未来のクルマは自動運転車!?

TVコマーシャル “やっちゃいました!”

最近、気になる自動車のTVコマーシャルが、“やっちゃいました!”とのコマーシャルです。自動運転がほんとうに“やっちゃえる!”技術、になるのでしょうか?トヨタも高速道路限定のようですが、2020年に商品化のアドバルーンをあげ、さらに早いのはテスラが、ドライバー責任を強調したうえでの自動運転ソフトをリリースしました。自動車とは何か、自動車交通の安全性とは何かの掘り下げた議論や、法整備もなしに熱病に浮かされている状況の商品力競争ブームには首をかしげざるを得ません。また、それを煽るメディアの報道、行政の反応に危惧の念を強めています。安全運転の基本は運転に集中すること、この基本が変わるのでしょうか?

安全運転の基本は運転に集中すること!?

現役時代の話しですが、自動車の評価を行うためには、私のようなパワートレイン・エンジニアも試験車運転資格の取得が必要でした。その社内試験車運転資格もクルマ全体の限界走行性能を評価する社内のテストドライバーまで、様々なクラスに分かれていました。限界性能評価を行うエンジニアやクルマの走行性能評価を行うテストドライバー以外の我々が目指すトップランクが上級試験運転資格でした。それがないとテストコース内でも180 km/h超えの高速走行や、欧米一般路での試験走行は許されません。上級資格の取得トレーニングは、スリッピーな路面でのドリフト走行から、サーキット路でのタイムトライアルまで時間と金を掛けて行われます。クルマ屋にとってみると、業務内で行える最も面白いトレーニングですが、徹底的に叩き込まれることがクルマの限界を知り、その範囲で安全に走ることです。最終のサーキット走行では、最低ラップタイムが指定されますが、追い込み過ぎてコースアウトすると、それで即不合格です。兎に角、様々なクルマ、走行環境下での限界を知り、決してそれを越えた運転を行わないためのトレーニングです。そんな運転資格試験の走行トレーニングで教えられる基本の一つに、障害物回避があります。仮にテストコース内に鹿、イノシシ、熊がでてきても、「超高速走行ではぶつかってもしょうがないからハンドル操作で回避しようとするな」です。事実、静岡のコースで鹿、北海道のコースでは鹿や熊が出没することは報告されていました。レアですが衝突例もあったように思います。高速走行では、当たり前ながら急なハンドル操作は禁物、ハンドルを切らずにタイヤロックをさせない最大制動力でのブレーキングがまず運転技能として叩き込まれる基本中の基本です。クルマの限界、自分の運転技能の限界を知り、さらにどんな時にも運転に集中することを徹底させるトレーニングです。運転技能訓練でない一般路の場合でも、安全運転のポイントは運転に集中すること、このパラダイムを変える自動運転は実現できるのでしょうか?

自動運転に求められること

自動操縦に戻ると、このような高速走行中に大型動物が出てくるケース以外にも、前方に落石、道路の陥没、トラックからの落とし物、前方のスリップしたクルマに遭遇するケースはゼロではありません。さらに、操舵輪がバーストしても回避走行ができるか、衝突してでも被害を軽微にとどめるか、回避操作を行うかの判断がドライバーに委ねられているのが今の自動車です。自動運転も走行系に影響を及ぼす部品故障時でも安全に回避、待避走行させる機能を持つことが条件です。暴走運転の割り込み、故意の自爆運転まで考えておく必要があり、そんな様々なケースで勝手に後はトライバーの責任とギブアップするようなクルマならそれは自動運転ではありません。さらに、大雨、大雪、強風、霧、路面状況も水たまり、雪道、氷結路などさまざまです。ひとたび自動運転モードに入ったら、このような条件で勝手にギブアップすることは許されません。技術的にこのような条件を満たせたとしても、性能要件を定義する規格、基準、法的責任所在を定義する法規制、保険制度などなどを整備が不可欠です。

もし、上記の条件を満たし、法整備もでき、完全自動運転のクルマが実用化できるなら、老兵は消えゆくのみ、将来の自動車技術を語る資格はありません。そうでない、中途半端な自動運転もどきのフィーバーなら、自動車に拘わる誰かが止めるべきです。”やっちゃいました!“のTVコマーシャルのクルマも、トヨタの2020年に目指すクルマも、先週テスラが『Model S』制御ソフトVersion7でリリースした自動操縦ソフトも、もちろん完全自動運転ではありません。テスラの例では、自動運転を目指すとしていますが、いざ何かの折にはドライバー責任、ステアリングホイールを従来車どおり手を載せて走ることが”strongly recommended”とされています。結構、システムとしてのギブアップ条件は多いようです。

自動運転車はバイ・ワイヤシステムが前提 その道を拓いたのはプリウス

自動運転車は、当然ならが、ドライバーの操作ではなく車を自動で操りますので、その基本は、クルマの基本要素「走る」「曲がる」「止まる」は、信号仕掛け、バイ・ワイヤー制御が前提です。その意味で、この三要素全てをバイ・ワイヤー制御でやらざるを得なかった、フルハイブリッドのプリウスがこの自動運転への道を拓いたと言っても良いでしょう。バイ・ワイヤー制御でなければ成り立たないフルハイブリッドのプリウス開発では、バイ・ワイヤー制御の安全、安心品質をどうやったら保証できるか、本当に保証できるのか、確認に確認を重ね、無い知恵を絞り、意地悪試験をやりまくり、その上で清水の舞台から飛び降りるような決断でGoを掛けました。「走る」「曲がる」「止まる」の三要素に、ドライバーの操作、意図から外れる安全・安心性能を損なう不具合が発生したら、リコールは当然、生産をストップさせ場合によってはすでに売ったクルマを回収するケースまで想定しました。それくらい、重い決断で踏み切った、ハイブリッドです。

Googleの自動運転開発用試験車の殆どがプリウスとレクサスRXハイブリッド

今の自動運転ブームに火をつけた主役は、Googleですが、遊園地のオモチャのようなハンドルもない自動運転プロトは別として、これまでの検討用車両のほぼその全てが2代目プリウスと、レクサスRXハイブリッド車の改造試験車です。バイ・ワイヤーの信号系だけを操作して、ナビデータと画像認識処理に基づく運転操作信号をハイブリッド車のアクセル信号、ブレーキ信号、ステアリング舵角信号としてECUに送り、ハイブリッドECU、ブレーキECUなどから駆動力、制動力、操舵角信号をアクチュエータに送り自動運転をやっていると思います。ハイブリッドシステム制御をハックして動かしているのでしょう。しかし、制御ソフト全体がその設計思想含め、解読されているとは思いません。

エンジンを含めた、ハイブリッドパワートレイン、パワーステアリング、ブレーキシステムの基本構成、設計要件、設計思想、フェールセーフ設計指針、保証指針、さらにその車両系、シャシー系の設計指針と思想、特性を理解して、設計情報を掴んで改造できる筈はありません。信号系、制御系だけをだまして自動運転と言っているなら、極言するとお遊びのオモチャです。ブレーキ性能一つとっても、タイヤ、ディスク径、パッド特性さらにサスペンション特性など、さまざまな設計要件があり、基準、規格があり、試験法があり、さらにその上で、各社の規格、判定基準に沿ってクルマは作られています。さらに、クルマは個人ユーザでも15年以上、タクシーでは50万キロ以上も使われ、その間の経時変化も考慮に入れた安全・環境品質とその信頼性保証が必要な製品です。

このクルマの基本を性能、品質、信頼性を抜きにしての自動運転車はまだ、遊び、おもちゃと片付けられますが、それを取り上げるメディア、アナリスト達に煽られたのか、自動車メーカーの一部にも、自動運転がブームになってきていることが気になります。このTVコマーシャルだけではなく、ドイツ、スツッツガルトに本社がある老舗高級車メーカーがプレミアムクラスのリムジンコンセプトを展示し、そのCEOが完全無人操縦のそのリムジンを将来リムジンと紹介する姿にがっかりしました。自動車にどんな未来を描いているのか、本当に完全無人運転車が将来自動車としての目指す方向か、どこか、どなたかIT系以外のクルマの専門家、自動車メーカートップが、将来自動車のわくわくする夢、ビジョンを語って欲しいと思います。それは、ドライバーレス自動運転車ではないでしょう。

米国のネットサイトに、Googleのプリウス、レクサスRXハイブリッドを改造した実験車の追突事故率が高いことが何度か取り上げられていました。普通のプリウス、レクサスRXハイブリッドの事故率、米国での追突事故率は掴んでいませんが、ニュースの件数だけからするとgoogle試験車での事故率は高いと思います。その全てが、被害事故と会社側は言っているようですが、法律的な判断は別として、クルマの流れの中での追突事故で100%被害事故は多くはありません。ブレーキのタイミング、操舵のタイミングが一般のドライバー操作との違いがあるとすると、それが追突を誘発する可能性も否定はできません。もちろん、一般車のドライバーも千差万別、力量、判断基準も大きくばらつきます。ニュースで取り上げた中に、そんな千差万別、バラツキが大きく、判断ミスをする人間の運転より、自動運転車のほうが事故確率を低くできるとの意見もありましが、確率論で自動運転の安全性は議論できないと思います。

もう一つ気になることは、今回のテスラ『Model S』自動運転ソフトのリリースですが、このやりかたも大いに疑問です。未熟な状態であることはマスク氏も述べており、その状態で、安全関連リコールでは必ず登場する米国運輸省NTHSAの認可を受けてのリリースでしょうか?安全、環境基準への対応は、どこの国でも認可、認定項目だと思います。日本では道路運送法で定められた保安基準としてソフトだけの変更による操縦アシスト機能提供は認められないのではと考えますが如何でしょうか? とかく、新技術は認可基準が後追いになりますが、環境、安全関連のシステムでは、認可段階でも基準、規格化の議論は必要と思います。

その前に、アクセル・ブレーキ踏み間違防止、衝突回避システムの標準仕様化が先

いまだに、アクセル・ブレーキの踏み間違いによる暴走事故が頻発しています。また、追突事故、バックでの人身事故も後を絶ちません。信号無視、一旦停止無視、高速道路逆走による事故も、無視というよりも運転に集中できずに認知しないで走ってしまったケースが大部分でしょう。自動運転よりも先に、こうした操作ミス、認知ミスを防止するシステムの導入、さらに普及し始めた衝突回避自動ブレーキ、衝突回避操舵アシストをもっとしっかりと安心して使えるものにすることが先決のように思います。これですら、国際基準、規格、システム定義のそのレベリングが、製品よりも後追いになっています。

規制緩和は必要ですが、安全、環境は何らかの規制、基準による誘導は必要です。将来自動車の方向を誤らせるような、中身もレベルも違う状態での宣伝先行の自動運転車競争はやめて欲しいものです。繰り返しですが、安全運転の基本中の基本は運転に集中すること、それを妨げるような自動運転もどきシステムは許されません。

この自動運転車の話題については、清水の舞台から飛び降りる覚悟でバイ・ワイヤーを世に出した当事者の一人として、これからも注目し、このブログで取り上げていきたいと思っています。完全無人自動運転車の時代は、これまで述べてきた成立条件を前提にすると、近未来で実現するとはとても思えません。またドライバレス・モビリティは自由な移動手段、さらにドライブする自由空間としてのモビリティの衰退のイメージであり、個人的にはそんなモビリティは見たくはありません。

されど、まだまだ老兵が消えゆくことにはならないとの強い自信はあります。

自動車のICT化とサイバーセキュリティ問題

先月の東京で開催されたITS世界会議は、日本がホストとして「自動運転」の話題等で盛り上がったようですが、今日はこの自動運転とも関係があるICT化とサイバーセキュリティ問題を取り上げてみたいと思います。

Forbesの自動車ハッキング記事と動画

少し古くなりますが、今年の7月に米国のビジネス誌ForbesのWebサイトに、自動車のハッキングについて、そのセキュリティ調査をおこなっている研究者の取材記事が掲載されていました。あろうことか『プリウス』を使い、車載制御用コンピュータをリバースエンジニアリングで解析し、その結果を用いノートパソコンから実際に車両制御系に侵入し、ドライバーの意図しない急加速、ブレーキングなどの試験状況を公開、話題となっていました。

 実験を行ったのはIT 業界のサイバーセキュリティの専門家で、米国防高等研究計画局(DARPA)の助成による研究を行っていると発表されていました。トヨタプリウスとフォードエスケープのどちらも市販のHV 車を用いており、後部座席のPC から、自動車の制御系に侵入し、速度計、燃料計などインパネの誤表示、ホーンの誤作動、ドライバー運転操作によらないエンジンのオン/ オフ、急加速やブレーキ操作、ステアリング操作を行っています。

掲載された動画を見る限り、車両の内装をはがし何か配線を車両の制御系配線(ワイヤハーネス)につなぎ、それをパソコンに繋いで制御していますので、なにも接続しない状態でのハッキングではなかったことにほっとしました。

ただしこの記事にある通りで、何らかの有線接続を行うと、自動車の制御を行っている制御ラインに入り込めることは事実です。

自動車の利便性と技術革新を支える車内通信とその脆弱性

近年ITS の活用、ナビやスマホの連携、エンジンのリモート始動、プレクール、プレヒート機能、キーレスエントリー、盗難防止など車両制御系に介入するアプリが市販化されるようになってきています。このアプリ機器の大部分は、排気ガス関連の法規制として義務付けられている車載故障診断システム(OBD)のデータ計測や、修理チェックのアクティブテストを行うスキャンツールの接続と同様、標準化されたOBD スキャンコネクターに接続する方式のようです。

このOBDコネクターに接続しi-Phone、i-PadなどスマホやタブレットPCやパソコンにBluetooth接続させる発信機を有しているものが発売されています。OBD標準ポートは車両ネットワークのCAN に接続されており、そのピン配置、アドレス、ビット定義もほぼ標準となっておりハッキングに対し脆弱であることは以前より懸念されていました。ナビゲーションシステムの多くもこのCANデータを使っています。

 HV、PHV、BEV ではバイ・ワイヤー制御が基本です。遡ると、ドライバーのアクアセル、ブレーキ、ステアリング操作に介入制御するシステムとして、クルーズコントロール、アンチロックブレーキ、トラクション・コントロール、VSC(ビークル・スタビリティ・コントロール)が使われてきました。また、寒冷地では走行前の室内暖房用リモート・スタートもオプションとして広く普及しています。

このところ急激に普及し始めた、衝突防止ブレーキ制御、前車追従クルーズコントロール、飛び出し回避ステア制御、車庫入れ制御などもまたバイ・ワイヤー制御としてドライバー操作に介入した制御です。さらにPHV、BEV では充電用コンセントに接続し、電池充電を行うため、充電タイマー制御の他、スマホとの連携による充電リモート制御、電池充電情報の通信、プレクール、プレヒート機能の商品化が進んでいます。

この通信系を利用した電池や充電システムの故障診断機能とそのスマホなどへの通知機能も採用する車種が増加してきています。キーレスエントリー、ボタンスタートも当たり前のように採用されています。車の利便性を高めるために、車両制御系とナビ、スマホ、ETC、VICSなど車外ネットとの接続がどんどん進むにつれ、いよいよ自動車のサイバーセキュリティがより重要になってきました。

想定を超えた通信利用、国際的なセキュリティの確立を

 自動運転が話題となっていますが、この実用化もサイバーセキュリティの確立が大前提です。全自動運転はまだ先の話としても、衝突防止ブレーキ制御、前車追従クルーズコントロール、飛び出し回避ステア制御など駆動、制動、操舵系など基本制御系の間で、どのようなファイアーウオールを構築しハッキング防止を図るのか、国際標準として緊急に詰める必要のある大きな課題です。基本制御系のハッキングは、最悪の場合、自動車を使ってサイバーテロ問題まで心配されています。

私自身、排気ガス規制としての米国OBD規制制定にかかわってきましたが、このときは米国自動車技術会(SAE)、国際電気電子情報学会(IEEE)に自動車エンジニア、制御系エンジニア、規制当局スタッフが集まり基準、規格作成作業を行いました。その当時は、ここまで自動車バイ・ワイヤー制御の拡大、IT化の拡大、Wifi化などは全く想定しておらず、いわんやOBD端子を介してハッキングなど考えてもいなかったと思います。

遅ればせながら、SAE*IEEEが共同で、自動車、航空機、鉄道、産業車両制御の専門家が集まり、サイバーセキュリティを話し合う委員会開催を決めたようです。OBDでも我々日本のエンジニアがこの基準、規格づくりに積極的に参画しました。ハイブリッドが加速させたバイ・ワイヤー制御、また衝突防止ブレーキ制御、前車追従クルーズコントロール、飛び出し回避ステア制御なども日本勢がリードしているシステムです。日本国内でもしっかり連携しSAE*IEEE国際委員会や国際基準規格機関を通じ、リーダシップ発揮を期待しています。

新機能、新技術開発競争は大歓迎ですが、環境保全、衝突安全のための規格、基準づくりは協調領域、ハッキング防止だけではなく、安全確保、信頼性確保の基準、規格作りも重要です。誤作動、誤操作に対する安全確保もまた、国際基準、規格作りの場で議論を詰める必要があると思います。

電動化と自動運転、自動車の未来は

マツダより新型『アクセラ』の発表がありました。従来の「Skyactive」ガソリンエンジンモデルに加えて、トヨタと協力したハイブリッドモデル、「Skyactive D」ディーゼルエンジンを搭載したスポーツモデルを同時発表し、世界市場に向けたモデルとしてマツダの意気込みが感じられるラインナップとなっています。

昨年に三菱が『アウトランダーPHEV』、今年に入ってスバルが『XV ハイブリッド』、マツダがこの『アクセラ』を発売したことにより、日本の登録乗用車メーカーすべてがハイブリッドを販売することとなりました。ホンダもそれぞれ新開発のパワートレーンを搭載した『アコードハイブリッド』、『フィット ハイブリッド』を発売しており、今年行われる東京モーターショーでは、「いますぐ買える」各社のハイブリッドが展示されることになります。(海外のショーでもハイブリッドコンセプト等は展示されていますが、ボリュームゾーンに向けたハイブリッド車がここまで揃うこと無かったでしょう。)

今回は八重樫尚史が、今後ニュースなどが増えるであろう次代の自動車の方向性等について、とりとめもなく書いていこうかと思います。

共通する「電動化」の流れ

さて冒頭の『アクセラ』のニュースですが、報道をざっと眺めてみるとハイブリッド(HV)モデルがメインでその燃費30.8km/lというのが注目されているように見えます。触れたようにマツダ初のHVであり、また国内の販売台数の上位が『アクア』『プリウス』『フィット』となったようにHVが占めているため、こうした見出しが付けられたのでしょう。

以前このブログでも「日本のハイブリッド車市場がガラパゴス」とした記事に反論したことがありましたが、これまで挙げたHV車種(『』で括られているものです)は全て海外での販売を行っているまたは予定されている車種です。『アクセラ』でもマツダが海外での販売を強化すると述べているように、日本メーカーは世界市場に目を背けてHVを開発していることはありません。

そうした「ガラパゴス」とするような報道の根底には、欧州の小型ディーゼルや過給器付きエンジンの流れとHVが対立しているような構図を作ろうとする意図が感じられますが、その見方は間違っているというが私の考え方です。そうした見方は「ハイブリッド」「従来エンジン」「ディーゼルエンジン」などといった外身(ジャンル分け)にこだわり過ぎで、本当に自動車の開発の中で進行している未来への共通認識を見ていないとも感じます。

自動車の開発の中で進行している未来への共通認識というのは「電動化」であり、また実はこの「電動化」すらも外形の話で、突き詰めていくと自動車の「高効率化」という事になります。「高効率化」とは、自動車に供給されるエネルギーをいかに無駄にせず有効活用するかということです。自動車の効率はそれまで「熱」によって図られていましたが、「電動化」はそれを電気に変換するという道を増やし、より柔軟性の高い電気も使用してより全体での効率を高めるというのがいまの「電動化」の根底にあるものです。

「電動化」は必ずしも電気モーターで駆動することではありません。HVやEVがそうした分野を加速させているのは間違いないのですが、ステアリングやアクセル、ブレーキの「電動化」、エアコン等の快適装備の「電動化」などは、HVやEVだけに留まるものではなく従来エンジン車でも導入されてきています。技術の未来を見通すためには、自動車の分野分けや燃費だけではなく、こうした共通で進化している方向性を見定めることが重要かと思います。

自動車の「電動化」は日本メーカーの得意とされる分野ですが、世界の自動車メーカーもこの分野に進む方向性を明らかにしています。9月にドイツで開催されたフランクフルトショーはまさに「電動化」のショーと言っていいものでした。そこでは欧州最大の自動車メーカーであるVWのトップが「電動化」に主眼をおいたスピーチを行い、欧州も「電動化」に進んでいくという宣言を行いました。

自動車の社会的コストの低減へ

「高効率化」に加えて次世代の自動車に間違いなく求められるのは「安全装備」です。これは目新しいものでも何でも無く、自動車技術にとって最も重要な部分であり、今後も最も重要なものであり続けるであろうということです。

なぜこれらが重要かというと自動車が抱えている社会的コストが、それらによって低減されるからです。社会的コストというのは、自動車会社や自動車ユーザーに留まらず、社会に負担を与える部分をいいます。自動車の利便性や魅力がこの社会性コストを下回ると、自動車の使用そのものが許容されなくなります。大きな視点で言えば、こうした分野での技術革新の努力を自動車のメーカーが怠れば、自動車の未来はありません。

自動車の社会的コストで大きなものは、排気ガスなどによる「環境悪化」、ガソリン等の使用による「エネルギー使用」、そして交通事故による「危険性」となります。「電動化」等を使用した「高効率化」は「環境」と「エネルギー使用」を減らしこれらの社会的コストを抑えるもので、「危険性」を抑えるのが「安全装備」です。

「安全装備」については衝突防止機構等が急速に普及してきており、今後その機能は、シートベルト、エアバッグといった運転者や搭乗者を守るものから更に歩行者等を自動検知してブレーキを作動させるなど、周囲への安全も確保しようとしていこうという流れとなっています。

パッケージではなく中身を見よう

衝突防止機構等はその価値を認められており、昨今のスバルの好評価は「アイサイト」抜きには語れないでしょう。しかし上のHV、EVは外見だけで報道されるとしたように、こうした技術を次世代技術として語られるとそれが「自動運転」になってしまうことに、個人的には疑問を感じています。

「自動運転」については、その実現で最も高いハードルは技術面ではなく法制などの整備であり、技術的に対応できてもそうしたものが主流になるかは読むことは出来ません。しかし「自動運転」の開発は重要で、こうした開発から歩行者安全も含めた「安全装備」や自動車の情報通信の技術進化が生まれてきています。

「電動化」と同じく「自動運転」もそうですが、ほんとうに重要なのは外見のパッケージではなく、その中身です。特に私近的に売れる車・売れない車を見定めるのではなく、大きな技術潮流を見定める際にはこの中身の見定めが必要になります。

しかしいくら美味しい素材を使用しても、うまく見た目も作らなければ食欲をそそらないように、技術を持っていてもパッケージを綺麗に作らなければなかなか普及はしていきません。

かなりまとまりが無くなってしまいましたが、このように様々な視野を変えて見ていくことが自動車に限らず、将来の技術の報道などを見る際に重要かとは思います。