「オートモビリティーズ」その2 ダルニッシュさんとのモビリティ議論の話

広がる脱自動車の風潮

先週は、『自動車と移動の社会学』オートモビリティーズという欧州での自動車文化論、自動車社会論を扱った本の紹介をしました。この本では、これまでの自動車の歴史を振り返り、将来は、『鉄とガソリン(もちろんディーゼルを含めた石油液体燃料の内燃エンジン車)による自動車の終焉であって自動車(モビリティ)の存在しない世界ではない』と、従来の延長線ではない自動車の大変革を予言しています。

私自身は近未来に『鉄とガソリンによる自動車の終焉』がやってきそうな兆候、技術の痕跡をまだ感ずることはできませんが、だからと言って今の延長では自動車バッシング&ナッシングの動きを抑えきれないのではと心配し始めています。鉄とガソリンから、電気、燃料電池への転換もそれほど楽観的ではなく、『自律した移動体としてのオートモビリティーズ』に環境資源保全、交通事故防止に手を打ち、自動車を変革していかなければ脱個人用自動車の風潮を招いてしまうとの危惧です。

昨年もブラジルの都市の市長がアメリカで開催されたある環境フォーラムで、いずれ自動車はタバコのように『人間に害を及ぼします』といったステッカーが貼られるようになるとまで言い放ち、脱自動車論を打ち出したとの記事を見かけました。

大都市への自動車乗り入れ規制の動き、そのなかで電気自動車、プラグイン自動車だけへのインセンティブ付与、さらにはEVカーシェア、これを組み込んだスマートシティーも見方を変えると脱自動車の動きにもつながりかねません。

米国カリフォルニア州のZEV規制はその動きの一つで、本来のZEVはロス、サクラメント、サンディエゴといったカリフォルニア都市部の光化学スモッグ低減の手段であったはずが、いつのまにか加州であろうが南極であろうが地球上で排出される温暖化ガスの総量が問題の気候変動ガス削減に衣替えしてしまいました。

規制当局であるCARBのスタッフもわずかのZEVを導入しても、古い車、排気浄化装置の故障車が残っている限りはほとんど光化学スモッグ低減には寄与しないことは百も承知で、環境アピールのためのZEV規制制定でした。

公共交通機関が発達した日本、欧州の大都市ならまだしも、最も自動車を中心としてきた社会を作り上げてきた米国でもこの動きは強まってきていることが気になります。1960年代から1980年代にかけての大気汚染問題、同時期に深刻化し交通戦争と言われた交通事故死、自動車会社バッシング、自動車バッシングの論調も確かにありましたが、われわれ自動車エンジニアはこれにも真正面から向き合い克服してきました。

最初は欧米勢を追いかけながら、1980年代からは日本勢も先頭集団に立てクリーン&安全な自動車作りと同時に走りなどクルマとしての商品力競争をやり遂げここまでの発展を牽引してきたと自負しています。もちろん中国のPM2.5問題、さらにはいまだに世界で100万人/年を越え増え続ける交通事故での死者など、まだまだ克服すべき課題は残っています。だからといって豊かな社会を支えてきた『自律した移動体』に『人間に害を及ぼします』とのステッカーが貼られる時代は迎えたくありません。

ダルニッシュさんと自立したモビリティとしての自動車を守ろうと約束した

自動車開発をリタイアした今も、日本、欧州からいろいろ声をかけていただき、こうした自動車の変革として取り組んできたクリーン自動車、ハイブリッド車開発を紹介しながら、将来モビリティ、『自律した移動体としてのオートモビリティーズ』の将来について様々な方々との議論を進めています。

今日のブログではこうした議論の一つ、昨年11月にパリで再開し将来モビリティについて語りあい、意気投合したフランス人ダルニッシュさんとの会話について紹介したいと思います。

以前も紹介しましたが『ベルナール・ダルニッシュ』、私とほぼ同世代で、我々の世代でモータースポーツ、ラリーレースに興味を持っていたかたなど知る人は知る存在で、自動車ラリーの世界でならした名ラリードライバーです。

1973年~1987年の世界ラリー選手権(WRC)で7勝、ヨーロッパラリー選手権で2回の年間チャンピオンを獲得しています。なによりも名を馳せたのは1979年のモナコを起点として行うモンテカルロラリーで、ランチアワークスの協力は得ていたものの、プライベートチーム「シャルドネ」として前年モデルのランチア・ストラトスで最終日にフォード・エスコートのワルデガルドを大逆転して勝利したことが今でも語り草となっています。

現在でも、フランスの自動車関係NGO代表としてTV、ラジオのレギュラー番組を持ち、自動車の環境問題、交通事故防止など自動車の課題、未来について積極的な発信を続けておられます。
日本版Wikipedia 
ダルニッシュさんのページ

彼と知り合ったのは5年ほど前、トヨタ・パリオフィスの招待でトヨタの環境イベントや環境技術視察で来日されたときが最初で、その時もハイブリッド車など将来自動車について語りあい、『自律した移動体としてのオートモビリティーズ』としてエコだけではなく、走り、走行性の、静粛性などNVH(ノイズ、バイブレーション(振動)、ハーシュネス(津路面からの突き上げ感、ガタピシ感)などクルマとしての商品機能全般の進化を目指したいとの意見で意気投合しました。

当時はまだ電気自動車ブームがやってくる前でしたが、ZEVで強制された電気自動車にモビリティの未来を感ずることができず、その対案としてハイブリッドの開発をスタートさせたことを共感してくれました。

私達二人とも決して電気自動車否定論者ではありません。『オートモビリティーズ』の必然として、今のクルマに替わる次世代自動車の主役として電気自動車を描けなかっただけで、彼自身は当時も都市内限定、フランス内では免許なしでも乗れる超小型EVモビリティの推進者でした。

昨年11月にパリのシャンゼリゼ―通りにあるトヨタ・ショールームの一室にある会議室で3度目の再会、これからのモビリティについてたっぷりと意見交換をし、次の4回目の再会を約束してショールームのプリウスを前に記念スナップをとりお別れしました。

Bernard Darniche

以前からもハイブリッドをサポートしてもらっていましたが、昨年まではGMオペルからの依頼でプラグインハイブリッド車【GMのネーミングではレンジ・エクステンダー・電気自動車(EREV)】VOLTの姉妹車であるオペルAMPERAのモニターを行っていたとのことで、トヨタのプリウスPHVとの対比、プラグインの将来などを話題に、時間を忘れて話し込みました。

何かフランス語か英語で話しているような表現をしましたが、実は日仏語でのいつもお世話になっている頼りにしている通訳の方を介しての会話です。

ジャンルは違いますが、どちらも単なる移動手段だけではない『自律した移動体としてのオートモビリティーズ』、以前のブログでご紹介した言葉では“フリーダム・オブ・トラベル”“フリーダム・オブ・モビリティ”としてのクルマの信奉者です。

彼はプロ・ドライバーとしてのキャリアから、私はプロフェッショナル・エンジニアとしてのキャリアから、未来の自動車ナッシング、バッシングを心配しての意見交換になりました。

フランスでも某フランスメーカーCEOの影響か、政治家の一部に何が何でも電気自動車推進(選挙対策としてのエコ?)がおられ、BEV限定の補助金政策、公共充電インフラ整備への政府資金投入などの声を強め、また若者の自動車離れも心配なレベルと言っていました。

パリ一極集中が進むフランスでもこうした政治家のかたがたの多くが、都会住まいか運転手付の後席で移動される方なのは間違いなく、これは東京に集中する日本でも同様で、政治家だけではなくお役人や学者の方々も多くは首都圏にお住まいの机上中心のモビリティ論者が多く、さらには一般メディアの方々も『自律した移動体』の自律の部分を軽視したモビリティ論が増えてきていると紹介しました。

これに対しては、力を合わせて『自律した移動体』としての将来モビリティの重要性を発信しようとの意見で一致しました。

もちろん、ただ自動車ナッシング・バッシングを心配して手を拱いていていては意味がありません。自動車ナッシングとは思われない魅力あるモビリティの開発と実用化とバッシングされない環境レベル、安全レベルの達成が自動車エンジニアの役割です。

その上で、道路交通システム、社会インフラ整備としての提案も求められています。その一つ、次世代モビリティの技術論としての自動車電動化にはだれも異論はないと思いますが、その自動車電動化、自動制御の基本となるバイ・ワイヤ化に先鞭をつけたのがトヨタ・プリウスと自負しています。

自動車の電動化の未来は?

ダルニッシュさんとの次の話題は、この自動車の電動化を巡る議論でした。ダルニッシュさんは現在オペル・AMPERAを使われ、従来車との大きな違いを感じているのがエンジン停止モーター走行の快適さだったとのご意見でした。

クルマとしての内外装の設計と仕上がりは不満が多く、奥様はご自分の愛車プリウスの方が良いと言われているそうですが、長いAMPERAのEVレンジは快適、住宅地や都市内低速でのモーター走行は大きな商品力、長距離ドライブで別荘にでかけ、そこで使うにはAC充電で使えるプラグインのメリットを感ずるとのご意見でした。

これには半分同感、半分は反論させてもらいました。住宅地や都市内低速でもモーター走行の快適性、これは初代プリウスをやってみて私自身も感激した点でこの部分は全く同感です。しかしEVレンジの長さを競いあうことになると虻蜂とらず、現在のように多額の補助金があるうちは良いが大量普及期では補助金ナシで収益性の確保は今の延長では困難、結局上級車やSUVなど高価格帯のクルマに限定されてしまいかねないのが難点との反論をさせてもらいました。

メーカー側の論理と言われかねないことは承知の上ですが、数を増やしたからと言ってリチウムなどレアアースを使う電池コストが大きく下がる訳ではありません。プラグイン用電池のコストアップ分を電気代で回収するのは、平均走行距離が日本よりも長く、さらに日本よりもガソリン価格が高い欧州でも簡単ではなく、日本ではさらに厳しい状況です。

プラグインでも電池コスト、充電ラインの将来コストを睨みながら、補助金頼りではなくこれまた収益面でも自律ならぬ自立できるクルマにしていくにはこのEVレンジをどう決めていくかもこれからも大きな課題です。『鉄とガソリンによる自動車の終焉』はまだ先、停車時、低中速のEV走行を生かしながら、さらに連続高速走行、登坂走行、さらに充電電池を使ったあとのHV走行ではエンジンの良さを引き出すハイブリッドが目指す方向との主張をしました。

ダルニッシュさんには、トヨタからプリウスプラグインのモニターをお願いしていますので、今のプリウスプラグインとAMPERAとの比較から次世代モビリティとしての望ましいEVレンジなど次の機会にはもう少し掘り下げた議論をしてみたいと思っています。

フランスの自動車の今

「これまでの自動車は、イギリスを祖父、ドイツを父、フランスを母、アメリカを里親として育てられてきた。」

これは、1997年3月のトヨタ・ハイブリッドシステムの技術発表会以来、おつきあいいただきご指導いただいているジャーナリストで(株)日本自動車経営開発研究所代表である吉田信美氏の著作からの引用です。

吉田信美氏から頂いた写真家、富岡畦草氏の記録写真集『車が輝いていた時代』の巻末に吉田信美氏が書かれた「世界自動車産業の栄枯盛衰」にあった文章の一説になります。

戦前から戦後の1970年代初めまでに日本で走っていた様々なクルマの写真を取り上げたこの写真集には、私の愛車第1号でもあったいすず・ベレット1500も載っており、またクルマ屋になるきっかけとなった当時のなつかしいアメ車、ヨーロッパ車が数多く収められています。

また吉田信美氏がまとめられた「栄枯盛衰」ではスチュードベーカー、ナッシュ、ヒルマン・ミンクス、オースティンといったすでに存在しなくなった車名、自動車会社、そこから現在に至るそれこそ世界の自動車会社の栄枯盛衰のすさまじさを伺いしることができます。

今日のブログのテーマは、ここで自動車の育ての母と表現されているフランスの自動車事情について取り上げてみます。

フランスはプラグイン車の実験に適した国

何度か、このブログでも取り上げてきましたが、プリウス・プラグイン車の欧州実証試験の拠点としてトヨタはフランス電力公社(EDF)と組んでフランス・ストラスブールを選びました。トヨタのパリ事務所に「プラグインハイブリッドのやる気はないか」とEDFからの最初の打診あり、私がその相談を受けたことがこのプロジェクトに係るきっかけでした。

外部電力で電池を充電するプラグイン自動車が次世代環境自動車としてCO2低減の実効を上げていくためには、その充電電力が低CO2であることが必要条件です。現在も自動車マーケットの規模が大きい欧州諸国の中で、また世界的にみてもフランスが群を抜いて低CO2電力を供給しています。

電力ミックスでは原子力と水力比率で90%以上となっており、この電力で充電すれば、2050年に電力の低CO2排出を達成した場合の想定として、世界が目指すべき低CO2電力を使ったプラグイン自動車のCO2削減ポテンシャル実証試験を今やることができます。さらに、フランスは「自動車の育ての母」といわれる自動車文化の先進国であり、自動車が社会生活の中に深く根差すなかで、今のクルマの延長線ではないかもしれない将来モビリティを研究するには最適な国との判断がありました。

加えて、電力料金も欧州では安い国の一つで、リニューアル電力固定価格買い取り制度のためぐんぐん電力料金が上がっているドイツと比較してもプラグイン自動車普及の可能性と課題を調査するには格好の国です。

フランスでも一筋縄でいかないプラグイン車の普及

EDFからストラスブールでの実証プロジェクトが提案され、それから何度もストラスブールを訪問しました。夜のパーティーで楽しむワインや世界遺産である旧市街の運河クルーズ、大聖堂観光の楽しみは別としても、世界環境都市にも選ばれその中核として使われているスタイリュッな低床トラム、そのトラムの駅を拠点としるパークアンドライドなど将来モビリティ構想が進められているなど、ストラスブールが実証試験としても最適と感じました。このあたりのエピソードは以前に日経TechOnの連載でも紹介していますので、興味のあるかたはそれをお読みいただきたいと思います。

また、世界一の電気自動車宣伝マンであるゴーンさんのお膝元であり、ルノーから超小型コミュータEVの「Twizy」のほか、小型デリバリーバン「KangooZ.E.」、小型乗用EV「ZOE」、さらにバッテリー交換方式の「Fluence」の4車種も販売をスタートさせ、「ZOE」が5,233台、「KangooZ.E.」が3,884台、全体で昨年比45.5%増の12,867台と苦戦が続く日本と比較して好調に推移しています。

とはいえ、「Twizy」は今年に入り売れ行きが止まり、バッテリー交換方式の「Fluence」はサービス提供者であったBettr Place社の破綻もあり生産を中止しており、この9月、11月に欧州で自動車、電力、石油業界の人たちと会話をしましたがこのまま電気自動車販売が拡大していくことはないとの意見が支配的でした。

一方で、パリ市内ではレンタル自転車「Verib」の自動車版、ボロレー社のピニンファリナデザインの電気自動車「BlueCar」をつかったEVカーシェア「Autolib」が4000箇所以上もの充電貸出ステーションを整備してスタートさせ、市民の足として使われています。まだ2年目ですが、電池火災の発生のほか、事故、故障の多発、メンテ不良なども伝えられており、こちらも決して楽観的な状況では内容ですが、この方式がどこまで定着するのか注目しています。

一方ハイブリッド車では、フランス工場で生産している「ヤリスHV」(日本名ビッツのHV、アクアと同じハイブリッドシステム)と英国生産の「オーリスHV」、プリウスがトップ3を占め、全体で昨年比66%増の41,430 台と、主流の地位を確立した日本のようにとはいきませんが、ハイブリッドの普及拡大が進み始めています。

パリの市内では、プリウス・タクシーが増加し、また走行中や路上駐車中のプリウス、ヤリスHV、レクサスRX HVを良く見かけるようになりました。贔屓目ではありますが欧州の走行環境の中で、普通以上のクルマとして評価されるようになっていると実感しています。

走りや走行フィーリングでも普通以上を目指せば日本よりもガソリン価格が高く、また平均年間走行距離の長い欧州で次世代自動車としての地位を築けるのではと期待しながら見守っています。また、現地生産拠点があるのもポイントです。今はHV部品のほとんどは日本から運んでいますが、いずれハイブリッド部品の現地化拠点として、CO2が低く、安い電力供給が期待できるフランスが有望だと思います。

「自動車の母」、フランスも変化へ

これまでフランスでは、安価で、またマニュアルセレクトのダイレクト感が良いとして、マニュアル変速機が好まれてきました。ここに、ハイブリッド普及の影響とまではまだ言えませんが、低燃費、低CO2車への関心が高まったせいもあってか、また安全運転の観点か、自動変速車のシェアが年々増加しています。

燃費のための多段化、CVT化、ハイブリッド化としての自動変速は必然、さらに事故防止のためにも、運転に集中できる自動変速は避けられない方向だと思います。さらに、排気のクリーン化でも、変速操作ごとにエンジン負荷変動が大きくなるマニュアル・トランスミッションから、この負荷変化もコントロールする自動変速は有効な手段です。低CO2とともに排気のクリーン化も進める必要がある新興国のクルマもマニュアルはスキップして自動変速に移行することは不可欠です。この動きもフランスから欧州全体へ、さらにアジア、アフリカとモータリゼーション進行中の新興国に波及していくと思います。

また、仏自動車工業会(CCFA)発表として、フランスの新車販売でディーゼル車シェアが昨年比大幅に低下しているとのニュースが流れました。新車販売でのディーゼル車シェアが1-11月で67.5%と、2012年の72.9%から大きく減少、2003年以来の最低を記録しました。

この理由としては、ディーゼル車奨励金の見直しと課税強化、ディーゼル燃料のガソリン並み課税など、ディーゼル恩典を減らしたことがあげられ、CCFAとして2020年にはシェア50%まで後退するとの予測を発表しています。これ以外にも、2014年から実施される排気ガス規制Euro6対応でガソリン車並みのNOx規制が決まり、この対応でのコスト上昇も販売に影響するものと言われています。乗用車のディーゼル化でも経済性とクルマにうるさいフランスがリードしてきました。この状況にも変化がみられそうです。

都市内への車両の乗り入れ規制も欧州が世界で先行しています。トラムの活用やパークアンドライド、大規模なレンタル自転車はパリをスタートに主要都市に展開されています。電気自動車カーシェア、レンタルプロジェクトも、パリの「Autolib」のように一気に4,000台規模のプロジェクトからのスタート、いまさら数十台からスタートするちまちました、また用途限定の日本のBEV/PHEV実証で何を訴求するのか疑問がわいてきます。

この新しい環境都市づくり、その中での将来輸送機関ネットワークの構築、個人用将来モビリティの探索もすでに実証段階から、実用段階に入りかけています。もちろん、これはフランスだけではなく、ドイツや北欧諸国など様々な都市でその具体化が進められてきました。プリウスPHVの実証試験を行ったストラスブールから、ライン川の橋を渡ると対岸はドイツ、すぐに速度無制限のアウトバーンがあり1時間で世界環境都市フライブルグ、カールスルーエを訪れることができます。

欧州不況が長引くなかで、ルノー、プジョー・シトロエンの経営環境が悪化、フランス工場の縮小、閉鎖が話題となり、その「自動車の母」フランスの自動車産業が転機を迎えようとしています。ドイツ勢にくらべ、海外進出に遅れたこと、過度なディーゼルシフト、環境自動車への対応遅れなど、要因は様々、日産が支えるルノーも、これまたBEVシフトが重荷になっているようです。PSAは中国メーカーの支援を得て経営立て直しに取り組むことが決まりました。現地生産のトヨタ・ハイブリッド拡大が雇用拡大に貢献し、フランスが欧州での次世代自動車普及、将来モビリティ発進の拠点となってくれることを期待しています。

東京モーターショー2013の印象

東京モーターショーが有明の東京ビッグサイトで今週末まで開催されています。私は一般公開日の前日の11/22の特別招待日と、昨日の11/27の2回、会場を訪れました。公式発表によると11/22の入場者がプレビューナイトの8,600人を含めて40,000人、11/27の入場者が77,600人ということですが、平日である11/27でも主要なメーカーのブースは人で溢れている状態でした。平日でもこれで、11/23には135,800人とこの倍近い人出があったとのことですから、休日にはまさに立錐の余地もないという状態で、大きな盛況を見せているといってもよいのではないでしょうか。

ご存じの方も多いでしょうが、東京モーターショーは1990年初頭をピークに入場者の減少が続けていましたが、会場を幕張メッセから東京ビッグサイトに移し、また欧州メーカーの出品が復活したことなどもあって前回の2011年には開催期間は縮小しながらも人出が戻ってきていました。これまでの入場者の推移を見ても、今回も前回と同様かそれを超える入場者が見込めそうです。週末の人混みを想像するに、東京ビッグサイトのみでの開催ではこの規模の入場者数が限度のようにも感じます。

さて、今回は八重樫尚史が、東京モーターショー2013について、話題のコンセプトカーや新車等については、多くのメディア等で触れられているでしょうから、すっぱりと割りきってそこには触れず、次世代車や次世代技術の点からショーから見る全体の業界の印象などに極私的視点で書いていこうかと思います。

プラグイン車の存在感の無さ

まず、今回のショーで最も強く印象に残ったのは「プラグイン自動車の存在感の無さ」でした。勿論、自分が次世代自動車に係る仕事をしているので、そういった側面から見ての印象ですが、前回と比較しても明確にプラグイン車(EV、PHEV)の存在感が低下していました。

これは以前からモーターショーの記事などでも触れていることですが、世界のどのモーターショーでも主役は憧れの対象としてのコンセプトモデルや高級スポーツカー等で、それに加えて購入目当ての新型車に乗って触ろうというのがショーの姿だと思います。その中で環境技術を全面に押し出したいわゆる「エコカー」やそうした技術の解説展示などは、自動車メーカーが大掛かりに打ち出しても会場の入場者の視線を集めてはいませんでした。

そうした反応を感じ取ってということでしょうが、今回のショーではメーカー毎に色彩の差はありますが、自動車メーカーはブース自体を映像や舞台建てを駆使してショーアップし「インタラクティブで3次元のCM」に作り上げているという印象を受けました。技術などの解説はその隣にある部品メーカーのブースなどで行い、そうした役割分担がこれまでよりも明確になったように感じます。特に日本市場で大手のトヨタとホンダのブースではそれを強く感じ、ブースの面積の割には展示車を絞りまた技術の詳細解説は最小限にし、全体としてのショーを作り上げていたとの印象です。

本題のプラグイン車についてですが、前回等はブースの良い場所に充電ステーションをおいて充電している姿を見せた車両があったものですが、今回はそうした車両は非常に少なくなりました。EVの旗手である日産のブースでも、主役はコンセプトモデルと量産車ではHVの新型『スカイライン』等で、『リーフ』『New Mobility Concept』『e-NV200』はブースの入り口にあるものの、主役から一段降りた場所にあったという印象です。

日産 eNV200
日産 eNV200

主役にプラグイン車を配していたのはドイツ勢のVW、アウディ、BMWで、VWはディーゼルPHEVの『XL1』『Twin UP!』、アウディもPHEV『A3 e-tron』を雛壇に、BMWも中心にEV『i3』とPHEV『i3』を置いていました。とはいえ、自動車ブースの中で、環境を強く謳って周辺インフラ込みで「スマート」をアピールするような展示は見当たりませんでした。

VW TwinUP!
VW TwinUP!

Audi A3 e-Tron
Audi A3 e-Tron

そうした部分では前回に引き続き「Smart Mobility City」と銘打って、こうしたプラグイン車とその周辺インフラについて自動車メーカー以外の企業などを含めたブースが設置されているのですが、場所は長大なエスカレーターに乗っていかなければならない西棟の上階に置かれ、明らかにこの区画は他の自動車メーカーのブースと比較しても人が少ないエリアとなっていました。(実は私も最初に訪れた際には、その後に予定があったこともあって、ここにこうしたブースがあることを知らず、2度目で初めてこのエリアを見ました。)ただ、これは場所だけの問題ではなく、やはりこうした展示に人気が集まらないという事を示してはいると思います。

ただしホールの一角に電池サプライヤーとして参加していたパナソニックのブースと、非常に小さなブースながら参加していたテスラの『Model S』はそうしたなかでも人を集めていた事は書き残しておきたいと思います。

「離れ」ではなく「日常化」したエコカー

ただし、こうしたEVやPHEVの注目の少なさによって「エコカー離れ」が起こっているというのは早計に過ぎると考えています。というのも既に新車のかなりの割合がHVとなっている日本ではもはやそれは日常であり、また欧州各社もダウンサイジングは当然となっており、そうした技術を大々的にこうしたショーで訴える必要性が無くなったからともいえます。

それを実感できるのは、住み分けているのだろうかと書いた技術展示を中心とした部品メーカー等のブースで見ることができ、そこで展示されているものはエンジンの部品などであっても摩擦の低減等を行って効率性の向上をして燃費を高めるというものが殆どでした。ただし、そうした展示に興味を持つ人の割合は勿論少なく、そういった場所では観覧者もスーツ姿の人が主流でした。あまりにも細かく難しくなってしまったこうした技術と実際の商品が離れていってしまっているというのが、自動車メーカーと部品メーカーの展示の違いとそこに集まる人の違いとして、私の目には強く焼き付きました。

独ZF社 9速AT
独ZF社 9速AT

また更に先の次世代車として注目されている燃料電池車(FCEV)ですが、トヨタが新型のFCEVを大々的に発表したものの、ホンダは新型FCEVを同時期に開催されているLAモーターショーで発表するなど、全体として取り上げられている印象は感じられませんでした。

FCEVについては、規制や導入支援等からカリフォルニア州から発売されるのが既定路線となっており、そちらが優先されるのは当然ではありますが、これまでの報道の量などから考えると肩透かしを感じました。同じく控えめだったのが自動運転や衝突安全技術等で、勿論多くのところで解説や説明があり体験会なども模様されていましたが、主役という程の存在感は無かったかとは思います。これは憶測ですが、大きな話題となったマツダの体験会の事故の影響もあったのかもしれません。

自動車の「現在」を見るモーターショー

東京モーターショーのキャッチコピーは「世界にまだない未来を競え」となっています。しかし、今回のショーで私が強く感じたのは「未来」では無く「現在」です。5年後・10年後の未来がここで提示されたかというとコンセプトモデルも含めてNoだというのが私の感想です。コンセプトモデルも「現在」に存在する非日常のショーとして消化し、直ぐにディーラーに並ぶであろうモデルを日常の現実の目として見ているというのが、今の東京モーターショーの姿なのではないのでしょうか。

ただしこれが悪いことかと考えているかというとそうではなく、おそらくこの「現在」は多く人が考えているよりも緻密で繊細な技術で作り上げられておいる「現在」で、本当の少し先の「まだない」未来はなかなか説明しづらい専門的な知識の海に眠っているのではというのが技術の素人である私の見解です。(あとは厳しい競争を行っている中で、5年・10年後の技術は今まさに最も重要なものであり、それを見せることは無いだろうとも思いますし。)

とはいえ前回もそう感じましたが、平日にもかかわらず多く人が訪れるショー(平日なので若い層は少なかったことは少なかったですが)の姿を見て、自動車の人気はまだまだあるのだと安心感を抱きました。

またモーターショーの関連イベントとしてお台場で様々なイベントを行ったのもよい方向に感じます。今回モーターショーに参加しなかったアメリカ・イタリアの各メーカーもそちらで一部展示を行っていました。こうしたメーカーもまた本体に参加して、今後もっと華やかなモーターショーが戻ってくることを期待しています。

自動車販売台数からみた2012年

グローバルでは拡大の一途の自動車産業

2012年の日本での新車販売台数は、エコカー補助金の後押しもあり547万台と4年振りの500万台越えました。アメリカもリーマンショックからの回復が顕著で1446万台と、これも5年振りの1400万台突破、また中国では前年比2.5%増と過去がないほど低い伸び率でしたが1850万台を記録、欧州を除くと自動車マーケットとしては拡大基調の一年でした。

今年については、昨年は前年比2.5%の低い伸びに留まった中国も、いよいよ2,000万台の大台を超えるだろうと言われおり、アメリカでも財政の壁を乗り越えれば、景気回復も期待され新車販売の1500万台越えが期待されています。世界全体としては、政治、経済情勢に突発的な大問題が発生しなければ、更なる拡大を予測する声が高まっています。

日本の自動車業界も昨年の大震災やタイ洪水の影響から脱却しました。トヨタは尖閣問題による日中関係の悪化から年後半に中国販売が大きく低下した影響もあって世界1000万台越えは来年に持ち越しとなりましたが、販売台数世界1位に復帰したようで、富士重がアメリカで4年連続販売新記録を更新するなど全体としては先行きに明るさがでてきた1年だったように思います。しかし、足下ではエコカー補助金が切れたあとの販売落ち込みが続いており、なにか浮揚策がなければまた縮小モードに入っていく懸念が強まっています。

今日の話題の次世代自動車への転換を日本勢がリードしていくためにも、その開発拠点である日本マーケットが元気にならなければ開発人材含めてパワーが損なわれてしまいますので、それが気がかりな点です。

ここまで書いてきたように、グローバルで見ればモータリゼーション拡大が続き、保有台数も増加する一方という状況です。日本では保有の長期化、高齢化、若者のクルマ離れなどにより保有台数が減少に転じ、欧米もその伸び率が小さくなっていますが、世界全体では保有台数も大きな伸びを示しています。

図1
図に示すように、2009年には保有台数が10億台を突破し、世界景気の低迷で途上国の保有台数の伸びが小さくなっていますが、景気回復によってはまだまだ大きく伸びることが予想されています。グローバルな視点では、自動車産業はまだまだ伸び率の大きな成長産業ということがお分かりただけるかと思います。

次世代自動車の普及はまだまだ

一方この増加分のほとんど100%のクルマが石油燃料を使うガソリン・ディーゼルといった内燃エンジン車で、保有台数の増加につれ自動車用燃料として消費する石油消費もどんどん増えています。新しい石油資源開発が進み、シェールガス&オイル革命と言われる従来油田ではない石油系資源も開発され、増加する需要をまかなっていますが、いずれ枯渇する地球資源です。また石油を燃やすと地球温暖化の主因である二酸化炭素を排出します。資源的にも環境的にも遠からず今のクルマの延長では成り立たなくなることは明かです。それだけに省資源、低カーボンの自動車の普及を加速させることが待ったなしです。

日本の次世代自動車販売統計は出ていませんが、今日の自販連の発表では、2012年の車種別販売台数1位は4年連続のプリウスで年間317,675台、2位がアクアの年間266,567台とプリウス兄弟で58万台を突破しました。トヨタ/レクサスでのHV比率は40%台となった模様です。

日本全体としては、一昨年にHV比率10%を達成したところですが、2012年は9月までで17%台でありシェアが大幅な増加となっています。一方、PHV/BEVのプラグイン自動車の販売は、結構な額の補助金がついているにも関わらず期待したほど伸びなかったようです。販価、BEVでは航続距離、充電インフラなど普及への課題とその克服をもう一度考え直す時期にきていると思います。さらにHV/PHV/BEVだけではありませんが、補助金だよりの普及には限界があり、エコだけではないクルマとしての魅力アップと販価ダウン、その上でこれからの景気浮揚に期待を掛けたいと思います。

アメリカでは、今週初めに車種別販売台数データが公表されました。

図2

図3

昨年はトヨタHVの復調、Fordの新型HVの発売もあり、2007年35万台を越え、年間50万台に迫る販売新記録となりました。PHV/BEVを加えた次世代自動車全体で、48.9万台と50万台越えには至りませんでしたが普及への勢いがついてきたように感じます。

図2に示すように、2007年には35万台を突破し、日本を越える勢いで販売を伸ばしていたHVも、2008年秋のリーマンショック、さらにトヨタの大規模リコール問題、一昨年の大震災、タイ洪水の影響で販売台数を落としていました。この間、オバマのグリーンニューディール政策の一翼を担うプラグインハイブリッド車GMシボレーボルト(GMはレンジ・エクステンダー型電気自動車EREVと名付けています)や日産リーフの発売がありましたが、販売台数低下を食い止めることがでませんでしたが、2012年はそれに歯止めが掛かった年でした。全米の年間新車販売台数1446万台のシェアでも、2007年の2.99%から3.38%まで増加しています。図3にメーカー別シェアを示します。

昨年は供給不足もあり、60%を切ったトヨタHVシェアも、今年はFordの新型HV車登場もありましたが、プリウスが経年車品質NO1を確保するなどHV品質への信頼回復と、ブランド力で67%までシェアを回復しています。2012年の日本勢としては、ホンダHVの元気のなさが気になりますが、日産と合わせて合計73%と圧倒的シェアを占め、アメリカの次世代自動車マーケットをリードしています。

他のエコカーとしては、CNGが年間1,462台(ホンダシビックCNG)、クリーンディーゼル車が152,255台で、HVの足踏みもあり、まだまだ圧倒的に多いのがガソリン自動車です。車種別販売台数上位は、相も変わらずFord Fタイプに代表されるフルサイズピックアップトラックが占めています。この大型ピックアップと、大型SUVの販売が好調なことが、アメリカ勢の収益回復の源ですが、プリウスの燃費(よくブログでとりあげるEPAラベル燃費)50mpg(約21.3km/リッター)に対し17mpg(約7.2km/リッター)と3倍もガソリンを消費するこのような大型車(これでも小型車のジャンルに入ります)と省エネ・低CO2にどう切り替えていけるかが大きな課題です。

アメリカもPHV/BEVに大きな補助金を出し、日本以上にその普及に力をいれていますが、プラグイン自動車販売台数トップがGMボルトの23、461台、2位プリウスPHV 12,750台、3位日産リーフ9,819台、話題のBEVテスラ社のモデルSの年間2,400台を含め年間総計は図2にあるように5.3万台と、日本同様にその勢いはありません。昨年は、アメリカのBEVベンチャー、それを当て込んだ電池ベンチャーが市場から続々と退場していきました。ユーザー・メリットが不足していることに加え、やはり充電が必要なことが、設置場所の確保、工事費用など普及へのハードルの高さになっているようです。

欧州では、BEV化のかけ声は大きいですが、ここもまだまだ伸び悩み、HV車すら競合相手が現れず米国同様伸び悩みが続いていましたが、昨年はオーリスHVやヤリスHVの現地生産も本格化し上昇に転じたようです。欧州勢のHV車も限定車としての販売はスタートし、ジャーナリス評価は高いですが、価格が高いせいか販売は伸びず、本気度が疑いたくなります。CO2規制対応として、ダウンサイジング過給、アイドルストップ、減速エンジン停止、オルタネータによるベルト駆動回生と、ハイブリッド化の狙いでもあった教科書通りの低燃費メニューを増やしてきていますので、みかけは従来車の燃費向上と見えますが、どこかで本格ハイブリッドに舵を切る必要が迫られると見ています。
中国は2011年の公式発表では年間HV2,580台、BEV 5,579台と、まだ普及シナリオを議論する段階ではありません。昨年の公式発表はまだありませんが、中国政府筋が、次世代自動車普及モデル都市(北京、上海他25都市)として、BEVを中心とする新エネ自動車が計27,400台、そのうち個人所有が4,400台、他はすべて公共サービス分野と公表しました。中国での普及拡大は容易ではありません。しかし、年間1850万台販売と世界一の自動車マーケットでの次世代自動車転換を加速する必要があることも確かです。

このように、2012年の次世代自動車販売では、日本勢が圧倒的なリードを示しています。日本に続き、アメリカもHV普及へと舵が切られそうです。次世代自動車普及への今年の主戦場はアメリカだと思います。ホンダ・アコードHV、ホンダFitクラスの新型スポーッHV、デュアルクラッチCVT方式の日産アルティマHV、これにFord Fusion、トヨタカムリHV、プリウスといったミッドサイズセダン系HVの激烈な競争を期待しています。

次世代自動車の本格競争時代はこれから

マクロに見ると、プラグイン自動車普及の前に、従来型低燃費車の普及、さらにノーマルハイブリッド車の普及拡大が先決です。一時は、「日本のハイブリッドはガラカーか?」とも揶揄されましたが、従来の改良と先の電気自動車や燃料電池自動車への期待先行で次世代自動車への先送りは許されなくなってきます。「トヨタのHV」とまでは言いませんが、「ガラカー」どころか普及する次世代自動車には何らかの「ハイブリッド技術」が欠かせなくなると断言できます。

トヨタがHVでシェアを67%も獲得している現状は、他社がHVに本気で取り組まなかった裏返しです。やっと本格的な競争時代、いかにエコが大事とはいえ、個人の自由な移動手段であるパーソナル・モビリティを将来も残していきたいとの思いでハイブリッドプリウスの開発に取り組んできました。「がまん」「もったいない」も必要ですが、時にはそれを忘れ、山道を、海が見える峠道を、また速度無制限のアウトバーンでのドライブなど、個人の自由な移動空間としての次世代自動車、モビリティの実現を期待しています。このモビリティへの実現には、日本の自動車エンジニアのハード・ワークと知恵の結集、さらにはクルマへの熱い想い、将来モビリティへの夢が必要です。

2013年は、その将来自動車へ向かっての重要なターニングポイントになるような予感がしています。

福島第1の放射能汚染水漏れと2012年の電力CO2

今回の福島第一原発での高濃度放射能汚染水タンクからの漏水事故と東電のこれまでの一連の対応を見ると、緊急事態での危機管理マネージどころか、設計組立品質および運転維持の不具合未然防止の初歩の初歩すら機能させられなかった東電という組織体にこれ以上まかせておけないとの印象を強く持ちました。

以前のブログでも述べましたが、地球温暖化緩和にむけたすべてのジャンルでのCO2を代表ガスとする温暖化ガス排出低減は待ったなしで、このためには安全が最優先ではあるが原発の再稼働と安全性をさらに高めた新しい原発開発を続けるべきと主張してきました。 

しかし、この体たらくでは、この安全確保と新しい取り組みをこの機能不全に陥った組織に任せることは出来ません。少しでも国民の理解を得ることが再稼働の前提なのにも関わらず、電力会社自らが逆に不信感を募らせるばかりで、いよいよ困難な状況となってきています。

プラグイン車は原発を前提で構想された

9年ほど前にピークオイルに備え、地球温暖化緩和のために自動車からのCO2排出も抑える実用に近い手段としてプラグインハイブリッド(PHV)の開発をスタートさせました。その前提には、原発による低CO2かつ安価な夜間電力をこの充電電力として使うシナリオがありました。

3.11前の日本のエネルギーシナリオでは原子力発電の拡大が謳われており、低燃費HV車の電池をエネルギー密度の大きなリチウムイオン電池に変え、この格安で低CO2の夜間電力を電池の充電に使い、CO2削減を果たそうとの考えでした。

PHVなら、バッテリ電気自動車の最大の課題である航続距離不足の問題も解決できます。しかしこのシナリオも3.11福島第1原発事故で大きく狂ってしまいました。太陽光、風力などリニューアブル発電に多くを期待できないことは明らかで、低CO2とともに安価な電力であることが必要条件となります。

私自身、電力村の住民でも原発の利害関係者でもありませんが、脱原発でかつ国際競争力を維持しながらの低CO2社会の構築、低CO2自動車のシナリオは描けませんでした。もちろん二度と高濃度放射能汚染物質を世界にまき散らすような原発事故は起こしてはならず、原発の安全性の確立なくして低CO2社会は絵にかいた餅になってしまいます。

原発の安全確立と低CO2技術が日本の今後の鍵

今年の秋にはIPCC5次レポートが発行されます。今月初めの日本の猛暑なども含め世界的に気象の変動は明らかに大きくなってきており、未だに人為的な発生起源の温暖化ガスが気候変動の要因であることを否定する声は聞こえてきますが、とうとう400ppⅿを突破した大気中のCO2濃度などの影響が皆無とも証明できず、将来の人類のために気候変動リスクを回避する活動を起こす必要があるのは間違いないかと思います。

福島原発事故の影響を自分の眼で確かめ、これからの低CO2エネルギー、低CO2自動車のシナリオを考えたいと思い、今年の1月には福島第2原発の見学をさせて頂きました。その際は、増田所長みずから、停止中の原子炉内部からさまざまな緊急冷却ライン、流行語にもなった炉心圧力のベントライン、原子炉の底にあるサプレッションチェンバー、さらには津波影響で倒壊したオイルタンク、大型タンクローリーを間近に目にし、天井を超える水を被った緊急冷却用ディーゼル発電機と冷却水ポンプ建屋、ガスタービン発電機トレーラー車など、その後の緊急安全対策工事についても説明を頂きました。

当時の現場の状況、緊急事態での原発安全停止の基本、「止める、冷やす、閉じ込める」を所長のリーダシップと所員と関連会社のスタッフの献身的な活動により成し遂げた状況など、増田所長、および所員のかたがたから現地、現場で詳しく説明を受け、東電福島第2原発現場の現場力に強く感銘を受けたのは事実です。

今回の漏水不具合では、今さら本社のトップを現場に貼り付けたから何とかなるような話ではないと思います。次々と発生する緊急事態をさばき、オペレーションによる不具合発生を未然に防ぐためには、プロの緊急プロジェクトマネージャと現場マネージャーのタイアップが不可欠となります。それこそ現場力の結集とそのパワーを生かす、リーダーのリーダシップとマネージパワーが必要です。

そのような人材を探し出すことがトップの役割です、現状のトップマネージではこの人材を探し出すことすらできていないとしか思えず、これもまた今回の事故が人災であったと言わざるを得ない大きな要因になっています。

今後は国が全面にでるようですが、政治家や官僚が現場作業をやるわけでも、やれるわけでもありません。やれる人材、危機管理オペレーショのリーダーを見出すこと、そのプロ人材の組織化、全面的な支援が政治家や官僚のやるべきことであり、日本の新しい危機管理チーム結成を期待されます。この収束なしに、原発再活用への道はありません。

おりしも先日、2012年度の日本9電力会社の電力CO2発生値が電力各社から発表されました。原発のない沖縄電力を除いて、残り8社の電力CO2は大幅な増加を示しており、電力各社が3.11前に設定していたCO2削減目標はいずれも未達となってしまいました。

大飯原発以外はすべて停止していても、この猛暑の夏のピーク時を節電と火力シフトで乗り切ることが出来ました。しかし、原発分をまかなったのはほぼ100%が石炭、石油、天然ガスの火力発電で、リニューアブル電力ではありませんでした。

このところの貿易赤字も、電力各社の赤字も、さらに温暖化ガスCO2の大幅増加もこの火力発電シフトが原因となっています。ポスト京都議論の進展は遅れていますが、低CO2技術で貢献していってこその日本の存在価値であり、真水部分(温暖化ガスの国内削減分)の削減にしっかり取り込まずして国際貢献は考えられず、この点からも安全確保が前提ではあるが、原発再活用議論に目を背けて進めることは出来ないのではないでしょうか?

プリウスPHV日記-4

プリウスPHV使用開始から1年

昨年4月に納車されて以来、私の足として使ってきたプリウスPHVが1年を過ぎましたので、その一年のまとめを報告します。

私はエンジニアとして、次世代車であっても安全・安心性能とそれを支える信頼性品質が何よりも重要で、その上でエコ性能を追求しようという信念でハイブリッド開発にとり組んできました。そうして送り出したプリウスですが、厳しい企業・製品評価で有名なJ. D. Power社の米国経年車品質ランキングで今年も連続でコンパクト車クラスNO1を獲得してくれました。これはハイブリッド車カテゴリーでの品質NO1ではなく、従来エンジン車を含めたNO1です。トヨタのハイブリッド車は販売台数500万台を突破しましたが、これは絶え間ない品質向上に努めてくれたスタッフ達による偉業であり、今も彼等は日夜飛び回ってくれいるのに間違いないと思います。

さて、今日のテーマから少し脱線しましたが、このプリウスPHVも品質NO1のDNAを引き継ぎ、この1年間、故障ゼロ・不具合ゼロで走り続けてくれました。自動車は工業製品であり、このような品質向上の努力を続けないとあっという間に故障率が増加し、お客様の信頼を失ってしまいます。プリウスPHVもこの品質NO1のDNAは引き継いでくれていることにほっとしました。

実用上には全く不便なことは無いプリウスPHV

上の図1は、この2012年4月20日から今年4月13日までのこの一年の走行結果を、以前にトヨタにお願いして使っていたプリウスPHVの前身で、実証テストを兼ねた限定PHVとその前に使っていたノーマル三代目プリウスの結果と比較して示したものです。

この1年の総走行距離は15,479km、平均的なユーザーの1.5倍以上ですが、それでもその前の限定PHV車18485kmに比べると大幅に減ってしまいました。二度の海外出張などクルマをおいての出張も多く、クルマを走らせた日数は259日、使わなかった日数は101日、稼働率72%です。

2月にブログで紹介した新プリウスPHV日記-3の走行ログと比較すると、その後に寒の戻りの寒い日が続いたせいか、また豊田や名古屋への何度かの出張で新東名を少しオーバースピードで気持ちよく走ったせいか、大幅に燃費・排出CO2を悪化させてしました。 

今のクルマの用途をカバーし、さらに電池エネルギーを使い切ってもノーマルハイブリッドと同様低燃費ハイブリッド走行ができるのがプリウスPHVの特徴です。 ノーマルプリウスから乗り換えて正直な所、全くサプライズは感じませんでしたが、この充電を気にせず走り回れるメリットは非常に大きいことを実感しました。充電器も屋内車庫に据え付けにしましたし、今回のPHVでは充電ポート部に照明がつけられましたので、夜間に差し込み口を探すことも、また重く扱いづらい充電ケーブルをもちあるくことも不要になり、充電操作そのものは楽になりました。

外出先での充電は、トヨタに出張したとき以外は全く無しで、ガス欠にでもならない限りはわざわざ充電ステーションをさがして出かけることはPHVでは全く不要です。また、充電電力を使い切ったあとも低燃費ハイブリッド走行ができることも特徴の一つで、こうして燃費メリットを引き出せるのはプリウスならではで、従来エンジン車をPHVに改造したようなクルマでは出来ない芸当です。

原発停止で日本の発電CO2が急増、PHV・EVの環境改善寄与は薄く
なお、2月のブログでは、発電CO2として東日本大震災前の2010年経産省エネ庁エネルギー白書データーの各電力会社がグリーン開発メカニズム(CDM)購入分を除いた真水の値の418g_CO2/kWhに原発停止分を勘案し450g_ CO2/kWhで算出しましたが、最近電事連から公表されたデーターでは原発停止の影響が大きく2011年度では510g_ CO2/kWhと20%以上も増加しており、上の表はこの値を使って計算し直した結果となります。

2011年 CO2排出実績と見通し{電気事業連合会HP}

この資料によれば、日本全体の電力総使用量は2010年度の9,060億kWhから3.11後の計画停電や節電の徹底、生産の落ち込み、長引く経済不況から8,600億kWhと減少したにもかかわらず、発電のCO2排出量は3.74億t_ CO2から4.39億t_ CO2と、CO2排出を削減しようという流れに逆行する形の、由々しい増加を記録しています。

この発電CO2を使用した場合、限定車時代は私がAC100V充電をし充電効率が78%だったのに比べ、原稿PHVは車両充電器の効率向上とAC200V充電に変更した事によって充電効率89%にまで向上したにも係わらず、図1に示すようにEV比率36%だった場合のプリウスPHVの走行距離あたりのCO2排出量は111.9g_CO2/kmと、外部充電なしのノーマルプリウスの122.7g_ CO2/kmと比べてわずか9%の減少に留まっています。この減少率ならば、ノーマルプリウスが燃費向上でもう一がんばりすれば追いつくレベルです。

このように、発電CO2をしっかりと計算することは必要で、走行中ゼロエミッションとのキャッチフレーズはCO2削減に関してはまったく意味はないだけでなく誤解を招くもので、例えば英国ではこの広告表現は不正確として禁止されているのは当然の事に思えます。これは勿論、PHVだけの問題ではありません。

プラグイン車推進の見直しを考える時期では

一方でガソリン消費の削減をみてみると、インパネ表示の充電電力走行(EV走行)によるガソリン消費削減量は226リッターで、充電電力を使い切ったあとのハイブリッド走行燃費が三代目プリウスの日本のユーザー燃費サイトe-燃費の調査値21.5km/Lと同じ燃費で走れたとして計算した値239リッター、この中をとって230リッターレベルがプラグインによるガソリン消費削減量でした。

日本の最近のガソリン価格リッター150円では年間約35,000円の削減となりますがこれに充電電力の電力料金を差し引くと、安い夜間電力料金での充電をメインに行ってもその経済メリットはそれほど多くはないのが現状です。

長距離ドライブの頻度が大きく、年100日以上もクルマを使わない私のカースタイルでも、年間5,680kmもガソリンを使わず充電電力で走った勘定になり、急速充電器の整備は不要ですが、勤務先、出張先、宿泊するホテル、ショッピングセンターにAC普通充電器が用意されるようになると充電頻度を高めることは容易だと思います。

しかし、ピークオイル論が遠のいた今、また電力CO2が増加してしまった日本でプラグインハイブリッドだけではなく、電気自動車を使う意味はかなり薄くなったというのが正直な所です。これは中国では更に問題で、発電によるCO2排出が多くまた大気汚染の多い石炭発電を多く行う中国では、ノーマルハイブリッドと比較すると電気自動車の方がCO2排出を増加させるばかりか、PM2.5の大気汚染まで悪化させて、日本への広域汚染にもつながるものとなるというのが現状です。

ピークオイルの心配と、地球温暖化緩和のためのCO2削減として現役ハイブリッド開発リーダーとしてプラグインハイブリッド開発をスタートさせ、トヨタから離れたあともプラグインハイブリッド普及のサポートをしてきましたが、ピークオイルの心配が遠いた今、フランス、カナダ、スウェーデンなど水力発電や原発比率が大きく発電CO2が低い一部の国を除くと外部電力によるEV走行でCO2削減メリットが出せなくなってしまいました。今、自動車業界は果たして何のために外部充電EV走行をするのかという根本の疑問に立ち戻り、プラグイン自動車の目的をもう一度問い直す時期に差し掛かっていると個人的には考えています。

もちろん超長期的には、この発電CO2は削減するというよりも削減させねばならず、低CO2電力が使用出来るようになれば、急速充電ネット整備も不要で既存液体燃料インフラと一般電力インフラが使えるプラグインハイブリッドが有望であるという意見は変わりませんが、こうした低CO2電力供給に見通しがつくまでは、全てがプリウスタイプのフルハイブリッドとは云いませんが、エコラン+αの「マイクロ」「マイルド」から「フルハイブリッド」まで、初代プリウスの時から言い続けたハイブリッド技術をコアにするシナリオがいよいよ本命になったと確信を深めています。

しかし現状では補助金を貰いながら自動車諸税の減免を受けたとしても、経済メリットもほとんどない状況で、これではプラグイン車の売れ行きは日米欧とも芳しくないのは至極当然で、今後プラグイン車が本当に市場に受け入れてもらうためには、さらなる販価ダウンと単なるエコだけはない新鮮さ、サプライズを感じるPHVならではの商品力アップが必要と感じています。

将来自動車エネルギー/次世代自動車 Weekly Mail Newsから

 昨年11月から、弊社コーディアでは会員向け有料サービスとして、自動車関連の燃料・エネルギートピックスとハイブリッド車(HV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)、水素燃料電池自動車(FCEV)等の次世代自動車関連のトピックスを欧米メディア、インターネット情報を収集・選別し、エネルギー、次世代自動車それぞれ隔週毎に配信しています。将来エネルギーと自動車電動化技術が次世代自動車のゲームチェンジャー役であることには異論の余地は殆どないという状況ですが、それでも正確にこの先を見極めることは極めて難しいことは昨今のリチウムイオン電池ベンチャー、EVベンチャーの栄枯盛衰をみていても明かです。

 私も現役時代から、自動車に関わるエネルギー、環境問題とそれに対応する将来自動車技術の情報収集には感度を高めて、パイプも拡げて取り組んできました。もちろん、インターネット時代に入ると、Web経由のさまざまな情報やメールでのやりとりが溢れるほど増え、かえって情報の多さに埋もれてしまい、折角のパイプもその中で取捨選別ができずチョーキングをおこしてしまうことが心配なくらいです。しかし、その多くの情報をしっかり分析し、流れを見、表から、裏から、また関連情報の繋がりから整理すると、さらに過去の経験から振り返ると大きく読みがはずれることはそれほど多くありません。

 その情報の山からいくつかピックアップし、毎週、毎週、会員向けとしてメール配信を続けて居ます。もともとは、自分用の情報収集としてスタートさせたものですが、内部用だけではもったいない、トピックスリストの配信サービスからスタートさせ、その時々の考察とそのトピックスの流れからシニアな自動車エンジニアとしての分析を一般メディア記事とひと味ちがう切り口でお伝えできればと考えています。

一年前とは大きく様変わりした次世代自動車を取り巻く環境

 BEVブームが下火になり、これに入れ込んで政府資金をあてに先行設備投資をおこなった電池ベンチャーは、結局は倒産、もしくは中国あるいは欧州の自動車部品大手に吸収されるかし、今では見る影もありません。BEVでなければ次世代車の夜も明けず、HVは日本のガラカー、トヨタはHVに拘るあまりBEVに乗り遅れる、すり合わせ型のHVよりもモジュール型でシンプルなBEVがゲームチェンジャーと囃した声も、ほんの一年前までは巷間に溢れていたものですが、聞かれることは稀となりました。
 
 一時はグリーン・ニューディールの旗頭として扱われ、政府資金がR&Dと生産設備投資に投入されたMIT発のリチウムイオン電池ベンチャーA123システム社が昨年倒産し、その再建に中国企業が乗り出し連邦議会で国益を損なうと騒がれるなど、間違いなく大きな揺れ戻しがきています。電池に限らず、充電器、BEV/PHV生産、太陽光発電などグリーン・ニューディール関連ベンチャーの経営破たんが続きました。もちろん、次々の新ビジネスを生み出すアメリカの活力は参考にすべきですが、ブームが去ると転身が早いのもアメリカの特徴、大学、国立研究所テーマの盛衰をフォローしていくと、そのドラスティックな切り替わりに驚かされます。

 一方、イナーシャーが大きいのが日本の政と官で、いまのレベルの急速充電インフラにアベノミクスによる景気浮揚を旗印に国家予算が投入されるなど、情報音痴、情報分析不足のままで、ただでさえ財政赤字の中で国民の血税をブームが去った後で投入することにならなければ良いがと心配しています。

 もちろん、BEV全体の未来が消え去った訳ではありませんが、急速充電インフラを拡げていけばBEVの普及が加速するとの見方は、普及が推し進められるCHAdeMOの由来である、15分程度のティータイムで家に帰り付ける50km程度の緊急充電用と説明した東電の方々の当初の狙いから大きくずれています。そもそもの想定では、ここまで大量の資金を投入して急速充電網を準備せずとも、統計上は殆どのユーザーのトリップが短距離で、その範囲の利便性によってBEVが飛び立てるという計画だったはずです。これまでのガソリン車は5分程度の給油時間で500km、ハイブリッドなら1000kmも走れるクルマの代替として15分で50kmでは全体として同じ輸送距離を走らせるとすると10倍~20倍の充電時間、充電スポットが必要との計算となってしまいます。

 電動自転車、電動スクーター、価格次第ですがオールウエザーのコミュータなど電動自動車の活躍の場はあると思います。この別ジャンルのモビリティとして、トヨタがフランスのグルノーブル市でフランス電力公社と組み、政府、地方自治体の支援を受け公共交通機関のターミナルからのラスト・ワン・マイル(Last One Mile)モビリティとしてコミュータータイプのEVカーシェア実証プロジェクト実施を発表しました。このようなEVカーシェアがビジネスとして成り立つのか日本でも過去に何度も失敗したEVカーシェア/レンタカーの二の舞になるのか、パリのEVカーシェア オートリブ(Autolib)など類似EVカーシェアプロジェクトと合わせて注目しています。

 プラグインハイブリッドも現時点では販売状況は思わしくありませんが、この軽BEVとプラグインハイブリッド用ならば、安価なAC普通充電で充分で、集合住宅、勤め先駐車場、ホテル、ショッピングモールなど、出先で簡単に充電できるようになればその充電量にみあった石油消費削減に繋がる筈です。

アメリカ・シェールガス革命の衝撃、激動するエネルギーシナリオ

 化石燃料資源のトピックスでは、シェールガス・オイルのトピックスがひきも切らず、これもこの3年で状況が大きく変化し、一時期盛んだった石油資源の生産ピークは既にすぎ、一気に奈落の底への供給量が減少していくというピークオイル論はほとんど聞こえなくなっています。しかし、エネルギーセキュリティ確保、これまでの国際的な不況対策で地球温暖化対策どころではありませんでしたが、CO2削減への取り組みが不必要になったわけでは決してあしません。ただし、世界レベルでも、3.11後の日本でも、電力の低CO2化が足踏み状態でBEVがCO2削減の決定打にはならないこともBEVブームに水をかける要因にもなったように思います。
 
 さらに、最近の中国PM2.5など広域大気環境汚染問題も、自動車だけの問題ではありませんが、まだまだ次世代自動車としてグローバルに取り組むべき問題としてクローズアップしてきています。中国でのBEV普及は、CO2削減ではハイブリッド比較では逆効果になるばかりか、PM2.5など日本への影響も大きな広域大気環境汚染の悪化まで考える必要があることを示唆しています。

デジャビュに溢れるトピック、過去にも未来への答えがある

 エネルギー資源問題、大気環境問題、地球温暖化問題、自動車だけに留まりませんが、溺れそうなほどの情報の海の中からトピックスの大きな流れを俯瞰しても、なにか過去のデジャビュ(既視感)と感じてなりません。~1950年のロンドンスモッグ、ロス光化学スモッグ、四日市公害問題、東京柳町交差点の鉛公害問題などなど、次世代自動車の流れでも1990年代初めの加州ZEV、それに火をつけながら消えていったGM EV1 BEV、その替わりと騒がれたメタノール、ガソリン改質、そのあげく水素に収斂した燃料電池自動車ブーム、そして今回の第3回BEVブーム、そしてまた水素燃料電池自動車の浮上との繰り返しと感じます。以前から何が変わったのか、どこに進化があったのか、情報の掘り下げがによる、トヨタ流ですが、なぜ、なぜ、なぜの繰り返しで次世代自動車の本命、ゲームチェンジャーを見極めてやろうと思っています。

 このメールニュースについてですが、右肩にメールニュースのサイトへのリンクを張ってあります。そこには、これまでのニュースのヘッドライン部分のみですが掲載していますので、ご興味のあるかたは覗いていただければと思います。

新プリウスPHV日記-3

外で充電することは殆どない

少し間があきましたが、昨年4月から使っているプリウスPHVの近況をお伝えしたいと思います。一昨年の2011年度はトヨタにお願いして限定車を1年使い、昨年2012年4月に量産車を購入し足がわりに使っています。

最近では、この界隈(静岡県東部地区)でも日産リーフが走っているのをたまに見かけるようになり、プラグイン自動車自体も珍しいものではなくなりましたが、プリウスPHVはちょっと目で従来プリウスと見分けが付けられず、プラグイン車普及へのアピール効果としては残念ながら小さいようです。

限定モデルからの通算でほぼ2年、約30,000キロの走行ですが、一言で言えば「通常のプリウスと何も変わることがない普通のTHSハイブリッド車」という感覚です。限定版のPHVではAC100Vコンセントで充電をしていましたが、クルマを入れ替えるタイミングでカバー付きのAC200Vコンセントの設置工事を行い、AC200Vでの充電を行っています。

コンセントカバーには勝手に開閉されないように鍵がついているので、鍵をかけて充電ケーブルはコンセントに差しっぱなしにして使っています。限定車でやっていた充電ケーブルをクルマに積み、充電の度にいちいちクルマから取り出してコンセントと車両の充電ポートの両方に接続、充電後はそれをかたづけて収納バッグにいれてクルマに積みこむといった作業は止めました。

限定車での経験でも、また実証試験の調査結果でも、ガソリンでも走ることができるPHVでは、なにも無理して外出先でケーブルを持ち歩いて充電先を探し回る必要はありません。この2年間で自宅以外の充電では、充電ケーブルを用いて通常コンセントで充電を行ったのは友人の別荘で試しにやってみた1回のみで、充電ステーションでの充電も今も時々クルマででかけるトヨタ本社地区への出張時に充電器付きの駐車スペースが空いている場合だけです。そのスペースも、最近ではトヨタ周辺のPHV台数が増え、先を越されて開いて無く充電ができないケースが増えてきています。

今回の政府補正予算で、電気自動車用の公共充電設備の設置に大盤振る舞いがされるようですが、高額な急速充電器を増やすぐらいなら、電気自動車、プラグインハイブリッド用として同じ予算で100台ぐらいの設置が可能な通常AC200Vの公共充電コンセントを増やす方が大きな石油消費削減効果を得ることが出来ると私は考えています。勤務先、集合住宅、ホテルなど宿泊施設、ショッピングセンター、公共施設駐車場への通常充電コンセントを増やすほうが、クルマ全体で考えると石油消費削減につながることは間違いありません。AC200V充電なら、プリウスPHVでは1時間半でフル充電、約20キロ分を電気走行に置換えることができます。また、これでメリットを得るのはPHVだけではありません、AC200Vであれば都市内の小型コミュータや電動スクーターの充電にも使えますので、こうした通常充電コンセントの設置が効果的と思います。

脱線してしまいましたが、次ぎにこれまでの燃費、電費データをご紹介します。

図1

図1は新プリウスPHVの最新走行ログを以前使っていたプリウスPHV限定車およびその限定車での充電電力を使わないノーマルHVとの燃費、電費、CO2の比較表です。電池エネルギー搭載量は限定車の5.2kWhから4.4kWhへと少し減っていますが、電池SOC(State of Charge: 電池充電状態)の使用幅を拡大し、またEV走行許可域を見直しJC08基準の公表EV走行距離は拡大しています。実際に使ってみると、あまり大きな違いはないようです。

200V充電に変えた効果は大きかった

詳しい分析は、1年経過してからしっかりと報告したいと思いますが、これまでのデータから現状に触れてみたいと思います。充電をAC200Vにしたのは正解のようで、100Vでは3時間かかっていたフル充電時間が半分の1時間半で済み、またフル充電付近では充電電力を落としてスロー充電を行っているので、1時間弱で80%充電はできるようです。また充電効率も200V化によって大幅に改善されています。これからプリウスPHVの購入をお考えなら、購入時に併せてAC200Vコンセントの設置をお勧めします。

月間走行距離がこれまでより少なくなってきているせいか、電力走行比率は増え、ガソリン燃費が向上していますが、年換算では充電電力による電力走行距離はほとんど変わらず、結局はどれぐらい充電できるかで定まってしまいます。電池エネルギー搭載量を大きくしなくとも、勤務先、出先でAC200V充電器が増加していけば充電頻度を高めることができ自ずと電力走行比率を増やすことができます。私のような長距離ドライブ頻度も多いケースでも、38%程度の電力走行ができていますので、外出先で充電ができるようになるとそれほど遠い将来ではなく、50%越えは可能と感じました。

写真1

写真1に車両ディスプレーに表示される通算の燃費、電費ログ表示を示します。
このプラグイン化によって、ガソリン消費量は充電電力量に応じて減っていきますが、図に示すようにCO2排出量はそれほど大きな減少にはなりません。発電電力のCO2として昨年の発表データである450g_CO2/kWhを使いましたが、今の状況ではさらに火力発電シフトでかなり増加しているはずです。またこの観点でいえばアメリカ、ドイツ、さらに中国、インドではCO2排出面からは電気自動車やプラグインハイブリッドは逆効果をもたらし、さらに中国についてはPM2.5 排出の側面を見ても電気自動車拡大が果たして環境に良い効果を持つのか極めて疑問です。

いまはまだ電気代が安く、ガソリンの代わりに電気走行に置換えていくことではランニングコストとしてメリットがありますが、それもガソリンには多額の税金がかかっている状態での比較であり、また深夜電力料金が脱原発/縮原発のなかでどうなるかも心配する必要があります。

しかし簡単に充電ができるようになると、プラグインPHVの販価が下がっていけば充電した電力分だけガソリン走行分を電力走行に置換えていく現実解であることが実感できます。私のケースでも1回の給油で平均1000km程度走れていますから、どんな長距離ドライブでも給油、充電をあまり気にせず走り回ることができることも大きなメリットです。

ただし先回も書きましたが、電池が安くなり販価が下げられてもガソリンの節約だけもとを取るのは楽ではありません。手前味噌ですが、ノーマルHV走行の燃費が良く、このノーマルHVに対抗して燃費削減だけが売りではまだまだ力不足です。プラグインならではのアピールポイントが必要に思います。このプリウスPHVを使ってみて、充電電力を使わないHV走行燃費の重要性感じました。レンジ・エクステンダー方式など、充電電力を使わないHV走行燃費をあまり重視していないプラグインもありますが、長距離ドライブ・高速ドライブではHV走行燃費の重要性を強く感じます。

自動車エンジニアには楽しみな時代

今年は温暖化?が吹っ飛ぶような寒い冬、つくづく感ずるのはハイブリッドやこうしたプラグイン自動車のヒーター性能の低さです。ノーマルHVでもヒーター水温確保のためだけにエンジンを掛けざるをえなくなり、プラグインでも電池があってもヒーターのためのエンジン運転が頻発します。

それでも、従来エンジン車に比べ絶対燃費は悪くありませんが、燃費悪化率の大きさには愕然とします。3代目プリウスでは、排気熱再循環装置を採用、サブマフラーに冷却水パイプを通し排気からの熱回収をおこなっていますが、プラグインではこれでも不十分、この熱源確保もプラグイン自動車のこれからの大きな課題です。電気自動車ではこのヒーター熱源を全て充電電力でまかなうので電力走行距離はさらに短くなってしまいます。シートヒータもありますが、手の足の凍えには役にたちません。我慢のエコの押し売りではない解を期待しています。

まだまだ自動車エンジニアが取り組むべきテーマは山ほどあり、こういった課題が目の前にありこれに取り組むことができるこれからのエンジニアが少しうらやましくなっています。

次世代自動車、2012年備忘録

明けましておめでとうございます。
いつもCordia Blogをお読み頂き有難うございます。
2013年が皆さまにとってよりよき年となることを祈っております。

さて、普段このブログを書いています代表・八重樫武久には正月休みを頂いて、今回は八重樫尚史が代筆させて頂きます。今回は自動車全体の2012年の個人的なまとめを書いていこうかと思います。

2012年はプラグイン車にとって「2年目のジンクス」?

2012年はまずはプラグイン車としては、プリウスPHVの一般販売が開始され、北米でもフォードからPHEV・C-Max(Fusion) Energi、バッテリーEVとしてはフィットEV、テスラ・モデルS等が発売された年でした。その前年の2011年が実質的に「プラグイン車元年」だとすると、「プラグイン車飛躍の年」とその前には期待されていた年です。

そしてそれらのクルマは世界の道を走り始めましたが、残念ながらそのスタートダッシュは鋭いものではありませんでした。それにはインフラ等を含めた様々な要因があるかと思いますが、あくまで数字的結果だけを言えば、年間販売目標を超えたモデルは殆ど無い状況です。スポーツには華々しい活躍をした新人が2年目には苦戦するという「2年目のジンクス」という言葉がありますが、そうした言葉ですっきりとまとめて忘れ去りたくなるような年です。

ただし産業・技術の世界は、もちろんスポーツとは違いますので、2012年についてしっかりと検証して、今後の普及に向けての糧とすることができなければ、今後のプラグイン車の未来を切り開くことは難しくなるでしょう。

様々なクルマが登場した2012年

一方で2012年はプラグイン車以外の、自動車の次世代技術が多く登場・紹介された年でもありました。マツダはSky Activeで日本のディーゼル乗用車市場を切り拓きはじめ、これを搭載したCX-5はみごと日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。また、以前より欧州勢を中心として取り組まれてきた燃費向上の為の小型化エンジン+過給器のシステムは更にバリエーションを増やし、日本でも日産がCVTとこれを組み合わせたノートを発売し、こちらはRJCカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

欧州では近年の欧州市場でトップを支配し続けているVWゴルフがフルモデルチェンジを行い、上記のシステムの熟成と大幅な軽量化によって、現状の王座つまり今のスタンダードカーとして評価を続けていくとみられています。

一方の日本勢では、日本市場は販売台数でトヨタのプリウスとアクアが独走している状態で、アメリカでもプリウスが記録的な年間販売台数を達成しました。ホンダも秋にハイブリッド3種を取り揃える意欲的な技術発表会を行い、これからの巻き返しに期待が持たれています。

軽自動車分野でも、ホンダがN-BoxとN-Oneを投入し大きくシェアを拡大して、大激戦の様相となっています。こんな中でスズキがアイドリングストップから一歩踏み出したene-chargeを搭載したワゴンRを発売し、ダイハツも既存のガソリン車の燃費を向上させ更に軽自動車に衝突回避支援機能を搭載するなど、活気のある争いを繰り広げています。

衝突回避支援機能のパイオニアであるスバルは、トヨタと共同開発して作ったスポーツカー86/BRZが注目を集めたのに加え、一年を通じて好調な販売を維持し、東証の主要銘柄のうち株価上昇率で一位を取るほどの一年でした。また、VWが販売した小型車UP!も、いままでのドイツ車からすると驚くような値段で日本でも発売開始され、こちらもその価格で衝突回避支援機能を搭載していることが注目を集めました。

自動車用リチウム・イオンバブルの崩壊

上の章タイトルは、今年秋に見かけた自動車コンサルタント会社の北米支部が出したレポートのタイトルです。2012年は自動車用バッテリー、特に駆動用リチウム・イオンバッテリーを製造している会社にとって極めて厳しい一年となりました。

プラグイン車のスタートのつまづきは、まるで高速道路で先頭のクルマの軽いブレーキが後ろでは大きな渋滞を作ってしまうかのように、そのままこれらの会社の業績に直結し、特に北米のベンチャーはEner1からA123まで軒並み破産申請をして倒産するという事態となりました。またベンチャー以外の企業も業績が厳しく、資金余裕のある会社が他社の電池部門を買収・吸収するというニュースが多く飛び交いました。

これは、自分たちの手で出口の商品(クルマ)を開発できず、普及予測や販売・生産予測をベースにせざるを得ないながらも事前に多大な投資を必要とするという、自動車駆動用電池の産業の難しさを実感させるものでした。

また、なかなか成果を出せないこうした企業に対して眼が厳しくなり、アメリカ政府の投資が急速に絞られたことや、シェール・オイル、シェール・ガスといった新エネルギーの期待が膨らんだことなどが重なった末の「リチウム・イオンバブルの崩壊」でした。ただし、まさに「バブル」というのが象徴しているように、「期待」だけによってパンパンに膨らんでいたのも事実で、厳しい目で言うと単に実態が伴っていなかったからに過ぎないということもできます。

2012年は振り返ると、これ以外にも中国での暴動による影響や、新興国市場に地歩を築こうとする各社の鬩ぎ合いなどもあり、自動車業界にとって刺激的な年だったのではないでしょうか?この2012年を受けた2013年は、おそらく次への一歩を見通す為の一年になりそうです。

プラグイン自動車の売れ行き

次世代自動車としての有力候補、外部電力で電池を充電して走るプラグイン自動車として100%電気だけで走るバッテリー電気自動車(BEV)と内燃エンジンを搭載し充電電力とエンジンパワーを使い分け、もしくはミックスして走るプラグインハイブリッド車(PHEV)の売れ行きに注目しています。日産LEAFは東京、横浜の首都圏だけではなく、この静岡東部の田舎でも時々みかけるようになってきました。

販売台数統計を見ると、図1に示すように昨年2月の日産LEAFの初期受注の一斉納車と思われる急増と、昨年3.11東日本大震災の影響での自動車生産落ち込みがあった昨年の3月~8月を除くと1,000台~1,500台を推移しています。個人用としても売れているようですが、法人用が多いようで、わが家の近くでも団地のカーシェア、駅のレンタル、また市役所のクルマとして使われるようになっています。

プリウスPHVは、派手なイラストのついた豊田ナンバーのトヨタ関係者が乗っていると思われる社会実験用限定車を見かける程度で、今年の量産モデルを見かけることはそれほど多くないことが残念です。今年になって震災影響も解消し、さらにエコカー補助金の後押しもありハイブリッド車の売れ行きは絶好調、しかしBEV、PHEVのプラグイン自動車の販売は伸び悩み状態にあります。今年1月~6月までの従来車、ハイブリッド車、電気自動車の新車販売シェアを図2に示します。プラグインハイブリッド車(と言っても現状ではプリウスPHEVの一車種です)の販売台数はハイブリッド車の内数扱いとなっており実数がつかめませんが計画の販売台数には達していないようです。

苦戦するアメリカ

アメリカEDTA(Electric Drive Transportation Association:電動車両協会)Webページの販売統計サイトのデータでは、アメリカでの昨年度のプラグイン自動車の販売台数が、電気自動車10,060台、プラグインハイブリッド車7,671台、計17,731台となっていました。またハイブリッド自動車の情報を発信しているHybridCARSの統計データサイトによると電気自動車の内訳では日産LEAFが9,674台、Smart ED 302台、i-MiEV 76台、プラグインハイブリッド車は、その全てがGM Chevy VOLTでした。

このHybirdCARSサイトデータからまとめた20012年1~6月までのデータを図3に示します。図に示すようにアメリカではハイブリッド車でも新車販売台数のシェアが3.0%にしか過ぎません。加えて電気自動車(BEV)とプラグインハイブリッド車(EREV)は低調で、0.1%、0.2%にしか過ぎません。ちなみにこのハイブリッド車(HEV)販売の80%以上が日本のハイブリッド車となっており、今年は5年振りに販売新記録の更新は間違いないところまできています。

アメリカでは、カリフォルニア州のゼロエミッション(ZEV)規制強化が決まり、電気自動車(BEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)をある比率で販売しなければいけなくなり、ZEV規制強化対応として各社からBEV、PHEV発売のアナウンスが流れています。しかし、いくら法律で販売義務付けを決めようが、お客様に買っていただけないクルマでは販売を伸ばすことはできません。まだまだBEV,PHEVではクルマとしての性能、EV航続距離、販価では買っていただけない状況ですので、僅かのマーケットで叩き合いの挙げ句の果て、赤字の垂れ流しの叩き売りになるのではと心配しています。

公共用途が支える欧州

一方、BEV販売が大きく伸びているのが欧州マーケットです。その中でもフランスのBEV販売が、この欧州経済危機、ユーロ安で新車販売が急激に落ち込んでいる中で昨年比2倍以上に大きく伸びています。今年1~6月のフランスでのBEV販売ランキングを表1に示します。この表で販売台数1位のボロレBlueCarは昨年秋にスタートしたパリ市が支援をし、フランスのコングロマリットボロレ社が持ち出しで資金を投入したBEVカーシェアプロジェクトAutolib用の販売で、この6月の販売では販売台数2台と急減しています。

2位/4位に入っているルノーTwizyは都市内用の前後一人ずつ、小さな二人乗りのBEVで、これもまたフランス地方自治体支援のBEVカーシェアプロジェクト用途が多いようで、これからの急増は見込めない状態です。日、米、欧のプラグイン自動車の販売が頭打ちとなり、欧米で雨後の竹の子ように乱立したBEVベンチャー、それを当て込んだリチウムイオン電池ベンチャーの経営破綻が目白押しとなってきているのが気がかりです。

プラグイン車の普及は根本から

プリウスで先鞭を切り、トヨタ*ホンダで競い合い次世代自動車一番手として普及拡大を果たしてきたノーマルハイブリッド車に続き、2009年の三菱i-MiEVと日産Leafの量産化で幕を開けた電気自動車実用化競争のいずれも日本勢がリードしてきました。唯一プラグインハイブリッド車では、GM Chevy VOLTに一番乗りの座こそ譲りましたが、2009年末のプリウスPHVの少量限定リース販売による社会実験に引き続き本年1月からプリウスPHVの量産販売開始と次世代自動車実用化競争のトップランナーを維持しています。

しかし、期待が大きかったこのプラグイン自動車の販売が変調をきたし、これは補助金をいただいても販価が高すぎて売れないことに加え、充電コンセント設置の工事費、設備費がばかにならず、さらに日本、欧州の都市部での集合住宅の駐車場ではその充電コンセントですら設置できるところが少ないことに起因しているようです。

この充電コンセントでは、感電防止、安全第一ですが、低圧電力での安価追求がなにより、政策面からの後押しを期待します。これも、結構時間が掛かる話ですので、やはりノーマルハイブリッド、エコラン、さらにはほんの僅かでも減速回生で補機駆動用電力をかせぎ低燃費を目指す変革が重要、まず日本マーケットがハイブリッドに大きく動いたように、アメリカ、欧州で勝負のできるハイブリッド車を日本勢リードでやって欲しいと思います。その先にStep by Stepで集合住宅の低電力充電コンセント設置を進め、プラグイン自動車普及を目指すべきと思います。