トヨタハイブリッド車累計販売600万と電動自動車の未来

昨日、私にとってうれしいニュースが飛び込んできました。すでに新聞で報道されているように、トヨタハイブリッド車の世界累計販売台数が昨年の12月末で600万台を突破したとのニュースです。以前のブログで、昨年3月末に達成した累計販売台数500万台記念の現役、OB含めたハイブリッド開発の仲間たちのパーティーを取り上げましたが、次の100万台まで9カ月、ピッチをさらに速めての達成です。正確な数字は掴んでいませんが、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車といった電動自動車の世界累計販売台数もまた1,000万台突破もまもなくと思います。

トヨタのハイブリッド車販売のスタートは1997年12月発売の「プリウス」ではなく、その年8月に発売を開始したミニバス「コースターハイブリッド」ですが、これは少量販売にとどまり短い期間で生産も停止していますので、この600万台のうち半数以上を占める「プリウス」がリードしてきたと言っても良いでしょう。

図1
図は1997年からのトヨタハイブリッド車の販売経過です。

1997年のわずか300台程度からスタートし、100万台までに118カ月、約10年かかりましたが、次の200万台からは各100万台増加に27、18、14、11ヶ月とピッチを速め、昨年3月末に到達した500万台から600万台まではわずか9ヶ月で到達しています。お買い上げいただいた全部のクルマが生き残っている訳ではありませんが、このクルマが自動車低CO2の牽引役を果たしていると思うとエンジニア冥利につきます。

電動化に先行する日本、海外でもやってくる

ただし、日本ではハイブリッドやEVなどの電動自動車販売シェアが20%を越えましたが、アメリカでは今年も昨年に続き販売新記録となったもののまだまだ3.84%のシェアにしかすぎません。

今、デトロイトで北米自動車ショーが開催されていますが、ロイター通信の論調は「エコよりもパワー」に回帰かとの見出しで、フォードF150、GMシルベラードといった販売が好調な大型ピックアップトラックの新型車をとりあげています。

中身をよく見ると、その大型ピックアップトラックもダウンサイジング過給、軽量化、アイドルストップの採用といった低燃費メニューが並び「エコ」はあたりまえになっており、その上でカウボーイハットが似合うアメリカのガラパゴスカーの大型ピックアップですら低燃費が社会のまたユーザーのアピールポイントとなってきており、「エコよりパワー」とは反対に着実に燃費意識が定着してきた証拠のように思います。

中国も新車販売がとうとう2000万台を突破し、世界全体でみると自動車販売はさらに拡大を続け、保有台数が増加しています。

こうした状況では、トヨタハイブリッド車累計販売600万台到達、世界の電動車両累計販売1,000万台到達といって浮かれている訳にはいきません。自動車の走行でのCO2排出にまず歯止めをかけるには、どんなタイプであれ自動車の電動化を加速させる必要があります。

トヨタのハイブリッド車を販売している国は80ヶ国に拡大していますが、国別シェア、台数でみるとまだまだです。さらに新興国では廉価な小型大衆車クラスの電動化もまた求められています。そのためにも、電動化部品および車両の現地化も必要です。

ハイブリッド、EV、燃料自動車はライバルでは無い

昨日、お台場の東京ビッグサイトで開催されている「カーエレクトロニクス技術展」「EV・HEV駆動システム技術展」を見てきました。日本の自動車電動化を支える部品技術、材料技術、計測技術、生産技術各社がブースを出していましたが、その広がりと熱気が大変印象的でした。

一般の見学者が多い、他の環境展やスマート何とやら展とは違い、実際にモノ造り、ビジネスにかかわる専門家が多い印象で、各ブースで熱心な商談、営業活動が行われ、また中国、韓国他、海外の参加者も目につきました。

この17年、トヨタハイブリッド車累計600万台がけん引役を務めました。自動車電動化を支える日本の部品、材料、計測機、開発ツール、生産機械がここまでに広がってきたことに口火を切る役割を務められたことを、少し自慢がしたくなりこのブログに取り上げました。

もちろん、感慨に浸り立ち止まっていてはこの激烈なグローバル次世代自動車競争を日本勢が勝ち抜き、生き抜いていくことはできません。

巷では、その発信源がどこかは判りませんが、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、さらに水素燃料電池自動車をあたかもコンペティター関係にあるかのように対比、オン/オフ比較して語られているように思います。

さらにハイブリッド自動車と昨今の欧州勢のアプローチ、直噴過給ダウンサイジング、デュアルクラッチ多段変速機、アイドルストップ、気筒停止の低燃費車両を、これまたコンペティター関係として対比する論評を見かけます。そのあげくに、ハイブリッドは日本のガラカ―?などとのまで言われたこともあります。これはミスリード、不本意です。

電動化が将来自動車のコアなのは間違いない

クルマを動かすエネルギーの全部か、一部かは別としてエネルギーの貯蔵源を有効につかって高効率、低CO2を目指す目的は、ハイブリッドも、プラグインハイブリッドも、さらに電気自動車も水素燃料電池自動車も変わりはなくクルマの電動化がコア技術です。使われている技術分野も共通分が多く、そのモーター、インバーター、さらに電池の技術進化、低コスト化が進むといずれもさらにCO2排出を減らすことができます。その手段が電動化です。

またハイブリッドの定義はクルマを直接電気モーターで駆動するパスを持つクルマとなっていますが、ナビもオーディオもインパネ表示も、クルマを動かすための様々な制御もエンジン発電発生するか、充電電池から取り出すかは別としてクルマを動かすために消費しているエネルギーです。このすべてのクルマで消費するエネルギーの効率化を図るのが低燃費のアプローチで、これもハイブリッドでもノンハイブリッドであろうが変わりはありません。できる限りの減速エネルギー回生を行い、そのエネルギーを使ってエンジン停止中の補機、制御系を動かし低燃費化を図る部分が、強いて言うとノンプラグイン車とハイブリッドの違いです。

低燃費車の標準メニューとなってきているアイドルストップでは、その領域を拡大していくと軽自動車の低燃費車競争で競いあっているように、クルマが完全停止する前からエンジンを停止し低燃費効果の拡大が図りたくなります。停車中でもエンジン停止を行うようになると、パワステ油圧、ブレーキ油圧など従来はエンジン回転で駆動していた補機類のエネルギー源確保が困難になりパワステも、ブレーキ油圧発生、さらに夏のエアコン運転、冬のヒーター熱源のエンジン冷却水もまた電動化がやりたくなります。

こうした補機類の電気駆動もまたどんどん進んでいます。上級車や重量車ではこうした補機駆動のエネルギーもばかにならず、42V~48Vのマイルドハイブリッドがやりたくなります。マイルドまでいかなくとも、スズキのエネチャージ、日産ノート、マツダスカイアクティブも12V鉛電池の他に小さなリチウムイオン電池、キャパシタ―を使い、エンジンベルト駆動ですが減速時のエネルギー回収を行っています。これまた自動車の電動化です。

展示会でも日本各社の様々なタイプの電動化に向けた部品、材料、開発のためのツール、計測機がこれでもかというほど展示されていました。国内マーケットで低燃費自動車開発を競いあり、その部品、材料、計測ツール、開発ツール、さらにその生産技術開発が活発になり、展示会場で感じた熱気をさらに高め、その熱気のなかで次をになう人材が育っていけば次の700万台、1000万、2000万とさらに電動化車両の普及拡大を日本勢がリードできます。さらに、その低燃費車、部品、材料技術のグローバル展開を進めることが日本自動車産業の生きる道、この分野、この技術、この人材で地球市民として日本が貢献していくことを願っています。

電動化と自動運転、自動車の未来は

マツダより新型『アクセラ』の発表がありました。従来の「Skyactive」ガソリンエンジンモデルに加えて、トヨタと協力したハイブリッドモデル、「Skyactive D」ディーゼルエンジンを搭載したスポーツモデルを同時発表し、世界市場に向けたモデルとしてマツダの意気込みが感じられるラインナップとなっています。

昨年に三菱が『アウトランダーPHEV』、今年に入ってスバルが『XV ハイブリッド』、マツダがこの『アクセラ』を発売したことにより、日本の登録乗用車メーカーすべてがハイブリッドを販売することとなりました。ホンダもそれぞれ新開発のパワートレーンを搭載した『アコードハイブリッド』、『フィット ハイブリッド』を発売しており、今年行われる東京モーターショーでは、「いますぐ買える」各社のハイブリッドが展示されることになります。(海外のショーでもハイブリッドコンセプト等は展示されていますが、ボリュームゾーンに向けたハイブリッド車がここまで揃うこと無かったでしょう。)

今回は八重樫尚史が、今後ニュースなどが増えるであろう次代の自動車の方向性等について、とりとめもなく書いていこうかと思います。

共通する「電動化」の流れ

さて冒頭の『アクセラ』のニュースですが、報道をざっと眺めてみるとハイブリッド(HV)モデルがメインでその燃費30.8km/lというのが注目されているように見えます。触れたようにマツダ初のHVであり、また国内の販売台数の上位が『アクア』『プリウス』『フィット』となったようにHVが占めているため、こうした見出しが付けられたのでしょう。

以前このブログでも「日本のハイブリッド車市場がガラパゴス」とした記事に反論したことがありましたが、これまで挙げたHV車種(『』で括られているものです)は全て海外での販売を行っているまたは予定されている車種です。『アクセラ』でもマツダが海外での販売を強化すると述べているように、日本メーカーは世界市場に目を背けてHVを開発していることはありません。

そうした「ガラパゴス」とするような報道の根底には、欧州の小型ディーゼルや過給器付きエンジンの流れとHVが対立しているような構図を作ろうとする意図が感じられますが、その見方は間違っているというが私の考え方です。そうした見方は「ハイブリッド」「従来エンジン」「ディーゼルエンジン」などといった外身(ジャンル分け)にこだわり過ぎで、本当に自動車の開発の中で進行している未来への共通認識を見ていないとも感じます。

自動車の開発の中で進行している未来への共通認識というのは「電動化」であり、また実はこの「電動化」すらも外形の話で、突き詰めていくと自動車の「高効率化」という事になります。「高効率化」とは、自動車に供給されるエネルギーをいかに無駄にせず有効活用するかということです。自動車の効率はそれまで「熱」によって図られていましたが、「電動化」はそれを電気に変換するという道を増やし、より柔軟性の高い電気も使用してより全体での効率を高めるというのがいまの「電動化」の根底にあるものです。

「電動化」は必ずしも電気モーターで駆動することではありません。HVやEVがそうした分野を加速させているのは間違いないのですが、ステアリングやアクセル、ブレーキの「電動化」、エアコン等の快適装備の「電動化」などは、HVやEVだけに留まるものではなく従来エンジン車でも導入されてきています。技術の未来を見通すためには、自動車の分野分けや燃費だけではなく、こうした共通で進化している方向性を見定めることが重要かと思います。

自動車の「電動化」は日本メーカーの得意とされる分野ですが、世界の自動車メーカーもこの分野に進む方向性を明らかにしています。9月にドイツで開催されたフランクフルトショーはまさに「電動化」のショーと言っていいものでした。そこでは欧州最大の自動車メーカーであるVWのトップが「電動化」に主眼をおいたスピーチを行い、欧州も「電動化」に進んでいくという宣言を行いました。

自動車の社会的コストの低減へ

「高効率化」に加えて次世代の自動車に間違いなく求められるのは「安全装備」です。これは目新しいものでも何でも無く、自動車技術にとって最も重要な部分であり、今後も最も重要なものであり続けるであろうということです。

なぜこれらが重要かというと自動車が抱えている社会的コストが、それらによって低減されるからです。社会的コストというのは、自動車会社や自動車ユーザーに留まらず、社会に負担を与える部分をいいます。自動車の利便性や魅力がこの社会性コストを下回ると、自動車の使用そのものが許容されなくなります。大きな視点で言えば、こうした分野での技術革新の努力を自動車のメーカーが怠れば、自動車の未来はありません。

自動車の社会的コストで大きなものは、排気ガスなどによる「環境悪化」、ガソリン等の使用による「エネルギー使用」、そして交通事故による「危険性」となります。「電動化」等を使用した「高効率化」は「環境」と「エネルギー使用」を減らしこれらの社会的コストを抑えるもので、「危険性」を抑えるのが「安全装備」です。

「安全装備」については衝突防止機構等が急速に普及してきており、今後その機能は、シートベルト、エアバッグといった運転者や搭乗者を守るものから更に歩行者等を自動検知してブレーキを作動させるなど、周囲への安全も確保しようとしていこうという流れとなっています。

パッケージではなく中身を見よう

衝突防止機構等はその価値を認められており、昨今のスバルの好評価は「アイサイト」抜きには語れないでしょう。しかし上のHV、EVは外見だけで報道されるとしたように、こうした技術を次世代技術として語られるとそれが「自動運転」になってしまうことに、個人的には疑問を感じています。

「自動運転」については、その実現で最も高いハードルは技術面ではなく法制などの整備であり、技術的に対応できてもそうしたものが主流になるかは読むことは出来ません。しかし「自動運転」の開発は重要で、こうした開発から歩行者安全も含めた「安全装備」や自動車の情報通信の技術進化が生まれてきています。

「電動化」と同じく「自動運転」もそうですが、ほんとうに重要なのは外見のパッケージではなく、その中身です。特に私近的に売れる車・売れない車を見定めるのではなく、大きな技術潮流を見定める際にはこの中身の見定めが必要になります。

しかしいくら美味しい素材を使用しても、うまく見た目も作らなければ食欲をそそらないように、技術を持っていてもパッケージを綺麗に作らなければなかなか普及はしていきません。

かなりまとまりが無くなってしまいましたが、このように様々な視野を変えて見ていくことが自動車に限らず、将来の技術の報道などを見る際に重要かとは思います。