トヨタハイブリッド車累計販売600万と電動自動車の未来

昨日、私にとってうれしいニュースが飛び込んできました。すでに新聞で報道されているように、トヨタハイブリッド車の世界累計販売台数が昨年の12月末で600万台を突破したとのニュースです。以前のブログで、昨年3月末に達成した累計販売台数500万台記念の現役、OB含めたハイブリッド開発の仲間たちのパーティーを取り上げましたが、次の100万台まで9カ月、ピッチをさらに速めての達成です。正確な数字は掴んでいませんが、ハイブリッド、プラグインハイブリッド、電気自動車といった電動自動車の世界累計販売台数もまた1,000万台突破もまもなくと思います。

トヨタのハイブリッド車販売のスタートは1997年12月発売の「プリウス」ではなく、その年8月に発売を開始したミニバス「コースターハイブリッド」ですが、これは少量販売にとどまり短い期間で生産も停止していますので、この600万台のうち半数以上を占める「プリウス」がリードしてきたと言っても良いでしょう。

図1
図は1997年からのトヨタハイブリッド車の販売経過です。

1997年のわずか300台程度からスタートし、100万台までに118カ月、約10年かかりましたが、次の200万台からは各100万台増加に27、18、14、11ヶ月とピッチを速め、昨年3月末に到達した500万台から600万台まではわずか9ヶ月で到達しています。お買い上げいただいた全部のクルマが生き残っている訳ではありませんが、このクルマが自動車低CO2の牽引役を果たしていると思うとエンジニア冥利につきます。

電動化に先行する日本、海外でもやってくる

ただし、日本ではハイブリッドやEVなどの電動自動車販売シェアが20%を越えましたが、アメリカでは今年も昨年に続き販売新記録となったもののまだまだ3.84%のシェアにしかすぎません。

今、デトロイトで北米自動車ショーが開催されていますが、ロイター通信の論調は「エコよりもパワー」に回帰かとの見出しで、フォードF150、GMシルベラードといった販売が好調な大型ピックアップトラックの新型車をとりあげています。

中身をよく見ると、その大型ピックアップトラックもダウンサイジング過給、軽量化、アイドルストップの採用といった低燃費メニューが並び「エコ」はあたりまえになっており、その上でカウボーイハットが似合うアメリカのガラパゴスカーの大型ピックアップですら低燃費が社会のまたユーザーのアピールポイントとなってきており、「エコよりパワー」とは反対に着実に燃費意識が定着してきた証拠のように思います。

中国も新車販売がとうとう2000万台を突破し、世界全体でみると自動車販売はさらに拡大を続け、保有台数が増加しています。

こうした状況では、トヨタハイブリッド車累計販売600万台到達、世界の電動車両累計販売1,000万台到達といって浮かれている訳にはいきません。自動車の走行でのCO2排出にまず歯止めをかけるには、どんなタイプであれ自動車の電動化を加速させる必要があります。

トヨタのハイブリッド車を販売している国は80ヶ国に拡大していますが、国別シェア、台数でみるとまだまだです。さらに新興国では廉価な小型大衆車クラスの電動化もまた求められています。そのためにも、電動化部品および車両の現地化も必要です。

ハイブリッド、EV、燃料自動車はライバルでは無い

昨日、お台場の東京ビッグサイトで開催されている「カーエレクトロニクス技術展」「EV・HEV駆動システム技術展」を見てきました。日本の自動車電動化を支える部品技術、材料技術、計測技術、生産技術各社がブースを出していましたが、その広がりと熱気が大変印象的でした。

一般の見学者が多い、他の環境展やスマート何とやら展とは違い、実際にモノ造り、ビジネスにかかわる専門家が多い印象で、各ブースで熱心な商談、営業活動が行われ、また中国、韓国他、海外の参加者も目につきました。

この17年、トヨタハイブリッド車累計600万台がけん引役を務めました。自動車電動化を支える日本の部品、材料、計測機、開発ツール、生産機械がここまでに広がってきたことに口火を切る役割を務められたことを、少し自慢がしたくなりこのブログに取り上げました。

もちろん、感慨に浸り立ち止まっていてはこの激烈なグローバル次世代自動車競争を日本勢が勝ち抜き、生き抜いていくことはできません。

巷では、その発信源がどこかは判りませんが、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、さらに水素燃料電池自動車をあたかもコンペティター関係にあるかのように対比、オン/オフ比較して語られているように思います。

さらにハイブリッド自動車と昨今の欧州勢のアプローチ、直噴過給ダウンサイジング、デュアルクラッチ多段変速機、アイドルストップ、気筒停止の低燃費車両を、これまたコンペティター関係として対比する論評を見かけます。そのあげくに、ハイブリッドは日本のガラカ―?などとのまで言われたこともあります。これはミスリード、不本意です。

電動化が将来自動車のコアなのは間違いない

クルマを動かすエネルギーの全部か、一部かは別としてエネルギーの貯蔵源を有効につかって高効率、低CO2を目指す目的は、ハイブリッドも、プラグインハイブリッドも、さらに電気自動車も水素燃料電池自動車も変わりはなくクルマの電動化がコア技術です。使われている技術分野も共通分が多く、そのモーター、インバーター、さらに電池の技術進化、低コスト化が進むといずれもさらにCO2排出を減らすことができます。その手段が電動化です。

またハイブリッドの定義はクルマを直接電気モーターで駆動するパスを持つクルマとなっていますが、ナビもオーディオもインパネ表示も、クルマを動かすための様々な制御もエンジン発電発生するか、充電電池から取り出すかは別としてクルマを動かすために消費しているエネルギーです。このすべてのクルマで消費するエネルギーの効率化を図るのが低燃費のアプローチで、これもハイブリッドでもノンハイブリッドであろうが変わりはありません。できる限りの減速エネルギー回生を行い、そのエネルギーを使ってエンジン停止中の補機、制御系を動かし低燃費化を図る部分が、強いて言うとノンプラグイン車とハイブリッドの違いです。

低燃費車の標準メニューとなってきているアイドルストップでは、その領域を拡大していくと軽自動車の低燃費車競争で競いあっているように、クルマが完全停止する前からエンジンを停止し低燃費効果の拡大が図りたくなります。停車中でもエンジン停止を行うようになると、パワステ油圧、ブレーキ油圧など従来はエンジン回転で駆動していた補機類のエネルギー源確保が困難になりパワステも、ブレーキ油圧発生、さらに夏のエアコン運転、冬のヒーター熱源のエンジン冷却水もまた電動化がやりたくなります。

こうした補機類の電気駆動もまたどんどん進んでいます。上級車や重量車ではこうした補機駆動のエネルギーもばかにならず、42V~48Vのマイルドハイブリッドがやりたくなります。マイルドまでいかなくとも、スズキのエネチャージ、日産ノート、マツダスカイアクティブも12V鉛電池の他に小さなリチウムイオン電池、キャパシタ―を使い、エンジンベルト駆動ですが減速時のエネルギー回収を行っています。これまた自動車の電動化です。

展示会でも日本各社の様々なタイプの電動化に向けた部品、材料、開発のためのツール、計測機がこれでもかというほど展示されていました。国内マーケットで低燃費自動車開発を競いあり、その部品、材料、計測ツール、開発ツール、さらにその生産技術開発が活発になり、展示会場で感じた熱気をさらに高め、その熱気のなかで次をになう人材が育っていけば次の700万台、1000万、2000万とさらに電動化車両の普及拡大を日本勢がリードできます。さらに、その低燃費車、部品、材料技術のグローバル展開を進めることが日本自動車産業の生きる道、この分野、この技術、この人材で地球市民として日本が貢献していくことを願っています。

直噴ガソリンエンジンのPM2.5問題について

直噴ガソリンのPM2.5が従来車の10倍との報道

先週16日の日経新聞に、『直噴ガソリン車のPM2.5排出、従来車の10倍以上』との記事が掲載されました。この記事は、国立環境研究所がニュースリリースとして発表した『最近の直噴ガソリンエンジン乗用車からの微粒子排出状況』の紹介記事です。

自動車関連のWebニュースサイトにも、このニュースリリース記事が配信され話題をよんでいます。私のように自動車用ガソリンエンジンの研究開発、その中でも燃焼や噴射系の研究開発に携わったエンジニアからすると、このPM削減への配慮を怠って直噴をやると当然こうなると予想ができ、またそれを懸念していた通りの結果です。

しかし、ここで従来ポート噴射エンジンの10倍以上と書かれているのは、日本の規制にはないまた欧州でも最近まったばかりの試験基準による結果で、この十分な説明をしないで数値だけを一人歩きさせることには疑問を感じますが、過剰なまでの低燃費競争への警告として受け止めることも必要です。

大きな問題視をすべき結果では無いが…

下に公表資料にあった10倍多いと説明した図を示します。

図 粒子重量の排出係数(㎎/㎞)vs 粒子個数の排出係数(個/㎞)
図 粒子重量の排出係数(㎎/㎞)vs 粒子個数の排出係数(個/㎞)

出展:国立環境研究所ニュースリリースhttps://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20131216/20131216.html

横軸がこれまで規制として使われてきた尺度の走行距離あたりの粒子重量(㎎/㎞)、縦軸が欧州の決めた新しい試験基準による走行距離あたりの粒子個数(個/㎞)です。

PMは自動車排ガススモークの他、山火事、火山の噴煙、土埃、砂嵐で巻き上がる粉塵、さらにスギ花粉など植物の花粉からも粒子状物質が発生します。重く粒径が大きいものは自然に地上に落ち、軽く粒径が小さく大気中の浮遊している粒子をSPM(Suspended Particulate matter)と呼んでいます。

大気環境にけるPMは、ディーゼルスモークがまず問題となり、当初は粒径10μm以下をSPMと定義し、その走行距離当たりの重量を規制値としていましたが、その後の研究でこのSPMの中でも粒径が2.5μm以下が呼吸器の奥まで吸われ健康影響がより大きいことが確認されました。

このため2.5μm以下の粒子を補修する試験法を開発し、2009年からこの試験法にもとづきディーゼル車の規制強化が実施されています。この規制値が図に横軸に示される粒子重量の排出係数です。今の法規制ではこの日本規制値と書かれた垂直線の右側に入っていればOKとされています。

この意味では、今回の試験されたガソリン直噴エンジンは全てこの規制をクリアしています。健康影響としては、同じ排出量なら粒子個数が多い方が大きいとの議論となり、粒子個数を計測する試験法が開発されました。欧州では排出重量とともにこの新試験法で計測される粒子個数も合わせて規制として定めることが決まり、2017年から実施されます。

図が示すように、排出重量と粒子個数には相関があって排出重量の規制強化で対応できるのではとの意見もあり、日本、米国ではまだこの粒子個数をカウントする規制実施は決定されていません。これをもって、従来の10倍以上だから問題と叫ぶのはフライングと思います。

エンジニアにはこの結果は解っていたはずだ

また、たった三車種三台のデータでここまで言い切れるかは燃焼エンジニアとしては疑問です。しかしながら、燃焼方式から直噴ガソリンのPM多くなることは燃焼屋の常識です。低燃費の手段として圧縮比を高め、アクセルを踏み込み高パワーを使う領域でノックが厳しくなるため、この領域でのノック抑制の効果がある直噴エンジンが増えています。

昨今、過給ダウンサイジングが持てはやされ、これこそ小排気量エンジンでも過給器によって吸入空気の圧力を高めシリンダーに押し込みますので圧縮で温度があがり過給なしくらべてもノックがより厳しくなりその対策として直噴を採用と、これまた教科書どおりのメニューになり、燃焼系のエンジニアにとってこの結果は完全に予測の範囲内でしょう。

排気のクリーン化と低燃費、高出力を両立させる手段として、吸気ポート噴射で空気とガソリンをしっかり混合し均一燃焼をさせようとするポート噴射エンジンが発展してきました。しかしながら、圧縮比を高めて燃費をかせぐ手段として直噴ブームとなってきたように思います。

直噴の採用を決めたなかで、エンジン担当エンジニアがPM悪化を想定していなかったはずはありません。率直に言って、これをどう考えていたのか聞きたいところです。自動車技術、燃焼技術をし、クリーン技術を推進してきたと自負するベテランエンジニアとしては、こうした問題が取り上げられたこと自体が残念で仕方ありません。

排気のクリーン度、低燃費、さらにエンジン出力はマクロにみてトレードオフ関係にあります。燃費向上にウエートを置き過ぎると、どうしても排気のクリーン度か、出力性能が犠牲になってしまいます。

また最近の低燃費競争が、ともするとJC08、欧州EUモードといった公式試験のカタログ燃費競争に終始しているように感じるのも危惧する所です。燃費でもカタログ燃費と実走行燃費のギャップが問題となっていますが、排気のクリーン度は燃費以上にリアルワールド走行とのギャップが問題となります。

触媒が100%近いエミッション転換率を持つ公式試験モードから、少し外れて急加速をしただけで100倍、1000倍のエミッションを出してしまうクルマも直接車種を上げるのは避けますが、決して無いわけではありません。エンジンでのPM生成パターンから考えても、今回試験された車種についても、PMの排出はオフモード域でより厳しくなり、さらにノン過給(NA)よりも過給エンジンがさらに厳しくなるはずです。

グッドフェース設計をしっかりと

1990年代のカリフォルニア州ZEV/LEV規制議論の中で標準の試験法でクリーン度を判定するだけでなく、リアルワールドでのクリーン度が大切との議論が、米国、日本の自動車エンジニアの間や規制スタッフの間で盛り上がりました。

リアルワールドの隅から隅までの評価ができるわけではありません。その議論のなかで、最終的にはグッドフェースとの考え方がでてきました。試験法でさだめられていなくとも、試験モードから外れたところ(オフモード)急激なクリーン度悪化を招くような技術やチューニングはやめようとの考え方です。

今回のレポートは燃費や通常の排気クリーン度を計測する日本の標準試験法JC08モードに準ずる試験と書いてありましたが、オフモードのPM排出がどうなっているのか非常に気になっています。グッドフェースとしてクリーン性能の設計をしているかどうかの疑問です。

燃費も走行条件、環境条件により変わりユーザー平均としてのリアルワールド燃費を求めることは以前のこのブログでとりあげたように困難です。しかしギャップがあることは間違いなく問題で、プリウスで電動コンプレッサー、排熱回収器を採用したのもJC08や欧州EU試験法では評価されない夏のエアコン燃費、冬のヒータ燃費改善のためにある種のグッドフェースの考え方だと思います。排気のクリーン度でも現役リーダーのときは、このリアルワールドでのグッドフェースとしてオフモードのクリーン度には気を配ってきたつもりです。

このところのモード中心の低燃費競争の過熱が気になってきた矢先に、この話題がでてきました。ここで取り上げられた直噴車はどうも国産車A、輸入車Bとも今話題の数多くの賞を獲得しているクルマのようです。

クリーン度は燃費とは異なり、黒煙を出してはしっている整備不良車や故障車を別にすれば、通常はユーザーには判別できるものではありません。このようなケースでは、グッドフェースでやったことを誓約し、公式試験をもって認可、認証を受けるやりかたもあります。意図した不正や、グッドフェースでなかったことが発覚すると、ペナルティーを科するような制度も必要かもしれません。

中国のPM問題を見ると、単なる規制強化だけではダメで、こうしたリアルワールドでの悪化、さらに長期間使用の悪化まで防ぐ、リアルワールド、リアルライフでのグッドフェース設計が求められるようになるように感じました。

自動車税改正と軽自動車

10/17に総務省の有識者検討会が消費増税に併せた自動車税の改革案をまとめ、その夕方から一斉にそれが報道されました。今回はそれらの報道のされ方が興味深かかったので、それの比較と、税制についての個人的な思いを八重樫尚史が書いていこうと思います。

今回の自動車税改革案の報道は、主要各紙では下のとおりです。

安価な車、燃費性能の高い車に減税を…提言
(読売新聞)

総務省、軽自動車増税の方針 メーカー「弱い者いじめ」
(朝日新聞)

消費税8%時、エコカー減税拡大 総務省が改革案
(日本経済新聞)

消費増税:自動車取得税の軽減、廃止 代替財源、「軽」に上乗せ案
(毎日新聞)

自動車税を見直しへ、燃費・環境性も加味、総務省の検討会が報告書
(産経新聞)

どれも同じ提言書を報じているものですが、見出しを比較するだけでも各紙の取り上げ方の違いが見て取れるかと思います。今回の自動車税の改正案の中身については、図表のある日経の紙面が解りやすいのでそれを参照して欲しいのですが、特に報道で大きなウェイトが置かれているのは、消費税が10%になった時における自動車税(軽自動車税)の取り扱いについてです。

特に色分けが明確なのが、朝日新聞と日経新聞で、朝日は軽自動車税が増税になることを中心に報じ、日経新聞はエコカーが減税になるとし、一見した所で正反対の報道となっています。

自動車関連税については、紙面にもありますが自動車所得税については消費増税に伴って軽減・廃止することは大筋で決定しており、今回の総務省案はそれに伴って自動車税制を変えようとするものになります。報道でも注目されているように特に大きなものは、毎年の負担となる自動車税(軽自動車税)の改正で、そこに取得税の廃止に伴う地方財源確保と、環境負荷低減の為のエコカー減税を適用しようした為に、こうした2つに別れた報道となりました。

特に軽自動車については、安価な自動車税がその人気を支えている部分があり、この増税に対して、軽自動車メーカーや軽自動車ユーザーからは大きな反発があるのは当然です。またTPPへの参加の際に、アメリカの自動車業界より軽自動車を「参入障壁」とした意見が出ており、これにも関係して自動車ニュースやネットニュース等では軽自動車つぶしと捉えられて報じられることが多いようです。

自動車税の簡略化の方向は賛成

さてここからは私の個人的な意見を書いていきますが、取得税の廃止とエコカー減税の自動車税への取り込みについては賛成です。特にエコカー減税ですが、殊に昨今は名前とは裏腹に環境に負荷の少ない自動車を普及させるというよりも、一時的な景気刺激策としての減税ツールとして使用されているとしか見做せないものとなっています。

本当にこれが環境政策と考えるのであれば、長期的な視野に立って自動車の排出ガス削減のロードマップと合わせての恒常的な普及促進案が必要です。そうした視点では、これを自動車税に融合させて、環境負荷(燃費)に併せて比重をつけるという案には基本的に賛成できます。

またEVやPHEVといった次世代自動車についても、エコカー減税と併せて国の補助金と地方の補助金等も含めて販売時の価格が煩雑なものとなってしまっており(昨年『プリウスPHV』の手続きで痛感しました)、これを簡素化して実際の負担価格を分かりやすくすることは必要だと考えています。

あくまで提言段階で具体的な額が示されていませんので、中身についての議論はできませんが、エコカー減税の拡充を自動車業界も求めており、また環境省も「エコカー減税終了でCO2排出量が増えるという試算」を出して側面支援をしており、これはすんなりと進んでいきそうです。(とはいえ、環境省のこの試算は非常に眉唾のものです。)

軽自動車の議論は国際競争力も含めて考えたい

一方で紛糾しそうなのが軽自動車税の取り扱いです。ここで自分の立場を明確にしておきますが、私は基本的には「軽自動車は廃止されるべき」という考え方を持っています。ただしそれは、軽が優遇されすぎているからという理由ではなく、勿論それが参入障壁となっているという理由でも無く、世界的な自動車の技術潮流でダウンサイジング化が進められている中で、日本独特の軽自動車規格にあわせた自動車を追求するより、その枠組を広げて小型車を公平な競争環境の中でしのぎを削って開発したほうが、将来のこの国の自動車メーカーが世界で競争していく際に有意義だと考えているからです。

特に欧州・アメリカ等ではダウンサイジングの中で小型車に排気量が1000cc以下のエンジンを搭載する例も増えてきました。日本の軽自動車メーカーも海外モデルについては、エンジンを800ccや1000ccに載せ替えて販売しており、こうしたエンジンを搭載したほうが技術的には整合性があり、日本でも軽自動車は大型化・重量化が進んでいる中で660ccという枠を取り払ったほうが、燃費や走行性能のバランスの優れた車両が製造されるのではないかと個人的には思っています。また日本の軽自動車にはそうした技術的な地力があるとも確信しています。

とはいえ軽増税で最も大きな意見としてみられる地方や低所得者の足という側面は見逃すことは出来ません。私もこれを一部で言われているように登録車並み、つまり4倍とするのは暴挙だと思っています。一方でエコカー減税という案が打ち出されているのですから、環境性能に優れた小型車(1トン未満1000cc未満)に対する減税を行うことによって、今の軽自動車と比較して負担増を可能な限り減らした形にすることが理想かと思っています。

とはいえこれは軽自動車という名前を残すのかといった事柄や、税収減等についてはあまり考慮に入れていませんので、現時点では難しいかとも考えています。しかし、軽自動車の処置も含む自動車税制については財務省、総務省、国土交通省、経済産業省、環境省等が入り混じっており、縦割り行政の中で抜本的な改善が進められてきませんでした。今回はそうしたものも含めて議論する格好の機会であり、与党・政権の政治力が試される場だとも思っています。

単なる至近な税制論議や景気政策ではなく、環境対応も含めた自動車産業のあり方も含めて、大きな展望の持てる改正になることを期待しています。

2013年デトロイト・ショーを遠くから見て

今回も、八重樫尚史が書かせて頂きます。このブログの右肩にもリンクを新設しましたが、コーディアではメールニュースサービスを開始し、多忙の代表の八重樫武久の代わりにこのブログに登場する機会が今後増えるかと思います、改めましてよろしお願い致します。

回復基調が鮮明なアメリカ自動車市場

さて、現在アメリカ・デトロイトでは、北米国際オートショー(通称:デトロイト・ショー)が開催されています。デトロイト・モーターショーは隔年の東京モーターショーは違い毎年開催され、自動車業界にとっては年始の恒例となっているイベントです。

アメリカの2012年の(大型トラックを除く)乗用車の販売台数は約1478万台で、リーマン・ショックの後で1000万台強まで落ち込んだ2009年を境に翌年から3年連続で年率1割以上の増加となっています。ただし、リーマン・ショック前は毎年1700万台で推移していましたので、まだ回復余地があると考えられています。(アメリカの販売台数はWardsAutoの統計データを使用)

なお、日本の販売台数は軽自動車を含めて約577万台(自販連全軽自協のデータより)、EU27カ国とEFTA(アイスランド、ノルウェー、スイス)を併せたヨーロッパは、金融危機の影響によって前年比-7.8%と1995年以降で最低の数字となり1252万台になります(ACEAの発表データより)。また、中国については正確な数字はわかりませんが、1900万台程度であったと報じられています。

アメリカの市場はその台数の多さもそうですが、地域内のメーカーのシェアが圧倒的な日欧中の市場とは異なり、他国メーカーのシェアがビッグ3と呼ばれる国内メーカーのシェアが50%を割り込む市場であるのも特徴的です。広大な国土を持つためか他と比較して大型の自動車は好まれるという消費者の傾向はあるものの、最もオープンな市場と言って間違いはないかと思います。

「エコが後退したショー」??

さて、そんなアメリカ市場を代表するデトロイト・ショーですが、今年の日本での報道を見ると「エコカーの存在感が無くなり、代わりに大型車やスポーツカーが目立ったショー」として紹介されることが多いようです。

確かに今回のショーでは、ここ数年エコカーの象徴とされたバッテリーEV(BEV)の新車が少なく、あったとしてもテスラの高級SUVEV『Model X』やVIA MotorsのBEVピックアップトラックや大型SUVで、広く普及を目的とするモデルは見当たりません。

おそらくは、そういった状況を見て「エコカーの存在感が無くなった」と報じているのかと思いますが、ショーで紹介されたモデルの詳細を現地報道から追っていくと、そうではないではないかと感じています。私自身、現地に行っては居ないので、その空気感などは解らず、断言などはできないのですが、おそらく「エコカー」の定義の一人歩きによってアメリカ市場の方向性の分析が歪んでいるような気もしています。

さて、個人的に今年のデトロイト・ショーのニュースを通じての感想を言うと「SUVの再拡大の機運が感じられたショー」というものです。こう書くと「つまり、「エコカーの存在感が無くなった」というのは間違いないじゃない。」と思われるかもしれませんが、私はそう感じてはいません。

SUVと特にそのベースとなったピックアップトラックは、今でもベストセラー・カーで、実際に2012年のアメリカでの最量販車はフォードのFシリーズというピックアップトラックです。勿論、これだけ大型のクルマですから、小型自動車と比較して燃費は圧倒的に悪く、「エコカー」とは対極的な存在とされています。

今回デトロイト・ショーで、こうした昔からのピックアップトラックが大手を振っていたのかというと(いや、実際には展示されており、確実に存在感を放っていたのでしょうが)、各社の新モデル技術発表を見ているとそうとは思えませんでした。

代表もこのブログで何度も、自動車の様々な意味での「ダウンサイジング」は「エコ」の基本だということを書いています。「ダウンサイジング」には、近年欧州系メーカーを中心に主流となりつつある小排気量過給エンジンの採用や、車体の軽量化や小型化も含まれます。また、代表も繰り返していますが、ハイブリッドもエンジンへの依存を低減させて「ダウンサイジング」をもたらす技術でもあります。

オバマ政権も燃費規制を厳しく方向性を打ち出し、またガソリン価格が高止まりしている中、SUVといえどもその流れを無視出来るわけがなく、今回のショーの注目モデルの多くはこうした「エコ技術」を採用したモデルでした。

デトロイトで目についたSUV

具体的に挙げていきますと、大型SUVの象徴的モデルであるクライスラー『ジープ・グランド・チェロキー」の新モデルには、3.0lのディーゼルモデルが設定されました。高速ではこれまでの大型SUVと比較すれば非常に良い30mpg(12.75km/l)の燃費を誇るとうたっています。

上に挙げたピックアップトラックのフォード『Fシリーズ』も、既に「EcoBoost」と名付けられたターボ付きダウンサイジングエンジンモデルも用意されており、将来はアイドリングストップ機構を搭載するともされています。

また、VWも『CrossBlue』というアメリカ市場に向けたSUVのコンセプトモデルを展示しました。これは現行のVWのSUVである『ティグアン』と『トゥアレグ』の中間に位置するサイズのクルマで、コンセプトモデルには2.0lディーゼル・ハイブリッドが搭載されています。市販車もディーゼル・ハイブリッドになるのかは疑問ですが、コンセプトや写真を見る限りアメリカ市場での販売の可能性は高そうという印象です。

日本勢でも日産が次期ムラーノかと言われているコンセプトモデル『Resonance』を展示しています。コンセプトにはAWDのハイブリッドパワートレーンを積んでいます。こちらのデザインは市販では変わりそうですが、現時点では『シーマ』や『フーガ』のみとなっているハイブリッドシステムを次はSUVに持ってくるというのは、極めて妥当な方向性です。

ホンダは『Urbun SUV』というフィットベースとされるSUVコンセプトを展示しています。これまでに発売された小型SUVが代を重ねる中で大型化した中、再びこのような小型SUVの登場には期待が寄せられているようです。またホンダは昨年、小型自動車向けの新ハイブリッドシステムを発表していますので、それの搭載も期待されます。

なおアメリカでは、ピックアップトラックと同じくフレーム構造を持つもののみSUVと呼び、乗用車由来のクロスカントリー向けのクルマはクロスオーバー車もしくはCUVと呼ぶケースが多く、上記の『グランド・チェロキー』以外の車種はクロスオーバー車とされます。2012年の販売実績では、大型SUVが、ほぼ全てのセグメントで前年比でプラスなのにも関わらず前年割れしており、こうしたSUVの中でも小型化が求められているのが見て取れます。

本当に「エコ」って何だろう?

ここまで、今回のショーで目についたSUVを並べましたが、こういった車種を見ても果たして「エコ」に目を背けていると見るのでしょうか?確かに、軽自動車の販売台数が拡大し、また登録車ではハイブリッドのシェアが非常に高くなった日本から見ると、多少は燃費が改善されたとはいえどうしても燃費の悪くなるピックアップトラックやSUVが注目を集めるアメリカは「エコ」では無いと見えるかもしれません。

しかしこのブログで繰り返し述べているように、本当の「エコ」つまり化石燃料消費を減らし、温暖化ガス排出の低減をすることを求めるのであれば、1台を電気自動車に代えるよりも、100台の既存車両の燃費を10%上昇させることのほうが効果があります。

また、既存車両の買い替えも、消費者が求めるものでなくてはなりません。それぞれの国・地域がそれまでの伝統などによって形作られた自動車文化を持っており、それを急激に変えることは非常に困難というよりもそれを行った際の反発を考えると不可能でしょう。

その時に自動車メーカーに提示できるものを考えると、これまでの利便性を捨てずに、アメリカで言えば大型車の居住性や堅牢性をそれほど失わずに、なんとかそれの燃費効率を向上させることこそが「エコ」でしょう。その点で見ると、私個人としては、今回のショーは各社とも現時点で可能な技術でこうしたSUV達を何とか次世代でも生き延びさせようと苦心しているところが見え、決して「エコ」に背を向けたショーでは無かったと感じています。

ただし、燃費規制の目標ハードルは非常に高く、これでもまだまだだというのも事実で、ピックアップトラックやSUVが今後も存在し続けるには、更なる技術改良が必要となるのは間違いありません。(これはヨーロッパの高級車にも言えることですが)

EVやハイブリッドが少なかったから「エコではない」というのは、あまりにも表層的な見方だと思います。(それと、ハイブリッドは決して少なくないのでは?)また、シボレーのコルベットの新型が注目を集めたともいいますが、そもそもこうしたスポーツカーは昔からモーターショーの華です。これはアメリカに限らず、僕も自分が実際に見たEVやPHEVが多く展示されたとされたヨーロッパのモーターショーでも、最も注目を集めていたのは高級スポーツカーでした。

2012年のアメリカ市場を見るとピックアップトラックが最量販車であったことは事実ですが、一方では販売車両の平均燃費が過去最高であったという報道もあります。私個人としては、今後の自動車を考える際には、現実的な「エコ」の視点を忘れずに見ていこうと思っています。

ダウンサイジング? ハイブリッド? 低燃費技術の特性について

コンシュマー・レポート誌の自動車評価

消費者視点での厳しい製品・サービス評価で有名な米国“コンシュマー・レポート”誌(CR誌)は、自動車についても独自の方法により乗り心地、性能、燃費などの性能指標から、安全性・信頼性・リセールバリューなどの評価を行い、そのランキング結果を発表しています。また、評価を行う車両も独自で販売店から購入しており、メーカーのサポートを一切受けない独自路線を貫いるのも特徴です。

このランキングは米国内での新車・中古車の販売に大きな影響を及ぼし、メーカーのエンジニアもこのコンシュマー・レポートの発表はいつも気にしており、自分の担当で悪い点数が付けられ、その指摘が心当たりのある部分だったりすると、次のリベンジに向かって改良作業を進めるバネとするものです。

毎年4月に発表する自動車の総合ランキングとは別に、発売された注目車についてはすぐに購入して、その注目ポイントを評価し購入を考えているユーザーにタイムリーな情報提供を行っています。

自動車のエコ性能・燃費性能に注目が集まるにつれ、CR誌では、新しく発売されるエコカーを独自に定めた燃費試験条件と実走行燃費パターンを使い、その結果と認証試験燃費(米国の場合は連邦環境保護局[EPA]ラベル燃費)との比較、さらにカタログの加速性能と実測の比較などを公表しています。

小排気量ターボ過給エンジンの燃費向上に疑問符?

そのCR誌ですが先日、従来エンジン車(通称コンベ車)の低燃費の定番で、従来よりも排気量の小さいエンジンにターボ・チャージャーやスーパー・チャージャーといった空気を圧縮して押し込む過給機をつけてエンジンに吸入させパワーアップを図り、排気量ダウンをカバーする小排気量過給エンジン、通称ダウンサイジング・エンジン車による燃費向上に疑問をなげかけたレポートを発表しました。

記事のタイトルは“Consumer Reports finds small turbo engines don’t deliver on fuel economy claims”、CR誌は小排気量ターボ過給エンジンが燃費向上をもたらさないことを見つけたとのタイトルです。今日のブログは、この低燃費の定番メニューダウンサイジングを取り上げてみます。
http://news.consumerreports.org/cars/2013/02/consumer-reports-finds-small-turbo-engines-dont-deliver-on-fuel-economy-claims.html

CR誌の取り上げるエコカーでは、どういうわけかこのところFord車が多く、昨年はFordの新型フルハイブリッド車Fusion Hybridを取り上げ、EPAラベル燃費とのギャップを指摘していました。今回のターゲットはこのFusionシリーズの3.5リッターV6エンジンの走りと2.0リッター4気筒エンジンの燃費の両立をうたう過給ダウンサイジング・バージョンです。

カタログに記載される公式燃費とユーザーの実走行燃費とのギャップ問題は、低燃費が車両としての重要な訴求ポイントとなるにつれて、各国、各地域でもたびたび話題になっています。しかし、ご存じのように燃費は気温、湿度、日射など大気環境条件、アップダウンの多い山間部、渋滞の多い大都市部、高速道路の使用頻度、加減速度の大きさと平均車速(走り屋度?)、エンジン起動からのキーオフまでの走行距離(トリップ距離)など走り方によっても大きくかわり、カタログ燃費は、各国、各地域がその排気のクリーン度と燃費を同時に公平に評価するために定めて物差しで、ユーザーの実走行燃費の代表値を算出する意図はありません。

しかし、アメリカだけは、排気、燃費の認証官庁、連邦環境保護局(EPA)が以前にユーザーに実走行では公表燃費が全く出せないとユーザー団体が訴訟を起こし、その訴訟を受けてEPAが公表燃費算出法をユーザー燃費の代表値に近づけるように修正し、それを時代に合わせて何度も見直し改訂を行っていますので、比較的ギャップは小さくなったとされていました。今回CR誌がとりあげたのも、CR誌自身が定めた実走行テスト結果とこのEPA公表燃費との比較で、Ford車のギャップが大きかったことからの問題提起です。

昨年に、ヒュンダイ車のEPA申請燃費値詐称問題があり、EPAの公式燃費算定法どおりヒュンダイ車の燃費試験を行っても再現できず、ギャップが大きいとEPAに問題提起をしたのがFordと噂されていますので、Fordがよもやヒュンダイと同じ燃費詐称を行っているとは思えませんが、CR誌はこの噂もあり、Fusionの燃費に注目しているのかもしれません。

小排気量ターボ過給エンジンの特性とは

ここでは、不正な燃費詐称は技術的な議論の埒外として、低燃費のアプローチとしての小排気量過給ダウンサイジングについて取り上げてみたいと思います。表1にCR誌にとりあげたEPA公式燃費とCR誌の独自試験燃費の比較を示します。

表1

公表燃費26マイル/ガロン(11.05キロ/リッター)に対し、CS実走行試験で22マイル/ガロン(9.35キロ/リッター)と4マイル/ガロンのギャップがあったとの指摘です。ちなみに、3.5LV6エンジン搭載のホンダ・アコードやトヨタ・カムリがEPA公表燃費25マイル/ガロン(10.63キロ/リッター)に対してCR試験結果26マイル/ガロン(11.05キロ/リッター)とCR試験結果のほうが良い燃費を示したのと比較しての論評となっています。

小排気量過給ダウンサイジング、エコラン、ハイブリッド化、CVTミッション、多段トランスミッション、可変動弁系、直噴などさまざまな低燃費技術がありますが、それぞれに特徴があり、評価する燃費走行モードによってその燃費効果が大きいか、小さいかの相性があることは事実です。

簡単な例ですが、エコランやハイブリッドのエンジン停止EV走行は、都市中心部の走行のように、信号停止、発進が頻繁にある、日本10-15モード、JC08モード、欧州モード、米国シティーモードで燃費改善効果が大きくでる手段です。

ダウンサイジングも、10-15モード、JC08、欧州モード、米国シティ-モードのように、比較的平均走行車速が低く、加速度も小さいおとなしい走行パターンで燃費向上を図る技術です。山間部での登降坂頻度の大きい走行、平均車速が高く、さらに加減速度の大きな走り屋に近いはしりでは、このダウンサイジングメリットが少なくなる可能性があり、CR誌の試験ではこのようなEPA公式燃費よりももっと走行パワーの大きな走り屋の走りをされた可能性が高いのではと想像しています。

実はハイブリッドの燃費改善にもこのダウンサイジングの考えは入っています。小排気量過給の変わりがアトキンソンサイクルエンジンと電池パワーブースト、パワーが必要なときは過給ではなく電池パワーアシストを行う考えです。

この小排気量過給ダウンサイジングや、アトキンソンサイクルエンジンと電池パワーアシストとCVTや7速、8速、9速といった多段変速機との組み合わせで、エンジン熱効率の高い運転域の使用頻度を増やし燃費改善を目指す狙いです。しかし、走行車速が高くなり、加減速度が高いアグレッシブな運転、山道の登坂など高い走行パワーが必要な運転頻度が多くなると、熱効率の悪い運転頻度が高くなり、ダウンサイジングではない通常エンジン車よりも燃費悪化を招いてしまうケースもあります。

カタログ数字ではなくリアルワールドでの性能向上を

オールマイティーの低燃費技術はありませんが、車両軽量化、空力改善、低燃費タイヤなどとの合わせ技で低燃費を競っているのが今のエコカーです。

もちろん、この公式燃費で燃費規制への適合度が判定され、税額、罰金などが決められる基準ですのでメーカーに取っても極めて重要なファクターですが、その燃費規制、環境規制の目的はあくまでもリアルワールドでの環境保全、資源保護、エネルギーセキュリティですから、ユーザーのリアルワールド燃費改善が最重要との視点は忘れてはなりません。

ダウンサイジング化だけではありませんが、最近の各社の低燃費アプローチは、ややもすると、カタログ燃費の改善に偏っているように感じてなりません。

カタログ燃費比較だけではなく、どのような燃費技術で、そのような部分の燃費改善をめざしているかなどにも注目する必要があります。また、さまざまな低燃費技術の組み合わせで排気のクリーン度が、これもクリーン度が評価される公式試験以外のパターンでどうなるかにも、これはユーザーには判りませんが自動車メーカーや環境当局はその悪化がないようにしっかり見極める必要があります。小排気量過給ダウンサイジング、さらにノック悪化を防ぐ直噴、今話題のPM2.5のレベルも気になるところです。

いずれにしても、われわれが目指すべきはリアルワールド(実走行)の低燃費、クリーン度が基本、さらに胸のすく走行性能、スムースなドラビリ、低騒音、さらに安心、安全に走れるクルマです。

次世代自動車、2012年備忘録

明けましておめでとうございます。
いつもCordia Blogをお読み頂き有難うございます。
2013年が皆さまにとってよりよき年となることを祈っております。

さて、普段このブログを書いています代表・八重樫武久には正月休みを頂いて、今回は八重樫尚史が代筆させて頂きます。今回は自動車全体の2012年の個人的なまとめを書いていこうかと思います。

2012年はプラグイン車にとって「2年目のジンクス」?

2012年はまずはプラグイン車としては、プリウスPHVの一般販売が開始され、北米でもフォードからPHEV・C-Max(Fusion) Energi、バッテリーEVとしてはフィットEV、テスラ・モデルS等が発売された年でした。その前年の2011年が実質的に「プラグイン車元年」だとすると、「プラグイン車飛躍の年」とその前には期待されていた年です。

そしてそれらのクルマは世界の道を走り始めましたが、残念ながらそのスタートダッシュは鋭いものではありませんでした。それにはインフラ等を含めた様々な要因があるかと思いますが、あくまで数字的結果だけを言えば、年間販売目標を超えたモデルは殆ど無い状況です。スポーツには華々しい活躍をした新人が2年目には苦戦するという「2年目のジンクス」という言葉がありますが、そうした言葉ですっきりとまとめて忘れ去りたくなるような年です。

ただし産業・技術の世界は、もちろんスポーツとは違いますので、2012年についてしっかりと検証して、今後の普及に向けての糧とすることができなければ、今後のプラグイン車の未来を切り開くことは難しくなるでしょう。

様々なクルマが登場した2012年

一方で2012年はプラグイン車以外の、自動車の次世代技術が多く登場・紹介された年でもありました。マツダはSky Activeで日本のディーゼル乗用車市場を切り拓きはじめ、これを搭載したCX-5はみごと日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。また、以前より欧州勢を中心として取り組まれてきた燃費向上の為の小型化エンジン+過給器のシステムは更にバリエーションを増やし、日本でも日産がCVTとこれを組み合わせたノートを発売し、こちらはRJCカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

欧州では近年の欧州市場でトップを支配し続けているVWゴルフがフルモデルチェンジを行い、上記のシステムの熟成と大幅な軽量化によって、現状の王座つまり今のスタンダードカーとして評価を続けていくとみられています。

一方の日本勢では、日本市場は販売台数でトヨタのプリウスとアクアが独走している状態で、アメリカでもプリウスが記録的な年間販売台数を達成しました。ホンダも秋にハイブリッド3種を取り揃える意欲的な技術発表会を行い、これからの巻き返しに期待が持たれています。

軽自動車分野でも、ホンダがN-BoxとN-Oneを投入し大きくシェアを拡大して、大激戦の様相となっています。こんな中でスズキがアイドリングストップから一歩踏み出したene-chargeを搭載したワゴンRを発売し、ダイハツも既存のガソリン車の燃費を向上させ更に軽自動車に衝突回避支援機能を搭載するなど、活気のある争いを繰り広げています。

衝突回避支援機能のパイオニアであるスバルは、トヨタと共同開発して作ったスポーツカー86/BRZが注目を集めたのに加え、一年を通じて好調な販売を維持し、東証の主要銘柄のうち株価上昇率で一位を取るほどの一年でした。また、VWが販売した小型車UP!も、いままでのドイツ車からすると驚くような値段で日本でも発売開始され、こちらもその価格で衝突回避支援機能を搭載していることが注目を集めました。

自動車用リチウム・イオンバブルの崩壊

上の章タイトルは、今年秋に見かけた自動車コンサルタント会社の北米支部が出したレポートのタイトルです。2012年は自動車用バッテリー、特に駆動用リチウム・イオンバッテリーを製造している会社にとって極めて厳しい一年となりました。

プラグイン車のスタートのつまづきは、まるで高速道路で先頭のクルマの軽いブレーキが後ろでは大きな渋滞を作ってしまうかのように、そのままこれらの会社の業績に直結し、特に北米のベンチャーはEner1からA123まで軒並み破産申請をして倒産するという事態となりました。またベンチャー以外の企業も業績が厳しく、資金余裕のある会社が他社の電池部門を買収・吸収するというニュースが多く飛び交いました。

これは、自分たちの手で出口の商品(クルマ)を開発できず、普及予測や販売・生産予測をベースにせざるを得ないながらも事前に多大な投資を必要とするという、自動車駆動用電池の産業の難しさを実感させるものでした。

また、なかなか成果を出せないこうした企業に対して眼が厳しくなり、アメリカ政府の投資が急速に絞られたことや、シェール・オイル、シェール・ガスといった新エネルギーの期待が膨らんだことなどが重なった末の「リチウム・イオンバブルの崩壊」でした。ただし、まさに「バブル」というのが象徴しているように、「期待」だけによってパンパンに膨らんでいたのも事実で、厳しい目で言うと単に実態が伴っていなかったからに過ぎないということもできます。

2012年は振り返ると、これ以外にも中国での暴動による影響や、新興国市場に地歩を築こうとする各社の鬩ぎ合いなどもあり、自動車業界にとって刺激的な年だったのではないでしょうか?この2012年を受けた2013年は、おそらく次への一歩を見通す為の一年になりそうです。

パリモーターショー雑感

ウィーンのOPEC本部に行っていました

今週は、欧州出張で久しぶりのオーストリア・ウィーンでウィーンに本部がある世界の石油エネルギー供給に影響力を持つある組織の人たちと将来自動車エネルギー関係の意見交換会に参加、それを終えてパリに戻ってきたところです。

このように書けば、ピント来る人はピントくるとおもいますが、中東諸国や北アフリカ諸国、インドネシア、ベネズエラといった石油産出&輸出国が作った団体、石油輸出国機構(通称OPEC)の本部がおかれているのがオーストリア・ウィーンで、そのOPEC事務局の人たちとの意見交換会です。

このOPEC本部訪問は私にとって2回目で、前回は6年くらい前、OPEC本部の将来自動車エネルギー勉強会に講師とて呼ばれ、ハイブリッド技術を紹介、自動車エネルギーの将来議論に参加しました。その時には、OPECの人たちも中国やインドなどBRICS諸国の急激なモータリゼーション進展と既存オイルの生産低下で将来供給に不安を感じていたときで、石油需要の抑制に注目していた印象です。何人かのメンバーはそのときにお会いしたメンバーでしたが、6年前とは少し様子がかわり、シェールオイルからの新しい石油系資源の開発が進み、当分は安定供給が可能と言っていたことが印象的でした。

しかし、自国の経済成長維持、将来へ備えた産業構造変革への取り組みなど、OPEC主要国のオイルマネー依存度は高まっており原油価格のある程度の上昇は避けられないかもしれません。欧州のガソリン価格もユーロ安もあり、昨年、一昨年に比べさらに上昇、オーストリアではレギュラーガソリン価格が1リッター1.6ユーロぐらい、円換算では円高、ユーロ安もあって160円程度とあまり日本とかわりがない感じはしますが、以前は円/ユーロが130円〜160円と考えると、こちらのイメージではリッター200円越えくらいに上昇した感覚のようです。

盛況を見せるパリ・ショー

ウィーンからパリに戻り、この経済危機の真っただ中で開催されているパリ・自動車ショーを見学してきました。現在の欧州は、ギリシャに端を発した南欧諸国の財政危機がユーロ危機を招き、経済的にも危機的な状況にあり、自動車の売れ行きも急激に落ち込み、VWなど一部のドイツ勢をのぞき、工場閉鎖、人員整理と自動車産業も暗い話ばかりですが、どちらも平日の一般公開日での見学でしたが、2年前に比べても結構盛況でした。

午後には、フェラーリ、ポルシェといった今も若者の人気が高いスポーツ車メーカーの出品館では、通路が人で埋まるほどの混雑状況でした。広い会場で、東京モーターショーと比較しても、出品メーカーの数、出品車などはるかに大規模で、主要なメーカーブースを回るだけでも丸一日でも不十分なくらい、一度ざっと回り興味のあったクルマのコーナーをもう一度みるだけでたっぷり一日歩きまわり疲れ果ててしまいました。

さて今回のパリ・ショーですが、将来自動車の行方を占う意味でも、結構話題のクルマが多かった印象です。その中の最大のものは、欧州での最量販車であるVWの ゴルフのフル・モデルチェンジで、パリ市内にもDas AUTO(これが車だ!)という挑発的なキャッチコピーのポスターが至る所にはられていました。

ベンツとしてはエントリークラスであるAタイプのモデルチェンジが話題、ルノーはこれも小型車の中核クリオのモデルチェンジ、欧州事業の回復遅れに欧州危機の追ううちをかけられ苦しんでいるGMオペルからは小型エントリークラスのアダムが話題です。

各社の展示の短感

写真1 7代目ゴルフ
写真1 7代目ゴルフ

VWの7代目ゴルフは全長、前幅が少し大きくなりましたが、外形デザインの印象は旧モデルとほとんど変わらず、そこで100キロもの軽量化を実現し、ガソリン・ディーゼルにかかわらず前モデルに4気筒直噴ターボ過給エンジンを搭載、1.4リッターTSIエンジンでは気筒停止機構を採用、2気筒停止やアイドルエンジン停止、ベルト駆動オルタネーターによる減速エネルギー回生を採用、車両軽量化と会わせて欧州燃費モードでリッター20.4kmとハイブリッド車に迫る燃費を達成しています。

VWの主力車として欧州CO2規制対応の戦略車の位置づけのフル・モデルチェンジ車ですが、写真にあるように、クルマとしての人気度、注目度はいまいち、午前中の比較的空いた時間帯とはいえ、このようにゆっくりと写真をとり、クルマに乗り込んでみられる状況でした。

写真2 ベンツ新Aクラス
写真2 ベンツ新Aクラス

これまでのベンツのAクラスは、 ベンツ唯一のFF車で乗員スペースを確保してコンパクトサイズにおさめるためずんぐりむっくりのデザインでしたが、これがまた大きく変身、中年以上のユーザのクルマから小金持の若者にターゲットを切り替えた小型エントリー車に生まれ変わりました。

これがどう転ぶのか、Cクラスとの棲み分け、またこのラインアップで将来の燃費規制にどう対応していくのか興味がますところです。

ベンツブースには「SLS AMG 」Electric Driveのエンブレムがついた4輪独立モータードライブの青いスーパースポーツ電気自動車が展示してあり、2013年発売、価格は4,000万以上ではとの噂がながれていました。

ベンツはまさかこのような電気自動車の販売でCO2規制乗り切りを考えている?と思いたくなるようなラインアップで、オーソドックスなダウンサイジング、過給以外にはこれと言った低燃費エンジンは目につきませんでした。

ルノーブースでは半分がTwizy、ZOE、Fluence、KangooEV といった電気自動車群の展示で占められており、隣の日産ブースでは電気自動車は2台のLEAFとTwizy派生の小型コミュータEV のみ、小型SUVジューク、若者が群がるスカイラインGT が売りだったようで、ルノーの本拠地のモーターショーとはいえ、日産開発の電気自動車技術の集大成としてルノー電気自動車群となっている印象で、ちょっと日本人として複雑な心境になりました。

写真3 ルノーブースのTwiZyなど電気自動車群の展示
写真3 ルノーブースのTwiZyなど電気自動車群の展示

ルノーブースのもう一つの目玉はクリオのモデルチェンジで、真っ赤な車体に統一したクルマを円形の丘に見立てた斜面に所狭しと並べていたのが印象的でした。スタイリィッシュなハッチバック車、しかし各社ともほとんど同じぐらいのサイズ、このようなエントリーモデルではデザインも似てくるのはしょうがない印象で、そのため車体の色とブースの照明で差別化をはかったとの印象でした。

写真4 ルノー・クリオ
写真4 ルノー・クリオ

このクラスの販売量を増やしていかないと、CO2規制対応が苦しくなり、各社ともこのクラスに力を注ごうとしている印象です。Opel AdamもこのクリオやVW Upと同じカテゴリー、大激戦区の印象です。それでも本年EU委員会で決まった2020年の95g_CO2/km(燃費24.4km/リッター)の達成は、このクラスのクルマといえども不十分、各社のラインアップをみてもどのように対応していくのさっぱり見えないモーターショーの印象でした。

欧州は環境のトレンドが一段落したのか?

今の景気悪化も影響しているのかもしれませんが、2年前はまだしも環境性能が全面に出ていましたが、今回はそれがあまり目立たなくなりデザイン、走りにふってた展示が多かったように感じます。

その中では、GMコーナーでカマロやコルベットをならべ、古いV8サウンドを聞かせ、結構観客をあつめていました。景気もわるい、エコばかりも鼻につき、飽きてきたのかも知れませんん。

写真5 GMブース カマロのV8サウンド視聴コーナー
写真5 GMブース カマロのV8サウンド視聴コーナー

今回の出張でも何人かのこちらの自動車関係者とも話をしましたが、若者のクルマ離れはさらに進行中で、EVカーシェアのAutolibだけではなく、時々クルマを使うカーシェア族も増加しているようですが、パリのような大都会でクルマを持とうとすると結構な出費となり、また駐車場さがしも大変、固定契約駐車場は高額とても持ちきれない状況、日本の大都市圏も同じ状況に思います。

大都会の脱自動車の方向は止めようがないのかもしれませんが、それ以外、またその大都市にユーザーも保有したくなるクルマの提案に期待したいところです。

日本車では、ひいき目もありますが、2年前に比べてもトヨタ/レクサスが元気な印象、あまりエコを表にださなくともハイブリッドの品揃えが増え、今回発表した英国生産のオーリスハイブリッドベースのスタイリッシュなステーションワゴン型ハイブリッドは好評のようでした。

ひとこと辛口を書くと、プリウスを含めた欧州ハイブリッド車群の室内回りがVWあたりに比べるとデンザイン、インパネの質感がいまいちでチープな印象、超円高の中で低コストに苦心していることは解りますが、コストダウンをお客様に意識させてはなりません。

VW 7代目ゴルフの価格表を見ていると、こ欧州市場で今の円/ユーロレートで現地生産としても日本車が価格として勝負をするのは厳しいことを痛感しました。やはり、環境技術、車両技術でサプライズ&感動を与えるなどの差別化につとめ、厳しいCO2規制も味方にして、その先頭でプレゼンスを示すことが必要に感じました。

決定的な次世代車はまだ表れていない

低燃費のアプローチとしては、VWを筆頭として過給ダウンサイジング、変速機の多段化、車両軽量化とオーソドックスなものが多く、ハイブリッド車はさらっとこれもあるよといった扱いでした。しかし、低燃費メニューではVW7代目ゴルフのメニューにもあるように、アイドルエンジンストップ、減速回生などハイブリッド化の定番メニューを採用し、変速機の多段化もある意味、燃費最適のCVT運転に近づける手段、さらにダウンサイジング過給エンジンも初代プリウスで目指したアトキンソンエンジン+電池モーターアシストと考え方は同じです。

さらに言うとハイブリッド化を筆頭にクルマの低燃費化はは大都市での発進停止が多く、平均車速が低い走行での改善効果が大きい技術であることは確かです。この15年のハイブリッドプリウスの燃費向上では、実走行燃費をいかに改善させ、カタログ燃費と実走行燃費のギャップを小さくするかが課題でした。

しかし、実走行燃費を改善していくとギャップは縮まらず、カタログ燃費も改善される繰り返しだったように思います。もちろん、モーター駆動電動エアコンや、排気熱回収によるヒーター性能の向上、マイルドに比べると大きなエネルギー容量電池の採用もエンジン停止走行の拡大とともに、実走行での高速からの大きな減速エネルギー回生が狙いでした。この取り組みの経験から推測すると、アイドルストップ、オルターネータ回生、変速機の多段化、過給ダウンサイジングもまだ公式燃費モードとしての燃費改善が主、実燃費がどれくらい向上するのかにはこれからも注目して行く必要があるように感じました。

いずれにしても、欧州でも何らかのハイブリッド化は必須、ハイブリッドとは謳わずにじわじわとハイブリッド技術を取り込み、電池の様子をみながら回生エネルギー量を増やし、さらにEV走行域を拡大し、次に外部充電のプラグインの道をたどる道が見えてきたと、その先頭を走ってきた一人として確信を深めました。しかし、環境性能とクルマの魅力を両立させる次世代自動車とのメッセージを感じたクルマを今回も見つけられなかったことが一方では残念です。

いろいろなクルマの印象を書いてみましたが、結局クルマはスタイルやスペック、見た印象だけではいいクルマかどうかは解りません。VWの7台目ゴルフも発売されてから、しっかり乗ってみてクルマとしての将来ポテンシャルを見極めてみたいと思います。

日本のハイブリッド車はガラパゴス?

シェアを大きく伸ばした日本のハイブリッド

3月7日の日経新聞電子版に「ハイブリッドに死角 車もガラパゴス化の懸念」という記事が掲載されました。ちょうど同日に、日本の2月度車種別販売台数が自販連から発表されたところで、それを意識した記事なのでしょう。

2月の車種別販売台数トップは、35,875台と9ヶ月連続でプリウス、2位はフィット、フィットはハイブリッド・従来ガソリン車の合計の数字でその内訳は不明ですが、4位につけたフリードとともにかなりの比率はハイブリッドと思います。さらに、昨年12月末に発売を開始した、トヨタの小型ハイブリッド車アクアが1月の4位から21,951台の3位への躍進を遂げています。

昨年の統計では、日本の新車販売台数に占めるハイブリッドの割合は、通年で10.8%と初めて10%の大台を超えました。メーカー別でみると、やはりトヨタ/レクサス車のハイブリッド比率が高く、2011年通年で30.8%、続いてホンダの28.4%と後半のフィット・シャトルHV、フリードHVの投入でインサイトの落ち込みをカバーし、高いHVシェアを占めています。

今年に入ってエコカー補助金が決まり、1月、2月とエコカーの販売が伸び、1月にはトヨタ/レクサス車としてHVシェア50%を記録、この伸びもあって日本全体での1月の新車販売台数に占めるHVシェアは20%を越えたようです。

このように日本では、1997年12月のハイブリッド車プリウスの発売以来、14年にして、お客様の懐にも、そして環境にも優しい(私自身、この言葉を使うのはあまり好きではありませんが)至極普通のエコカーとして、お客様に受け入れていただくようになったことに感慨を深くしています。

海外でのハイブリッドの現状

そこでの、「ハイブリッドに死角 車もガラパゴス化の懸念」との記事です。確かに、今の瞬間風速としては、日本だけが突出してはハイブリッド車のシェアが高まっています。中国は、国策として複雑で高度な技術を必要とするハイブリッドをスキップして、一気に電気自動車の普及を計るとの報道も流れており、リチウムイオン電池の開発にも国を挙げて取り組み、自国ブランドのさまざまな電気自動車を開発し、実証試験を行っていると報道されていました。

その電気自動車の販売台数はすでにハイブリッド車を越えたとの報道もありました。確かに、中国自動車工業会によると、2011年のハイブリッド車販売台数は2.556台、これに対し電気自動車5.579台とEVがHVの2倍以上となっています。
また、様々な地方都市で電気バス、小型電気自動車の実証プロジェクトがスタートしていますので、この発表された販売台数の数字がどのような定義なのか、一般販売をおこなって通常の方が購入しているか、それとも公費を利用した実証プロジェクトで使っているクルマをカウントしているのか、不明なところも多く、実態はなかなか見えて来ません。

しかし、中国の2011年の新車販売台数は1,850万台にもなり、その中の数千台ですから、ハイブリッドも電気自動車もまだまったく量産マーケットとしては存在せず、マーケット議論の対象外と言っても良いでしょう。

またアメリカでも日本ほどハイブリッド車シェアが伸びている訳ではありません。ハイブリッド車の販売台数が352,274台、そのシェアが2.99%を記録した2007年から2010年まで、販売台数、ハイブリッドシェアとも下降線を辿ってきたことも事実です。

電動自動車全体としても昨年、電気自動車の日産LEAFとレンジ・エクステンダー型電気自動車と自称しているプラグインハイブリッド自動車GM VOLTの発売もあって、2010年の274,175台から286,367台と下降を食い止めたようですが、自動車販売台数全体が大きく伸びたこともあって、シェアは2.37%から2.25%とさらに下がってしまいました。

欧州ではどうでしょうか?欧州単独でのEV/HV販売台数の数値は掴んでいませんが、日本のように多くはなく、従ってシェアもまだ低い状態です。しかし、プリウスは一目で見分けがつくせいもありますが、フランス、UK、ベルギー、スウェーデンではちょくちょく見かけくらい走っています。残念ながら、ドイツに移動するとぐっと少なくなってしまいますが、ドイツの無制限区間もあるアウトバーンを持つドイツは特殊な世界です。

世界全体のEV/HV販売台数統計は、2010年4月~2011年3月(2010会計年度)のデータがWARDSAUTOという、自動車情報サイトにありましたので紹介します。

この統計では、世界全体のEV/HV販売台数総数は930,662台。トヨタとホンダのHVで全体の95%を占め、他のHVとしてランクインするのはFord Fusion Hybridだけ、後はMitsubishi i-MiEV、Nissan LeafのEVが登場とするなど、日本勢のオンパレードです。

この状態が続くと仮定すれば、この記事のガラパゴス化との記事を載せたくなるのも理解できないではありません。さらに、最新ニュースで、2010年末にGM復活のシンボル、オバマ大統領グリーンニューディール政策の目玉として発売を開始したレンジ・エクステンダー型電気自動車VOLTの販売が今年になっても好転せず、4月末まで生産を休止すると伝えられました。

VOLTは日本勢のHV/PHVに対する強力な競争相手になり、競い合うことで次世代自動車マーケットの活性化を期待していましたが、今のところ期待外れの結果となっているようです。

大型車回帰で経営状況を回復したアメリカメーカー

2011年のアメリカでの車種別販売台数トップはFordのFシリーズピックアップトラックです。さらに、上位にはGM Silverado、Chrysler Ramといったピックアップトラックや、大型SUVが並んでいます。確かに、アメリカには、この手のフルサイズ・ピックアップトラックや大型SUVが似合うことは確かです。

ですが、このV8エンジンを搭載するFシリーズピックアップトラックの、アメリカ連邦環境保護庁(EPA)が公表する、アメリカのカタログ燃費はリッター換算で5.9km、アメリカのカタログ燃費は2008年にユーザーが実際に実現できる実走行燃費の平均値に近づくように改定されていますので、これが実燃費とすると、月に2000km程度を走行するユーザーは月に350リッター程度のガソリンを使うことになってしまいます。

図1 2011年車種別販売NO1 FORD Fシリーズ
2011年米国車種別販売
NO1 FORD Fシリーズ

原油の高騰が引き金でプリウスなど日本勢のHVが販売台数を伸ばし始めた2005年5月、あるアメリカの調査会社が、フルサイズ・ピックアップトラックや大型SUVにその収益源を頼っている当時のBig3への警告レポートを発表しました。
そこではBig3の社債を、なんと私の名を取って“Yaegashi Bonds”(ヤエガシ債)と命名すべきだとの書き出しでした。永く続いた安い石油価格の次回に収益率の高いに大型車に頼り、原油高騰と低CO2自動車への転換に遅れをとったBig3の社債はジャンクボンドになるとの警告です。
HVのシンボルとしてでしょうが、私には何の挨拶もなく自分の名前がネガティブなイメージで付けられ、それが日本にも配信され、とんだとばっちりをうけた格好になってしまいました。
http://upload.democraticunderground.com/discuss/duboard.php?az=view_all&address=115×23574

バブルがはじけ、大金融危機リーマンショックがやってきたのが、それから3年後の2008年9月、ちょうどその9月にGMの前社長ワグナー氏がその最中、創立記念日のイベントでVOLTの発表を行いました。それから、1年もたたない間に、GMは倒産し、文字通りのジャンクボンドになってしまいました。

今また、のど元すぎれば熱さを忘れるではないですが、リーマンショック後、ガソリン価格が一時的に低迷、大型ブームの再来、その後押しで復活を果たしているのがGM/Fordの現状です。この収益を確保出来ている間に、3度目の正直、低燃費車に舵を切れるかが本当に復活できるかの鍵だと思います。ガソリン価格がじわじわと上がり、この大型車ブームも続かない見通しです。

図にアメリカエネルギー省(DOE)の部局であるエネルギー情報局(EIA)発表の、1990年から現在までの全米ガソリン小売価格の推移を示します。

第2次石油ショック後、2000年ごろまでは安定的に、水よりも遙かに安いガロン(3.79リットル)当たり1ドルレベル(1990年10月の為替レートで130円/$:リッター35円程度)をキープ、その後、中東不安、大型台風による精油所被害、さらに中国などのモータリゼーションによる需要増、在来油田の枯渇などで急上昇し、リーマン後の景気後退で一時大幅に低下しましたが、またこのところ上昇を続け、ガロン4ドル(今の円レート81円/$でリッター85円)の大台に近づいています。

アメリカの平均的な年間走行距離は日本の2倍近いですので、週1回満タン、中型車20ガロンで80$は頭の痛い出費です。

この影響もあり、東日本大震災の影響を脱した昨年後半から、アメリカでのHV販売台数が大幅に増加し始め、またFord Fusion Hybrid、日産アルティマハイブリッド、さらにはプリウスC(日本名アクア)の発売でHVマーケットも活況を呈しそうです。

「ダウンサイジング」だけで乗り切れる?

日経の記事によると、中国での「ダウンサイジング」を取り上げています。V8をV6に、V6を4気筒になどエンジン気筒数を減らし、排気量を小さくし、通常の走行領域を熱効率の高いゾーン(低燃費ゾーン)にもってくる考え方です。低下する出力やトルクを、ターボチャージャーやスーパーチャージャーなど過給器で補う方式がその一つです。
しかし、低燃費のためのダウンサイジングは定番中の定番で、ハイブリッド化による低燃費の考え方にも「ダウンサイジング」がしっかり入っています。ハイブリッドでの電池アシストも同様の考え方です。もう一つの「ダウンサイジング」がクルマ自体を小さく、軽量化し、低燃費を実現する「ダウンサイジング」です。これも低燃費の実現の為には王道の手段です。

ただし、過去に石油ショックの時代にそれをやって失敗したのがGM/FORDのアメリカBig3でした。小型化したキャデラックなどはまったく売れず、その隙をついて販売を伸ばしたのがトヨタ、日産、ホンダの日本勢でした。
当時もエネルギー安全保証として燃費規制が導入されましたが、社会要請に応えつつ、結局はお客様が良い意味でのサプライズを感じ、満足いただける商品が普及の前提、エコだけで多くのお客様に満足いただくことは出来ません。

中国でもEV/HVが普及出来ない理由も、まだ経済的にも、商品魅力の点でも、また品質的にもまだまだお客様にとって満足できるEV/HVが提供できていないことが最大の理由です。しかしながら、昨年の年間販売台数が1,850万台を越え、2020年には4,000万台を予測する記事も見かけますが、この急激に増加する自動車を走らせる燃料をこのままでは供給できなる可能性が高く、また世界経済、世界の環境に大きなダメージを与える危険性が高まっています。

大幅な石油消費の削減が待ったなし、従来技術の延長での「ダウンサイジング」だけで乗り切れないことは明かでしょう。EV/HVはあくまでもクルマの商品機能とのトレードオフをさせずに燃費効率を高める手段の一つであり、その中核に「ダウンサイジング」の考え方があり、お客様が満足する「ダウンサイジング」をEV/HVそして車両技術の進化で競い合うのがこれからの自動車だと思います。

ちなみに、中国のガソリン価格は、すこしずつ上昇してきていると言ってもまだリッター100円以下、ガソリン価格がここまで安いのはEV/HV普及を妨げる要因にもなりますが、このまま低価格を維持できる筈はありません。

しっかりとしたクルマを作っていけば「ガラパゴス化」は無い

欧州でもユーロ安の影響もあり、燃料価格がじわじわと上がっており、2月のフランスでのガソリン価格としてはリッター1.6ユーロと史上最高値に近づき、また厳しいCO2規制もあって低燃費車競争はさらに激烈さを増しています。

また、今の電池技術では、EVが今のクルマに変わり、世界全体の石油消費削減を果たすには力不足、しっかりと技術と品質、さらにマーケットを踏まえた利口な「ダウンサイジング」がいまこそ求められていますので、決して日本のハイブリッドがガラパゴス化の道を歩むことはなく、日本が次世代車の「パイロット」マーケットとして、世界をリードしていけると確信しています。

しかし、その条件は技術、品質、経済的にも、商品魅力としてもお客様に強く支持いただける商品を提供し続けることが前提です。クルマはグローバル商品、日本だけしか通用しないカタログ燃費、いまだに残る軽のカテゴリー、本当に石油消費削減に役にたっているかどうか判らない補助金制度などを当てにした日本専用車など井の中の蛙の商品ではなく、また「会社」の都合、一時的な収益の浮沈に目を奪われず、グローバルとして通用するクルマを作り続ける限り、ガラパゴス化を招くことはないと思います。