トヨタ・アクアと東北復興、さらに日本の将来エネルギー

しっかりとオープンに議論してほしい原発再稼働問題

3.11から3年が経過しました。連日取り上げていた、新聞報道やテレビの三年経過した被災地の今に見入っていました。瓦礫の山こそ減ったようですが、なにか復興のスピードが遅いように思えてなりません。さらに、福島第一原発事故が大きく復興に陰をさしているようで、福島第一原発事故の放射能汚染で未だに自宅に戻れず避難している方が10万人強いらっしゃいます、この解決なくして本当の意味での復興はありませんし、日本の次もないと感じました。

原発問題については、何度かこのブログでも取り上げてきました。お亡くなりになった福一の吉田所長を主役とした門田隆将さんの“死の淵を見た男”、当時の原発事故を巡る福一現場、東電本社、イラ管さんが東日本消滅まで頭に浮かべてのイライラぶりから国際的な動きまで取り上げた船橋洋一さんの“カウントダウン・メルトダウン”など、さまざまな著作物、様々な事故調査報告書、さらに原発導入の歴史から原子力むら形成の経緯などの資料もあさりまくって読んでみました。

また機会があり、中電浜岡、東電福島第二も実際に見学させてもらい、東電、中電、関電、北電の方々、さらに何人かの原子力工学の研究者、大学教授の話も聞かせてもらいました。科学技術、工学からは、このブログで紹介した『想定外を想定する未然防止』だと当たり前と考える全電源喪失ケース、地震国日本での津波波高の最悪予測に目、口、耳を閉ざしてしまった『原子力神話』に、大きな怒りを覚えました。変えてはいけない最悪ケース、最悪条件をギブンとして、経済原理にのった対応策を考え出すのがエンジニアの役割です。安全保障条件を経済性とのトレードオフにしてはいけないことは科学技術・工学者としての初歩の初歩と教え込まれ、かつやってきました。今議論されている再稼働議論も、決して以前の『原子力神話』の状況に戻してはなりません。オープン、透明、我慢強く、公正な議論が必要です。

ものづくりの日本の将来は

これまでのブログで自分のポジションを述べているように、現地現物での確認、さまざまな情報の調査、分析を行ったうえでも私自身は原発再稼働は避けて通れない道と考えています。もちろん、日本科学技術、工学の英知を結集した上での安全確保の担保が前提です。その理由は原発なしでの不都合な真実がどんどん明らかになってきていると感ずるからです。まず、気候変動問題です。

環境技術で世界をリードしてきたはずですが、原発停止による化石燃料発電シフトにより日本が排出するCO2は大きく増えています。太陽光発電は急増していますが、それでも役不足であることは明らかで、そのうえ日本の立地条件からも風力発電にも多くは期待できず、地熱、小水力活用を含めても日本の電力供給をリニューアブル発電でまかなうことには無理があります。一方、安全性と経済性をトレードさせてはいけませんが、東日本震災からの復興、日本の成長のためにも国際競争力を維持できる価格のエネルギー供給が必要不可欠です。3.11後、エネルギー供給のほとんどが化石燃料、自動車など製品輸出でカバーできないほど化石燃料輸入が増加し、経常収支すら赤字に転落しかかっています。その電力価格は国際競争力を損なうほど高騰しています。

久しぶりの円安で自動車産業の経営は好転していますが、ここでの稼ぎに陰りがでると一大事、稼ぎ分が目減りし定常的な経常赤字が続くと悪い円安が心配になります。科学技術立国を支える日本の生命線である研究開発活動を活発化させるためにも、経済成長とそのための安いエネルギー供給が不可欠です。さらに現代の農業、漁業も化石エネルギーに大きく依存する現状では、国民生活の安定のためにもエネルギー価格の高騰、悪い円安、さらに日本経済のシュリンクにつながる稼げない状況での最悪の円高は願い下げです。

福島第二原発でほとんど無傷の原発建屋と所内の連日の復旧作業を見学し、さらにアウトライズ地震津波への備えまで、カウントダウン・メルトダウンで3.11当時の福二原発の危機一髪の現場で陣頭指揮を執られたで増田所長に説明いただきました。最後に第二原発再稼働の可能性について質問させてもらいましたが、増田所長からは「復旧工事、安全対策が進んでも避難している方々がすべてお帰りにならない限りは、決して再稼働を口にすることはありません」とのコメントをいただきました。浅はかな質問が恥ずかしくなりましたが、すでに暗くなってからの帰路、避難地区の真っ暗な住宅地、国道脇の無人の駐車場にたむろするイノシシの群れを目にし、この増田所長の言葉の重みを痛感させられました。

原発の再稼働は被災地の復興、所在地のものづくりの発展に

東日本の復興を加速させるには、被災地の景気回復が第一、さらに復旧公共工事だけでなく、継続する産業を誘致して職を増やしていくことが必要です。アベノミクスの次の矢がでてこないことにイライラしていますが、まずは景気回復、その景気回復を大都市圏に集中させず、被災地、さらにサプライチェーンとして地方に拡大させていって欲しいと思います。被災した農業、漁業の復興支援とともに、職を増やしていくには安いエネルギー供給が前提になります。製造業の景気回復だけではなく、農業、漁業もの再建にも安いエネルギー供給が必要不可欠です。

トヨタOB、ハイブリッド屋の私としては、被災地区での製造業の期待の星として、トヨタの東日本地区での取り組みに注目しています。昨年車種別販売台数トップとなったトヨタ・アクアはトヨタ自動車東日本岩手工場、また昨年発売を開始したカローラハイブリッドは宮城大衡工場、このアクア・カローラハイブリッドに搭載する初代プリウス以来改良を続けた1NZ-FXEエンジンは宮城大和工場で生産しています。このハイブリッド車に搭載する電池もまたトヨタとパナソニックのジョイントベンチャー、プライム・アースEVエナジー株式会社の宮城工場で生産しており、昨年12月にはハイブリッド車の生産拡大により宮城工場での電池パック生産台数が累計100万台を突破したとのニュースリリースが発表されています。

さらに、アクアはプリウスCの名がつけられ、復旧なった仙台港からアメリカへと輸出され、またフランス工場で生産するヤリスハイブリッド用に電池パックなど、付加価値を高めた様々なハイブリッド部品がこれも仙台港から積み出されています。これらの構成部品もまた、現地生産比率が増えています。この生産拡大によって、職も増えているはずです。

物作りが日本を支え、すそのの広い自動車製造をコアとして、工場群を増やし、職を増やしていきます。東北地区でこの取り組みが着々と進行していることをトヨタOBとして誇らしく感じています。

この自動車製造、その部品製造には多量のエネルギーを消費します。トヨタ自動車東日本も省エネ、リニューアブルエネルギー利用にも積極的に取り組んでいるようですが、やはり安く、低CO2で、さらに安定したエネルギー供給がその発展を支えます。福島第二を除いても、東北には停止中の多くの原発があります。東日本大震災を乗り越えたこれら原発に、最悪ケース、最悪条件をクリアさせ、この大きな教訓をふまえた安全対策を施すことは可能と考えます。日本に多量の使用済み、使用中の核燃料棒が残っていることも目を反らせてはいけない不都合な真実、それを安定的に維持し、安全な後処理方法を生み出すことは、脱原発でも必要です。まさか、原発電力の一大需要地であった首都圏にその燃料棒を引き取るなどとは誰も言い出さないでしょう。

安全を確保したうえで、安定した稼働を続け、被災地、原発所在地ではこの原発稼働を前提に、原発特区として電力料金を大幅に下げるくらいのことを考えて欲しいと思います。ちなみに我が家は、3.11後の省エネを心がけて追いつかない高い電気料金を払っていますが、都市部に住む割増分のさらなる増加は覚悟しています。

筆者の出身は北海道ですが、ルーツは岩手、祖父は宮古の出身、私の小さいころに亡くなっていますが、祖母からは明治三陸津波の被災者だったと聞かされています。まだ、宮古を訪ねたことはありませんが、岩手各地の被災には胸が痛みます。岩手工場でのアクア生産は私にとっても希望の星、東北復興を加速ためにも安い、低CO2電力を使ったアクアの次なる進化を楽しみにしています。

フランスの自動車の今

「これまでの自動車は、イギリスを祖父、ドイツを父、フランスを母、アメリカを里親として育てられてきた。」

これは、1997年3月のトヨタ・ハイブリッドシステムの技術発表会以来、おつきあいいただきご指導いただいているジャーナリストで(株)日本自動車経営開発研究所代表である吉田信美氏の著作からの引用です。

吉田信美氏から頂いた写真家、富岡畦草氏の記録写真集『車が輝いていた時代』の巻末に吉田信美氏が書かれた「世界自動車産業の栄枯盛衰」にあった文章の一説になります。

戦前から戦後の1970年代初めまでに日本で走っていた様々なクルマの写真を取り上げたこの写真集には、私の愛車第1号でもあったいすず・ベレット1500も載っており、またクルマ屋になるきっかけとなった当時のなつかしいアメ車、ヨーロッパ車が数多く収められています。

また吉田信美氏がまとめられた「栄枯盛衰」ではスチュードベーカー、ナッシュ、ヒルマン・ミンクス、オースティンといったすでに存在しなくなった車名、自動車会社、そこから現在に至るそれこそ世界の自動車会社の栄枯盛衰のすさまじさを伺いしることができます。

今日のブログのテーマは、ここで自動車の育ての母と表現されているフランスの自動車事情について取り上げてみます。

フランスはプラグイン車の実験に適した国

何度か、このブログでも取り上げてきましたが、プリウス・プラグイン車の欧州実証試験の拠点としてトヨタはフランス電力公社(EDF)と組んでフランス・ストラスブールを選びました。トヨタのパリ事務所に「プラグインハイブリッドのやる気はないか」とEDFからの最初の打診あり、私がその相談を受けたことがこのプロジェクトに係るきっかけでした。

外部電力で電池を充電するプラグイン自動車が次世代環境自動車としてCO2低減の実効を上げていくためには、その充電電力が低CO2であることが必要条件です。現在も自動車マーケットの規模が大きい欧州諸国の中で、また世界的にみてもフランスが群を抜いて低CO2電力を供給しています。

電力ミックスでは原子力と水力比率で90%以上となっており、この電力で充電すれば、2050年に電力の低CO2排出を達成した場合の想定として、世界が目指すべき低CO2電力を使ったプラグイン自動車のCO2削減ポテンシャル実証試験を今やることができます。さらに、フランスは「自動車の育ての母」といわれる自動車文化の先進国であり、自動車が社会生活の中に深く根差すなかで、今のクルマの延長線ではないかもしれない将来モビリティを研究するには最適な国との判断がありました。

加えて、電力料金も欧州では安い国の一つで、リニューアル電力固定価格買い取り制度のためぐんぐん電力料金が上がっているドイツと比較してもプラグイン自動車普及の可能性と課題を調査するには格好の国です。

フランスでも一筋縄でいかないプラグイン車の普及

EDFからストラスブールでの実証プロジェクトが提案され、それから何度もストラスブールを訪問しました。夜のパーティーで楽しむワインや世界遺産である旧市街の運河クルーズ、大聖堂観光の楽しみは別としても、世界環境都市にも選ばれその中核として使われているスタイリュッな低床トラム、そのトラムの駅を拠点としるパークアンドライドなど将来モビリティ構想が進められているなど、ストラスブールが実証試験としても最適と感じました。このあたりのエピソードは以前に日経TechOnの連載でも紹介していますので、興味のあるかたはそれをお読みいただきたいと思います。

また、世界一の電気自動車宣伝マンであるゴーンさんのお膝元であり、ルノーから超小型コミュータEVの「Twizy」のほか、小型デリバリーバン「KangooZ.E.」、小型乗用EV「ZOE」、さらにバッテリー交換方式の「Fluence」の4車種も販売をスタートさせ、「ZOE」が5,233台、「KangooZ.E.」が3,884台、全体で昨年比45.5%増の12,867台と苦戦が続く日本と比較して好調に推移しています。

とはいえ、「Twizy」は今年に入り売れ行きが止まり、バッテリー交換方式の「Fluence」はサービス提供者であったBettr Place社の破綻もあり生産を中止しており、この9月、11月に欧州で自動車、電力、石油業界の人たちと会話をしましたがこのまま電気自動車販売が拡大していくことはないとの意見が支配的でした。

一方で、パリ市内ではレンタル自転車「Verib」の自動車版、ボロレー社のピニンファリナデザインの電気自動車「BlueCar」をつかったEVカーシェア「Autolib」が4000箇所以上もの充電貸出ステーションを整備してスタートさせ、市民の足として使われています。まだ2年目ですが、電池火災の発生のほか、事故、故障の多発、メンテ不良なども伝えられており、こちらも決して楽観的な状況では内容ですが、この方式がどこまで定着するのか注目しています。

一方ハイブリッド車では、フランス工場で生産している「ヤリスHV」(日本名ビッツのHV、アクアと同じハイブリッドシステム)と英国生産の「オーリスHV」、プリウスがトップ3を占め、全体で昨年比66%増の41,430 台と、主流の地位を確立した日本のようにとはいきませんが、ハイブリッドの普及拡大が進み始めています。

パリの市内では、プリウス・タクシーが増加し、また走行中や路上駐車中のプリウス、ヤリスHV、レクサスRX HVを良く見かけるようになりました。贔屓目ではありますが欧州の走行環境の中で、普通以上のクルマとして評価されるようになっていると実感しています。

走りや走行フィーリングでも普通以上を目指せば日本よりもガソリン価格が高く、また平均年間走行距離の長い欧州で次世代自動車としての地位を築けるのではと期待しながら見守っています。また、現地生産拠点があるのもポイントです。今はHV部品のほとんどは日本から運んでいますが、いずれハイブリッド部品の現地化拠点として、CO2が低く、安い電力供給が期待できるフランスが有望だと思います。

「自動車の母」、フランスも変化へ

これまでフランスでは、安価で、またマニュアルセレクトのダイレクト感が良いとして、マニュアル変速機が好まれてきました。ここに、ハイブリッド普及の影響とまではまだ言えませんが、低燃費、低CO2車への関心が高まったせいもあってか、また安全運転の観点か、自動変速車のシェアが年々増加しています。

燃費のための多段化、CVT化、ハイブリッド化としての自動変速は必然、さらに事故防止のためにも、運転に集中できる自動変速は避けられない方向だと思います。さらに、排気のクリーン化でも、変速操作ごとにエンジン負荷変動が大きくなるマニュアル・トランスミッションから、この負荷変化もコントロールする自動変速は有効な手段です。低CO2とともに排気のクリーン化も進める必要がある新興国のクルマもマニュアルはスキップして自動変速に移行することは不可欠です。この動きもフランスから欧州全体へ、さらにアジア、アフリカとモータリゼーション進行中の新興国に波及していくと思います。

また、仏自動車工業会(CCFA)発表として、フランスの新車販売でディーゼル車シェアが昨年比大幅に低下しているとのニュースが流れました。新車販売でのディーゼル車シェアが1-11月で67.5%と、2012年の72.9%から大きく減少、2003年以来の最低を記録しました。

この理由としては、ディーゼル車奨励金の見直しと課税強化、ディーゼル燃料のガソリン並み課税など、ディーゼル恩典を減らしたことがあげられ、CCFAとして2020年にはシェア50%まで後退するとの予測を発表しています。これ以外にも、2014年から実施される排気ガス規制Euro6対応でガソリン車並みのNOx規制が決まり、この対応でのコスト上昇も販売に影響するものと言われています。乗用車のディーゼル化でも経済性とクルマにうるさいフランスがリードしてきました。この状況にも変化がみられそうです。

都市内への車両の乗り入れ規制も欧州が世界で先行しています。トラムの活用やパークアンドライド、大規模なレンタル自転車はパリをスタートに主要都市に展開されています。電気自動車カーシェア、レンタルプロジェクトも、パリの「Autolib」のように一気に4,000台規模のプロジェクトからのスタート、いまさら数十台からスタートするちまちました、また用途限定の日本のBEV/PHEV実証で何を訴求するのか疑問がわいてきます。

この新しい環境都市づくり、その中での将来輸送機関ネットワークの構築、個人用将来モビリティの探索もすでに実証段階から、実用段階に入りかけています。もちろん、これはフランスだけではなく、ドイツや北欧諸国など様々な都市でその具体化が進められてきました。プリウスPHVの実証試験を行ったストラスブールから、ライン川の橋を渡ると対岸はドイツ、すぐに速度無制限のアウトバーンがあり1時間で世界環境都市フライブルグ、カールスルーエを訪れることができます。

欧州不況が長引くなかで、ルノー、プジョー・シトロエンの経営環境が悪化、フランス工場の縮小、閉鎖が話題となり、その「自動車の母」フランスの自動車産業が転機を迎えようとしています。ドイツ勢にくらべ、海外進出に遅れたこと、過度なディーゼルシフト、環境自動車への対応遅れなど、要因は様々、日産が支えるルノーも、これまたBEVシフトが重荷になっているようです。PSAは中国メーカーの支援を得て経営立て直しに取り組むことが決まりました。現地生産のトヨタ・ハイブリッド拡大が雇用拡大に貢献し、フランスが欧州での次世代自動車普及、将来モビリティ発進の拠点となってくれることを期待しています。

福島第1の放射能汚染水漏れと2012年の電力CO2

今回の福島第一原発での高濃度放射能汚染水タンクからの漏水事故と東電のこれまでの一連の対応を見ると、緊急事態での危機管理マネージどころか、設計組立品質および運転維持の不具合未然防止の初歩の初歩すら機能させられなかった東電という組織体にこれ以上まかせておけないとの印象を強く持ちました。

以前のブログでも述べましたが、地球温暖化緩和にむけたすべてのジャンルでのCO2を代表ガスとする温暖化ガス排出低減は待ったなしで、このためには安全が最優先ではあるが原発の再稼働と安全性をさらに高めた新しい原発開発を続けるべきと主張してきました。 

しかし、この体たらくでは、この安全確保と新しい取り組みをこの機能不全に陥った組織に任せることは出来ません。少しでも国民の理解を得ることが再稼働の前提なのにも関わらず、電力会社自らが逆に不信感を募らせるばかりで、いよいよ困難な状況となってきています。

プラグイン車は原発を前提で構想された

9年ほど前にピークオイルに備え、地球温暖化緩和のために自動車からのCO2排出も抑える実用に近い手段としてプラグインハイブリッド(PHV)の開発をスタートさせました。その前提には、原発による低CO2かつ安価な夜間電力をこの充電電力として使うシナリオがありました。

3.11前の日本のエネルギーシナリオでは原子力発電の拡大が謳われており、低燃費HV車の電池をエネルギー密度の大きなリチウムイオン電池に変え、この格安で低CO2の夜間電力を電池の充電に使い、CO2削減を果たそうとの考えでした。

PHVなら、バッテリ電気自動車の最大の課題である航続距離不足の問題も解決できます。しかしこのシナリオも3.11福島第1原発事故で大きく狂ってしまいました。太陽光、風力などリニューアブル発電に多くを期待できないことは明らかで、低CO2とともに安価な電力であることが必要条件となります。

私自身、電力村の住民でも原発の利害関係者でもありませんが、脱原発でかつ国際競争力を維持しながらの低CO2社会の構築、低CO2自動車のシナリオは描けませんでした。もちろん二度と高濃度放射能汚染物質を世界にまき散らすような原発事故は起こしてはならず、原発の安全性の確立なくして低CO2社会は絵にかいた餅になってしまいます。

原発の安全確立と低CO2技術が日本の今後の鍵

今年の秋にはIPCC5次レポートが発行されます。今月初めの日本の猛暑なども含め世界的に気象の変動は明らかに大きくなってきており、未だに人為的な発生起源の温暖化ガスが気候変動の要因であることを否定する声は聞こえてきますが、とうとう400ppⅿを突破した大気中のCO2濃度などの影響が皆無とも証明できず、将来の人類のために気候変動リスクを回避する活動を起こす必要があるのは間違いないかと思います。

福島原発事故の影響を自分の眼で確かめ、これからの低CO2エネルギー、低CO2自動車のシナリオを考えたいと思い、今年の1月には福島第2原発の見学をさせて頂きました。その際は、増田所長みずから、停止中の原子炉内部からさまざまな緊急冷却ライン、流行語にもなった炉心圧力のベントライン、原子炉の底にあるサプレッションチェンバー、さらには津波影響で倒壊したオイルタンク、大型タンクローリーを間近に目にし、天井を超える水を被った緊急冷却用ディーゼル発電機と冷却水ポンプ建屋、ガスタービン発電機トレーラー車など、その後の緊急安全対策工事についても説明を頂きました。

当時の現場の状況、緊急事態での原発安全停止の基本、「止める、冷やす、閉じ込める」を所長のリーダシップと所員と関連会社のスタッフの献身的な活動により成し遂げた状況など、増田所長、および所員のかたがたから現地、現場で詳しく説明を受け、東電福島第2原発現場の現場力に強く感銘を受けたのは事実です。

今回の漏水不具合では、今さら本社のトップを現場に貼り付けたから何とかなるような話ではないと思います。次々と発生する緊急事態をさばき、オペレーションによる不具合発生を未然に防ぐためには、プロの緊急プロジェクトマネージャと現場マネージャーのタイアップが不可欠となります。それこそ現場力の結集とそのパワーを生かす、リーダーのリーダシップとマネージパワーが必要です。

そのような人材を探し出すことがトップの役割です、現状のトップマネージではこの人材を探し出すことすらできていないとしか思えず、これもまた今回の事故が人災であったと言わざるを得ない大きな要因になっています。

今後は国が全面にでるようですが、政治家や官僚が現場作業をやるわけでも、やれるわけでもありません。やれる人材、危機管理オペレーショのリーダーを見出すこと、そのプロ人材の組織化、全面的な支援が政治家や官僚のやるべきことであり、日本の新しい危機管理チーム結成を期待されます。この収束なしに、原発再活用への道はありません。

おりしも先日、2012年度の日本9電力会社の電力CO2発生値が電力各社から発表されました。原発のない沖縄電力を除いて、残り8社の電力CO2は大幅な増加を示しており、電力各社が3.11前に設定していたCO2削減目標はいずれも未達となってしまいました。

大飯原発以外はすべて停止していても、この猛暑の夏のピーク時を節電と火力シフトで乗り切ることが出来ました。しかし、原発分をまかなったのはほぼ100%が石炭、石油、天然ガスの火力発電で、リニューアブル電力ではありませんでした。

このところの貿易赤字も、電力各社の赤字も、さらに温暖化ガスCO2の大幅増加もこの火力発電シフトが原因となっています。ポスト京都議論の進展は遅れていますが、低CO2技術で貢献していってこその日本の存在価値であり、真水部分(温暖化ガスの国内削減分)の削減にしっかり取り込まずして国際貢献は考えられず、この点からも安全確保が前提ではあるが、原発再活用議論に目を背けて進めることは出来ないのではないでしょうか?

日本の原子力技術はどうなる?

吉田昌郎氏の逝去の報せ

3.11当時の福島第1原発所長、吉田昌郎氏がお亡くなりになりました。ご冥福をお祈り申し上げます。以前のブログで、3.11のあの時から昨年7月脳出血で倒れられる10日前のインタビューまで、吉田所長の福島第1発電所現場責任者としての活動をとりあげた“死の淵を見た男”に日本人の現場力として強い印象を受けた話を紹介しました。

この死去のお知らせの後、東電から早々と吉田氏の死因はあの原発事故による放射線被ばくではないとの発表があり愕然とさせられました。もちろん病理学的には発表に間違いはないでしょうが、あまりにも非人間的な発表です。吉田所長のあの現場で自分だけではない部下たちの死をも覚悟し、様々な外乱も受けながら事故処理に取り組まれた肉体的、精神的ストレスが影響しなかった訳はありません。まさに殉職されたといっても過言ではないと思います。いかに放射能被ばくの影響とはチラとも言われたくなくとも、あまりにも組織の論理優先の対応に愕然としました。

慎重を重ねた上での再稼働を

何度かブログで書いたとおり、私は世界のエネルギー事情、地球温暖化緩和を考えると原発は必要と考え、将来の自動車も夜間の原発発電で余る低CO2電力をプラグイン・ハイブリッド電池の充電用に電力料金も深夜電力料金よりもさらにディスカウントしてもらい使わせてもらおうとのシナリオを描いていました。原発安全神話をすべて信じていたわけではありませんが、地震国・津波被害国の日本ではその対応を行なっていて当然と考え、それに対して想定外なるセリフが飛び出したことすら信じがたく、あれほどもろく原発安全神話崩れさるとは考えてもいませんでした。

しかし私はそれでも脱原発へと宗旨替えはしていません。もちろん、なによりも安全最優先であり、それこそ地に落ちた日本科学技術の英知を集め念には念をいれた安全確認、その判定を行い、地元、国民に対する十分な説明をしたうえでの再稼働が大前提です。

その上での電力会社の都合だけではなく、被災地の復興、日本経済再生のためにも、さらに地球温暖化抑制のためにも原発再稼働は必要というのが私のスタンスです。

3.11以後、確かに原発なしでも11年、12年と夏冬の需要期を乗り切りました。石炭、石油、LNG火力へのシフトと節電の効果です。静岡東部の私の自宅も東電エリアで、電力料金値上がりももうばかにならなくなっていますが、産業界への影響はもっと甚大です。もの作りにはエネルギーが必要で、ただでさえ安くはなかった日本の電力代が、火力発電へのシフト、原発停止、円安と値上げにつぐ値上げで悲鳴が聞こえてきています。

水力資源の再開発、地熱、バイオ発電の拡大は大賛成です。しかし、このリニューアブルエネルギー拡大にも限界があり、さらに経済原理抜きでの拡大は財政的にも持続化可能なものにならないことは自明です。

稼働していなくても多大なコストを要する原発

私は根っからの現地・現物派です。原発のこれからを自分の眼で確かめたく思い、昨年は津波対策の防潮堤工事、冷却用非常電源工事をやっていた中電浜岡原発を見学させていただき、今年の1月には福島第2原発の見学をさせていただきました。もちろん、どちらも運転停止中で、原子炉格納容器の天井がはずされ、燃料プール、圧力容器の下部までくまなく見せてもらいました。

福島第2では増田所長自ら時間を割いていただき、発電所作業操作のトレーニングを行うシミュレーター室で3.11当日の電源喪失、冷却系ダウンからリカバーの様子のシミュレーター動作をオペレータ室計器盤の動きや警告音、さらにオペレータの緊急作業まで当時の経過を臨場感あふれる経過として体験させていただきました。

次に原子力建屋の内外、海水を被り使えなくなった非常用ディーゼル発電機建屋、津波被害の痕跡が残る埠頭と所内をすみから隅まで予定の時間を超えて見せていただき、当時の状況を説明いただきました。昨日発売された文芸春秋に、これもブログでとりあげた福島第1原発事故を扱った“カウントダウン・メルトダウン”の筆者船橋洋一氏のインタビューによる福島第2発電所増田所長の3.11大震災と大津波襲来から冷温停止までのさまざまな活動を語った会談記事がのっていましたが、見学時にお聞きした通り、所長はじめとする所員の方々、協力会社の方々など発電所現場の方々の献身的な活動が生々しく語られていますので、興味のあるかたお読みすることをお勧めします。

浜岡も福島第2も、運転停止中ですので使用済み燃料棒、使用中の燃料棒が燃料プールに保管されており、その状況まで見せていただきました。いまもなおその燃料棒自体を冷やし続けることが必要であること、そしてその膨大な燃料棒が溜まっている状態も目の当たりに見ることができました。

見学は大震災から20ヵ月も経過した今年の1月でしたが、福島第2だけでも、維持管理のための復旧工事、安全対策などのためその見学時も毎日3000人以上のかたが作業を行っておられるのが印象的でした。停止中でも膨大な作業続けることが求められ、さらに廃炉にも多くの専門家が必要です。さらに後処理にも何年にも私多くの専門家が研究開発に取り組むことが必要になります。

日本にはこの福島第1、第2で大災害後の緊急事態に献身的に対応された多くのスタッフ、関連会社のかたがたがおられます。また各地の原発にも同じように多くのエキスパートがおられるはず、さらに原子力関連の研究者、開発者も多いはずです。脱原発の声で、この方々のモチベーションを下げ、散らしては日本にとっては大きな損失です。

原子力技術の継承を

もちろん過去の排他的な原子力村の論理、根拠がなかった安全神話を排し、国際的にも通用する安全チェックと規制体制を作り上げることが前提ですが、脱原発への後戻りはできないことはこの溜まりに溜まった燃料棒を見て痛感させられました。

福島事故に対しては真摯に反省したうえで、専門家人材を散らさず、その事故対応、緊急対応をされた発電所現場スタッフ他多くの専門家の貴重な体験を生かし、原発の安全確保、安全性を追求した次世代原発、後処理技術などに取組むこと、世界にこの体験を発信することも日本の責務と思います。

私の専門である自動車では、ここ当分は電気自動車が今のクルマに代わって普及することはないと思います。私も自動車に安くかつ原発比率が高まりより発生CO2が下がる深夜電力が使えることを期待してプラグイン・ハイブリッド(PHV)の開発をスタートさせましたが、3.11がその将来シナリオを大きく狂わせてしまいました。

シェール革命などで、石油燃料枯渇の心配が遠ざかった今は、CO2削減の目的にしても電気自動車、PHVなど外部電力充電を行うプラグイン自動車の意味はほとんどなくなっています。低CO2電力による充電がPHVによるCO2低減の前提ですが、リニューアブル電力でわずかの台数を充電する程度ではCO2低減効果はわずかに留まります。

電力安全担保は前提ですが、日本のエネルギーセキュリティ確保、CO2削減のためにも原発の少なくとも維持は必要と考えます。少なくとも原子力技術を目指す人材が枯渇すると、後処理すら日本自力ではできなくなってしまうことを憂いています。

船橋洋一さんの『カウントダウン・メルトダウン』を読んで

3.11福島第一原発事故については、さまざまな事故調査活動が行われ膨大なレポートが発表されていますが、その中でいち早く民間サイドで調査委員会を立ち上げすばやいまとめを行った通称「民間事故調」でした。今回取り上げる『カウントダウン・メルトダウン』は、その調査を指揮されたジャーナリストの船橋洋一氏が、その取材活動によって収集した様々ニューストピックスを掘り下げ、関係者への取材からまとめられた上下二冊、結構なボリュームのハードカバー本です。

3.11福島第一原発事故調査はこの『民間事故調』以外に、『東電事故調』『政府事故調』『国会事故調』が行われ、それぞれからレポートが発行され、さらに新聞・テレビ・週刊誌などのマスメディアなどから、それこそこれでもかというほどの情報が流されています。私自身も、このブログでも何度かとりあげたように、自動車を含む日本のエネルギー戦略に凄まじいインパクトを与え、これからも与えることになるこの3.11福島第一原発事故の顛末とこれからに強い関心をもっています。この本は、その膨大なそれぞれの『事故調』レポートを含め、これまでの情報から、規模は違うもののシステムエンジニアとして腑に落ちない点を明らかにしてくれました。

日本の原子力神話が瞬く間に崩壊し、原子力発電安全指針の基本三原則、何重もの安全設計で“絶対”(安全工学、信頼性工学に”絶対”安全との言葉は存在しませんが)とされていた「止める」、「冷やす」、「閉じ込める」のうち、地震直後に止める(緊急スクラム)まではできたものの、地震と大津波による全電源喪失により「冷やす」ことができなくなり、燃料棒損傷、メルトダウンがおこり、水素発生、圧力容器損傷、水素爆発と「閉じ込める」こともできなくなりました。会見等で連発された「想定外」という言葉が流行語になるほど「ありえない」とされていた原子炉熱暴走に至り、原子炉災害としては最悪ランクのシビアアクシデントレベル7の災害に至りました。

直ちにスタディを開始した諸外国

事故当時の3月12日の15時過ぎ、1号炉建屋の水素爆発が発生したあと、13日頃には複数の情報ルートで米、仏など欧米諸国の大使館に本国政府筋から、同国人に向けて首都圏を含む東日本在住者、滞在者に緊急避難勧告が出されていたとのニュースが私の耳にも届いていました。幼年者には帰国か海外避難の勧告があり、香港への避難や、本国への帰国者もあったとの話も耳にしました。

アメリカとフランスでは11日の全電源喪失による「冷却装置注水不能」状態発生を受け、日本政府による原子力緊急事態宣言発表が行われた前後には既に、原子力規制省庁および軍に、この原発事故がどのような経過をたどり、最悪どこまでの影響を及ぼすかを想定し、自国への影響と自国民保護のために専門家を集めた緊急タスクフォース組織を立ち上げ、すぐさまスタディを始めていたとのことです。

大使館から発せられた避難勧告・避難指示はこのスタディをベースに行われたもののようで、他国の災害でも自国民への影響調査、避難勧告、対応政策検討と、このようなケースではある意味「あたりまえ」の危機管理体制がスタートし、機能していたように感じられました。

最悪ケーススタディは日本でもあって「当然」はずだが……

私がこれまで腑に落ちていなかった点は、欧米では3.11の大地震・大津波により福島第一原発が全電源喪失というシビアアクシデントが発生して、この事故がどのような結果をもたらすのか、すぐさま緊急タスクフォースチームが結成され、国としての危機管理体制が発令されていたのに対し、当事国である日本でもこのような緊急政策ディシジョン、危機回避作業アクションをバックアップする、タスクフォース活動がやられていないはずはなく、その活動が政府発表や一般メディア報道でそのような活動が全く伝わってこないという点でした。

「想定外」が流行語になったのは完全に皮肉で、原発神話の中で数千年に一度の巨大地震、それにより引き起こされる大津波を「想定外」として設計要件、安全審査用件から外してしまったことは今後ともその是非を問われるべきですが、一方でこのような大規模プラント・大規模システムにおいて、全電源喪失などの災害だけではなくヒューマンエラーよっても起こりうる故障モードについては、故障モード影響解析(Failure Mode Effect Analysis: FMEA)や、故障の木解析(Fail Tree Analysis: FTA)を繰り返し行い、その二次影響、三次影響を分析して、回避対策を検討していくことが「あたりまえ」の作業です。仮に、設計・建設・認可段階で想定していなくとも、故障ケースとしてもそれがやられていないことこそ常識として「想定外」です。

原子炉のような一品料理の大規模プラントでは、自動車なら当たり前となっている実車でのシビア故障モード試験等は行えませんが、プラントメーカーや電力会社、政府規制官庁、研究機関には、それぞれの原子炉タイプに応じたシュミレーションモデルが作られ、設計検討、故障時の挙動チェックとリカバー操作チェック、保守・保全要員育成用など様々な用途に使われているはずです。このベースとなるモデルもしっかり作られているはずで、今回のケースでも、この専門家のタスクフォースが結成され、最悪ケースまでの予測、もちろんそのどの前の段階で回避しうるか、その回避アクションの予測など、住民避難、自衛隊、警察、消防組織など緊急災害活動、さらに原発災害現場への、物的、人的支援と的確なアドバイスなどが期待されていたはずです。

私も、当然これが機能していると思っていました。

もちろん、米仏で行われた最悪ケースのモデル予測を適応して、首都圏を含めた東日本全体の避難まで必要があると公式に発表されたとしたら、人々がパニックを起こして二次的な災害を発生しかねません。当時の状況としては厳重な機密管理・情報統制が行われたいたのでは勘ぐっていました。しかしながらエンジニアリング的見地、科学的な見地からすると、こうしたスタディこそ、最悪ケースに至る前にどこまでで食止められるのか、それにはどのようなアクションが必要かを検討するためにも重要な作業です。

機能しなかったのは電源のサポートだけでなく、人的なサポートもだった

しかしこの本によると、内閣サイドで最悪スタディ検討依頼をしたのが3月14日、それ以前には本当の専門家による最悪ケース回避検討の客観的なスタディーチームは組織化されず、活動も行っていなかったようです。この事実からも、その後の管首相の福島第一視察、東電本社への怒鳴り込み、さまざまなイラ管振りの報道が腑に落ちました。お役所仕事・大企業病どころの騒ぎではありません。原発事故に対する、国としての危機管理体制、組織、そのリスクマネージが全く機能してなかったことの現れです。科学技術立国を標榜する日本で、このような国家的な危機の中で、リスクマネージをサポートする科学技術の専門チームがほとんど機能しなかったことが、あの混乱を招いたものと思います。

原子炉を含め、実用工業製品では当たり前の、最悪ケースのスタディと、それを想定した上での回避スタディすら、どこかの段階で思考停止に陥り、組織の壁で自発的研究も止められ、いたるところで機能不全に陥っていたことが、この本を読んで胸落ちさせられました。

きちっとしたスタディでなくとも1号機から3号機が連続してメルトダウンを起こし、多量の高濃度の放射能汚染物質を放出しまうケースは当初から想定され、政府にはアメリカ大使からアメリカの検討結果も伝わっていたようです。真偽のほどは今も判りませんが東電トップから出た福島第一からの全面撤退どころか、福島第二までも汚染され、冷温停止維持や冷却用電源強化とその本対策などの作業も行うことが出来なくなるケースまで、菅さんの耳には入っていたようです。菅さんの肩を持つわけではありませんが、この状態でパニックを起こしてしまい、そのような状況下で東電本社に乗り込んだアクションはこの本を読むと理解ができました。

原子力保安院も、専門家の先生方の集団である原子力安全委員会も、このような実際の危機では全く機能しませんでした。この最悪ケースをどのように食止めるか、その作業を行う原発現場、場合によっては自衛隊、消防といった緊急回避活動の検討を行うためにも、最悪ケースを知った上での回避検討スタディは必須だったはずです。

「想定外」を作ることのない信頼性を支える「人」を大切に

私自身は、何度もこのブログで述べたように、資源問題と地球温暖化問題、環境問題から自動車燃料を含め、全てのエネルギー源のパラダイムチェンジが迫られる中で、その大部分を今のサステーナブルエネルギーにシフトさせることは不可能で、この3.11を踏まえて安全対策に万全を期した上で、原発活用は必要ではないかと考えています。

さらに、この災害を引き起こした当時国たる日本の原子力関係者が3.11の教訓を踏まえ、これからの世界の原発開発、その安全保障に貢献していく責務があると思います。もちろん、作ってしまったからと言うわけではありませんが、その最終処理問題も大きな課題です。かりに脱源発を決めたとしてもその対策検討をやり続けなければいけない厳しい現実です。

シェール革命は、このエネルギー源のパラダイムチェンジに対しちょっとした朗報です。日本近海のメタンハイドレードもその実用資源化に明るさがでてきています。しかし、シェールガス、メタンハイドレードも燃やすと、石炭や石油に比べ少ないものの、やはりCO2を出す化石燃料です。また、これら資源そのものの体積当たりの温暖化効果はCO2よりも遙かに大きく、採掘や輸送過程での大気放出も防ぐ必要があります。短中期的には、石炭、石油から天然ガスへシフトさせ、その上で安全でグリーンな原発開発とその後処理技術開発を進めるべきと思います。

この動きの中で、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」の日本人の悪い癖を起こし、また昔の安全神話に戻る恐れすらある、科学技術の世界では不可能とされる「絶対安全」を要求し、それに対してお役人特有の一般人には理解しがたい文章表現で書かれた「絶対安全」の責任回避作文がまかり通る世界には戻してはなりません。

本当の意味での、専門家集団がサポートする国家リスクマネージ体制を作り上げるには、危機時にこそリーダーシップを発揮できる、政治家、お役人、経営者が欠かせないことが、今回のケースでも良くわかったと思います。それぞれ、少しはその選別も出来たのではないでしょうか?このような災害・事故によって、それぞれの分野で、リーダーシップを発揮する人材があったことが示されていましたが、これこそ未来に向けた一縷の希望のような気がします。

以前、信頼性工学の専門家トヨタOB執筆の『想定外を想定する未然防止手法GD3』を紹介しました。また私自身も、「想定外」などという言葉はそれを口にした人間の能力のなさを示すと考えて自動車開発をやってきたつもりです。「不意打ちを喰らわない」ためにも、最悪ケースまで「想定に想定を重ねて」考え抜き、やり残しを探し抜き、生産開始の最後の最後どころか、生産後のマーケットでの不具合ふくめ「想定外」を起こしてしまうのは担当エンジニアの恥と思ってやってきました。

今日とりあげた原発事故だけではありませんが、ボーイング787電池、ここにきての三菱アウトランダーPHV電池の溶損など、まだ真因とその対策効果が示されていませんが、これも決して「想定外」では無かったと信じています。日本のもの作りの原点は、「想定外を想定する」信頼性品質の高さにあること、またそれを支えるのはそういった想定を行う「人」であることを強調しておきたいと思います。

「死の淵を見た男」 吉田昌郎と福島第一原発の500日を読んで

福島第一原発事故の現場で何がおこり、その状況の中で関係者がどう判断し、どう動いたのか大変興味がありましたので、書店でこのタイトルを見つけ、久しぶりに寝る間も惜しんで一気読みしてしまいました。それぐらい、あの時、あの現場に遭遇された吉田所長以下、発電所現場の様々な人たちの行動、それを支えた使命感、その背景にあった考え、家族のことなど、臨場感あふれて迫ってき大変感銘を受けました。脱原発、卒原発、縮原発の意見とは別に是非、これからの日本を考えるうえで一読をお勧めしたいと思います。
門田隆将著 株式会社 PHP研究所発行

緊急時は現場に一任すべき

吉田所長の行動、実名で上げられた現場責任者の方々の行動は、全く別分野とはいえ、自動車の開発現場で次元は違いますが修羅場を何度かくぐった私には良く理解ができ、また強い共感を覚えました。現場責任者は緊急時の自分たちの作業動作については、いつも最悪ケース発生を想定しながら、そのアクションプラント、ディシジョン内容を頭の中で、また実際の演習としてやりまくっているものです。様々な経験の反芻、想定外を想定したケーススタディの繰り返しをやっていると、実際の想定外に遭遇したとしても、本当の専門家、本当の経験技術者、本当の責任者ならすっと出てくることがあります。本で表現されているように、緊急事態の修羅場では、脳の中のアドレナリンが増え、頭の中がブンブンと音を立ててまわり通常の何倍ものサイクルで次ぎ次ぎと先の手が浮かんだことは良く理解ができます。しかし、その状況でこと、後方部隊の支援、冷静なアドバイスが支えになることは明かです。

現場監督者の役割は、修羅場のまっただ中で必死に取り組む強い使命感をもった現場責任者、スタッフの支援です。中途半端に現場作業に口を出すことではありません。責任を持って任せられるかどうかは、緊急事態発生前に見極めておくべきことです。この、国の存亡にも関わる修羅場であっても、最後の最後は、信頼してきた現場責任者にそのオペレーションは全て任せ、その使命達成のための全面的なバックアップを行い、判断を仰がれたときの助言、加えて外部からの現場作業に対する邪魔を排除するのが役割です。本の内容からも、政府筋、本店筋からの様々なコメント、視察、報告要請・指令などオペレーションに関わる余分な介入、支援どころか邪魔が多かったとの印象を持ちました。この情報化社会で、国家の緊急事態でコントロールセンターであるべき官邸、現地本部、東電本社、福島第一発電所間の情報ネットワーク網の脆弱さには驚くばかりです。

後方の役割は支援とアドバイス

この本で表現された現場の活動と、政府、東電本社と発電所とのやりとりを読み、さらに東電から公開されているTV会議のビデオを聞くとこの緊急事態の状況が私なりに理解でき、いろいろな報道や事故調査報告などでの疑問がほとんど解消できたように感じました。全電源喪失の非常事態の中で、被害拡大を食い止め原子炉をコントロールしようとする作業は、現場でしかできません。また緊急応援部隊も現場での作業になることは明白で、その支援、的確なアドバイスこそ後方部隊の役割であり、オペレーションの邪魔をしてはいけないことは修羅場の現場実務経験者なら当然の判断です。

新聞やTVではほとんど報道されていませんが、メルトダウンがさらに拡大し、使用済み燃料プールまで底が抜け冷却ができなくなると、首都圏を含む日本の三分の一近くがゴーストタウンになりかねない状況が起こりえたことは事実だったようです。エネルギー関連の仕事をしている私の元にも、海外関係者などからの情報が入り、確かにある国々では、本国政府経由で東京からの避難命令、子供達の海外避難勧告、大使館の西日本移転を真剣に検討していたとの話は当時もよく耳にしていました。アメリカ政府、フランス政府では事故発生後に政府機関、軍隊が特別体制をとり、事故拡大についてのシミュレーション・スタディーを開始し、最悪ケースとしてメルトダウンの拡大と、多量の放射能汚染物質放出まで想定していたことは確かでしょう。

もちろん、住民の安全避難はなによりも政府・地方自治体としては何よりも優先、しかし現場の緊急オペレーションへの自衛隊、消防庁の緊急支援体制は機能したようですが、これはやはり緊急時対応組織として、に高い使命感を持っていた現場部隊の存在と現場ベースの権限委譲体制が大きかったと思います。修羅場を経験したこともない、政治屋からの口先介入、邪魔が多かったことは東京都ハイパーレスキュー隊のインタビューでの現場隊長の涙やこのピー音が多い東電の公開ビデオからも明かでしょう。

技術屋の端くれとしての疑問として、アメリカ、フランスがやった程度のシミュレーションは日本でもやったはず、それが官邸、東電本社に上がってきていた様子がうかがわれない点です。アメリカ、フランスと同等以上、さらには実際の原子炉運転データを入れたさまざまなシミュレーレーターがそれぞれの原発毎に用意されていた筈です。それが、組織として動いた様子がないこと、それによる現場支援、避難・誘導に生かされなかったことが非常に疑問ですし、残念です。アメリカ、フランスがすぐ動き出した程度のことが、災害発生現場の日本でやられていないか、生かせていないとすれば、国の緊急事態対応組織能力に大きな欠陥があったと言わざるを得ません。

この教訓を生かして欲しい

この本にもあるように、吉田所長以下、発電所操作員、従業員の方々、自衛隊、消防庁などさまざまな緊急出動隊の方々の文字通り死を賭した献身的な活動により、あのレベルで被害が留まったとも言える未曾有の緊急事態だったことがよく判ります。死を賭した献身的な活動で、あのレベルで食い止めたと言っても、それでも今も自分の家から避難されておられる方々が16万人もおられることは重く受け止める必要があります。

それでもこの教訓を重く受け止め、安全を担保する新しい基準、さらに現場重視、本当の意味での専門家重視、本当の意味での技術重視の安全な原発利用の道を作り上げることは可能と考えています。もちろん、これとともに、国の緊急事態に対する組織、能力もまたしっかり振り返り作り直す必要があることは明かです。

先週のブログでも書きましたが、私はエネルギーと地球環境問題へ対応から、安心、安全であることが担保され、使用済み燃料のバックエンド処理技術、処理方法への一層取り組みを前提に、原発利用が必要と考えています。

エネルギー需要の2倍を超え拡大している世界の電力需要を考えても、今期待されているリニューアブル・エネルギー拡大でまかなうことは極めて困難です。先週のブログでも紹介しましたが、IEA WEO2012にもあるように、ドイツ、日本の脱/卒原発の動きの中で、原発比率拡大スピードは落ちるとしていますが、お隣の中国、韓国、さらにインド、ロシアと原発増設が進んでいます。この世界の原発の安全確保、四度目となる原発大事故はおこさないためにも、日本がこの福島事故の教訓を世界に発信し、さらにこの体験を踏まえた安全策、安全技術、後処理技術の開発で世界に貢献していく義務もあると思っています。日本の科学技術は大きく失墜してしまいましたが、この現場力、修羅場で発揮する志あるスタッフがいるかぎり、その義務を果たしていけると信じます。

地震後の点検中に殉職されたお二人の若いスタッフのご冥福をお祈りするとともに、ご療養中の吉田氏のご本復をお祈り申しあげます。

IEA WEO2012を発表

今月12日、国際エネルギー機関(IEA)が、毎年恒例のエネルギー需給の現状および将来展望とエネルギー政策への提言をまとめた『World Energy Outlook 2012年版(WEO 2012)』を発表しました。
http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/
レポート全体は有料ですが、このHPには日本語版のExecutive Summaryがありますのでご興味のあるかたはそれをご参照ください。

IEAは、第1次石油危機を景気に当時のアメリカ・キッシンジャー国務長官の提唱のもと、産油国がつくったOPEC(石油輸出国機構)に対抗する形で28カ国の先進石油需要国が、安定したエネルギー需給構造確立を目的に設立した国際機関です。先進国全体での石油備蓄推進、また将来エネルギー需給予測、政策提言などを行っています。

非在来型化石燃料の開発で楽観予想に

このIEA WEOは将来エネルギー予測として、先進各国のエネルギー政策策定の指針としても使用されているものです。エネルギー市場の変化や、地球環境問題などエネルギー需給を取り巻く環境変化を反映させ、エネルギー安全保障、経済発展と環境保全を掲げ、気候変動に関するエネルギー政策と市場改革が大きなテーマとなっています。IEA WEOは毎年発行されていますので、この変化を追いかけると、北米でのシェールガス・オイル開発が採掘技術の進展により急激に進み、世界のエネルギー需給バランスに大きく影響を及ぼしていることがよく理解できます。

今回のWEO2012では一時的と但し書き付きの予測ですが、2020年の初めには米国が石油生産量でサウジやロシアを抜きトップに踊りでると述べています。これは2011年までのWEOで述べていた、サウジなどOPECの生産シェアがこれからも拡大するとの予測からの大きな変化となります。2009年版のWEOで天然ガス時代の到来と述べていましたが、この天然ガスもシェールガスなど非在来型の台頭し、これに伴って非在来型石油の生産実用化が予測以上に進展したようです。

このように、天然ガス黄金期、北米での石油生産増産、非在来型石油増産により、2035年までは、省エネ、エネルギー効率向上への取り組みで中国、インドや発展途上国の需要増に対応しても需給バランスがとれるとの楽観的見方に変化しました。この将来需給に対しては、OPEC(石油輸出機構)側も中期的には楽観的シナリオに変化し、私も先月ウイーンのOPEC本部で直接話を聞く機会がありましたが、OPEC側も非在来型天然ガス、石油の資源探査、開発を進め、供給量を増やす可能性があることを示唆していたことが印象的でした。

トーンダウンする脱CO2

気候変動については、人為的影響を否定する意見もあり、IPCCでのデータ捏造のクライメートゲート事件や、このところの世界的な経済不況を受けてトーンダウンしている雰囲気もあります。

今回のWEO2012では、従来の平均大気温上昇2℃以内のブルーマップシナリオにかわり3.6℃以内を目標とする新政策シナリオを提案し、「エネルギー効率の改善により、気温上昇を2℃以内に抑える期限を少し先延ばしできる」と、口調を大幅にトーンダウンさせているのも、先進国諸国の苦しい経済情勢とはかばかしくない気候変動緩和への取り組みを考慮にいれた苦しい表現に思えます。

福島第一原発事故の影響として、日本、ドイツの脱源発、縮原発の動きも考慮に入れたようで、原発拡大が以前のシナリオに比べスローダウンするとする一方、お隣の中国、韓国、さらにインド、ロシアでは拡大すると述べています。ただし、電力需要の伸びがエネルギー全体の需要増比率の2倍と急スピードで拡大しており、原発開発を抑止しながら需要増に答えるのは一層困難になったと言っています。

気候変動対応としての2℃以内抑制はトーンダウンしましたが、エネルギー安全保障と気候変動抑制はまだまだ国際社会として取り組むべき喫緊の重要課題です。各電力会社から2011年の電力CO2排出量の報告がでてきましたが、3.11福島第一原発事故とその後の原発停止によって大幅にCO2が増加しています。この状況では、国際公約の京都議定書2012年目標の達成すら困難な状況です。

今回の総選挙では脱源発のオンパレード、しかし被災地の復興も、不況からの脱出も、さらに経済成長も、いかに節約に努めようとも、また省エネ、新エネ技術が進化しようが安心、安全、安定、安価なエネルギー供給の支えが必要不可欠です。さらに、地球温暖化緩和の取り組みも国際的にも重要な課題であることは替わりません。民主党政権として、鳩山時代の2020年25%CO2削減の目標は撤回しないことを決めたようですが、脱源発の中でどうあがいても実現はできないことは明かです。 

エネルギー政策が本物か見極めよう

IEA WEOでも日本の電力料金が、中国やアメリカに比べても、脱とはいかないまでも縮原発、天然ガスシフトの中で大幅に上昇との予測をしています。これでは、日本での製造業は成り立たず、その輸入代を稼ぐだけの貿易黒字も稼ぎ出せなったあげくのハイパー円安、インフレすら懸念されます。太陽光発電や風力発電への補助金政策であるフィード・イン・タリフも先行して取り入れたドイツ、スペインでは補助金総額の上昇で制度破綻と電力代金高騰により削減の方向で見直しされています。日本の制度もこの道をたどる可能性が高く、さらに電力料金を引き上げる要因となってしまうでしょう。

今回の総選挙では、日本のこれからを誤らないように、選挙目当ての具体策がない付け刃の脱、卒、縮原発か、経済政策、福祉政策か、政策議論をしっかり聞き、その中身を見極めて投票したいと思っています。

地球温暖化対策基本法案が廃案に

守られなかった国際公約

総選挙のニュースに埋もれた形となってあまり注目されていませんが、野田首相の仕掛けた衆院解散により数多くの法案が廃案になりました。その中の一つが、「地球温暖化対策基本法案」です。これは、2009年に当時の鳩山首相が国連総会で宣言した「2020年までの90年比25%の温暖化ガス削減」の国際公約実現を目指して、国内排出量取引の実施などの13年以降の国内対策が盛り込まれる予定の法案です。

この廃案で来年度からの温暖化対策に関する国内対策が空白となり、今月26日から中東のカタール・ドーハで開催される「国連気候変動枠組み条約第18回締結国会議 (COP18)」でも、日本は何の対案なしに臨むことになってしまいました。

約束が守れなかったもう一つ鳩山さんの「普天間基地の最低で県外」と同様で、全くの裏付けも無く方策検討すら不十分状態なで「温暖化ガス25%削減」という、国内どころか国際公約にもなった前代未聞の「大嘘つき」のツケが「沖縄県民」「日本」に回されてきていることを、後任者である「噓」の嫌いな野田さんも自覚すべきです。

この「温暖化ガス25%削減」鳩山公約に対しては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(アジア版)のコラムニスト、ジョセフ・スタンバーグ氏が当時、コラムで「日本の“カーボン”ハラキリ」として、日本経済にとって残酷なジョークと言い切っていました。

その時において経済成長を抑制しない唯一に近い削減策が原発拡大でしたが、これすら3.11福島で吹っ飛び、そのうえ3.11前でも「自殺行為」と言われた国際公約だけは残っていることを忘れてはいけません。

エネルギー政策は全てのベース

地球温暖化対策としてだけでなく、石油資源問題、エネルギー安全保障問題からも、石油に燃料に100%依存していた自動車など輸送機関を筆頭に、暖房、照明、家電、情報機器など民生用、製造業などに使っているありとあらゆる一次エネルギーの化石燃料比率を大きく減少さえていくことが地球人類全体に課せられた課題です。

現代では農業も漁業もこの石油資源に依存しており、人間生活の全てがこの一次エネルギーに支えられて成り立っており、この全ての一次エネルギー源の大変革が迫られている訳です。自動車用代替エネルギーの有力候補に一つが電力、この電力も脱化石燃料の低CO2電力が求められています。

震災復興を含めて日本復活の全ての活動を支えるのも安全を前提とした安定した安価なエネルギー供給です。しかし、3.11から1年8ヶ月も経過したにも関わらず、この将来エネルギー政策議論すら進んでいないまま総選挙に突入していましました。

総選挙の争点のトップに脱原発議論があげられていますが、日本の復興や経済発展を果たすため将来エネルギー議論をパスしての脱原発論には首をかしげるばかりです。2010年のエネルギー白書では、日本の一次エネルギー消費のうち太陽光、風力、地熱、バイオのいわゆるリニューアブルエネルギーはわずか1%以下、水力を入れても5%以下に過ぎません。13.2%が原子力、残り81.9%が石油、石炭、天然ガスといった化石燃料で、この全てを輸入に頼っています。3.11後、この13.2%の原子力が一時ゼロとなり、国民をあげて節電に務めたとはいえ、代替のほぼ全てを化石燃料発電に切り替え、CO2を大きく増やして対応しています。

国内で「温暖化ガス25%削減」との国際公約は、当時以上に実現困難で、「嘘つき」と言われようが、「ハラキリ」となる前に取り下げるべきです。幸か不幸か、COP15での鳩山公約は全く影響力を及ぼさず、以降のCOP16.17でも強制力を持つ国際条約はまとまりませんでしたので、今がチャンスかもしれません。

脱原発を争点にする前に、日本の将来エネルギーをどう持って行くのか、また国際的には日本の代表として民主党の鳩山首相が約束した、今では全く実現不可能である2020年国内ベースで「温暖化ガス25%削減」の修正検討とセットで、脱原発議論をやって欲しいと思います。

「嘘」のない将来エネルギー戦略を

私自身は、3.11福島の原因究明と再発防止策を技術、運営/経営、安全保障、その仕組み作りを徹底すれば安全担保は可能と思います。その上でアメリカ、フランス、英国やIAEA(国際原子力機関)と連携し、地元理解を進めた上で再稼働が必要との意見です。

もちろん、今も15万人以上の方が、ご自宅から遠く離れ避難生活を送られており、貴重な教訓と言うには、今も継続するあまりにも重い現実に目をそらすことはできません。しかし、脱原発を決めたとしても、使用済み燃料の処理は必要で、仮に廃炉にするにしてもその間の使用済み燃料の保管、廃炉処理と長い期間と膨大な費用が必要です。世界が一致して脱原発に向かうなら別ですが、お隣の国では日本に面した沿海部で続々と原発建設が進められようとしています。

3.11福島の起こしてはならなかった大失敗を貴重な教訓に、日本科学技術陣の叡智を集めると、二度とこのような災害を起こさない安全な原発とその運営指針、安全保障体制、組織を作り上げることは可能ではないでしょうか?この重い体験からの再発防止技術、指針、体制を世界に発信していくのが、日本の原子力に携わった科学・技術陣を含む全ての関係者が果たすべき責任だと思います。

「温暖化ガス25%削減」の公約違反の影響は心配ですが、ハイブリッド車、電気自動車など低燃費、低CO2次世代自動車も、また鉄鋼、セメント、電力、さらに自動車製造、部品製造の省エネ化でも世界をリードしてきました。国内「温暖化ガス25%削減」を引っ込めたとしても、この省エネ・新エネ技術を世界に広めていくことで、公約以上の効果を上げることもできるはずです。研究開発、実用化、商品化、技術移転にも安心、安全、安定、安心なエネルギー供給が不可欠です。このエネルギー政策のゆくえが、日本が再浮上できるかどうかの鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。

現実に目をそらさず、各政党の次ぎの「噓」を見抜き、日本沈没とならない政権選択が行われることを信じて、投票したいと思います。新政権発足後速やかに、「噓」でも「夢」でもない、日本のエネルギー戦略とこれも日本が世界の省エネ・新エネ技術創出による「温暖化ガス削減」に実際に寄与していける新しい「地球温暖化対策基本方策」をセット作り上げていくことを臨みます。その土俵の上で、脱原発、縮原発、これからの取り組みを議論していって欲しいものです。

日本の電力事情とプラグイン自動車

日本のすべての原発が止まりました

今週はじめに北海道電力の泊3号機が定期点検のため発電を停止し、これで日本国内の原発は全て発電を停止することとなりました。資源エネルギー庁の出す「エネルギー白書2011」によると、電力、輸送用燃料、産業用など、日本が使用する全てのエネルギー消費の内の11.5%を占め、電力に限れば29%を占めていた原子力エネルギーが0となったということです。原発比率が大きかった関電の原発再稼働騒動、東電の電力料金値上げ騒動、関電、北電、九電エリアで心配されている今年の夏の電力供給不足問題、長期的にも脱原発、縮原発、太陽光、風力、バイオ、地熱などリニューアブル電力(Renewable Electricity: 以下REと表記)への転換を含む日本のエネルギーシナリオの総見直しが求められています。

一次エネルギーシェアで見ると、1973年、1979年の2度に渡るオイルショックを経て、石油による発電を、石炭や天然ガスを経て、原子力へシフトさせ、さらに地球温暖化問題から、その主要因ガスである化石エネルギーの燃焼によって発生するCO2ガスを低減するために、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換を進めようとしている矢先の原発事故でした。

また電力だけの問題ではなく、膨大なエネルギーを消費して、現代の社会生活、社会活動は成立し発展させてきたこの国の根幹が揺さぶられる事態です。ガソリン、軽油を使ってきた自動車の燃料も、効率を高め、燃費を改善させながら、この石油依存を減らし、この非化石エネルギーを使ったものにシフトさせていくことが迫られています。

Source: 資源エネルギー庁「エネルギー白書2011」
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2011energyhtml/index.html

家庭、商店、金融など民生業務、運輸、産業用と、すべてこの一次エネルギー源を使っています。非化石エネルギーへのシフトは、地球温暖化問題の側面だけではなく、化石資源が有限であることからくる要請です。ピークオイル到来と言われたように、まず石油がその生産のピークを迎え、遠からず世界の需要に応えられなくなると言われています。自動車も、飛行機も、船も、まずは高効率・低燃費、次ぎに石油から、それ以外の燃料にシフトさせることが求められています。そのエネルギー転換の有力候補が、電気であり、水素でした。その水素も、非化石エネルギーからの生成としては、原子力、水力、もしくはRE電力からの生成することが必要です。

日本の一次エネルギー需給

上に示すように、2009 年度の全一次エネルギー消費のうち、非化石エネルギーは20%足らずの17.8%に過ぎません。今期待が高まっている水力とRE含めて6.3%、非化石エネルギーの三分の二が1 1.5%の原子力でした。

原発停止で次世代自動車のシナリオも崩れた

自動車の非化石エネルギー転換の現実的な第1ステップとして取り組んだのが、燃費効率を画期的に高めるハイブリッドプリウスの開発でした。その当時からも、ハイブリッドはショートリリーフ、2010年までには水素燃料電池自動車が普及期に入るとも言われてきました。その後、リチウムイオン電池に注目が集まり、ハイブリッドをスキップして電気自動車の普及を基本政策として取り上げる国まで現れました。

このブログでも取り上げたように、プリウスの開発そのものが、当時のニッケル水素電池やリチウムイオン電池技術では電気自動車の実用化は困難との判断にたち、従来車の燃費2倍を目標とした画期的低燃費車の開発が狙いでした。発売当時は、外部充電がいらないことを謳い文句としましたが、電池がもう少し進化し、さらにハイブリッドの普及拡大が実現すれば、ポスト石油への次ぎのステップとしてプラグインハイブリッドへの応用がわれわれのシナリオにはありました。エネルギー密度の大きいバイオ燃料、合成燃料と、非化石エネルギーから発電される電力をうまくミックスさせ使っていこうとのシナリオでした。非化石エネルギーによる電力で最有力候補と考えていたのはもちろん原子力発電です。

そのシナリオに乗って開発を進めた私も、間違いなく日本原子力神話の信奉者でした。将来自動車の講演でも、中国の原発地図を示し、日本の原発事故を心配するぐらいなら中国沿岸部で次々と建築が進んでいる中国の原発を心配すべき、その安全確保には日本原子力技術の総力を挙げてサポートすべきと主張していました。とんだピエロです。3.11までは輸入化石エネルギー依存度の低減、低炭素社会を目指す日本の中期シナリオの柱は、原発の増強であっったことはよく知られています。原発増強により供給余力が増し、さらにCO2が低減する夜間電力をプラグイン自動車充電用に格安で使わせもらうことすらシナリオに描いていました。しかし、3.11福島原発事故が、原子力神話どころか、日本の将来エネルギーシナリオ、低カーボンシナリオ、輸入エネルギー依存からの脱却、エネルギー/環境立国シナリオのなにからなにまで吹っ飛ばしてしまいました。

安全が最優先、現実的に進めよう

福島原発事故が想定外とは思いません、明らかに日本の政、官、学、財、この日本の原子力政策に関わった人たちが砂上に築き上げた楼閣が崩れた人災だと思います。3.11から一年が経過しましたが、今騒がれている、原発再稼働論、廃炉論、供給力不足、節電要請、大幅な値上げなどなどは全て一年前でも容易に予測ができ、その予測の議論もしていた想定内も想定内の話ばかり、一年以上たった今になって当時からほとんど進展もない不毛な議論にうんざりし、憂鬱さが増す一方です。図に示した、一次エネルギーの現状から、私自身は今でも、原子力を将来エネルギーメニューから外しては、シナリオが描けないと思っています。しかし民主党の仙石さんが発言した「原発全停止は集団自殺だ!」論を代表とする、財界筋、電力筋、政界筋の供給力不足と大幅値上げを人質とする再稼働論、には与することはできません。福島原発事故の謙虚な振り返りを踏まえ、徹底的な再発防止検討から作り上げる新基準、新体制、新組織による原発の安全点検、安全チェックなどが何よりも先決。やることをしっかりやらずして脅迫めいた再稼働論と、それにのっかった、ど素人集団である政治家にその決断を任せられないと思うのは私一人ではないと思います。

私の描いていたプラグイン自動車普及のシナリオも大きく狂いました。電力の供給能力不足が叫ばれている時に、その電力の新規需要であるプラグイン自動車の日中充電には躊躇を覚えます。また、原発発電が0になった状態では、夜間電力の発電も化石エネルギー発電にシフトし、その時の発電CO2は大幅に増加していることは明かです。さらに、原発発電の余裕電力を前提とした格安な夜間電力がこの先どうなるかもプラグイン自動車の将来に大きな影響を及ぼします。わが家は、プラグインハイブリッド普及を睨み、原発増設を想定した東電のオール電化普及路線にのって、温水床暖房、給湯、IHIのオール電化に切り替え、クルマもプラグインプリウスに切り替えましたので、CO2削減シナリオが狂うとともに、電力料金の大幅値上げで将来エネルギー費用の増大も心配です。

さらに、ポスト石油として、バイオ燃料、合成燃料の生成にも、電力は不可欠であり、電池の製造にも多量の電力を使用します。節電、効率化を進めたとしても、また現在たった6.3%しかない原子力以外の非化石エネルギーの増強だけでは、家庭、業務、運輸、産業と全ての一次エネルギー需要をカバーすることは、超長期を考えても非現実的です。しかし、ポスト石油、低カーボン社会への軟着陸として、高効率で液体燃料を使うハイブリッドと外部電力を使うプラグインハイブリッド自動車は、電力の安定供給、国際基準の電力価格、低CO2が前提ですが、有力なメニューであることには替わりはないと思います。

先週ブログで紹介しましたが、今回のプリウスプラグインでは、タイマー充電機能が標準設定になっていますので、これを活用し、供給不足が懸念される夏の電力ピーク時には充電せず、夜間だけの充電で済ませるつもりです。今提案されている東電の電力料金値上げ提案と、7月からのRE電力買い取り制による電力料金上乗せ分を入れた夏の昼間料金では、プリウスの場合、ガソリンを使ってハイブリッド走行をするよりも割高となりかねませんので、経済的にも夜間充電に切り替える必要がありそうです。

人が動き、物が動き、物を作り、またそれにつれ、人、物が動き、経済に明るさが戻り、復興が進みます。それを支えるのが一次エネルギーです。その一次エネルギーの安定供給がピンチ、先の明るさがでてきた日本の経済と復興に水を差してしまう懸念が高まっていますが、国民の安全と経済のトレードオフは決してやってはいけないことです。クルマの開発エンジニア人生でも、経済性と安全品質のトレードオフは決してやるなと、上司、先輩から叩き込まれてきました。日本の原発開発では、それをやってしまったことも、福島原発事故の遠因であるように感じます。

今年が猛暑の夏にならないことを祈るばかりですが、今年は節電の工夫での何とか乗り切り、当面はCO2排出には目をつむって化石エネルギー発電にシフトし、新しい安全基準作り、安全チェック体制、組織づくりを急ぎ、その国際基準のもとで、個別に再稼働判断を進めていくことが必要ではないでしょうか?

電力の発電CO2とプラグイン自動車

先月末に、フランスでトヨタと組んで、プラグインプリウスの大規模実証試験を行っているパートナー企業フランス電力公社(EDF)役員との意見交換のためパリに出張してきました。

それまで、電気自動車(BEV)普及を熱心にやっていたEDFが、プリウスハイブリッドに注目し、そのプラグインハイブリッド化の可能性とその共同事業化を提案してきたのは、今から6年前、2005年でした。EDFは1990代の初めから電気自動車の普及に力を注ぎ、電動輸送機関事業部を作りBEVの他、バス、トラム、水上バスなど電動輸送機関の実用化に取り組んでいました。BEVでは、ルノーとPSAグループからクルマの供給を受け、パリやフランス各地のEV共同運営組合を支援し、充電ステーション設置とセットでEVカーシェアプロジェクトを実施していました。しかし、BEVの将来事業展望は拓けず、パートナーであった自動車会社も次ぎのBEV開発をストップし、EDF電動輸送機事業部では会社トップから事業転換を迫られ、そこでハイブリッドプリウスに注目、そのプラグイン化の打診をトヨタに持ちかけてきたのがきっかけです。

1990年代の初めにトヨタを含め、いくつかの自動車会社がハイブリッド自動車(HEV)の開発をスタートさせましたが、そのきっかけはBEVの販売を義務づけるカリフォルニア州ZEV規制の制定でした。とはいえ当時の最新電池技術を駆使しても、今のクルマの代替としてお客様に受け入れていただけるBEVを開発する見通しは全くありませんでした。その代替として、各社が期待したのがHEVであり、多くが想定したのはBEVの延長線上である外部電力充電型、いわゆるレンジエクステンダー型プラグインハイブリッドでした。しかし、ZEVはCO2削減というよりも、ロサンゼルススモッグに代表される大都市の大気環境クリーン化規制のシンボルとしての規制であり、結局レンジエクステンダー型とはいえ、内燃エンジンを搭載するからZEVとしては認められないとの環境派の主張が通り、HEV実用化の機運が一気にしぼんでしまったとのいきさつがあります。

一方でわれわれは、ZEV対応というよりも、将来の石油資源問題、地球温暖化問題から21世紀の自動車には画期的な低燃費が求められるとして、HEVの開発を続けハイブリッドプリウスに結びつけたとの経緯がありました。ZEVは意識しませんでしたし、普及型次世代車ということで当初から外部充電型のプラグインハイブリッドは候補には挙がっていませんでした。しかし、BEV用としての実用化は困難としても電池がもう少し軽く、コンパクトにかつ安く出来る見通しがつけば、プラグインハイブリッドの可能性もありとは考えていました。その将来電池の候補がリチウムイオン電池であったことは当然です。しかし、プラグイン自動車の普及には電池だけではなく、充電ステーション整備も必要、その費用負担を含めて、多くのユーザが経済的なメリットを出すにはまだまだ技術的にも経営的にも高いハードルを乗り越えることが必要です。また、それに使う電力も安価で、かつ低CO2であることが求められます。 

フランスで行うことの意味

フランスでは原子力発電と水力発電の両方で90%以上の発電シェアを持ち、先進国中では世界ダントツの低CO2電力供給国で、3.11前で原発が通常に稼働していた日本の発電CO2の20%以下という、2050年ぐらいに我々が目指さなければならない電力CO2排出量目標を既に達成していました。また、電力料金もオール電化契約の夜間電力料金を除くと、一般家庭用も日本よりも電力料金が安く、一方ガソリン価格は日本よりも高く、CO2低減効果、ユーザの経済メリットの点、さらにクルマの使い方の点でもクルマ文化発祥の地ヨーロッパでのPHV効果の把握とその情報発信に期待をし、EDFとのPHVアライアンスを進めることになりました。

この低CO2電力をクルマの走行エネルギーの一部に使い、長距離ドライブなど電力走行ではまかなえない部分を高効率なハイブリッド走行とすれば、いまからポスト石油や地球温暖化緩和のためのCO2排出削減シナリオの実証スタディーを行うことができます。自動車発祥の地、成熟した自動車社会の欧州で、2020年、2030年、そして2050年の自動車からのCO2排出削減目標を睨みながら、実際のユーザの走行環境での評価を受けながら次世代ハイブリッド車の開発を進めて行くには絶好のチャンスと感じました。この話をもちかけたEDFの重役が実証プロジェクトとして提案してくれたのが、彼の友人が市長を務めているストラスブール市でした。EU議会があり、EU統合のシンボルの街ストラスブール、洒落たトラムと大聖堂でも有名な観光都市で、環境保全政策にも力をいれています。さらに、街の東を流れているライン側を渡るとドイツ、30分足らずで速度無制限のアウトバーンを走ることもできます。

日本とタイアップし、日本のハイブリッド技術を生かし、プラグインハイブリッドの普及拡大と、厳しい欧州ユーザの声を次ぎのハイブリッド開発に反映させて欲しいとの強い思いがありこのプロジェクトのサポートを今も続けています。しかし、3.11福島原発事故はここに大きな影を落とすことになってしまいました。ガソリンの代替として、外部電力によって電池を充電してその電気エネルギーを使うプラグイン自動車の普及を図るには、そのエネルギー分の発電能力を増強してもらうことが必要です。低CO2 化を進めるには、電力そのものも低CO2にしていくことが求められます。

変更を余儀なくされた日本の発電シナリオ

3.11までのシナリオでは日本としてのCO2低減の重点策として原発拡大が掲げられていました。CO2排出の多い、石炭火力や石油火力から原発への転換を図り、オール電化を推進しても有り余る夜間電力の新規需要としてプラグイン自動車用電池の充電に使おうとの構想でした。このシナリオが大きく狂ってしまったことは以前のブログでも述べたところです。オール電化の推進も、原発により余裕がでる夜間電力の新規需要開拓の意味合いが強く、この夜間低CO2電力とヒートポンプ給湯を組み合せ一般家庭の電力拡販とCO2削減を狙う、政府/電力会社合作の一石二鳥シナリオだったと思います。プラグイン自動車もこのシナリオに沿った路線でした。余裕電力の活用として安く設定される筈の夜間電力料金利用も経済メリット拡大として注目していました。

図に発電方式別のCO2排出量を示します。原発の代替として、太陽光、風力といったリニューアブル発電の拡大が叫ばれていますが、現状でのシェアは微々たるもの、思い切ったインセンティブを付けたとしても即座に原発の代替などは不可能であり、原発発電量の減少を補うためには、この図に示す火力発電の増設でしのぐ他はありません。期待が集まっているLNG火力であっても石炭や石油火力に比べるとましですが、大幅な排出削減が求められている日本のCO2排出量を短期的には増加させてしまう懸念さえあります。

発電CO2排出
発電方式別の二酸化炭素排出量
(出典:資源エネルギー庁 やさしいエネルギー解説集)

今週7日、東電から2010年度の発電電力CO2実勢が発表されました。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11110702-j.html
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111107b.pdf
2010年度ですから、3.11の影響は3末までのわずかの期間しか原発停止の影響は含まれていませんが、発電電力あたりのCO2は前年の0.324kg- CO2/kWhから0.374kg-CO2 /kWhと15%以上も増加しています。よくよく資料を見ると、実際の発電Mixベースでは2009年度もCO2低減基準年の1990年度 380kg- CO2/kWhから微増の0.384、2010年度は少し減って0.375、その差分は他から購入した炭素クレジット分で、2009年度では0.06kg分のクレジットを購入して穴埋めにつかったが、2010年度は0.001kg分しか購入しなかったことによる差です。実態としては1990年度から発電量原単位ではCO2が減っていないとの結果でした。2011年度以降はさらに発電CO2が増加してしまうことは明かでしょう。
その電力を使う訳ですから、BEV/PHVのCO2排出量も増え、また電力料金も上がってきていますから経済メリットも感度は少ないとは云え、減少してきています。福島原発事故を受け、欧州CO2マーケットの排出権クレジットが上昇を始めています。排出権クレジットの購入費用は電力料金に跳ね返り結局は消費者負担、いつまでも続けるわけにはいきません。2010年度でもクレジット購入額を減らしましたが、本年以降はさらに増加分をクレジットでカバーすることは経営的にも許されないでしょう。

エネルギーについて大きな眼で本質的な議論を

プラグイン自動車の電池を電力貯蔵源として活用するスマートグリッド構想によって、リニューアブル発電拡大切り札にしようとの声も耳にしますが、充電電力はクルマを走らせるためのもの、それを転用するシナリオをどう成立させるかが理解できません。電力貯蔵源として使うにしても、その充電電力はこれまでになかった電力の新規需要です。原発の夜間余裕電力が期待出来ない場合、この新規需要をどんなシナリオでまかなうかはこれからの議論です。自動車だけでの議論ではありません。人間の生活、農業、漁業からサービス業、製造業まで、それを支える全ての産業が多くのエネルギーを使うことにより成り立っています。脱化石燃料、低CO2を目指さすとしても、省エネと太陽光発電や風力発電など新エネだけではまかなえないことは明かです。日本の将来のためこれからのエネルギー戦略についてもっと真剣に向き合い、議論を進めていくことが必要と思います。もちろん、原発運転を継続するにしても、もう想定外は許されないことは言うまでもありません。

エネルギーと環境、フランス、ヨーロッパでの取り組み、PHVの実証状況を見守りながら、日本のエネルギー、環境議論にも加わっていきたいと思います。