を、その再建が軌道に乗ったため全て売却したと発表しました。

しかしながら株式売却をしても、再生GMの株価低迷のため回収できなかった政府資金は1兆円となるとの報道も紙面を彩っていました。一方でミシガン州のNPO自動車研究センターは同日、このGM救済などの自動車産業救済により、大規模な連鎖倒産を防ぎ263万人もの雇用維持ができ、この所得税税収を考慮にいれるとこの損失分を大きく上回る効果をあげ、米国経済史上最も効果の高かった政府介入だったとのレポートを発表しています。
http://www.cargroup.org/?module=Publications&event=View&pubID=102

確かに、当時GMやクライスラーが消滅したとすると、このレポートにあるように、裾野の広い自動車産業としてはその影響は図り知れず、米国だけではなく世界の経済にもっと深刻な影響を及ぼした可能性は高いように感じます。

またこのタイミングで発表されたメアリー・バーラ氏のCEO就任も、自動車会社大手としては世界初の女性CEO誕生として話題になっています。彼女は生え抜きのGMプロパーで、GM中堅幹部には多い社内の技術者養成学校GM Instituteの出身、電気工学専攻のエンジニアがキャリアの出発点だったようです。

その後GM内でキャリアを重ね、スタンフォード大でMBAを取得、CEO就任前はグローバル本社の人事担当上級副社長として再生GMトップのアカーソンCEOの片腕として組織改革に腕を振るったようです。この女性GMが再生なったGMをどのような方向に導いていくのか、その中でも私がライフワークとして注目する『次世代自動車』への変革をどのように進めていくのか非常に注目しています。

ビッグ3が牽引したクリーン自動車技術

私の自動車エンジニア人生を通して、今では死語になりかかっていますが米国ビッグ3の動きには注目を払ってきました。入社してほどなく、通称マスキー法、米国の大気浄化法対応の排ガス対策プロジェクト担当になり、自動車の排ガス処理として排気ガス浄化触媒を使いこなすことが与えられた私のテーマでした。

この時からビッグ3、そのなかでもGM、Fordのアプローチが我々のお手本でした。この排ガス対策からエンジン電子制御が導入されるようになり、今では現代の自動車には欠かせないマイクロコンピュータ制御もまたGM、Fordが先鞭を切っています。1975年当時、燃料噴射エンジンの研究開発担当の新米係長だった私はGM、Fordのエンジンデジタル制御開発中との新聞記事を見かけ、スタッフたちにこれを紹介し、その可能性を議論したことがマイコン制御に手を染めるスタートでした。

秋葉原にマイコンキットを買いに出張してもらい、そのマイコンキットの勉強会を開き、そこから自作で燃料噴射と点火時期制御用コンピューターを作りクルマを走らせたのがトヨタとしてのエンジンマイコン制御の始まりです。その後、日本勢は排ガス対策にもまた低燃費や出力向上にもメリットがある燃料噴射エンジンとその制御系のデジタル化(マイコン化)を急速に進めました。

一方ビッグ3は当初のコスト高を嫌って従来型の燃料供給装置であったキャブレターにこだわり、また燃料噴射も日本勢のシリンダー毎に噴射弁を設ける気筒噴射方式に対し、キャブの替わりに一本の噴射弁で燃料を供給するシングルポイント方式に主力を置く時期が続きました。これが、技術面としては日本勢がビッグ3をキャッチアップした切掛けになったように思います。一気筒4バルブエンジン、過給エンジンなど出力競争もまたこの噴射エンジンとマイコン化が支えました。

とはいえ、1990年代に入ってもビッグ3、特にGM、Fordはわれわれから見ると強大で、世界の自動車をリードする盟主でした。1980年代後半から強まった米国カリフォルニア州の排ガス規制強化の動きに対しても、その背景、規制動向、試験法などの技術面の動きは米国自動車技術会活動などを通し知り合ったGM、Fordのスタッフとの意見交換が絶好の情報収集機会でした。さらに、その委員会活動を通じて、試験法づくりのデータ収集や共同実験、さらには規制当局への提案書づくりなどルールメーキング活動へも積極的に参加するようになりました。

もちろん、この活動をリードしたのはビッグ3のスタッフたちでした。私は、低エミッション車開発リーダーとして、日本でこのビッグ3との交流、ルールメーキング活動を支援、年に何回かは情報交換とルールメーキング活動の相談のため米国に出張し、GM、Ford本社に担当スタッフを訪ねたものです。ハイブリッド開発担当になってからも、この繋がりは続き、新聞でも報道されたGMやFordとのハイブリッドや水素燃料電池自動車技術アライアンスの協議にも加わったこともあり、その交流は続きました。今日はその交流の経験から、ビッグ3、その中でもGMとのエピソードの一部をご紹介したいと思います。

自動車界の中心だったGM本社

私が最初にGM本社を訪ねたのは、確か1991年だったと思います。その前年に、カリフォルニア州からそれまでのマスキー規制よりはるかに厳しい低エミッション車規制、LEV(Low Emission Vehicle:低エミッション車)と触媒や排気ガスセンサーなど、排気浄化装置の故障を車載の制御用コンピューターで診断し故障時にはアラームを点灯する車載故障診断システム規制強化(OBD:On Board Diagnosis)が決まり、その規制方法、試験法についての意見交換を行うためでした。

当時のGM本社は、デトロイトのダウンタウンにあり、1980年代のベストセラー『晴れた日にはGMが見える』で表現された14階建ての同じ格好のビル4棟で構成されていました。日本勢の現地生産拡大の影響もあり、デトロイト地区の乗用車工場が閉鎖に追い込まれ、またダウンタウン地区からホワイトカラー従業員が郊外に脱出、今のデトロイト市の破綻に結びつく治安悪化が進行していた時期です。綺麗なのはGM本社の一角だけ、それを抜けると昼間から怪しげな人達が屯する治安の悪いゴーストタウンのような街を急いで通りぬけた記憶があります。

GM本社ビル内は別世界で、中心部が吹き抜け構造となっており、その周りにガラス張りの回廊があり各階の人の動きが見渡せ、その外側に会議室や執務室、幹部の個室が配置されていました。最上階14階がトップの執務スペースで、そこには入れませんでしたが、面会相手の背の高いすらっとした女性秘書の案内で面会相手の個室まで案内され、役員ですら大部屋が当たり前のトヨタとの大きな違いを感じました。

かつては「GMに良いことはアメリカにとって良いこと」と言われた時期もありましたが、当時のGMのエンジニアにも自分たちが自動車をリードしてきたとの強い自負をもった人たちが多く、GMよりも自動車の将来、環境保全の将来が大切と切り出すシニアエンジニアとの出会いに啓発されたのもこの時期でした。こうしたGM、Fordスタッフのコミュニケーションを通じ、遠い存在であったビッグ3の背中が正直確実に近づいてきたことを感じ始めたのもこの時期の印象です。

その後1996年に、1923年に建設されたその本社ビルから、少し南にあるデトロイトリバー沿いの再開発地区にたてられた高層ビルに本社を移転させました。GMが資本参加していた、ホテルのマリオットチェーンが経営するルネッサンスホテルもその一角を占めることから、ルネッサンスセンターともいわれるビルです。

このルネッサンスセンターの本社は、北米オートショー(デトロイトモーターショー)や米国SAE(自動車技術会)年次総会が開かれるコンベンションセンター、通称コボホールの建物の中も通る再開発時に作られたピープルムーバ―と名付けられたモノレールで結ばれており、SAE会場からピープルムーバ―を使ってGM本社を訪ねた記憶もあります。この時も、役員会議室の豪華さに驚かされたものです。

経済の世界では高層の本社ビルを建てた会社は傾くとよく言われますが、まさに言葉のとおり破産に至ってしまいました。いまは、この本社機能をGMの主力研究開発拠点を持つデトロイト北部のワーレン市(Warren)に移そうとの構想がるようです。またそうなると、財政破綻をおこし最悪の状況にあるデトロイト市にとっては大きな痛手との報道もあります。

GMに技術はあった

GMの破産は、短期の収益を重視するあまり、将来技術開発、特に環境技術開発を軽視したつけと言われています。1990年から2005年トヨタを退職するまで25年のデトロイトGM通いとその付き合いの経験からは、決して将来技術開発、環境技術開発を軽視したとの印象は受けませんでした。まだマイコンなるものが生まれてまもない時期にすでにエンジンマイコン制御の開発をスタートさせていたことに驚かされたのは大昔としても、1990年代初めの量産型電気自動車『EV1』の開発からプラグインハイブリッド車『VOLT』、さらに燃料自動車開発まで、こちらがうらやましくなるような豊富な研究開発陣容と設備、それぞれ課長クラスでも広い個室をもつオフィスが与えられ、さまざまな分野で手広く技術開発を続けていました。

『VOLT』の母体となったレンジエクステンダー型ハイブリッドも1990年初めには加州ZEV規制提案時にはすでに開発に着手していました。プリウスの発売後にGMとハイブリッド共同開発の話が出て、デトロイト本社の少し北、ワーレン市にある技術センターなどでGM開発スタッフとなんども意見交換と技術レビューをしましたが、すでに様々なハイブリッドシステムの開発を手掛けており、モーター、インバーター、電池、その制御と専門能力の高いエンジニアが我々のハイブリッドチーム以上に多いことに驚かされました。

トヨタハイブリッド方式に近い遊星ギアを使ったいわゆる動力分割方式のハイブリッドもいくつか検討しており、この時紹介されたものが後に量産化された大型SUV用ハイブリッドや『VOLT』のシステムに繋がったように思います。しかし、かみ合わなかったのは、次世代自動車への取り組みと車種選択の考え方、さらに開発の方法論、体制論でした。

またハイブリッド開発が『EV1』開発をリードしたスタッフが中心だったためか、先に電気自動車、自動車の電動化ありき、将来自動車の開発よりも自動車の電動化そのものを目的化していることに違和感を覚えたことを思い出します。この時に付き合っていたエンジニアが『VOLT』開発段階のリーダーを務めたようですが、そのハイブリッド機構として遊星ギアを使った動力分割機構を使いながら、EV走行に拘るあまり、その機構をハイブリッド走行の効率向上に生かせず、燃費向上を疎かにしてしまったように思います。

このEVへの拘りは、実務エンジニアの拘りというよりも、技術開発マネージ陣(その殆どが『EV1』開発メンバー)のTHSハイブリッドに対する敵愾心と、経営トップのトヨタに対する拘りにあったように感じました。

言うまでもないことですが、技術に対する拘り、さらにライバルに対する敵愾心と競争心はあって当たり前で、そのフェアな競争の中で技術進化は進み、またイノベーションの引き金ともなります。しかし、その商品対象としてのクルマの商品機能向上、さらに将来のクルマに求められる社会的要求にこたえていくことがR&Dの目的で、ハイブリッドも電動化も、その電池開発、燃料電池開発もその達成手段に過ぎません。

これからの自動車をどう描くかに注目

GMだけではなく、ビッグ3が傾いたのも、研究開発はしっかりやっていたものの、分野別専門家集団のR&Dに留まり、クルマとしての商品技術開発につなげられなかったこと、またこれはメディア報道どおりですが、社会要請として自動車のクリーン化、低燃費化が強まるなか、収益源の大型SUV、大型ピック偏重の軸足を変えられなかったことによるように思います。

これはビッグ3だけの話ではありません。トヨタも、環境自動車への変革をリードしながら、米国ではビッグ3追従の大型SUV、大型ピックアップの増産にシフトさせたことがリーマン後の落ち込みのきっかけを作ったようにも思います。また、業務の細分化、専門分化の弊害もやや気になっています。

ここまで短期にGMを再生させた背景には、景気の回復とともに戻ってきた大型SUV、大型ピックアップのマーケット拡大と中国での販売増があるようです。GM破産の寸前に当時のリック・ワゴナーCEOが発表したプラグインハイブリッド車『VOLT』は、破産後の2010年に量産化され、再生のシンボルとして環境重視の広告塔的役割を果たしていますが、毎月2,000台程度の販売規模で収益には寄与してはいないでしょう。

乗用車の低燃費ハイブリッド車では、トヨタどころか直接のライバルのFordに大きく後れをとる状況です。『EV1』で先鞭を切った電気自動車も、今の第3次BEVブームには乗り遅れ、今年6月に発売を開始した『Spark EV』も11月までの累計販売台数が500台を切る状況で、環境自動車への舵切はうまくいっていないように思います。

しかし、『晴れた日にはGMが見える』ではありませんが、まだまだ日本勢、欧州勢では自動車の将来を引っ張るには力不足で、アメリカの自動車を変えるためにはGMが変化する必要があります。もはや大型SUV、大型ピックアップ一点張りではダメなことは自明で、しかしエコの押し売りではマーケットからソッポを向かれ、自動車バッシング、脱自動車を加速させかねません。

メアリー・バーラCEOが新生GMの舵をどのように切っていくのか、間違いなく環境自動車の方向に切り替えていかざるをえないと思いますが、これと自動車のエモーショナルな部分(走り、音色、走り心地)両立が求められる自動車変革をどのようなやり方でやっていくのか、アメリカの自動車マーケットも好調なだけに、その舵さばきに注目しています。

短期的には間違いなく売れ筋でお客様が求めている大型SUV、大型ピックアップトラックの環境性能をどのように上げていくのか、マーケットの低燃費、低CO2志向がどのようになっていくのか、これからもメアリー・バーバラCEO率いるGMの動きを見守っていきたいと思います。

プリウスPHVの米国公式電費と燃費

アメリカでもプリウスPHVが販売開始しました

プリウスPHVが日本に続き、アメリカで連邦環境保護庁(EPA)とカリフォルニア州大気資源局(CARB)からの認証・認可を受けて3月から販売を開始しました。
販売開始後の販売実績としては3月911台、4月1,654台とまずまずのスタートを切っているようです。このうち4月の1,654台、電気自動車やGMシボレーボルト・レンジエクステンダー型電気自動車(これもエンジンを搭載したプラグインハイブリッドと認定当局は定義していますが)など、電気を外部電力で充電できるプラグイン自動車全体の販売台数3,595台でしたので、シェアとして46%を獲得しました。

アメリカの一部メディアでは、この数字を見て4月の販売台数が1,462台だったシボレーボルトが早くも抜かれたとかき立てていましたが、まだまだ僅かな台数の中での話です。また、この4月の販売台数には、これまで実証試験をおこなってきたパートナーや、プリウスをカンパニーカートして多量に使っていただいた会社関係への事前オーダーへの配車が主体で、今後拡大していけるかはこれからのことのようですので、アメリカにおけるプリウスPHVは今後要注目です。

図1米国電動自動車販売台数

上の表は、昨年のアメリカに置ける電動自動車の販売台数になります。昨年は、ノーマルハイブリッドを含む電動自動車の総数で286,367台、東日本大震災とタイ洪水の影響による日本製ハイブリッド車の深刻なタマ不足もありましたが、新車販売全体の伸びには追いつかなかったものの、2007年以来の増加に転じ、今年に入っても好調な販売を示しています。

しかし、シェアでは、2007年の2.99%から、トヨタの品質問題の影響が大きく尾を引き、2.22%へと後退しています。しかしながら今年に入り、電動自動車の販売台数が大きく回復、1月~4月のシェアも3.39%と2007年のピーク時を越えており、今年の台数、及びシェアでの記録更新が期待されます。

加えて今年は、Ford フュージョンハイブリッドのモデルチェンジ、日産アルティマ新ハイブリッド、ホンダアコードハイブリッド、さらにはトヨタRAV4EV、Ford フォーカスEV、ホンダ ジャズEV、アコードプラグインハイブリッドなど、新しいハイブリッド、プラグイン自動車が販売を予定していますので、これがどのように販売を伸ばしていくかに注目されます。世界最大の自動車市場であるアメリカの今後の販売実績が、以前触れた日本ハイブリッド車ガラパゴス論の正否を問うことになるでしょう。

しかし、この中で電池充電型自動車(以下プラグイン自動車と記述)のみ限ってその販売動向をみると、2011年通年でも17,731台に留まっています。電動自動車の中のシェアとしても6.19%とまだまだ次のサステーナブル自動車の担い手というにはほど遠い状況にありましたが、あらたな参入でマーケットがどう動くのか注目されます。

プリウスPHVのアメリカ基準燃費は?

さて、冒頭でも書きましたが、アメリカで自動車を販売するということは、プリウスPHVもアメリカでの公式電費、EV航続距離、ハイブリッド燃費、ハイブリッド航続距離が、排気、燃費の認定官庁である、連邦環境保護局(EPA)から発表されたということです。アメリカでは、このEPAから発表される公式値を、販売店ではクルマのフロントウインドーにEPAが示す指定の書式で作られてステッカーとして添付することが義務づけられており、別名ステッカー燃費とも呼ばれています。

このブログでも何度かご紹介しているように、このステッカーに記載する燃費値は、それまでの燃費表示値が、実際にユーザーが使った時に実現できる燃費からの解離が大きいとEPA自体が訴えられ、ユーザーの平均燃費にできるだけ近づくように2008年に、算出方法の大幅改定を受けたものです。

この際、EPAではかなり大がかりなユーザー燃費調査を行い、EPAの排気・燃費認証試験として行う、米国シティーモード、ハイウエーモードだけではない、寒冷地のCOを規定する零度C以下の低温試験、夏のエアコン運転を想定した試験、急加減速が含まれるアグレッシブドライブ燃費など、さまざまな走行データからユーザー燃費の平均値に近くなる調整方式を創り出しました。当然ながら、アメリカのユーザー燃費の平均に近く、これがまた日本のユーザー燃費にも近いものになっています。

電気自動車やプラグインハイブリッド車の電力消費評価にもエコラン等をあまり考慮に入れないこの測定方法を適用していますので、この季節の私の実走行データと比較しても充電量や燃費の結果からもやや悪めの値になりますが、冬のヒーター運転、夏のエアコン運転などを考慮に入れると年間アベレージとして結構一致する値となっているではないかと思います。

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図2 プリウスPHV EPAラベル

しかも、EPA公式燃費掲示サイトでは、走り方によりクルマの燃費は大きく変化すること、燃費向上小技集、そのクルマのユーザー燃費調査の結果なども表示されており、エコカー購入の参考データとして活用されています。さらにEPAサイトをいろいろ調べて見ると、補正前(non adjusted)の生の燃費計測結果と修正後(adjusted)が、米国シティーモード、ハイウエーモード、さらにそのミックスであるコンビ(combination)燃費まで知ることがきます。
http://www.fueleconomy.gov/
http://www.epa.gov/otaq/carlabel/index.htm
http://www.fueleconomy.gov/feg/download.shtml

プリウスプラグインの米国EPAのステッカーでは、シティー/ハイウエーのコンビモードとして、電池にエネルギーがあるプラグイン走行(この評価モードで短時間エンジンがかかり、そこで消費したガソリンと電費を合わせたデータとして表示)ガソリン換算95マイル/ガロン(リッター40.2km相当)と示されています。このときのプラグイン走行航続距離は11マイル(17.6km)と日本のJC08基準の26.4kmに比べるとかなり短い航続距離とされています。

電池の充電エネルギーを使い終わり、ガソリンだけで走るHV走行の燃費は、ノーマルプリウスと同じ50マイル/ガロン(リッター21.2km)が公式値です。日本向けと米国向けでは車両諸元が若干違いますが、日本の民間燃費サイトで報告されるユーザー燃費や、私が使っていた前のプラグインプリウスでの年間通算HV燃費の22.5km/lよりも少し悪い値となっています。そしてこれで、同クラスの従来車にくらべ、アメリカユーザーの平均的な走行距離走ったとして、ガソリン代を7600ドルセーブできると表示されています。
また、充電電力とガソリンの両方を使った航続距離として540マイル(894km)と表示されています。

ボルトやリーフと比較してどうなのか?

参考として、GMシボレーボルト、NissanリーフのEPAステッカーも併せて載せておきます。ここで面白いのは、プリウスプラグインのステッカーのプラグイン走行燃費95マイルガロンのところには、電気とガソリン両方でのガソリン換算コンビ値と表示されているのに対し、ボルト、リーフとも電気のみと表示してあるところです。

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図3 シボレー・ボルト EPAラベル
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図4 リーフ EPAラベル

前述のように、今のEPAのステッカー燃費算出には、大きな加速度で標準モードよりも高速を走行するモードが含まれていますので、どこかでエンジンが掛かり、電気とガソリンの両方と記述されたようです。しかし試験データの詳細を見れば、その時のガソリン消費量は燃費換算で0.2ガロン/100マイル、500マイル/ガロン(リッター402km相当)と、極一瞬だったようです。この辺にEPAの連中の厳密さが表れており、この組織と長いつきあいをしている私などはいかにも彼ららしいなと感じられた箇所でした。

さて、このステッカー比較の電力消費では、やはり純電気自動車のリーフが一番よく、99マイル/ガロン、次がプリウスの95、ボルトは93と表示されています。この航続距離では、ボルトが合わせて379マイル(606km)、リーフはバッテリーだけですので、EPA基準では77マイル(123km)となり、これまでの米国シティーモード基準、日本のJC08基準と比較して極めて厳しい数値となっています。

こういった公式ラベルで年間燃料代やガソリン代セーブ額まで、販売店の展示車にまで表示させるところがアメリカの面白いところです。ホンダがこのステッカーにも表示する燃費値を広告に使いその値と自分のクルマでの走行燃費にギャップがあると訴えられたのもアメリカならではと思いますが、こうしたEPAの厳しめの調整公式燃費しか広告にも使うことができないのに、何故訴えられたのか疑問です。

更にアメリカらしいのは、GMがサイトですぐ、このEPAの公表データを使ってプリウスPHVとボルトの使い方による燃費比較を報告しているところです。
http://gm-volt.com/
この比較については、また別の機会に報告したいと思います。

いずれにしても、電池を充電するプラグイン自動車の普及には、安く、安心して使える充電設備の普及、マンションなど集合住宅での充電設備整備、そして電池の寿命や価格など、普及には残存課題の克服が先決、さらにその充電電力低CO2化をどのように進めていくのか、将来エネルギー政策全体の中で普及シナリオを見直す必要がありそうです。

日本のハイブリッド車はガラパゴス?

シェアを大きく伸ばした日本のハイブリッド

3月7日の日経新聞電子版に「ハイブリッドに死角 車もガラパゴス化の懸念」という記事が掲載されました。ちょうど同日に、日本の2月度車種別販売台数が自販連から発表されたところで、それを意識した記事なのでしょう。

2月の車種別販売台数トップは、35,875台と9ヶ月連続でプリウス、2位はフィット、フィットはハイブリッド・従来ガソリン車の合計の数字でその内訳は不明ですが、4位につけたフリードとともにかなりの比率はハイブリッドと思います。さらに、昨年12月末に発売を開始した、トヨタの小型ハイブリッド車アクアが1月の4位から21,951台の3位への躍進を遂げています。

昨年の統計では、日本の新車販売台数に占めるハイブリッドの割合は、通年で10.8%と初めて10%の大台を超えました。メーカー別でみると、やはりトヨタ/レクサス車のハイブリッド比率が高く、2011年通年で30.8%、続いてホンダの28.4%と後半のフィット・シャトルHV、フリードHVの投入でインサイトの落ち込みをカバーし、高いHVシェアを占めています。

今年に入ってエコカー補助金が決まり、1月、2月とエコカーの販売が伸び、1月にはトヨタ/レクサス車としてHVシェア50%を記録、この伸びもあって日本全体での1月の新車販売台数に占めるHVシェアは20%を越えたようです。

このように日本では、1997年12月のハイブリッド車プリウスの発売以来、14年にして、お客様の懐にも、そして環境にも優しい(私自身、この言葉を使うのはあまり好きではありませんが)至極普通のエコカーとして、お客様に受け入れていただくようになったことに感慨を深くしています。

海外でのハイブリッドの現状

そこでの、「ハイブリッドに死角 車もガラパゴス化の懸念」との記事です。確かに、今の瞬間風速としては、日本だけが突出してはハイブリッド車のシェアが高まっています。中国は、国策として複雑で高度な技術を必要とするハイブリッドをスキップして、一気に電気自動車の普及を計るとの報道も流れており、リチウムイオン電池の開発にも国を挙げて取り組み、自国ブランドのさまざまな電気自動車を開発し、実証試験を行っていると報道されていました。

その電気自動車の販売台数はすでにハイブリッド車を越えたとの報道もありました。確かに、中国自動車工業会によると、2011年のハイブリッド車販売台数は2.556台、これに対し電気自動車5.579台とEVがHVの2倍以上となっています。
また、様々な地方都市で電気バス、小型電気自動車の実証プロジェクトがスタートしていますので、この発表された販売台数の数字がどのような定義なのか、一般販売をおこなって通常の方が購入しているか、それとも公費を利用した実証プロジェクトで使っているクルマをカウントしているのか、不明なところも多く、実態はなかなか見えて来ません。

しかし、中国の2011年の新車販売台数は1,850万台にもなり、その中の数千台ですから、ハイブリッドも電気自動車もまだまったく量産マーケットとしては存在せず、マーケット議論の対象外と言っても良いでしょう。

またアメリカでも日本ほどハイブリッド車シェアが伸びている訳ではありません。ハイブリッド車の販売台数が352,274台、そのシェアが2.99%を記録した2007年から2010年まで、販売台数、ハイブリッドシェアとも下降線を辿ってきたことも事実です。

電動自動車全体としても昨年、電気自動車の日産LEAFとレンジ・エクステンダー型電気自動車と自称しているプラグインハイブリッド自動車GM VOLTの発売もあって、2010年の274,175台から286,367台と下降を食い止めたようですが、自動車販売台数全体が大きく伸びたこともあって、シェアは2.37%から2.25%とさらに下がってしまいました。

欧州ではどうでしょうか?欧州単独でのEV/HV販売台数の数値は掴んでいませんが、日本のように多くはなく、従ってシェアもまだ低い状態です。しかし、プリウスは一目で見分けがつくせいもありますが、フランス、UK、ベルギー、スウェーデンではちょくちょく見かけくらい走っています。残念ながら、ドイツに移動するとぐっと少なくなってしまいますが、ドイツの無制限区間もあるアウトバーンを持つドイツは特殊な世界です。

世界全体のEV/HV販売台数統計は、2010年4月~2011年3月(2010会計年度)のデータがWARDSAUTOという、自動車情報サイトにありましたので紹介します。

この統計では、世界全体のEV/HV販売台数総数は930,662台。トヨタとホンダのHVで全体の95%を占め、他のHVとしてランクインするのはFord Fusion Hybridだけ、後はMitsubishi i-MiEV、Nissan LeafのEVが登場とするなど、日本勢のオンパレードです。

この状態が続くと仮定すれば、この記事のガラパゴス化との記事を載せたくなるのも理解できないではありません。さらに、最新ニュースで、2010年末にGM復活のシンボル、オバマ大統領グリーンニューディール政策の目玉として発売を開始したレンジ・エクステンダー型電気自動車VOLTの販売が今年になっても好転せず、4月末まで生産を休止すると伝えられました。

VOLTは日本勢のHV/PHVに対する強力な競争相手になり、競い合うことで次世代自動車マーケットの活性化を期待していましたが、今のところ期待外れの結果となっているようです。

大型車回帰で経営状況を回復したアメリカメーカー

2011年のアメリカでの車種別販売台数トップはFordのFシリーズピックアップトラックです。さらに、上位にはGM Silverado、Chrysler Ramといったピックアップトラックや、大型SUVが並んでいます。確かに、アメリカには、この手のフルサイズ・ピックアップトラックや大型SUVが似合うことは確かです。

ですが、このV8エンジンを搭載するFシリーズピックアップトラックの、アメリカ連邦環境保護庁(EPA)が公表する、アメリカのカタログ燃費はリッター換算で5.9km、アメリカのカタログ燃費は2008年にユーザーが実際に実現できる実走行燃費の平均値に近づくように改定されていますので、これが実燃費とすると、月に2000km程度を走行するユーザーは月に350リッター程度のガソリンを使うことになってしまいます。

図1 2011年車種別販売NO1 FORD Fシリーズ
2011年米国車種別販売
NO1 FORD Fシリーズ

原油の高騰が引き金でプリウスなど日本勢のHVが販売台数を伸ばし始めた2005年5月、あるアメリカの調査会社が、フルサイズ・ピックアップトラックや大型SUVにその収益源を頼っている当時のBig3への警告レポートを発表しました。
そこではBig3の社債を、なんと私の名を取って“Yaegashi Bonds”(ヤエガシ債)と命名すべきだとの書き出しでした。永く続いた安い石油価格の次回に収益率の高いに大型車に頼り、原油高騰と低CO2自動車への転換に遅れをとったBig3の社債はジャンクボンドになるとの警告です。
HVのシンボルとしてでしょうが、私には何の挨拶もなく自分の名前がネガティブなイメージで付けられ、それが日本にも配信され、とんだとばっちりをうけた格好になってしまいました。
http://upload.democraticunderground.com/discuss/duboard.php?az=view_all&address=115×23574

バブルがはじけ、大金融危機リーマンショックがやってきたのが、それから3年後の2008年9月、ちょうどその9月にGMの前社長ワグナー氏がその最中、創立記念日のイベントでVOLTの発表を行いました。それから、1年もたたない間に、GMは倒産し、文字通りのジャンクボンドになってしまいました。

今また、のど元すぎれば熱さを忘れるではないですが、リーマンショック後、ガソリン価格が一時的に低迷、大型ブームの再来、その後押しで復活を果たしているのがGM/Fordの現状です。この収益を確保出来ている間に、3度目の正直、低燃費車に舵を切れるかが本当に復活できるかの鍵だと思います。ガソリン価格がじわじわと上がり、この大型車ブームも続かない見通しです。

図にアメリカエネルギー省(DOE)の部局であるエネルギー情報局(EIA)発表の、1990年から現在までの全米ガソリン小売価格の推移を示します。

第2次石油ショック後、2000年ごろまでは安定的に、水よりも遙かに安いガロン(3.79リットル)当たり1ドルレベル(1990年10月の為替レートで130円/$:リッター35円程度)をキープ、その後、中東不安、大型台風による精油所被害、さらに中国などのモータリゼーションによる需要増、在来油田の枯渇などで急上昇し、リーマン後の景気後退で一時大幅に低下しましたが、またこのところ上昇を続け、ガロン4ドル(今の円レート81円/$でリッター85円)の大台に近づいています。

アメリカの平均的な年間走行距離は日本の2倍近いですので、週1回満タン、中型車20ガロンで80$は頭の痛い出費です。

この影響もあり、東日本大震災の影響を脱した昨年後半から、アメリカでのHV販売台数が大幅に増加し始め、またFord Fusion Hybrid、日産アルティマハイブリッド、さらにはプリウスC(日本名アクア)の発売でHVマーケットも活況を呈しそうです。

「ダウンサイジング」だけで乗り切れる?

日経の記事によると、中国での「ダウンサイジング」を取り上げています。V8をV6に、V6を4気筒になどエンジン気筒数を減らし、排気量を小さくし、通常の走行領域を熱効率の高いゾーン(低燃費ゾーン)にもってくる考え方です。低下する出力やトルクを、ターボチャージャーやスーパーチャージャーなど過給器で補う方式がその一つです。
しかし、低燃費のためのダウンサイジングは定番中の定番で、ハイブリッド化による低燃費の考え方にも「ダウンサイジング」がしっかり入っています。ハイブリッドでの電池アシストも同様の考え方です。もう一つの「ダウンサイジング」がクルマ自体を小さく、軽量化し、低燃費を実現する「ダウンサイジング」です。これも低燃費の実現の為には王道の手段です。

ただし、過去に石油ショックの時代にそれをやって失敗したのがGM/FORDのアメリカBig3でした。小型化したキャデラックなどはまったく売れず、その隙をついて販売を伸ばしたのがトヨタ、日産、ホンダの日本勢でした。
当時もエネルギー安全保証として燃費規制が導入されましたが、社会要請に応えつつ、結局はお客様が良い意味でのサプライズを感じ、満足いただける商品が普及の前提、エコだけで多くのお客様に満足いただくことは出来ません。

中国でもEV/HVが普及出来ない理由も、まだ経済的にも、商品魅力の点でも、また品質的にもまだまだお客様にとって満足できるEV/HVが提供できていないことが最大の理由です。しかしながら、昨年の年間販売台数が1,850万台を越え、2020年には4,000万台を予測する記事も見かけますが、この急激に増加する自動車を走らせる燃料をこのままでは供給できなる可能性が高く、また世界経済、世界の環境に大きなダメージを与える危険性が高まっています。

大幅な石油消費の削減が待ったなし、従来技術の延長での「ダウンサイジング」だけで乗り切れないことは明かでしょう。EV/HVはあくまでもクルマの商品機能とのトレードオフをさせずに燃費効率を高める手段の一つであり、その中核に「ダウンサイジング」の考え方があり、お客様が満足する「ダウンサイジング」をEV/HVそして車両技術の進化で競い合うのがこれからの自動車だと思います。

ちなみに、中国のガソリン価格は、すこしずつ上昇してきていると言ってもまだリッター100円以下、ガソリン価格がここまで安いのはEV/HV普及を妨げる要因にもなりますが、このまま低価格を維持できる筈はありません。

しっかりとしたクルマを作っていけば「ガラパゴス化」は無い

欧州でもユーロ安の影響もあり、燃料価格がじわじわと上がっており、2月のフランスでのガソリン価格としてはリッター1.6ユーロと史上最高値に近づき、また厳しいCO2規制もあって低燃費車競争はさらに激烈さを増しています。

また、今の電池技術では、EVが今のクルマに変わり、世界全体の石油消費削減を果たすには力不足、しっかりと技術と品質、さらにマーケットを踏まえた利口な「ダウンサイジング」がいまこそ求められていますので、決して日本のハイブリッドがガラパゴス化の道を歩むことはなく、日本が次世代車の「パイロット」マーケットとして、世界をリードしていけると確信しています。

しかし、その条件は技術、品質、経済的にも、商品魅力としてもお客様に強く支持いただける商品を提供し続けることが前提です。クルマはグローバル商品、日本だけしか通用しないカタログ燃費、いまだに残る軽のカテゴリー、本当に石油消費削減に役にたっているかどうか判らない補助金制度などを当てにした日本専用車など井の中の蛙の商品ではなく、また「会社」の都合、一時的な収益の浮沈に目を奪われず、グローバルとして通用するクルマを作り続ける限り、ガラパゴス化を招くことはないと思います。

モビリティ新時代へ

2011年の自動車販売台数 ―日本勢・次世代自動車の苦戦―

2012年に入り一月が経ち、昨年の新車販売台数などの自動車マーケットの統計データがいろいろ公表されてきています。世界の新車販売台数は、データの出所とカウントの仕方によって僅かなブレなどもありますが、史上最高をまた更新したのは間違いなく、前年比4%の7,750万台ほどのようです。一方、日本国内については、甚大な大震災の被害と、秋のタイ大洪水による影響によって421万台と1980年代の始めの水準にまで落ち込んでしまいました。この大震災・大洪水の直撃を受けたトヨタ、ホンダは減産により大きく生産&販売台数を落としました。

また、ハイブリッド車(HV)・電気自動車(EV)といういわゆる次世代自動車の販売については、日本にはなかなか情報が伝わってはいませんが、世界全体の販売は伸び悩みを続けています。統計データが発表されているアメリカでは、リーマンショック後の自動車マーケット縮小とトヨタ車リコール問題の影響で、2008年をHVの年間販売台数が低下し続けています。一昨年末に発売を開始したGMのプラグインハイブリッド車(PHEV、ただし彼らはレンジテンダー型電気自動車:EREV“Extended Range Electric Vehicleと呼んでいます)Voltの発売を開始、また日産もEVのリーフを発売し、HV/EV時代の到来と言われましたが、北米販売台数は合わせても2万台には届きませんでした。

昨年のアメリカは景気回復気配とリーマン後の販売減少の揺り戻しの影響もあり、新車販売台数は2010年の1,160万台から2011年1,280万台への100万台以上も増加しましたが、その中でHVは5000台減、HVとEV合わせても1.6万台増の286,000台のシェア2.25%に留まっています。

http://www.electricdrive.org/index.php?ht=d/sp/i/20952/pid/20952
(EDTA: Electric Drive Transportation Association HP)

販売回復が期待できる2012年

しかし、年をまたいだ今年は日本では補助金復活の後押しもあり、1月の新車販売台数では日本は前年比36%増を記録しました。もっとも昨年1月はエコカー補助金の打ち切りの影響から大きく落ち込んだ月ではありましたが、とはいえこれは明るい希望を抱かせるものであり、年間販売も500万台の大台に復活することが予想されています。

日本の自動車保有台数は約7,500万台ですから、平均保有期間が15年とすると年500万台ずつの代替マーケットになり、不景気等の影響で保有期間が長期化しているものの、年間500万台超の販売は十分に期待できる数字です。

アメリカの1月の新車販売台数も昨年比11.4%増で、年換算では1400万台越えを見据える数字で、大震災、タイの大洪水の影響から脱した日本勢も販売台数を回復させてきているというデータが出ています。中国のデータはまだ判りませんが、今年は2000万台越えとの景気の良い声も聞こえてきますので、世界全体では8,000万台越えが期待されています。

とはいえ、この世界販売の98%以上が従来車(ガソリンエンジン車もしくはディーゼルエンジン車)であり、まだHV、EVは全体では2%も占めてはいませんので、メディア等で伝えられる次世代自動車の情報の多さの割には、日本以外はまだまだ大きな動きにはなっていなかったというのが実際のところです。

一方日本では今まで販売された次世代自動車の大部分が日本メーカーのクルマで、この15年、日本勢がパイオニアとしてこの次世代自動車普及をリードしてきたということもあり、他国に比べて次世代自動車比率が高い状況となっています。最初に記したように、大震災、タイ大洪水の影響も大きく受け、全体での新車販売台数は大きく減少し、台数ベースではHVとEVもまた減少しましたが、シェアは大きく伸び、通年でも10%を越えた模様です。11月には、単月で14%を越え、HVはもはや“普通のクルマ”となり、EVであるリーフやアイミーブも時々見かけるようになりました。

また、昨年12月26日に発売を開始したトヨタの小型ハイブリッド車アクアの受注は、1月末には12万台を越え、補助金の後押しがあるとは言え、このクラスの本格ハイブリッド車への期待の大きさを今更ながら証明することとなりました。

「普及」の大切さ

ここまで販売台数についてのお話をしてきました。こういった販売台数データというと、どちらかというと企業の業績や状況を見極めるといった、経済ニュースの範疇で扱われているものです。いっぽう次世代車というと、新技術や未来性などを中心として取り上げられる機会が多く、その後の販売台数推移などは、大ヒットをしたという流行商品としてという場合以外においては、関連付けて語られる機会が少ないように感じています。

しかしながら、次世代車の本質を考えると、販売台数は非常に重要な事項です。というのも、次世代車が担うとされている化石資源利用の低減や環境負荷の低下は、従来自動車を数多く置き換えることによってのみ、大きな効果をもつものだからです。

私は以前より講演会等で繰り返し
「環境性能チャンピオンのプロトを作り、テストコースを走らせることは簡単」
「いくら環境性能がチャンピオンでも、ショールームの展示用や、車庫で埃をかぶり滅多に使われない車ではエネルギー保全、環境保全には貢献しません」
「普及しうるエコカーとして、21世紀の先駆けとしてハイブリッド自動車プリウスを開発し、その進化に取り組んできました」
と言い歩いてきました。

日本では、ハイブリッド車が普通のクルマになってきましたが、世界ではこれからが本番、これまでは及び腰だった欧米勢の本気で開発に取り組み、また韓国勢の追い上げも激しく、EVも含めやっと普及に向けた次世代自動車の本格開発競争時代を迎えたと思っています。

日本のマーケットから世界のマーケットへ

自動車産業がいかにグローバルビジネスと云えども、自国のマーケットが元気にならなければ、次世代自動車転換への開発陣も元気にはなれません。自国マーケットが活性化し、そのユーザー、販売店、サービスとの密なコミュニケーション、さらに激烈な競争の中で磨かれて商品は進化していきます。図に1990年以降の日本での車両販売台数推移を示します。

この20年、右肩さがり、昨年は大震災による減産の影響も大きいとは云え、1990年の55%にも届いてはいません。この中で、海外生産比率を増やしながらもハイブリッド車などで輸出台数をキープしつつ、グローバルな成長を計ってきたのが日本の自動車産業です。

この図をみていても、日本社会の経済成長の停滞が如実に判ります。乗用車以上に、貨物車、商用車の販売台数が減少しています。クルマの使用期間が長期化し、また人流、物流ともに縮小してきた日本経済の縮図を見るようです。復興の本格化と、景気回復で人流、物流が活発化することをきっかけに、相乗効果で経済成長を果たし、日本を元気にして欲しいものです。

この中で、自動車マーケットが活性化し、その中で必然的にハイブリッド車、電気自動車シェアが増加していくことが、保有台数の中での次世代自動車比率増加に繋がって行きます。日本がその転換をリードするパイオニアマーケットとなることにより、世界の次世代自動車、モビリティ新時代転換のリード役を続けられるように思います。

一方で、10%のシェアを超えたことは、一部のハイブリッド車だけで普及拡大を図ることからの転換期を迎えたとの見方もできると思います。
乗用車、商用車でもミニバン、ステーションワゴン、SUV、スポーツカーなど、さまざまなジャンル毎に、その用途に応じ、エコ性能は当たり前として、それ以外の走行性能、フィーリング、さらには価格としてお客様に受け入れられるクルマが求められます。大型トラックなど物流用のクルマももっと低燃費、低CO2なクルマへの切り替えが必要です。

しかし現状ではこのような様々なジャンルまでへの品揃えにはまだなってはいません。グローバルマーケットでは、さらにその用途とクルマの性能への要求は多様です。もちろん、日本マーケット限定のガラパゴス次世代自動車では世界をリードできません。様々なジャンル、様々なマーケットでの要求に応える次世代自動車の開発はこれからです。今年が、日本勢が“やせ馬の先走り”にならず、これまでのアドバンテージを生かし次世代自動車転換をリードできるかどうかの転換点になる予感がします。

今年こそ、国内マーケットが活性化し、経済的にも明るい年になることを期待していますが、台数増だけに浮かれすぎず、その中で次世代自動車への次ぎの手、技術進化と様々なジャンルへの展開に手を抜くことなく取り組んでこそ、モビリティ新時代を担い続けられると思います。

次世代自動車のゆくえ

増え続ける自動車

2011年の世界新車販売台数はまた世界新記録を記録したようです。8000万の大台には届かなかったようですが、リーマンショックで先進国の販売が大幅に落ち込んだ2009年を除けば近年、世界の自動車販売台数は毎年新記録更新を続けています。自動車保有台数もこれにつれて増加の一途をたどっており、統計値が確認できた2009年で9.65億台ですので、2010年には間違いなく10億台を越えていると思います。

国別では、中国が1850万台と3年連続のトップ、2位のアメリカがリーマンショックから回復基調にあり1280万台を記録しましたが、史上最高を記録した2000年の1740万台からはほど遠い状況です。日本は、大震災やタイの洪水による減産の影響が大きく、含軽で421万台と1980年代初めのレベルとなってしまいました。保有台数(2009年)では、アメリカが2.48億台とトップを維持し、日本が0.73億台と2009年までは2位をキープしていましたが、現在では中国に抜かれています。

自動車の普及率では、アメリカが人口1000人あたり809台、この数字には赤ん坊や子供まで入っていますので、成人一人一台、日本、中国はそれぞれ579台、45台(2009年統計)となっています。中国はまだ日本の10分の1以下の普及率、昨年の中国新車販売台数が13年ぶりの低い伸び率とはいえ、史上最高の1850万台を記録し、経済成長につれさらに大きく伸びていくことは間違いないでしょう。

この10億台を越える自動車の燃料として、99%がガソリン、または油の石油液体燃料を使って走っています。深海油田からの採掘、シェールガスならぬ、シェールオイルなど在来型ではない石油生産も増えていますが、この保有台数の伸びに供給が追いつかなくなることが強く懸念されています、いわゆるピークオイルの到来です。この数年は世界不況により、石油需要が頭打ちになっていますが、それでもリビア、イラク、イランなど産油国の政情不安に石油価格が敏感に反応するなど、需給バランスが非常にタイトになってきていることは確かです。景気に少しでも明るさが出ると、原油価格が跳ね上がる構造となっています。

今年の日本は何年ぶりかに寒く、豪雪が続く冬になり、これで地球温暖化?との疑問もわいてきますが、世界全体ではやはり温暖化傾向が続いているようです。温暖化ガスの主因と云われるCO2ガスの排出削減への取り組みもさらに強めることが待ったなしでしょう。

海外の次世代自動車の状況

1997年12月のハイブリッド車プリウスの発売で幕を開いた次世代環境自動車が、一昨年の三菱i-MiEV、日産LEAF、さらにはGM復活の切り札としてアメリカで発売を開始したレンジ・エステンダー・電気自動車(Extended Range Electric Vehicle :EREV)と名付けた外部充電型ハイブリッド車GM シボレー・ボルトの発売で、2011年はハイブリッド車普及拡大と電気自動車への転換への期待が高まってきました。日本では、大震災、タイの洪水の影響も大きく、新車販売台数は大きく減少してしまいましたが、新車販売台数に占める、ハイブリッド車、電気自動車の比率は着実に増加し、昨年11月には14%を越え、通年では台数こそ減少しましたが、2010年の9.7%から10.8%へと拡大したようです。また、様々な低燃費自動車の投入により、日本全体のガソリン消費量は1990年代後半から減少に転じています。まだ、ハイブリッド車など次世代自動車が石油消費の削減に大きく寄与するまでには至っていませんが、社会全体の省エネでも日本がその技術をリードしてきたように、次世代自動車の普及でも世界をリードしています。
 
しかし、目を日本以外に転ずると、不況対策、雇用対策として日本以上にこの次世代自動車開発、購入に国費が投入されているにも係わらず、またメディアがエコ自動車ブームと大きく取り上げているにも係わらず、次世代自動車の普及は遅々として進んでいない現状が明かになってきます。最近の中国のニュースで中国自動車工業会の発表として、2011年中国の電気自動車、ハイブリッド自動車の登録台数が配信されました。
http://www.chinapress.jp/consumption/28800/
それによると、中国メーカー製にはかなりの補助があるにも係わらず、1850万台中の電気自動車が5579台、ハイブリッド車が2580台、総計でも8159台と量産販売とは程遠く、これでは広報活動用とも言えない状況に愕然としました。

中国中央政府の政策としてハイブリッド車をスキップして電気自動車の実用化を優先させることを決めていましたが、昨年6月に路線バスを除き、今の電池技術では一気に電気自動車を普及させることは困難として、ハイブリッド車にも力をいれるとの政策転換を発表しました。その背景にはこの販売状況の現実があったのではと推測しています。

この中国ほどではありませんが、アメリカも同様な状況にあます。一時は原油高騰によるガソリン価格の上昇が追い風となりハイブリッド車の販売が増加しましたが、2008年秋のリーマンショック、さらにトヨタの品質問題、プリウスのブレーキリコール騒ぎなどが響き減少に転じ、また今年は東日本大震災による減産から、トヨタ、ホンダのハイブリッド車販売がさらに減少してしまいました。台数とシェアでは2007年の35万台、2.9%から、昨年の26.9万台、2.25%への減少です。

今日のニュースで、連邦運輸省(DOT)の依頼で、電子制御システム不具合と疑われたトヨタ車の暴走事故調査を行っていた米国科学アカデミーが、電子制御システムは白と発表しました。これで、連邦航空宇宙局NASAの調査に続く、白の発表です。これで暴走事故に関して大勢が決した感がありますが、この問題がトヨタだけではなくハイブリッド技術普及に水を差したのは間違いなく、非常に残念でなりません。

GM再生のシンボルとして鳴り物入りで発売を開始したボルトは、昨年の販売台数は7671台と月1000台にも達しない状態、日産リーフはこれを上回る10061台を記録していますが、前ブッシュ大統領が2007年年頭教書で述べた“アメリカ人のガソリン中毒(Gasoline addiction)”の症状は替わらず、オバマ大統領が今年の年頭教書で強調した2015年電気自動車/プラグインハイブリッド自動車100万台シナリオもこのままでは達成困難な状況です。

他は推して知るべし、欧州もこの不況とユーロ安、円高で日本車のシェアは低下、ハイブリッド車の販売も減少している状況です。電気自動車では、ルノーの小型バン“カングー”、PSAがi-MiEV のOEMである「iOn」を発売しましたが、郵便会社や公共団体フリート、さらにはEVカーシェア用などその殆どは法人用で、保有台数の大部分を占める個人の購入は少ないようです。

これからの次世代自動車の競争に向けて

石油消費の削減、自動車からのCO2排出を減らしていくには、上の図1に示す世界で使われている自動車(保有台数)を、次世代環境車に置き換えて、そのシェアを増やしていくことが必要です。次世代自動車の中では、ハイブリッド車が圧倒的シェアを持ち、これまでは世界のシェア90%以上が日本勢、その中でもトヨタ/レクサスのハイブリッド車が70%シェアを示していましたが、昨年後半から少し事情が変ってきたようです。ことし2月にアメリカで発売を開始したヒュンダイ車のソナタハイブリッドが売れ行きを伸ばしています。日本勢が大震災、タイの水害で減産を余儀なくされ、さらに円高の影響もあると思いますが、燃費性能でもスタイルでも、さらに品質でも日本勢のハイブリッドに肉薄してきています。今年1月に開催されたデトロイトでの北米モーターショーでも、さまざまなハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の発表と展示がありました。

日本では、トヨタの小型ハイブリッド車アクアの受注が好調とか、また間もなくプリウスPHVも発売を開始します。日産からシーマハイブリッド、ホンダからはアコードPHVの発売も噂されています。加えてEVについても、各社からの発売が予告されています。日本では、震災復興需要や昨年の減産のカバー、さらにエコカー減税の継続などで、2008年以来となる500万台越えの新車販売と予測され、ハイブリッド車/電気自動車のシェアが15%~20%への拡大が期待されています。

いよいよ世界マーケットでは、本格的なハイブリッド自動車・電気自動車普及を目指す大競争時代突入の予感がします。ポスト石油、低CO2の持続可能な自動車への変換はまだこれからが本番です。これまでは、日本勢がリードしてきましたが、そう簡単にリードし続けられるほど世の中は甘くはありません。われわれは、欧米勢の背中を追いかけながら、なんとか追い抜きたいとチャレンジを続け、ハイブリッド車として結実させることができましたが僅かのリードです。

日本勢がリードを続けるためには、イノベーション技術へのチャレンジと“もの作り技術”の結集、その上で欧米勢、韓国勢に負けない戦略的かつスピーディな経営マネージに掛かっています。もちろんイノベーション技術へのチャレンジと言っても、技術屋の自己満足ではなく、環境性能の高さは当たり前として、クルマの基本性能、スタイル、商品機能では言い訳のない、またお客様に何かサプライズを与えられる時代を半歩リードするクルマを作り上げることが競争の原点です。日本マーケットが世界のパイロットとして、次世代自動車競争をリードし続けることが、次世代自動車の普及拡大を牽引することになります。今年はプリウス発売から15年目の節目の年、家電産業の二の舞にならないように、また負け馬の先走り、日本自動車産業衰退の潮目の年と云われないように、日本勢の奮闘に期待します。

アメリカでの充電式(プラグイン)自動車のいま

先週は授賞のお話しをしましたが、授賞式の傍らアメリカでGM VoltやNissan Leafのアメリカでの反響について情報収集もしてきましたので、今回はそのお話を。
両車とも本格的なプラグイン(外部電力充電型)自動車の量産のスタートを象徴するクルマでしたので、私も注目していましたし、その反響も非常に大きいものだろうと予想していたのですが、実際は予想に反してアメリカでは静かなローンチを切ったのだなとの印象を持ちました。

自動車社会アメリカ

今回の訪米では、事前にロサンゼルスで何人かの友人に会おうと持ちかけ、一人はオフィスまで片道50マイル以上、もう一人はサンタバーバラから片道117マイルを気楽にロスのホテルまで訪ねてくれました。
このようにアメリカでは、自動車をまさに最も身近なモビリティとして活用し、ハイウェイの大部分が無料であることも相まってロングトリップも当然とするまさに自動車社会が構築されています。NYやシカゴ、ワシントンDC、ボストンなど一部の大都市を除けば、アメリカでの個人の移動範囲は自動車によってのみ大きく面として広がっており、アメリカで自動車抜きの生活をするということは不便という段階を超えて人としての活動の大きな縮小を意味します。
アメリカに代表されるこのような自動車社会をどのように低カーボン社会に変革していくのか、人類の将来にとっても中国とともに注目するところです。ロスでも公共交通機関がないわけではありませんが、輸送の全体の中でのプレゼンスは極めて微小と言わざるを得ないというのが実態です。

私はこの広大な国土を持ち、ロングトリップが当たり前で、年間の平均走行距離でも日本の1.5倍以上の自動車社会アメリカに変革を与えるためには、まずは長い走行距離を確保できることが最低限必要だと考え、まずHV、さらには都市内のショートトリップで充電電力エネルギーを使うプラグインHVが現実的と考えてきました。
その意味で冒頭でも書きましたが、GM Chevy Voltがどのように受け取られるのか、使われるのか、そのローンチに注目してきました。

GM Chevy Volt

Voltのことは、このブログでも何度かとりあげましたが、T字型の16kWhという大容量の電池パックを、重量バランスが偏らないように、苦労してクルマのセンター部分に搭載する苦労、エンジン、トランスミッション、インバータ搭載の工夫など、開発エンジニアの努力を感じさせられました。 

Opel-Ampera(Voltの姉妹車)の電池パック
Opel-Ampera(Voltの姉妹車)の電池パック

また、GMはVoltの説明としてハイブリッドではなく、レンジエクステンダータイプのEVと説明してきたため、私自身もてっきりシリーズタイプのハイブリッドと思い込んでしましが、最近になって、基本的にはトヨタハイブリッドと類似の遊星ギアでエンジンパワーの一部は直接タイヤの駆動にも使うことができる、シリーズパラレル型であることが判ってきました。

トヨタ方式とは違って、動力伝達遮断/結合のクラッチを2組持ち、エンジン動力によるタイヤ駆動パス(パラレルパス)を切った、完全シリーズ型運転も出来る機構になっていることが特長です。電池エネルギーを使い切ったあとの長距離ドライブ、さらには高速フリーウエー走行のシリーズ型運転では、どうして燃費効率が悪くなってしまいます。この部分では、トヨタ方式のようにパラレル運転が有利です。Voltでもこの高速走行のある走行条件では、エンジンパワーのさらに一部で直接タイヤを駆動するパラレルパスを使っていることが判りました。私からすればアメリカで当然のように利用されるフリーウエーにおいて燃費効率を保つことは絶対必須条件で、そのためにパラレル機構を持たせることは技術者としては当然の判断だと思うのですが、GMが事前からEVもしくはシリーズ型であるかのように伝えてきていたためメディアからは「これではEVではない!!」とGMは批判されているのが現状です。

また、Voltの発売に当たって、アメリカ連邦の環境当局EPAとカリフォルニア州の環境当局CARBから、燃費、電力消費量(電費)、排気のクリーン度、CO2の排出量が公表されました。カテゴリーとしてはGMの公表とは違い、(当然ですが)Voltはプラグインハイブリッドとされており、電池エネルギーだけを使うAll Electric走行では燃費(電費)93mpg、電池エネルギーを使い切ったあとのガソリンエネルギーでの走行では37mpgと認定されています。
なおこの93mpgというのは、消費電力エネルギーをガソリン消費エネルギー換算して出された値です。
ガソリン走行の37mpgという数字は、通常プリウスの50mpgと比較すれば一目瞭然ですが、同サイズのクルマとしてはかなり悪い部類に入り、個人的な推測ですがEVに拘るあまり総合的な効率を犠牲にしてまでシリーズ運転領域を多くしてしまったのではないでしょうか。

CARBからはクリーン度としてULEV(Ultra Low Emission Vehicle)認定を受けました。ULEVとの表現では、とんでもないクリーン度のクルマとの印象ですが、この先にさらにクリーンなカテゴリーとして、SULEV(スーパーウルトラ), 更にPZEV(Partial Zero Emission Vehicle)さらには、ハイブリッドではATPZEV(Advance Technology PZEV)なるカテゴリーまであり、カリフォルニアではその販売比率の組み合わせで決められたクリーン車の導入比率を守ることが義務づけられています。
プリウスはこのATPZEVカテゴリーとして認定されていますが、VoltはULEV認定であり、いくつかのインセンティブが与えられるATPZEVではなく、ULEVに留まったこともメディアの話題となっています。これもまた、先ほどと同じくシリーズ運転領域を多くしてしまったことに起因するのではと予測しています。

アメリカでもプラグイン導入への障害は多い

先ほども書きましたが、アメリカでは、やはり広い国土とその中でのクルマの使い方から、エンジンパワーと電気パワーを賢く使う車が、将来の低カーボン自動車として有力と思います。将来としてはプラグイン自動車の普及を視野に入れる必要がありますが、充電機器、そのコネクター、さらには搭載電池など、実用化の課題はまだまだ山積しています。標準化議論も進んでいるようですが、今の充電機器、コネクターでは、使い勝手、装着性、保管性など、毎日使うにはまだまだ不十分、また家庭やオフィス駐車場での充電で使う低パワー充電設備のコストも普及へのハードルです。

プラグインハイブリッドのヨーロッパでの実証試験データでも、充電回数の90%以上は家庭とオフィス駐車場のコンセントから充電しているとのデータが報告され、またアメリカのモニター走行ではプラグインハイブリッドは充電をしなくても走れるので、コンセントに繋いで充電する操作すら面倒になり、ガソリンハイブリッド運転比率がだんだん高くなってしまったとのちょっと心配なデータもでているようです。

EV用としての、急速充電器の普及、拡大、さらにその国際標準化に注目が集まっていますが、プラグインハイブリッドでは、家庭、オフィス駐車場での通常汎用コンセントに近い、安価で安全、安心なコンセントとそのIT化さらにはスマートメータ機能の標準化を急ぐ必要があります。競争と協調、充電インフラ、コネクター、IT活用、その標準化では、オープン化による協調路線が必要、GMなども、グローバルな低カーボン自動車への競争と協調路線に転換してくれることを期待しています。EVでもその使用電力量の大部分は、家庭か会社や役所の駐車場の長時間低パワー充電が使われる筈です。

アメリカでのLEAF

日産リーフのカットモデル
日産リーフのカットモデル

また、同時期に、日産リーフの発売発表もありました。Volt同様、EPAから燃費(電費)、クリーン度の公式値が発表されており、これはピュア電気自動車ですので、ガソリン換算の電費と航続距離として、99mpg(約42km/l)の電費、航続距離73mile(117km)となっています。
EPAでの燃費、電費の表示法は、販売店でのクルマのウインドーシールドに表示を義務づけているもので、数年前にプリウスなどのハイブリッド車や低燃費を売りとする小型車では、ユーザの実走行燃費と表示燃費の間にギャップが大きいとの訴えから、平均的ユーザの年間平均燃費にかなり近い値になるように算出法を改定したもので、これでも、冬の寒冷地でのヒータ運転、山岳路での登坂、大都市の渋滞走行ではこの航続距離を下回ることもあるように思います。

このようなEV車が、アメリカでどのように使われ、どのように評価され、クルマの実際の用途としてどれくらい代替できるかも注目点です。
GM Volt, 日産リーフの健闘を祈ります。

シボレー・ボルトの登場について

Chevrolet Volt
Chevrolet Volt

去る10月、政府からの多額の支援を受けなければならないほど追い込まれているGMが、起死回生の次世代環境自動車の切り札として今月販売を開始するChevrolet Voltの最終の技術概要が発表されました。しかし、その走行システムを巡って、アメリカのメディアや自動車の専門家から、これを電気自動車と言っているGMの言い方は嘘ではないかとの批判が起こっています。
さて、GMの肩を持つわけではありませんが、GMはかねてよりこのVoltは発電が主体ではあるもののガソリンエンジンを搭載したクルマであるということは述べており、その範疇でいえば広告戦略の一環としてこれを航続距離延長型電気自動車(Extended Range Electric Vehicle)というジャンルのクルマとして紹介すること自体は、大きく非難されるべき点ではないように私には思えます。

Voltの技術とそれに対する批判についての概要

現在のVoltに対する批判もしくは論争は、Voltに技術の詳細についての説明が発売寸前にまで遅れ、(私自身も含めた)多くの人々がVoltでは電気モーターのみでクルマを駆動するものだと思い込んでいたことに起因します。
以前より私が書いている事ですが、発電専用のエンジンを搭載し、そこから生まれる電気(とバッテリー)を利用してモーターで走るクルマは、シリーズ型と呼ばれる構想としては最も古くからあるハイブリッドシステムに分類されるものです。
クルマを駆動する機構、システム構成について、先ほどもいった通りGMはあまり公表してこなかったので、ネット等のニュース記事を鵜呑みにして、シリーズタイプのハイブリッドと思い込んでしまい、7月のブログではシリーズ型のハイブリッドと紹介してしまっていた。
しかし、いざふたを開けてみるとVoltは、プリウスのような遊星ギア機構を持ち、電池の充電量が少なくなった状態の高速走行においては、エンジンの出力を機械的にタイヤに伝えるという経路も用意されたものでした。これはVoltが、モーターのみで駆動するシリーズ型ハイブリッドではなく、モーターに加えてエンジンとモーターの両方が駆動に利用されるパラレルのパスも併せ持つ、プリウスなどのトヨタハイブリッドシステム(THS)に類似した、シリーズパラレルタイプの構成もっていることを意味します。(ハイブリッドシステムについては過去の記事をご覧ください。)
これをメディア等が「航続距離延長型電気自動車(Extended Range Electric Vehicle)と謳いながらも実態はハイブリッド車ではないか」と批判しているというのが、現在の構図です。

Voltのハイブリッドシステムの詳細

さて、私もまんまとVoltはシリーズタイプのハイブリッドと思い込んでいた訳ですが、おそらく批判をする人々と私では、これが明かされた際の反応は正反対のものとなったようです。私はVoltに対して、長距離の高速走行でもエンジン発電電力で全ての走行エネルギーをまかなおうとするシリーズハイブリッドとなるのであれば、パラレルタイプに比較しても効率悪化は免れず、老婆心ながらその燃費性能の悪化を心配していたからです。
また当初の流れた企画では、1リッター程度のエンジンからスタートしたのですが、開発が進むにつれてエンジン排気量を増やしエンジン出力を増加させており、実際の使い方では、大容量の電池を搭載してもそれを使い切った状態では発電電力量を大きくする必要があるのだろうとその発表に納得していました。
われわれも初代プリウスの開発の過程で、電池のエネルギーが使えなくなった時のシリーズパスはシミュレーションの想定以上に大きくとる必要があることを思い知らされ、突貫工事で出力アップ、発電能力アップを図り、やっと生産開始に間に合わせる苦労もしましたので、エンジン排気量を増加させ発電機の出力を高めてきたという流れは手に取るように解かります。
トヨタハイブリッドシステム(THS)は、THSがクラッチをもたず、モーターと発電機とエンジンを遊星ギアの3つの軸に常時接続の構成で、エンジンと発電機、それに駆動モーターの回転数やエネルギーフローを制御するパワースプリット方式でクルマを走らせています。これに対しVoltではクラッチを3つ持ち、その組み合わせで、従来からの触れ込みのように、エンジン発電機単独運転ができるように構成し、通常のシリーズハイブリッドとしても運転できるようにしています。この機構により、電池に充電エネルギーがある限りは電気自動車として走行させ、電池エネルギーが少なくなってくると、基本的にはシリーズ運転を行い、その状態で大きなクルマの駆動パワーが必要な登坂走行や、連続した高速走行ではシリーズ・パラレル運転に切り替え、パワーアップと効率向上を図ったものと推測されます。
このようにクルマの性能ひいては実用性を高めるために、シリーズハイブリッドありきで考えるのではなく、より高効率を求めてシリーズ・パラレルに切り替えたという判断はエンジニアとしては極めて妥当な判断だと私には思えます。

環境自動車に本当に必要な事とは?

ではこれからが本日のブログの本論です。たしかに、ハイブリッド構成に対するGMの情報公開は少なく、例えば日本版Wikipediaなどでもそうした記載があるように、これをシリーズ型だと誤解していた専門家も多かったようですが、この誤解を招いた「ある思い込み」の方が私には問題に思えます。それは「シリーズ型なのであれば電気自動車と名乗ってもよいが、シリーズ・パラレルなのであれば嘘なのではないか」という今回の批判に隠された、自動車としての性能や可能性を度外視した「電気自動車崇拝」に近いといってもいい観念です。
そもそも当初よりシリーズ型であってもエンジンを持つハイブリッドであることは明かだったのですが、シリーズか、パラレルか、はたまたシリーズ・パラレルかといった部分はお客様にとっても、また低カーボンを目指す環境自動車のポテンシャル指標として特に意味を持つものではありません。
環境性能にのみ考えたとしても、重要なのは走行時のクリーン度、燃費ポテンシャル、さらには低カーボン度という部分です。クルマが商品だという大前提に立てば、基本機能としても、走りや快適性、荷室スペースなどのユーティリティが従来車に劣らず、また価格的にもお客様の手に届く範囲に設定され、従来と同様に普通のクルマとして使え、デザイン含め買いたくなり、周囲に自慢したくなるクルマであければ、世に受け入れられるはずはありません。
またCO2の排出はグローバルな問題であり、走行中の排出レベルでその効果を判定するものでは無いことは明かです。プラグインハイブリッドであっても電気自動車あっても、その発電時の炭酸ガス排出も考慮に入れる必要があります。この点からは、日本はまだ優等生に近いレベルですが、例えばお隣の中国ではまだまだ電力は石炭火力が中心です。そのような国ではクルマを走らせるエネルギーと電力を利用すると、燃費効率の高いプリウスのようなフルハイブリッドの走行に比べてもその炭酸ガス排出は多くなってしまいます。さらに、中国の石炭火力発電では、発電時の亜硫酸ガスや窒素酸化物の排出量は日本のレベルよりも遙かに多く、そのガスが季節によっては西日本にも流れ込み、あらたな大気汚染源になってきていることにも注意を払う必要があります。アメリカでも中国ほどではありませんが、石炭火力の比率が大きく、プラグインハイブリッドでも、電気自動車でも、ガソリン消費の削減効果はありますが、炭酸ガス排出量の削減にはあまり効果はありません。もちろんゼロエミッションが理想であり、それに近づけるための努力はこれからも続ける必要がありますが、ゼロエミッション車を何台か従来車に置き換えるだけでは大気環境改善への効果は殆どなく、CO2削減効果を出すためには多くのクルマの環境性能を少しずつでも良くする方がはるかに効果があります。こう考えれば、システムがどうだとか、GMの説明は嘘をついたことになるといったような議論はどうでもよいことのように思います。

環境自動車にも健全な競争が必要

個人的には環境自動車としての進化をめざし、私が携わったプリウスにも同じハイブリッド自動車として、競い合う仲間ができたと歓迎しています。そう感じられたのはこのVoltが、上にも書いた通りこの車にGMのエンジニアが「しっかりと商品として成立するクルマ」を目指していることが伝わるクルマだったからです。ただしあえてここでは書きませんが、まだまだと思う所も多々あるので、またもう一人現れた競争相手を歓迎するといった印象ですね。
上で「電気自動車崇拝」などという言葉を使用しているので、私が電気自動車という技術そのものに反対していると取られる方がいるかもしれません。それは私にとって本意ではなく、私の意見は採用する駆動システムの如何に問わず、クルマとしての基本性能(安全性能を含む)が十分以上にあり、かつ競争力のある販売価格で売れるクルマで、その上で優れた環境性能を持つクルマがもっと現れてほしいというものです。そうした中で互いに技術的な競争をすることによってこそ、自動車技術の未来が開けてくるはずです。