ゴーン氏の言葉、EVと“Freedom of Mobility”

11/23日の一般公開を控えた東京モーターショーですが、昨日と今日が報道公開日とされ、各社の展示車、トップスピーチが様々なニュースとしてメディアに取り上げられています。

過去、一時は海外勢の撤退もあり海外メディアの東京パッシングの動きなどもありましたが、日本の自動車メーカーが、アベノミクス効果かどうかはさておき、円安の後押しもあって大幅な収益回復を果たし、また日本マーケットそのものも次世代環境技術、安全技術など自動車の先行きを占うイベントとして海外メディアからも再注目されてきていることはご同慶の至りです。今日のTVにも報道公開日にも関わらず大混雑しているシーンが流れていました。

インフラ未整備は本当にEV普及の最大の阻害要因?

この2013年東京モーターショー報道公開日の会場で、ルノー日産のカルロス・ゴーンCEOが電気自動車販売目標について以前のコミットメントであった2016年までに累計150万台を、2~3年達成期限を遅らせるとの発言し、またその理由として最大のEV普及の阻害要因としてあげた充電設備の未整備にあると述べました。

『電気自動車への投資、後悔していない=ゴーン日産自CEO』との見出しで、ロイター通信は伝えています。もちろん、電気自動車普及をギブアップしたわけではなく、目標達成時期が2~3年遅れるとしたうえで、充電設備の未整備が普及の障害となっており、さらに燃料電池車の普及にも水素インフラ不足という問題があると語っています。

カルロス・ゴーン氏は世界の自動車メーカートップの中でも際立つプレゼンスを示している人物であることを否定する人はいないでしょう。我々も次世代自動車関連トピックスの調査を継続して行っていますが、そのトピックスに登場する自動車メーカートップとして内容、件数ともにNO1のプレゼンスを示しています。EVについて長らくその旗振り役を振り続けたゴーン氏の発言は注目を集め、大きな影響力を持っています。

そういった立場にある方の発言として考えると、この発言には大きな疑問を抱かざるをえないものです。それはEV普及がうまくいない原因をインフラの未整備にすることで、EVが苦戦している最大の理由である航続距離の短さというまさに商品としてそして車として極めて重要な所から、意図的か意図的でないのかはわかりませんが、目を逸そうとしているように思えるからです。またこの論旨では、EV販売については最も充電インフラが進みかつ今後も投資が予定されている日本で急速に販売が鈍化しているにも関わらず、人口比・面積比ではインフラがまだまだなアメリカや欧州ではそこまでの落ち込みは見せていないことなどが説明できていません。

またインフラ整備が進んでいないというと、EV普及を政府等が支援するのが当然のように思えますが、発電時のCO2等を含めた議論では、必ずしもそれが好ましいという結論を出すことはできません。政府等がインフラ整備を含めてEV普及を後押しする際には、温暖化防止、大気環境保全等に大きく貢献し、またその財源をもたらす市民にとって利便性をもたらす必要があります。

“Freedom of Mobility”である車を守らなければ

先週のブログでご紹介した、フランスの自動車ラリー伝説の名ドライバー、ダルニッシュさんとの懇談でも、この電気自動車の今後、その中でゴーンさんの発言、その影響力が話題となりました。ダルニッシュさん自身は、反EV派ではありません。都市内での未成年者、お年寄りのモビリティ・ディバイド(公共交通機関が寂れ、移動する自由度が奪われ、差別化されてしまうこと)の対応として、日本でも話題になっている一人~二人乗りの超小型コミュータEVを使った新しい都市内モビリティの提唱者です。

そこでの議論も、先週のブログでも取り上げて“個人の自由な移動手段”としてのモビリティ、“Freedom of Mobility”の重要性です。しかし、最近フランスでも、環境命の政治家が増え、この“Freedom of Mobility”に聞く耳もたなくなってきていることへの心配をしていました。このような政治家にゴーンさんが影響を与えているのではとの話題です。

もちろん、地球温暖化、大気環境保全は、社会的要請です。次世代自動車として、この変革に取り組むことは必要条件です。しかし、人類の発展を支えた要素として、自動車が生まれる前からも“旅の自由=Freedom of Travel”があり、その手段として発達した二輪、三輪、四輪自動車による“Freedom of Mobility”が重要と信じています。この要素を発展させる前提として、自動車の持つネガティブインパクト低減に取り組んできました。ダルニッシュさんと、この意見で一致したのが、先週のブログですが、自動車会社トップがそれとは反対の方向で政治的働きかけを続けているとすると?どころではありません。

 私自身、トヨタ現役時代もトヨタ内の電気自動車開発担当に“何が目的のEV?”の議論をふっかけ、米国加州環境当局CARB ZEV規制立案スタッフとも議論してきました。またクリーンガソリンエンジン開発の社内プロジェクトリーダとしても、大気環境アセス研究にも首を突っ込み、またLEV/ULEV/SULEVといった略号だらけのゼロエミッションレベルにどんどん近づくクリーン車開発を続け、この後に担当することになったのがハイブリッドプリウスの開発です。

当時の無理やりZEV規制に対応するEVではこの“Freedom of Mobility”から逸脱してしまう、この“Freedom of Mobility”を維持する次世代自動車としてハイブリッド開発に注力しました。当時のトヨタ社内でも、ZEV当局者、こうしたブログや他の方面での私の発言を聞いた方からも、私はアンチEV派と見られているかもしれません。しかし決してアンチEV派でも、ハイブリッドと内燃エンジンにしがみついている旧守派ではないつもりです。

環境という化粧を落として、商品として勝負しなければ発展はない

RAV4EV、e-Com、Subaru eVステラ、三菱自アイミーブ、日産リーフ、Smart EV、MiniEV、BMW ActiveEなど様々なEVにも試乗してきました。その中では、クルマとして群を抜いていたのが日産リーフです。この量産化に取り組んだ開発エンジニアのハートを感じ、また量産自動車としての厳しい評価をパスして作り上げた自動車商品として評価できたのはこのリーフだけです。

そのクルマとしての完成度が高く、さらに都市内走行でのモーター駆動のポテンシャルの高さを感ずるだけに、急速充電までトライし、今のハイブリッドを含む内燃エンジン車を代替する次世代自動車としての限界をより強く感じました。もちろん、この航続距離の範囲内でコミューターとして使える用途としては十分満足できるクルマであることは間違いありません。

ただし、満足されて使われているユーザーに私の意見を押し付けるつもりはありませんが、こうしたコミューター用途は石油枯渇問題、大気環境問題、気候変動CO2問題とは別の、公共交通機関を含む輸送機関全体の問題として議論をすべきと思います。コミューター使用だけでは、間走行距離も少なく、今のクルマの代替としてのCO2削減効果は期待できません。これを混同すると方向を誤るように思います。その意味で、普及の障害を充電設備の未整備と責任転嫁することは大経営者として?に感じました。

このコミューター用途であれば、電動アシスト自転車、電動スクーター、超小型コミューター、シニアカーなどいろいろ候補あると思います。この用途ならば、排気がクリーンであることは前提ですが、なにもEVに限定する必要はないと思います。

いずれにせよ、事業採算性が問われ、これをクリアしなければ将来マーケット拡大はなく、これまた補助金をあてにしたプロジェクトでは先の発展はないことは、今の内燃エンジン車代替の次世代自動車と同じであることを銘記すべきです。

充電設備網の整備もまた政府資金頼り、補助金便りでは先はありませんし、そのつけは税金、電力料金として国民が負担することになります。エンジニアとして、その厳しいハードルにチャレンジし、乗り越えてこそ、世界をリードできる次世代自動車技術を創出することができると思います。

BMW ActiveEを借りてみました

今回は八重樫尚史が代打で更新します。

以前、アクアの納車を待つ間のつなぎとして、カーシェアに入会したことをお知らせしました。その時は、大手3社からカレコを選択して入会したと書きましたが、実はその後他の2社についても、月額料金の無い個人会員として入会をしています。

これは、カレコのサービス内容に不満があったということではなく、カーシェアに配備されている色々な車を乗り比べてみて、現在最ボリュームゾーンである小型車を乗り比べして、現時点での自動車の技術状況を自分の経験で感じようと考えたからです。その後、トヨタ、ホンダ、日産、マツダ、VW、Mini、BMWの主力小型車を借りて、自分なりに各社の方向性を探っている所です。

さて、そんな事をしている中、タイムズプラスからBMWの電気自動車ActiveEを導入したというリリースがありました。まさに自分の為といった感じで、先日早速借りて乗ってみました。今回は、それの感想を書いていきます。

出先で充電できない!

さて、今回カーシェアに導入されたという事ですが、通常のカーシェアとは少し違う方法での貸出となっています。カーシェアとレンタカーの最大の違いは、借出・返却時に窓口での手続きが無いということなのですが、今回の車はBMWが一般販売している車ではなく少量生産の市場テスト用の車である為か、予約は通常と同じですが(ただし、パック割引等は利用できない)、借出・返却時にタイムズプラスと提携をしているマツダレンタカーの窓口に行く形となっています。

予約を入れた池袋のマツダレンタカーに行くと、予約の確認後、簡単な説明を受けました。内容としては、満充電(98%)の状態で走行可能距離が約150km、ただし冷房等によってそれが短くなるということ、電源の入れ方とReady状態でドアを開けると電源が切れるということ等です。この時、少し面食らったのは、外の一般充電器で充電を行わないで下さいと言われたことです。PHEVならまだしも、EVで他の場所で充電できないということは行動半径が貸出拠点の50km内に限られるということを意味します。その日の予定は、都内での打合せのみだったので問題なかったのですが、実用で借りようという方は注意が必要です。

ただし、他の場所で充電させないというは、EV等の現状を知っている身としては当然の処置だと納得できるところがあります。因みに、その説明が会った際、もしかしたらドイツ等で採用されている3相系の充電口なのかと想像しましたが、実際には日本での通常充電で採用されている1相のJ1772でした。ですので、形状としては日本の通常充電器が使用できるはずなのですが、実は通常充電であっても車と充電器の相性等によってエラーが発生することは少なくありません。

駐車場に設置されたSIEMENS製充電器
駐車場に設置されたSIEMENS製充電器

勿論、通常充電の規格はIEC等で国際標準規格となっているのですが、アメリカでも日産のディーラーがGEの充電器でリーフを充電しないよう忠告していると報じられるなど、標準規格に適合しているからといって安心してどの充電器も使えるかというとそうではない状況です。日本では充電機器も日本メーカーのプラグイン車(EVやPHV)と適合するように作っていますが、BMWは現時点では日本で走らせるプラグイン車はタイムズプラスの4台だけですので、日本に配備されている充電機器との適合チェックを行うことは非現実的です。少し前に、急速充電の規格争いが新聞紙面を飾ったことがありましたが、個人的にはそれよりも、こうした通常充電の適合性の問題を解決することのほうが重要だと感じています。

ActiveEの装備

さて、充電の話が長くなってしまいましたが、ActiveEに戻ります。この車はBMWブランドとしては最も小型な1シリーズの2ドアクーペの車体を利用し、32kWhのリチウム・イオンバッテリーと125kWのモーターを搭載した電気自動車となります。BMWとしては小型ですが、EVとしては大型の部類に入ります。実際、車両重量は1850kgで、総重量としては2tを超える車となっており、バッテリーなどによって元の1シリーズクーペよりも300kg以上重量が多くなっています。

BMW-ActiveE
BMW ActiveE

可能な限りバッテリーを積んだというは外からでも確認ができ、元の1シリーズクーペには無いボンネット中央部の出っ張りの下には、リチウム・イオンバッテリーが搭載されています。また、ラゲージルームはおそらくはインバーターと思われる機器によって容量を奪われており、大型スーツケースだと一つも入らないかもしれません。

ボンネットの出っ張り
ボンネットの出っ張り
赤枠の部分がリチウム・イオンバッテリー
赤枠の部分がリチウム・イオンバッテリー
ラゲージルーム
ラゲージルーム

ただし32kWhという大容量の電池を搭載した分、航続可能距離は北米EPAモードで151kmを確保しており、今回乗車した感じでは実走でも近い数字が出そうです。(なお、日産リーフの北米EPAモード航続可能距離は117kmです。)

ActiveEで走ってみて

さてこのActiveE、貸出の際に特徴として、クリープが無いことを注意されました。重量が重すぎてクリープであまり動かないということではなく、緩やかな上り坂でブレーキを離すと下がる感覚がありますので、やはり「無い」と言ってもいいのだと思います。

重い車ですがアクセルを踏み込むと、驚くほど機敏に加速します。125kWのモーターの出力は168馬力とのことですが、EVの特徴として低速域からトルクが継続して出ますのでそれ以上の力を感じさせます。出力を制限して航続距離を伸ばす『Eco Pro』モードにすると加速感はやや少なくなりますが、都心のドライブとしては『Eco Pro』モードでも十分すぎるほどの加速を見せます。

さてEVに乗り慣れていない方にとって、最も驚くのはこのアクセルを離した時だと思います。アクセルを離すと、回生ブレーキが急激にかかり、車速がみるみる内に落ちていきます。基本的な乗り方としては、車速維持のためにはアクセルを少しだけ踏み続けるというスタイルになっているようです。私も、都心では殆どブレーキを踏むこと無く走るという状態でした。日本メーカーのHVやEVと異なって、ブレーキが回生協調となっていないので、回生エネルギーを取るためにはアクセルとブレーキの両方を離すということのようです。

同乗した方によるとTesla Roadstarも似たようなフィールで、その方が聞いたという言葉『常に2速で走っている感じ』というが、正に的を射たものだと感じました。あまりにも回生ブレーキが大きいので後続車に迷惑かと心配したのですが、ブレーキを踏まなくても減速量が大きいとブレーキランプが点灯する仕組みとなっているようです。

ActiveEの感想と懸念

さて正直に私の感想を述べたいと思います。「これで、2.0lや2.4lのエンジンが載っていたらいいな」ということです。なんのことはない、つまりそれは通常の1シリーズクーペそのものに他なりません。ただし、現状の120iのクーペの燃費を見るとJC08モードで13.4km/l、ハイスペックの135iはJC08モードで9.9km/lです。今後のことを考えると、少し厳しい燃費となります。(自分で購入するためという意味ではなく、規制の強化が進む中今後もこのような車を生産し販売し続けられるかという意味で)

私は上の走りと言う項目の中で、パワートレインの特性のみを述べ、敢えて操作性や車内の質感等の感想は述べませんでした。というのも、その部分は今回のActiveEの評価ではなく、あくまで元となった1シリーズクーペに対するものになるからです。(勿論、パワートレイン、重量の違いなどによって変化は大きいのですが)なお、その点でいえば上質で「さすがはBMW」と感じさせるものでした。

しかし、繰り返しになりますが、その部分はあくまで1シリーズクーペの質の良さから来ているものです。今回の乗車で私が感じたのは、ActiveEの完成度の低さでした。それは、上に書いた、クリープが無いことと、回生ブレーキをアクセルコントロールで行わせるという部分です。

こうした部分について「新しいEVなのだから、新しいフィールなのだ」「アクセルコントロールする技術を身につければ良い部分で、慣れればいいだけだ」という意見もあるかもしれません。しかしながら、私は断じて違うと考えています。もし、EVをこれから普及させようとするのであれば、今までのガソリン車やハイブリッド車に載っていたユーザーにアピールしなければなりません。その際に、「新しい乗り方に慣れろ」というのはあまりにも独善的であり、また慣れるまでの過渡期においては危険すらあります。

こういった感想はリーフが出ていなければ抱かなかったかもしれません。私は航続距離という点を除けば、リーフを非常に高く評価しています。リーフでは、こうしたそれまでのEVが持っていた違和感を消すことに成功しており、電池以外の側面で言えばそれまでの車のユーザーが突然乗り換えても違和感なく乗れる車に仕上げています。

クリープについても、ドイツ車はもともと弱く、VWのデュアルクラッチトランスミッションを搭載したゴルフ等では殆ど無いに近いので、欧州車の特徴とも言えるのですが、ストップ・アンド・ゴーの頻発する日本の、特に都市部の道路事情ではかなりストレスを抱かせるものです。

私が懸念するのは、このActiveEのこうした評価の難しさです。短期間の試乗しか行わなず(下手するとストップ・アンド・ゴーの殆ど無い試乗コース内で)、その上で例えばリーフの自然さを知らなければ、このEVシステム(はっきり言うとEVシステムとしては旧世代的なシステム)も「EVとはこういうもの」として納得してしまうかもしれず、BMWの通常車の質を知らなければ、「EVなのにこんなに上質だ」となってしまうかもしれません。

以前より、私は「EVは少数台作るのは簡単だが、優れた量産化EVを作るは難しい」といっています。リーフの自然さというはまさにその部分になります。以前のブログで弊社代表も回生ブレーキ制御は難しいという話をしていますが、この回生ブレーキ等の電気制御部分は、細かい積み重ねが必要で、長期間で大規模な開発投資が必要とされる分野です。またActiveEの評価の難しさを作っているボディやシャシーの質についても、BMWが長年に渡って築き上げたものであるのは、自動車好きであれば皆が知っていることです。

ただし、今回のActiveEはあくまでも実証実験用のテスト車であり、今後一般販売されることが予定されている車がこのシステムを踏襲するかどうかは解りません。個人的にはBMWが築きあげてきたブランドを守りながらEVに参入する為には、リーフやプリウスが搭載している回生協調ブレーキを導入してアクセルによる回生ブレーキによる減速感を大幅に減らし、制御によってクリープを付加して発進時のストレスを減らすなど、一層の努力が必要だと感じています。その点で言えば、BMWとトヨタの提携は、両社にとってメリットがあるものになりそうだとも思いました。

最後に、こうしたプロジェクトを行い、このような機会を与えてくれたタイムズプラスに感謝いたします。今後も、日本ではなかなか乗ることのできない車を導入していただけると嬉しいです。(勝手な要望ですが、Voltなんてどうですか?)ただし、申し訳ないですが、このActiveE、左ハンドルの完全に海外仕様で、上に書いたような違和感のある走行フィールですので、外国車に慣れた方やEVに慣れた方、覚悟を持った方以外にはお勧めしません。

ただ、カーシェアで色々な車に乗るのは、買う際の参考としても、趣味としてもオススメです。月会費無料で固定費のないプランも各社に用意されていますので、皆さんも一度試してみたらいかがでしょうか。

プリウスPHVの米国公式電費と燃費

アメリカでもプリウスPHVが販売開始しました

プリウスPHVが日本に続き、アメリカで連邦環境保護庁(EPA)とカリフォルニア州大気資源局(CARB)からの認証・認可を受けて3月から販売を開始しました。
販売開始後の販売実績としては3月911台、4月1,654台とまずまずのスタートを切っているようです。このうち4月の1,654台、電気自動車やGMシボレーボルト・レンジエクステンダー型電気自動車(これもエンジンを搭載したプラグインハイブリッドと認定当局は定義していますが)など、電気を外部電力で充電できるプラグイン自動車全体の販売台数3,595台でしたので、シェアとして46%を獲得しました。

アメリカの一部メディアでは、この数字を見て4月の販売台数が1,462台だったシボレーボルトが早くも抜かれたとかき立てていましたが、まだまだ僅かな台数の中での話です。また、この4月の販売台数には、これまで実証試験をおこなってきたパートナーや、プリウスをカンパニーカートして多量に使っていただいた会社関係への事前オーダーへの配車が主体で、今後拡大していけるかはこれからのことのようですので、アメリカにおけるプリウスPHVは今後要注目です。

図1米国電動自動車販売台数

上の表は、昨年のアメリカに置ける電動自動車の販売台数になります。昨年は、ノーマルハイブリッドを含む電動自動車の総数で286,367台、東日本大震災とタイ洪水の影響による日本製ハイブリッド車の深刻なタマ不足もありましたが、新車販売全体の伸びには追いつかなかったものの、2007年以来の増加に転じ、今年に入っても好調な販売を示しています。

しかし、シェアでは、2007年の2.99%から、トヨタの品質問題の影響が大きく尾を引き、2.22%へと後退しています。しかしながら今年に入り、電動自動車の販売台数が大きく回復、1月~4月のシェアも3.39%と2007年のピーク時を越えており、今年の台数、及びシェアでの記録更新が期待されます。

加えて今年は、Ford フュージョンハイブリッドのモデルチェンジ、日産アルティマ新ハイブリッド、ホンダアコードハイブリッド、さらにはトヨタRAV4EV、Ford フォーカスEV、ホンダ ジャズEV、アコードプラグインハイブリッドなど、新しいハイブリッド、プラグイン自動車が販売を予定していますので、これがどのように販売を伸ばしていくかに注目されます。世界最大の自動車市場であるアメリカの今後の販売実績が、以前触れた日本ハイブリッド車ガラパゴス論の正否を問うことになるでしょう。

しかし、この中で電池充電型自動車(以下プラグイン自動車と記述)のみ限ってその販売動向をみると、2011年通年でも17,731台に留まっています。電動自動車の中のシェアとしても6.19%とまだまだ次のサステーナブル自動車の担い手というにはほど遠い状況にありましたが、あらたな参入でマーケットがどう動くのか注目されます。

プリウスPHVのアメリカ基準燃費は?

さて、冒頭でも書きましたが、アメリカで自動車を販売するということは、プリウスPHVもアメリカでの公式電費、EV航続距離、ハイブリッド燃費、ハイブリッド航続距離が、排気、燃費の認定官庁である、連邦環境保護局(EPA)から発表されたということです。アメリカでは、このEPAから発表される公式値を、販売店ではクルマのフロントウインドーにEPAが示す指定の書式で作られてステッカーとして添付することが義務づけられており、別名ステッカー燃費とも呼ばれています。

このブログでも何度かご紹介しているように、このステッカーに記載する燃費値は、それまでの燃費表示値が、実際にユーザーが使った時に実現できる燃費からの解離が大きいとEPA自体が訴えられ、ユーザーの平均燃費にできるだけ近づくように2008年に、算出方法の大幅改定を受けたものです。

この際、EPAではかなり大がかりなユーザー燃費調査を行い、EPAの排気・燃費認証試験として行う、米国シティーモード、ハイウエーモードだけではない、寒冷地のCOを規定する零度C以下の低温試験、夏のエアコン運転を想定した試験、急加減速が含まれるアグレッシブドライブ燃費など、さまざまな走行データからユーザー燃費の平均値に近くなる調整方式を創り出しました。当然ながら、アメリカのユーザー燃費の平均に近く、これがまた日本のユーザー燃費にも近いものになっています。

電気自動車やプラグインハイブリッド車の電力消費評価にもエコラン等をあまり考慮に入れないこの測定方法を適用していますので、この季節の私の実走行データと比較しても充電量や燃費の結果からもやや悪めの値になりますが、冬のヒーター運転、夏のエアコン運転などを考慮に入れると年間アベレージとして結構一致する値となっているではないかと思います。

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図2 プリウスPHV EPAラベル

しかも、EPA公式燃費掲示サイトでは、走り方によりクルマの燃費は大きく変化すること、燃費向上小技集、そのクルマのユーザー燃費調査の結果なども表示されており、エコカー購入の参考データとして活用されています。さらにEPAサイトをいろいろ調べて見ると、補正前(non adjusted)の生の燃費計測結果と修正後(adjusted)が、米国シティーモード、ハイウエーモード、さらにそのミックスであるコンビ(combination)燃費まで知ることがきます。
http://www.fueleconomy.gov/
http://www.epa.gov/otaq/carlabel/index.htm
http://www.fueleconomy.gov/feg/download.shtml

プリウスプラグインの米国EPAのステッカーでは、シティー/ハイウエーのコンビモードとして、電池にエネルギーがあるプラグイン走行(この評価モードで短時間エンジンがかかり、そこで消費したガソリンと電費を合わせたデータとして表示)ガソリン換算95マイル/ガロン(リッター40.2km相当)と示されています。このときのプラグイン走行航続距離は11マイル(17.6km)と日本のJC08基準の26.4kmに比べるとかなり短い航続距離とされています。

電池の充電エネルギーを使い終わり、ガソリンだけで走るHV走行の燃費は、ノーマルプリウスと同じ50マイル/ガロン(リッター21.2km)が公式値です。日本向けと米国向けでは車両諸元が若干違いますが、日本の民間燃費サイトで報告されるユーザー燃費や、私が使っていた前のプラグインプリウスでの年間通算HV燃費の22.5km/lよりも少し悪い値となっています。そしてこれで、同クラスの従来車にくらべ、アメリカユーザーの平均的な走行距離走ったとして、ガソリン代を7600ドルセーブできると表示されています。
また、充電電力とガソリンの両方を使った航続距離として540マイル(894km)と表示されています。

ボルトやリーフと比較してどうなのか?

参考として、GMシボレーボルト、NissanリーフのEPAステッカーも併せて載せておきます。ここで面白いのは、プリウスプラグインのステッカーのプラグイン走行燃費95マイルガロンのところには、電気とガソリン両方でのガソリン換算コンビ値と表示されているのに対し、ボルト、リーフとも電気のみと表示してあるところです。

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図3 シボレー・ボルト EPAラベル
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図4 リーフ EPAラベル

前述のように、今のEPAのステッカー燃費算出には、大きな加速度で標準モードよりも高速を走行するモードが含まれていますので、どこかでエンジンが掛かり、電気とガソリンの両方と記述されたようです。しかし試験データの詳細を見れば、その時のガソリン消費量は燃費換算で0.2ガロン/100マイル、500マイル/ガロン(リッター402km相当)と、極一瞬だったようです。この辺にEPAの連中の厳密さが表れており、この組織と長いつきあいをしている私などはいかにも彼ららしいなと感じられた箇所でした。

さて、このステッカー比較の電力消費では、やはり純電気自動車のリーフが一番よく、99マイル/ガロン、次がプリウスの95、ボルトは93と表示されています。この航続距離では、ボルトが合わせて379マイル(606km)、リーフはバッテリーだけですので、EPA基準では77マイル(123km)となり、これまでの米国シティーモード基準、日本のJC08基準と比較して極めて厳しい数値となっています。

こういった公式ラベルで年間燃料代やガソリン代セーブ額まで、販売店の展示車にまで表示させるところがアメリカの面白いところです。ホンダがこのステッカーにも表示する燃費値を広告に使いその値と自分のクルマでの走行燃費にギャップがあると訴えられたのもアメリカならではと思いますが、こうしたEPAの厳しめの調整公式燃費しか広告にも使うことができないのに、何故訴えられたのか疑問です。

更にアメリカらしいのは、GMがサイトですぐ、このEPAの公表データを使ってプリウスPHVとボルトの使い方による燃費比較を報告しているところです。
http://gm-volt.com/
この比較については、また別の機会に報告したいと思います。

いずれにしても、電池を充電するプラグイン自動車の普及には、安く、安心して使える充電設備の普及、マンションなど集合住宅での充電設備整備、そして電池の寿命や価格など、普及には残存課題の克服が先決、さらにその充電電力低CO2化をどのように進めていくのか、将来エネルギー政策全体の中で普及シナリオを見直す必要がありそうです。

日本のハイブリッド車はガラパゴス?

シェアを大きく伸ばした日本のハイブリッド

3月7日の日経新聞電子版に「ハイブリッドに死角 車もガラパゴス化の懸念」という記事が掲載されました。ちょうど同日に、日本の2月度車種別販売台数が自販連から発表されたところで、それを意識した記事なのでしょう。

2月の車種別販売台数トップは、35,875台と9ヶ月連続でプリウス、2位はフィット、フィットはハイブリッド・従来ガソリン車の合計の数字でその内訳は不明ですが、4位につけたフリードとともにかなりの比率はハイブリッドと思います。さらに、昨年12月末に発売を開始した、トヨタの小型ハイブリッド車アクアが1月の4位から21,951台の3位への躍進を遂げています。

昨年の統計では、日本の新車販売台数に占めるハイブリッドの割合は、通年で10.8%と初めて10%の大台を超えました。メーカー別でみると、やはりトヨタ/レクサス車のハイブリッド比率が高く、2011年通年で30.8%、続いてホンダの28.4%と後半のフィット・シャトルHV、フリードHVの投入でインサイトの落ち込みをカバーし、高いHVシェアを占めています。

今年に入ってエコカー補助金が決まり、1月、2月とエコカーの販売が伸び、1月にはトヨタ/レクサス車としてHVシェア50%を記録、この伸びもあって日本全体での1月の新車販売台数に占めるHVシェアは20%を越えたようです。

このように日本では、1997年12月のハイブリッド車プリウスの発売以来、14年にして、お客様の懐にも、そして環境にも優しい(私自身、この言葉を使うのはあまり好きではありませんが)至極普通のエコカーとして、お客様に受け入れていただくようになったことに感慨を深くしています。

海外でのハイブリッドの現状

そこでの、「ハイブリッドに死角 車もガラパゴス化の懸念」との記事です。確かに、今の瞬間風速としては、日本だけが突出してはハイブリッド車のシェアが高まっています。中国は、国策として複雑で高度な技術を必要とするハイブリッドをスキップして、一気に電気自動車の普及を計るとの報道も流れており、リチウムイオン電池の開発にも国を挙げて取り組み、自国ブランドのさまざまな電気自動車を開発し、実証試験を行っていると報道されていました。

その電気自動車の販売台数はすでにハイブリッド車を越えたとの報道もありました。確かに、中国自動車工業会によると、2011年のハイブリッド車販売台数は2.556台、これに対し電気自動車5.579台とEVがHVの2倍以上となっています。
また、様々な地方都市で電気バス、小型電気自動車の実証プロジェクトがスタートしていますので、この発表された販売台数の数字がどのような定義なのか、一般販売をおこなって通常の方が購入しているか、それとも公費を利用した実証プロジェクトで使っているクルマをカウントしているのか、不明なところも多く、実態はなかなか見えて来ません。

しかし、中国の2011年の新車販売台数は1,850万台にもなり、その中の数千台ですから、ハイブリッドも電気自動車もまだまったく量産マーケットとしては存在せず、マーケット議論の対象外と言っても良いでしょう。

またアメリカでも日本ほどハイブリッド車シェアが伸びている訳ではありません。ハイブリッド車の販売台数が352,274台、そのシェアが2.99%を記録した2007年から2010年まで、販売台数、ハイブリッドシェアとも下降線を辿ってきたことも事実です。

電動自動車全体としても昨年、電気自動車の日産LEAFとレンジ・エクステンダー型電気自動車と自称しているプラグインハイブリッド自動車GM VOLTの発売もあって、2010年の274,175台から286,367台と下降を食い止めたようですが、自動車販売台数全体が大きく伸びたこともあって、シェアは2.37%から2.25%とさらに下がってしまいました。

欧州ではどうでしょうか?欧州単独でのEV/HV販売台数の数値は掴んでいませんが、日本のように多くはなく、従ってシェアもまだ低い状態です。しかし、プリウスは一目で見分けがつくせいもありますが、フランス、UK、ベルギー、スウェーデンではちょくちょく見かけくらい走っています。残念ながら、ドイツに移動するとぐっと少なくなってしまいますが、ドイツの無制限区間もあるアウトバーンを持つドイツは特殊な世界です。

世界全体のEV/HV販売台数統計は、2010年4月~2011年3月(2010会計年度)のデータがWARDSAUTOという、自動車情報サイトにありましたので紹介します。

この統計では、世界全体のEV/HV販売台数総数は930,662台。トヨタとホンダのHVで全体の95%を占め、他のHVとしてランクインするのはFord Fusion Hybridだけ、後はMitsubishi i-MiEV、Nissan LeafのEVが登場とするなど、日本勢のオンパレードです。

この状態が続くと仮定すれば、この記事のガラパゴス化との記事を載せたくなるのも理解できないではありません。さらに、最新ニュースで、2010年末にGM復活のシンボル、オバマ大統領グリーンニューディール政策の目玉として発売を開始したレンジ・エクステンダー型電気自動車VOLTの販売が今年になっても好転せず、4月末まで生産を休止すると伝えられました。

VOLTは日本勢のHV/PHVに対する強力な競争相手になり、競い合うことで次世代自動車マーケットの活性化を期待していましたが、今のところ期待外れの結果となっているようです。

大型車回帰で経営状況を回復したアメリカメーカー

2011年のアメリカでの車種別販売台数トップはFordのFシリーズピックアップトラックです。さらに、上位にはGM Silverado、Chrysler Ramといったピックアップトラックや、大型SUVが並んでいます。確かに、アメリカには、この手のフルサイズ・ピックアップトラックや大型SUVが似合うことは確かです。

ですが、このV8エンジンを搭載するFシリーズピックアップトラックの、アメリカ連邦環境保護庁(EPA)が公表する、アメリカのカタログ燃費はリッター換算で5.9km、アメリカのカタログ燃費は2008年にユーザーが実際に実現できる実走行燃費の平均値に近づくように改定されていますので、これが実燃費とすると、月に2000km程度を走行するユーザーは月に350リッター程度のガソリンを使うことになってしまいます。

図1 2011年車種別販売NO1 FORD Fシリーズ
2011年米国車種別販売
NO1 FORD Fシリーズ

原油の高騰が引き金でプリウスなど日本勢のHVが販売台数を伸ばし始めた2005年5月、あるアメリカの調査会社が、フルサイズ・ピックアップトラックや大型SUVにその収益源を頼っている当時のBig3への警告レポートを発表しました。
そこではBig3の社債を、なんと私の名を取って“Yaegashi Bonds”(ヤエガシ債)と命名すべきだとの書き出しでした。永く続いた安い石油価格の次回に収益率の高いに大型車に頼り、原油高騰と低CO2自動車への転換に遅れをとったBig3の社債はジャンクボンドになるとの警告です。
HVのシンボルとしてでしょうが、私には何の挨拶もなく自分の名前がネガティブなイメージで付けられ、それが日本にも配信され、とんだとばっちりをうけた格好になってしまいました。
http://upload.democraticunderground.com/discuss/duboard.php?az=view_all&address=115×23574

バブルがはじけ、大金融危機リーマンショックがやってきたのが、それから3年後の2008年9月、ちょうどその9月にGMの前社長ワグナー氏がその最中、創立記念日のイベントでVOLTの発表を行いました。それから、1年もたたない間に、GMは倒産し、文字通りのジャンクボンドになってしまいました。

今また、のど元すぎれば熱さを忘れるではないですが、リーマンショック後、ガソリン価格が一時的に低迷、大型ブームの再来、その後押しで復活を果たしているのがGM/Fordの現状です。この収益を確保出来ている間に、3度目の正直、低燃費車に舵を切れるかが本当に復活できるかの鍵だと思います。ガソリン価格がじわじわと上がり、この大型車ブームも続かない見通しです。

図にアメリカエネルギー省(DOE)の部局であるエネルギー情報局(EIA)発表の、1990年から現在までの全米ガソリン小売価格の推移を示します。

第2次石油ショック後、2000年ごろまでは安定的に、水よりも遙かに安いガロン(3.79リットル)当たり1ドルレベル(1990年10月の為替レートで130円/$:リッター35円程度)をキープ、その後、中東不安、大型台風による精油所被害、さらに中国などのモータリゼーションによる需要増、在来油田の枯渇などで急上昇し、リーマン後の景気後退で一時大幅に低下しましたが、またこのところ上昇を続け、ガロン4ドル(今の円レート81円/$でリッター85円)の大台に近づいています。

アメリカの平均的な年間走行距離は日本の2倍近いですので、週1回満タン、中型車20ガロンで80$は頭の痛い出費です。

この影響もあり、東日本大震災の影響を脱した昨年後半から、アメリカでのHV販売台数が大幅に増加し始め、またFord Fusion Hybrid、日産アルティマハイブリッド、さらにはプリウスC(日本名アクア)の発売でHVマーケットも活況を呈しそうです。

「ダウンサイジング」だけで乗り切れる?

日経の記事によると、中国での「ダウンサイジング」を取り上げています。V8をV6に、V6を4気筒になどエンジン気筒数を減らし、排気量を小さくし、通常の走行領域を熱効率の高いゾーン(低燃費ゾーン)にもってくる考え方です。低下する出力やトルクを、ターボチャージャーやスーパーチャージャーなど過給器で補う方式がその一つです。
しかし、低燃費のためのダウンサイジングは定番中の定番で、ハイブリッド化による低燃費の考え方にも「ダウンサイジング」がしっかり入っています。ハイブリッドでの電池アシストも同様の考え方です。もう一つの「ダウンサイジング」がクルマ自体を小さく、軽量化し、低燃費を実現する「ダウンサイジング」です。これも低燃費の実現の為には王道の手段です。

ただし、過去に石油ショックの時代にそれをやって失敗したのがGM/FORDのアメリカBig3でした。小型化したキャデラックなどはまったく売れず、その隙をついて販売を伸ばしたのがトヨタ、日産、ホンダの日本勢でした。
当時もエネルギー安全保証として燃費規制が導入されましたが、社会要請に応えつつ、結局はお客様が良い意味でのサプライズを感じ、満足いただける商品が普及の前提、エコだけで多くのお客様に満足いただくことは出来ません。

中国でもEV/HVが普及出来ない理由も、まだ経済的にも、商品魅力の点でも、また品質的にもまだまだお客様にとって満足できるEV/HVが提供できていないことが最大の理由です。しかしながら、昨年の年間販売台数が1,850万台を越え、2020年には4,000万台を予測する記事も見かけますが、この急激に増加する自動車を走らせる燃料をこのままでは供給できなる可能性が高く、また世界経済、世界の環境に大きなダメージを与える危険性が高まっています。

大幅な石油消費の削減が待ったなし、従来技術の延長での「ダウンサイジング」だけで乗り切れないことは明かでしょう。EV/HVはあくまでもクルマの商品機能とのトレードオフをさせずに燃費効率を高める手段の一つであり、その中核に「ダウンサイジング」の考え方があり、お客様が満足する「ダウンサイジング」をEV/HVそして車両技術の進化で競い合うのがこれからの自動車だと思います。

ちなみに、中国のガソリン価格は、すこしずつ上昇してきていると言ってもまだリッター100円以下、ガソリン価格がここまで安いのはEV/HV普及を妨げる要因にもなりますが、このまま低価格を維持できる筈はありません。

しっかりとしたクルマを作っていけば「ガラパゴス化」は無い

欧州でもユーロ安の影響もあり、燃料価格がじわじわと上がっており、2月のフランスでのガソリン価格としてはリッター1.6ユーロと史上最高値に近づき、また厳しいCO2規制もあって低燃費車競争はさらに激烈さを増しています。

また、今の電池技術では、EVが今のクルマに変わり、世界全体の石油消費削減を果たすには力不足、しっかりと技術と品質、さらにマーケットを踏まえた利口な「ダウンサイジング」がいまこそ求められていますので、決して日本のハイブリッドがガラパゴス化の道を歩むことはなく、日本が次世代車の「パイロット」マーケットとして、世界をリードしていけると確信しています。

しかし、その条件は技術、品質、経済的にも、商品魅力としてもお客様に強く支持いただける商品を提供し続けることが前提です。クルマはグローバル商品、日本だけしか通用しないカタログ燃費、いまだに残る軽のカテゴリー、本当に石油消費削減に役にたっているかどうか判らない補助金制度などを当てにした日本専用車など井の中の蛙の商品ではなく、また「会社」の都合、一時的な収益の浮沈に目を奪われず、グローバルとして通用するクルマを作り続ける限り、ガラパゴス化を招くことはないと思います。

モビリティ新時代へ

2011年の自動車販売台数 ―日本勢・次世代自動車の苦戦―

2012年に入り一月が経ち、昨年の新車販売台数などの自動車マーケットの統計データがいろいろ公表されてきています。世界の新車販売台数は、データの出所とカウントの仕方によって僅かなブレなどもありますが、史上最高をまた更新したのは間違いなく、前年比4%の7,750万台ほどのようです。一方、日本国内については、甚大な大震災の被害と、秋のタイ大洪水による影響によって421万台と1980年代の始めの水準にまで落ち込んでしまいました。この大震災・大洪水の直撃を受けたトヨタ、ホンダは減産により大きく生産&販売台数を落としました。

また、ハイブリッド車(HV)・電気自動車(EV)といういわゆる次世代自動車の販売については、日本にはなかなか情報が伝わってはいませんが、世界全体の販売は伸び悩みを続けています。統計データが発表されているアメリカでは、リーマンショック後の自動車マーケット縮小とトヨタ車リコール問題の影響で、2008年をHVの年間販売台数が低下し続けています。一昨年末に発売を開始したGMのプラグインハイブリッド車(PHEV、ただし彼らはレンジテンダー型電気自動車:EREV“Extended Range Electric Vehicleと呼んでいます)Voltの発売を開始、また日産もEVのリーフを発売し、HV/EV時代の到来と言われましたが、北米販売台数は合わせても2万台には届きませんでした。

昨年のアメリカは景気回復気配とリーマン後の販売減少の揺り戻しの影響もあり、新車販売台数は2010年の1,160万台から2011年1,280万台への100万台以上も増加しましたが、その中でHVは5000台減、HVとEV合わせても1.6万台増の286,000台のシェア2.25%に留まっています。

http://www.electricdrive.org/index.php?ht=d/sp/i/20952/pid/20952
(EDTA: Electric Drive Transportation Association HP)

販売回復が期待できる2012年

しかし、年をまたいだ今年は日本では補助金復活の後押しもあり、1月の新車販売台数では日本は前年比36%増を記録しました。もっとも昨年1月はエコカー補助金の打ち切りの影響から大きく落ち込んだ月ではありましたが、とはいえこれは明るい希望を抱かせるものであり、年間販売も500万台の大台に復活することが予想されています。

日本の自動車保有台数は約7,500万台ですから、平均保有期間が15年とすると年500万台ずつの代替マーケットになり、不景気等の影響で保有期間が長期化しているものの、年間500万台超の販売は十分に期待できる数字です。

アメリカの1月の新車販売台数も昨年比11.4%増で、年換算では1400万台越えを見据える数字で、大震災、タイの大洪水の影響から脱した日本勢も販売台数を回復させてきているというデータが出ています。中国のデータはまだ判りませんが、今年は2000万台越えとの景気の良い声も聞こえてきますので、世界全体では8,000万台越えが期待されています。

とはいえ、この世界販売の98%以上が従来車(ガソリンエンジン車もしくはディーゼルエンジン車)であり、まだHV、EVは全体では2%も占めてはいませんので、メディア等で伝えられる次世代自動車の情報の多さの割には、日本以外はまだまだ大きな動きにはなっていなかったというのが実際のところです。

一方日本では今まで販売された次世代自動車の大部分が日本メーカーのクルマで、この15年、日本勢がパイオニアとしてこの次世代自動車普及をリードしてきたということもあり、他国に比べて次世代自動車比率が高い状況となっています。最初に記したように、大震災、タイ大洪水の影響も大きく受け、全体での新車販売台数は大きく減少し、台数ベースではHVとEVもまた減少しましたが、シェアは大きく伸び、通年でも10%を越えた模様です。11月には、単月で14%を越え、HVはもはや“普通のクルマ”となり、EVであるリーフやアイミーブも時々見かけるようになりました。

また、昨年12月26日に発売を開始したトヨタの小型ハイブリッド車アクアの受注は、1月末には12万台を越え、補助金の後押しがあるとは言え、このクラスの本格ハイブリッド車への期待の大きさを今更ながら証明することとなりました。

「普及」の大切さ

ここまで販売台数についてのお話をしてきました。こういった販売台数データというと、どちらかというと企業の業績や状況を見極めるといった、経済ニュースの範疇で扱われているものです。いっぽう次世代車というと、新技術や未来性などを中心として取り上げられる機会が多く、その後の販売台数推移などは、大ヒットをしたという流行商品としてという場合以外においては、関連付けて語られる機会が少ないように感じています。

しかしながら、次世代車の本質を考えると、販売台数は非常に重要な事項です。というのも、次世代車が担うとされている化石資源利用の低減や環境負荷の低下は、従来自動車を数多く置き換えることによってのみ、大きな効果をもつものだからです。

私は以前より講演会等で繰り返し
「環境性能チャンピオンのプロトを作り、テストコースを走らせることは簡単」
「いくら環境性能がチャンピオンでも、ショールームの展示用や、車庫で埃をかぶり滅多に使われない車ではエネルギー保全、環境保全には貢献しません」
「普及しうるエコカーとして、21世紀の先駆けとしてハイブリッド自動車プリウスを開発し、その進化に取り組んできました」
と言い歩いてきました。

日本では、ハイブリッド車が普通のクルマになってきましたが、世界ではこれからが本番、これまでは及び腰だった欧米勢の本気で開発に取り組み、また韓国勢の追い上げも激しく、EVも含めやっと普及に向けた次世代自動車の本格開発競争時代を迎えたと思っています。

日本のマーケットから世界のマーケットへ

自動車産業がいかにグローバルビジネスと云えども、自国のマーケットが元気にならなければ、次世代自動車転換への開発陣も元気にはなれません。自国マーケットが活性化し、そのユーザー、販売店、サービスとの密なコミュニケーション、さらに激烈な競争の中で磨かれて商品は進化していきます。図に1990年以降の日本での車両販売台数推移を示します。

この20年、右肩さがり、昨年は大震災による減産の影響も大きいとは云え、1990年の55%にも届いてはいません。この中で、海外生産比率を増やしながらもハイブリッド車などで輸出台数をキープしつつ、グローバルな成長を計ってきたのが日本の自動車産業です。

この図をみていても、日本社会の経済成長の停滞が如実に判ります。乗用車以上に、貨物車、商用車の販売台数が減少しています。クルマの使用期間が長期化し、また人流、物流ともに縮小してきた日本経済の縮図を見るようです。復興の本格化と、景気回復で人流、物流が活発化することをきっかけに、相乗効果で経済成長を果たし、日本を元気にして欲しいものです。

この中で、自動車マーケットが活性化し、その中で必然的にハイブリッド車、電気自動車シェアが増加していくことが、保有台数の中での次世代自動車比率増加に繋がって行きます。日本がその転換をリードするパイオニアマーケットとなることにより、世界の次世代自動車、モビリティ新時代転換のリード役を続けられるように思います。

一方で、10%のシェアを超えたことは、一部のハイブリッド車だけで普及拡大を図ることからの転換期を迎えたとの見方もできると思います。
乗用車、商用車でもミニバン、ステーションワゴン、SUV、スポーツカーなど、さまざまなジャンル毎に、その用途に応じ、エコ性能は当たり前として、それ以外の走行性能、フィーリング、さらには価格としてお客様に受け入れられるクルマが求められます。大型トラックなど物流用のクルマももっと低燃費、低CO2なクルマへの切り替えが必要です。

しかし現状ではこのような様々なジャンルまでへの品揃えにはまだなってはいません。グローバルマーケットでは、さらにその用途とクルマの性能への要求は多様です。もちろん、日本マーケット限定のガラパゴス次世代自動車では世界をリードできません。様々なジャンル、様々なマーケットでの要求に応える次世代自動車の開発はこれからです。今年が、日本勢が“やせ馬の先走り”にならず、これまでのアドバンテージを生かし次世代自動車転換をリードできるかどうかの転換点になる予感がします。

今年こそ、国内マーケットが活性化し、経済的にも明るい年になることを期待していますが、台数増だけに浮かれすぎず、その中で次世代自動車への次ぎの手、技術進化と様々なジャンルへの展開に手を抜くことなく取り組んでこそ、モビリティ新時代を担い続けられると思います。

次世代自動車のゆくえ

増え続ける自動車

2011年の世界新車販売台数はまた世界新記録を記録したようです。8000万の大台には届かなかったようですが、リーマンショックで先進国の販売が大幅に落ち込んだ2009年を除けば近年、世界の自動車販売台数は毎年新記録更新を続けています。自動車保有台数もこれにつれて増加の一途をたどっており、統計値が確認できた2009年で9.65億台ですので、2010年には間違いなく10億台を越えていると思います。

国別では、中国が1850万台と3年連続のトップ、2位のアメリカがリーマンショックから回復基調にあり1280万台を記録しましたが、史上最高を記録した2000年の1740万台からはほど遠い状況です。日本は、大震災やタイの洪水による減産の影響が大きく、含軽で421万台と1980年代初めのレベルとなってしまいました。保有台数(2009年)では、アメリカが2.48億台とトップを維持し、日本が0.73億台と2009年までは2位をキープしていましたが、現在では中国に抜かれています。

自動車の普及率では、アメリカが人口1000人あたり809台、この数字には赤ん坊や子供まで入っていますので、成人一人一台、日本、中国はそれぞれ579台、45台(2009年統計)となっています。中国はまだ日本の10分の1以下の普及率、昨年の中国新車販売台数が13年ぶりの低い伸び率とはいえ、史上最高の1850万台を記録し、経済成長につれさらに大きく伸びていくことは間違いないでしょう。

この10億台を越える自動車の燃料として、99%がガソリン、または油の石油液体燃料を使って走っています。深海油田からの採掘、シェールガスならぬ、シェールオイルなど在来型ではない石油生産も増えていますが、この保有台数の伸びに供給が追いつかなくなることが強く懸念されています、いわゆるピークオイルの到来です。この数年は世界不況により、石油需要が頭打ちになっていますが、それでもリビア、イラク、イランなど産油国の政情不安に石油価格が敏感に反応するなど、需給バランスが非常にタイトになってきていることは確かです。景気に少しでも明るさが出ると、原油価格が跳ね上がる構造となっています。

今年の日本は何年ぶりかに寒く、豪雪が続く冬になり、これで地球温暖化?との疑問もわいてきますが、世界全体ではやはり温暖化傾向が続いているようです。温暖化ガスの主因と云われるCO2ガスの排出削減への取り組みもさらに強めることが待ったなしでしょう。

海外の次世代自動車の状況

1997年12月のハイブリッド車プリウスの発売で幕を開いた次世代環境自動車が、一昨年の三菱i-MiEV、日産LEAF、さらにはGM復活の切り札としてアメリカで発売を開始したレンジ・エステンダー・電気自動車(Extended Range Electric Vehicle :EREV)と名付けた外部充電型ハイブリッド車GM シボレー・ボルトの発売で、2011年はハイブリッド車普及拡大と電気自動車への転換への期待が高まってきました。日本では、大震災、タイの洪水の影響も大きく、新車販売台数は大きく減少してしまいましたが、新車販売台数に占める、ハイブリッド車、電気自動車の比率は着実に増加し、昨年11月には14%を越え、通年では台数こそ減少しましたが、2010年の9.7%から10.8%へと拡大したようです。また、様々な低燃費自動車の投入により、日本全体のガソリン消費量は1990年代後半から減少に転じています。まだ、ハイブリッド車など次世代自動車が石油消費の削減に大きく寄与するまでには至っていませんが、社会全体の省エネでも日本がその技術をリードしてきたように、次世代自動車の普及でも世界をリードしています。
 
しかし、目を日本以外に転ずると、不況対策、雇用対策として日本以上にこの次世代自動車開発、購入に国費が投入されているにも係わらず、またメディアがエコ自動車ブームと大きく取り上げているにも係わらず、次世代自動車の普及は遅々として進んでいない現状が明かになってきます。最近の中国のニュースで中国自動車工業会の発表として、2011年中国の電気自動車、ハイブリッド自動車の登録台数が配信されました。
http://www.chinapress.jp/consumption/28800/
それによると、中国メーカー製にはかなりの補助があるにも係わらず、1850万台中の電気自動車が5579台、ハイブリッド車が2580台、総計でも8159台と量産販売とは程遠く、これでは広報活動用とも言えない状況に愕然としました。

中国中央政府の政策としてハイブリッド車をスキップして電気自動車の実用化を優先させることを決めていましたが、昨年6月に路線バスを除き、今の電池技術では一気に電気自動車を普及させることは困難として、ハイブリッド車にも力をいれるとの政策転換を発表しました。その背景にはこの販売状況の現実があったのではと推測しています。

この中国ほどではありませんが、アメリカも同様な状況にあます。一時は原油高騰によるガソリン価格の上昇が追い風となりハイブリッド車の販売が増加しましたが、2008年秋のリーマンショック、さらにトヨタの品質問題、プリウスのブレーキリコール騒ぎなどが響き減少に転じ、また今年は東日本大震災による減産から、トヨタ、ホンダのハイブリッド車販売がさらに減少してしまいました。台数とシェアでは2007年の35万台、2.9%から、昨年の26.9万台、2.25%への減少です。

今日のニュースで、連邦運輸省(DOT)の依頼で、電子制御システム不具合と疑われたトヨタ車の暴走事故調査を行っていた米国科学アカデミーが、電子制御システムは白と発表しました。これで、連邦航空宇宙局NASAの調査に続く、白の発表です。これで暴走事故に関して大勢が決した感がありますが、この問題がトヨタだけではなくハイブリッド技術普及に水を差したのは間違いなく、非常に残念でなりません。

GM再生のシンボルとして鳴り物入りで発売を開始したボルトは、昨年の販売台数は7671台と月1000台にも達しない状態、日産リーフはこれを上回る10061台を記録していますが、前ブッシュ大統領が2007年年頭教書で述べた“アメリカ人のガソリン中毒(Gasoline addiction)”の症状は替わらず、オバマ大統領が今年の年頭教書で強調した2015年電気自動車/プラグインハイブリッド自動車100万台シナリオもこのままでは達成困難な状況です。

他は推して知るべし、欧州もこの不況とユーロ安、円高で日本車のシェアは低下、ハイブリッド車の販売も減少している状況です。電気自動車では、ルノーの小型バン“カングー”、PSAがi-MiEV のOEMである「iOn」を発売しましたが、郵便会社や公共団体フリート、さらにはEVカーシェア用などその殆どは法人用で、保有台数の大部分を占める個人の購入は少ないようです。

これからの次世代自動車の競争に向けて

石油消費の削減、自動車からのCO2排出を減らしていくには、上の図1に示す世界で使われている自動車(保有台数)を、次世代環境車に置き換えて、そのシェアを増やしていくことが必要です。次世代自動車の中では、ハイブリッド車が圧倒的シェアを持ち、これまでは世界のシェア90%以上が日本勢、その中でもトヨタ/レクサスのハイブリッド車が70%シェアを示していましたが、昨年後半から少し事情が変ってきたようです。ことし2月にアメリカで発売を開始したヒュンダイ車のソナタハイブリッドが売れ行きを伸ばしています。日本勢が大震災、タイの水害で減産を余儀なくされ、さらに円高の影響もあると思いますが、燃費性能でもスタイルでも、さらに品質でも日本勢のハイブリッドに肉薄してきています。今年1月に開催されたデトロイトでの北米モーターショーでも、さまざまなハイブリッド車、プラグインハイブリッド車、電気自動車の発表と展示がありました。

日本では、トヨタの小型ハイブリッド車アクアの受注が好調とか、また間もなくプリウスPHVも発売を開始します。日産からシーマハイブリッド、ホンダからはアコードPHVの発売も噂されています。加えてEVについても、各社からの発売が予告されています。日本では、震災復興需要や昨年の減産のカバー、さらにエコカー減税の継続などで、2008年以来となる500万台越えの新車販売と予測され、ハイブリッド車/電気自動車のシェアが15%~20%への拡大が期待されています。

いよいよ世界マーケットでは、本格的なハイブリッド自動車・電気自動車普及を目指す大競争時代突入の予感がします。ポスト石油、低CO2の持続可能な自動車への変換はまだこれからが本番です。これまでは、日本勢がリードしてきましたが、そう簡単にリードし続けられるほど世の中は甘くはありません。われわれは、欧米勢の背中を追いかけながら、なんとか追い抜きたいとチャレンジを続け、ハイブリッド車として結実させることができましたが僅かのリードです。

日本勢がリードを続けるためには、イノベーション技術へのチャレンジと“もの作り技術”の結集、その上で欧米勢、韓国勢に負けない戦略的かつスピーディな経営マネージに掛かっています。もちろんイノベーション技術へのチャレンジと言っても、技術屋の自己満足ではなく、環境性能の高さは当たり前として、クルマの基本性能、スタイル、商品機能では言い訳のない、またお客様に何かサプライズを与えられる時代を半歩リードするクルマを作り上げることが競争の原点です。日本マーケットが世界のパイロットとして、次世代自動車競争をリードし続けることが、次世代自動車の普及拡大を牽引することになります。今年はプリウス発売から15年目の節目の年、家電産業の二の舞にならないように、また負け馬の先走り、日本自動車産業衰退の潮目の年と云われないように、日本勢の奮闘に期待します。

LEAFをレンタカーで借りてみました

先日、日産LEAFをレンタカーとして借り、都心をドライブしてみましたので、今日はその雑感を書いていこうかと思います。

本当は今年のはじめの、出始めに借りようとは思っていたのですが、なかなか上手くその時間が取れず、ようやく実際にその実力を見る機会を得ました。もちろん、様々試乗会など(ディーラーのものも含めて)もあって、ただ乗るだけであればいくらでも機会があったのですが、僕としては自動車、特にプラグイン自動車に関しては、自由度と利便性を測るためにもある程度の時間を自由に自分の意図で乗ってこそ真価が図れるものと考えています。ですので、出来る限りレンタカーなどで借りて、自由に乗ってからそのクルマを判断しようとの意図のもと、今回も短いですが半日の時間を取って乗ってみることにしました。

なお、僕は電気自動車(EV)、プラグインハイブリッド車(PH(e)V)などの情報に日常的に接する環境にいますので、LEAFが完成度の高いEVであるとは知っており、また三菱のiMievやスバルのプラグインステラのドライブ経験がありますので、ある程度はEVの特性も知っていたという前提の印象の点はまず留意していただけると幸いです。

実際利用してみての印象は?

さて、乗ってみての最初の印象ですが、都心および都市高速(首都高・京葉道路)を走ったところ、走りの点に関しては評判通り、全く不満の無いものだと思います。もちろん、これは走りそのものを目的としたスポーツカーや高級サルーンではないので、おそらくドイツのアウトバーンのような200km/hに迫るような速度域に対応できるとは思えませんが、日本の国内の公道でこのLEAFの走り不安を覚えるような状況はほぼ無いと言っていいと思います。走行モードとして、通常のドライブモードと「ECO」モードが設定されていますが、都心の一般道では「ECO」モードで十分で、ドライブモードの加速は先ほど述べたように「走りを目的と」してはいないこのクルマにはちょっと不必要なレベルで加速するなという印象すら受けました。ブレーキについては、普段プリウス(2台目)に乗っている僕はほぼ違和感を覚えませんでしたが、回生ブレーキを経験していない方は違和感を覚えるかもしれません。

車体はかなり大きいものの、売りの旋回性能の良さによるものだと思いますが、混み合ってターンの多い都心でもその取り回しに苦労することは全く有りませんでした。評判が良いというのも納得のクルマです。

リーフの視界
リーフの視界

また車内も、EV専用車を位置から設計したというのもありますが、しっかりと作っているなと感じられました。バッテリに原価の多くを奪われるクルマですから、実際はかなりコストを抑えた作りにはなっているのですが、特に安っぽさなどは感じさせないように工夫されていると個人的には思いました。また、表示も「エコ」をアピールするような、雰囲気はあるのだけれども実質的に意味のないゲージは少なく(ゼロではない)、データをしっかりと表示する電算計的なものを何種も用意しており、その思想には好感を持ちました。運転中の視界の中で、見やすさの順番をつけると、1.速度計、2.残り走行距離、3.油温計?、4.エネルギー消費計、5.インパネ内カスタム表示域となっており、3については「たぶん他に入れるものなかったんだろな」とは思いましたが、他社のエコ走行サポート表示については安全の面から疑念を持っている僕としては納得の配置となっています。特に1.2.についてはその重要度が他の順番になってはいけないでしょう。(だからエコサポート表示には懐疑的)

今回は特に荷物も少なく、後部座席も使用していないので、その部分を使用しての感想はできません。トランクは車体のサイズにしては小さいのですが、まぁこれは仕方のない部分でしょう。後部座席は見た目の印象では、十分なスペースが確保できているのではないかと思います。

さて、そして最も重要な部分である実走行距離です。レンタカーを借りる時にスタッフの方がまず仰ったのもこの部分でした。結論から言うと、「Eco」モードでエアコン無しで「130~140km」走るというスタッフ方の注意には間違いなく、エアコンを入れて「10~20km減」、ドライブモードにして「10km減」、つまり走行距離全く意識しない旧来型のクルマのように使用すると夏場の実走行可能距離は「100kmちょっと」程度でしょう。これは日産のスペック「JC08モードで160km」という数値から見ても、特に悪い数字ではなく極めて妥当なものです。また、ナビで電気消費画面を開くと、駆動系・電装系と分けて電気消費を表示し「エアコンを切ると+13km」など、必要な情報を教えてくれますし、そことインパネ内に表示される残り走行距離はあくまで印象ですが「かなり説得力のある数字を正直に表示している」と感じました。驚かれるかもしれませんが、このクルマ以前のプラグイン自動車の残り走行距離は、あまり信頼できないようなものが多かったのです。もちろん、誤魔化しているというよりも、その計算式なりが現実に即していなかったのでしょうが…

ナビ画面
ナビ画面 電費情報画面撮るの忘れてしまいました

EVの決定版だけど…

僕の感想は、「現時点ではこのクルマはEVの決定版」というものです。もちろん、もっと売価の高いEVもあり、そちらはLEAFよりも優れた走行性能などを持っているのかもしれませんが、量産販売を目的としたEVとしては、個人的にはLEAFは図抜けた完成度を誇っていると思います。
ただし、あくまでも「EVとしての」という点に注意してください。僕はここまで書いてきたように、LEAFを非常に高く評価していますし、これを創り上げた日産のエンジニアの皆さんの努力と矜持に感銘を受けています。ただ、僕は正直言って、知人・友人にこのクルマの購入を勧めはしません。それはもちろん、走行可能距離の短さがネックになっているからです。もしこのクルマの販売価格が今のままで、走行可能距離が「300km」であったのであれば僕は「ガソリンエンジン量販車の終焉」を確信し、「500km」であれば「EVが中心となる未来の道路」を確信します。ただし、僕がLEAFを乗って感じたのは、このクルマが「誠実にしっかりと作られた高い完成度を誇る車」だからこそ「現時点でのEVの限界」を感じずにはいられませんでした。

走行距離は、多くの指摘がある通りで、EVに関してはバッテリの能力に起因するものです。僕は何度も繰り返しますが、日産のエンジニアの方々は現時点では出来る限りの努力をされたと感じています、ですがバッテリに関してはクルマ作りの努力によってなんとかなるものではありません。(あと、これは代表も何度か書いていることですが、値段が安くなれば多く積むことによって走行距離を伸ばせるという意見を見ることがありますが、多く積むと重量が重くなり電気を移動エネルギーに変換する効率が急激に悪化し、今でも重いクルマとなっているのにこれ以上となると実用に耐えないレベルになる可能性が高くなります。大型車が電気自動車となる可能性が極めて薄いことと考えれば、そう簡単な話ではないのは容易に想像がつくはずです。)
バッテリに関しては、景気のいい報道だけは多いものの、確実で明るい未来はまだ見えていない領域です。個人的には自動車用の駆動電池に関しては次の本命(何かは解りません)が量産体制を整えるのが10年後、それも決して急激な能力向上をもたらすものではなく、そのために不断の努力を続けていってゆっくりと能力を向上させるものだと思っています。

僕はLEAFを「遥かに」凌駕するEVが近い将来現れる可能性はゼロだと思います。それだけLEAFは出来の良いEVで、日本の自動車産業がEVというものに出した現時点では最高の回答でしょう。ですが、LEAFには申し訳ないのですが、良いクルマを作ったからこそ、皮肉にもLEAFはEVの「期待感のバブル」を弾けさせた一針になったように感じられてなりません。

EVの限界

これは僕だけの感想ではないと思います。実際に、LEAFの販売は低迷していますし、僕が乗ったレンタカーも年初に導入されているにもかかわらず、走行距離は僅か「1300km」だけでした。またグローバルに見ても、イギリスの運輸省が先月発表した今年度のインフラ計画で、EVを重視した「公共急速充電器」の全国配備という以前の計画を軌道修正して、PHVやコミューター等を重視する家庭や職場などでの充電設備配備を主眼に置くという内容を発表しました。
自動車の環境負荷を下げるためには、環境性能の優れた自動車を多く販売し、既存のクルマを置き換えていかねばなりません。残念ですが、LEAFの販売が上向くのはありえないことでしょう。LEAFの足元にも及んでいない電気自動車は、なおさら、一般消費者にまともに販売される機会はほとんどないでしょう。そんなことを考えたLEAF試乗でした。

最後にくどいようですが、お金に余裕があって「20~30km」以上ドライブするのは絶対に無いという方には、LEAFは本当にオススメなクルマです。一度、乗って体験するのをオススメします。もちろん、自分である程度の距離(電池を使いきって充電するくらい)と時間をかけてですが。

アメリカでの充電式(プラグイン)自動車のいま

先週は授賞のお話しをしましたが、授賞式の傍らアメリカでGM VoltやNissan Leafのアメリカでの反響について情報収集もしてきましたので、今回はそのお話を。
両車とも本格的なプラグイン(外部電力充電型)自動車の量産のスタートを象徴するクルマでしたので、私も注目していましたし、その反響も非常に大きいものだろうと予想していたのですが、実際は予想に反してアメリカでは静かなローンチを切ったのだなとの印象を持ちました。

自動車社会アメリカ

今回の訪米では、事前にロサンゼルスで何人かの友人に会おうと持ちかけ、一人はオフィスまで片道50マイル以上、もう一人はサンタバーバラから片道117マイルを気楽にロスのホテルまで訪ねてくれました。
このようにアメリカでは、自動車をまさに最も身近なモビリティとして活用し、ハイウェイの大部分が無料であることも相まってロングトリップも当然とするまさに自動車社会が構築されています。NYやシカゴ、ワシントンDC、ボストンなど一部の大都市を除けば、アメリカでの個人の移動範囲は自動車によってのみ大きく面として広がっており、アメリカで自動車抜きの生活をするということは不便という段階を超えて人としての活動の大きな縮小を意味します。
アメリカに代表されるこのような自動車社会をどのように低カーボン社会に変革していくのか、人類の将来にとっても中国とともに注目するところです。ロスでも公共交通機関がないわけではありませんが、輸送の全体の中でのプレゼンスは極めて微小と言わざるを得ないというのが実態です。

私はこの広大な国土を持ち、ロングトリップが当たり前で、年間の平均走行距離でも日本の1.5倍以上の自動車社会アメリカに変革を与えるためには、まずは長い走行距離を確保できることが最低限必要だと考え、まずHV、さらには都市内のショートトリップで充電電力エネルギーを使うプラグインHVが現実的と考えてきました。
その意味で冒頭でも書きましたが、GM Chevy Voltがどのように受け取られるのか、使われるのか、そのローンチに注目してきました。

GM Chevy Volt

Voltのことは、このブログでも何度かとりあげましたが、T字型の16kWhという大容量の電池パックを、重量バランスが偏らないように、苦労してクルマのセンター部分に搭載する苦労、エンジン、トランスミッション、インバータ搭載の工夫など、開発エンジニアの努力を感じさせられました。 

Opel-Ampera(Voltの姉妹車)の電池パック
Opel-Ampera(Voltの姉妹車)の電池パック

また、GMはVoltの説明としてハイブリッドではなく、レンジエクステンダータイプのEVと説明してきたため、私自身もてっきりシリーズタイプのハイブリッドと思い込んでしましが、最近になって、基本的にはトヨタハイブリッドと類似の遊星ギアでエンジンパワーの一部は直接タイヤの駆動にも使うことができる、シリーズパラレル型であることが判ってきました。

トヨタ方式とは違って、動力伝達遮断/結合のクラッチを2組持ち、エンジン動力によるタイヤ駆動パス(パラレルパス)を切った、完全シリーズ型運転も出来る機構になっていることが特長です。電池エネルギーを使い切ったあとの長距離ドライブ、さらには高速フリーウエー走行のシリーズ型運転では、どうして燃費効率が悪くなってしまいます。この部分では、トヨタ方式のようにパラレル運転が有利です。Voltでもこの高速走行のある走行条件では、エンジンパワーのさらに一部で直接タイヤを駆動するパラレルパスを使っていることが判りました。私からすればアメリカで当然のように利用されるフリーウエーにおいて燃費効率を保つことは絶対必須条件で、そのためにパラレル機構を持たせることは技術者としては当然の判断だと思うのですが、GMが事前からEVもしくはシリーズ型であるかのように伝えてきていたためメディアからは「これではEVではない!!」とGMは批判されているのが現状です。

また、Voltの発売に当たって、アメリカ連邦の環境当局EPAとカリフォルニア州の環境当局CARBから、燃費、電力消費量(電費)、排気のクリーン度、CO2の排出量が公表されました。カテゴリーとしてはGMの公表とは違い、(当然ですが)Voltはプラグインハイブリッドとされており、電池エネルギーだけを使うAll Electric走行では燃費(電費)93mpg、電池エネルギーを使い切ったあとのガソリンエネルギーでの走行では37mpgと認定されています。
なおこの93mpgというのは、消費電力エネルギーをガソリン消費エネルギー換算して出された値です。
ガソリン走行の37mpgという数字は、通常プリウスの50mpgと比較すれば一目瞭然ですが、同サイズのクルマとしてはかなり悪い部類に入り、個人的な推測ですがEVに拘るあまり総合的な効率を犠牲にしてまでシリーズ運転領域を多くしてしまったのではないでしょうか。

CARBからはクリーン度としてULEV(Ultra Low Emission Vehicle)認定を受けました。ULEVとの表現では、とんでもないクリーン度のクルマとの印象ですが、この先にさらにクリーンなカテゴリーとして、SULEV(スーパーウルトラ), 更にPZEV(Partial Zero Emission Vehicle)さらには、ハイブリッドではATPZEV(Advance Technology PZEV)なるカテゴリーまであり、カリフォルニアではその販売比率の組み合わせで決められたクリーン車の導入比率を守ることが義務づけられています。
プリウスはこのATPZEVカテゴリーとして認定されていますが、VoltはULEV認定であり、いくつかのインセンティブが与えられるATPZEVではなく、ULEVに留まったこともメディアの話題となっています。これもまた、先ほどと同じくシリーズ運転領域を多くしてしまったことに起因するのではと予測しています。

アメリカでもプラグイン導入への障害は多い

先ほども書きましたが、アメリカでは、やはり広い国土とその中でのクルマの使い方から、エンジンパワーと電気パワーを賢く使う車が、将来の低カーボン自動車として有力と思います。将来としてはプラグイン自動車の普及を視野に入れる必要がありますが、充電機器、そのコネクター、さらには搭載電池など、実用化の課題はまだまだ山積しています。標準化議論も進んでいるようですが、今の充電機器、コネクターでは、使い勝手、装着性、保管性など、毎日使うにはまだまだ不十分、また家庭やオフィス駐車場での充電で使う低パワー充電設備のコストも普及へのハードルです。

プラグインハイブリッドのヨーロッパでの実証試験データでも、充電回数の90%以上は家庭とオフィス駐車場のコンセントから充電しているとのデータが報告され、またアメリカのモニター走行ではプラグインハイブリッドは充電をしなくても走れるので、コンセントに繋いで充電する操作すら面倒になり、ガソリンハイブリッド運転比率がだんだん高くなってしまったとのちょっと心配なデータもでているようです。

EV用としての、急速充電器の普及、拡大、さらにその国際標準化に注目が集まっていますが、プラグインハイブリッドでは、家庭、オフィス駐車場での通常汎用コンセントに近い、安価で安全、安心なコンセントとそのIT化さらにはスマートメータ機能の標準化を急ぐ必要があります。競争と協調、充電インフラ、コネクター、IT活用、その標準化では、オープン化による協調路線が必要、GMなども、グローバルな低カーボン自動車への競争と協調路線に転換してくれることを期待しています。EVでもその使用電力量の大部分は、家庭か会社や役所の駐車場の長時間低パワー充電が使われる筈です。

アメリカでのLEAF

日産リーフのカットモデル
日産リーフのカットモデル

また、同時期に、日産リーフの発売発表もありました。Volt同様、EPAから燃費(電費)、クリーン度の公式値が発表されており、これはピュア電気自動車ですので、ガソリン換算の電費と航続距離として、99mpg(約42km/l)の電費、航続距離73mile(117km)となっています。
EPAでの燃費、電費の表示法は、販売店でのクルマのウインドーシールドに表示を義務づけているもので、数年前にプリウスなどのハイブリッド車や低燃費を売りとする小型車では、ユーザの実走行燃費と表示燃費の間にギャップが大きいとの訴えから、平均的ユーザの年間平均燃費にかなり近い値になるように算出法を改定したもので、これでも、冬の寒冷地でのヒータ運転、山岳路での登坂、大都市の渋滞走行ではこの航続距離を下回ることもあるように思います。

このようなEV車が、アメリカでどのように使われ、どのように評価され、クルマの実際の用途としてどれくらい代替できるかも注目点です。
GM Volt, 日産リーフの健闘を祈ります。