トヨタ・アクアと東北復興、さらに日本の将来エネルギー

しっかりとオープンに議論してほしい原発再稼働問題

3.11から3年が経過しました。連日取り上げていた、新聞報道やテレビの三年経過した被災地の今に見入っていました。瓦礫の山こそ減ったようですが、なにか復興のスピードが遅いように思えてなりません。さらに、福島第一原発事故が大きく復興に陰をさしているようで、福島第一原発事故の放射能汚染で未だに自宅に戻れず避難している方が10万人強いらっしゃいます、この解決なくして本当の意味での復興はありませんし、日本の次もないと感じました。

原発問題については、何度かこのブログでも取り上げてきました。お亡くなりになった福一の吉田所長を主役とした門田隆将さんの“死の淵を見た男”、当時の原発事故を巡る福一現場、東電本社、イラ管さんが東日本消滅まで頭に浮かべてのイライラぶりから国際的な動きまで取り上げた船橋洋一さんの“カウントダウン・メルトダウン”など、さまざまな著作物、様々な事故調査報告書、さらに原発導入の歴史から原子力むら形成の経緯などの資料もあさりまくって読んでみました。

また機会があり、中電浜岡、東電福島第二も実際に見学させてもらい、東電、中電、関電、北電の方々、さらに何人かの原子力工学の研究者、大学教授の話も聞かせてもらいました。科学技術、工学からは、このブログで紹介した『想定外を想定する未然防止』だと当たり前と考える全電源喪失ケース、地震国日本での津波波高の最悪予測に目、口、耳を閉ざしてしまった『原子力神話』に、大きな怒りを覚えました。変えてはいけない最悪ケース、最悪条件をギブンとして、経済原理にのった対応策を考え出すのがエンジニアの役割です。安全保障条件を経済性とのトレードオフにしてはいけないことは科学技術・工学者としての初歩の初歩と教え込まれ、かつやってきました。今議論されている再稼働議論も、決して以前の『原子力神話』の状況に戻してはなりません。オープン、透明、我慢強く、公正な議論が必要です。

ものづくりの日本の将来は

これまでのブログで自分のポジションを述べているように、現地現物での確認、さまざまな情報の調査、分析を行ったうえでも私自身は原発再稼働は避けて通れない道と考えています。もちろん、日本科学技術、工学の英知を結集した上での安全確保の担保が前提です。その理由は原発なしでの不都合な真実がどんどん明らかになってきていると感ずるからです。まず、気候変動問題です。

環境技術で世界をリードしてきたはずですが、原発停止による化石燃料発電シフトにより日本が排出するCO2は大きく増えています。太陽光発電は急増していますが、それでも役不足であることは明らかで、そのうえ日本の立地条件からも風力発電にも多くは期待できず、地熱、小水力活用を含めても日本の電力供給をリニューアブル発電でまかなうことには無理があります。一方、安全性と経済性をトレードさせてはいけませんが、東日本震災からの復興、日本の成長のためにも国際競争力を維持できる価格のエネルギー供給が必要不可欠です。3.11後、エネルギー供給のほとんどが化石燃料、自動車など製品輸出でカバーできないほど化石燃料輸入が増加し、経常収支すら赤字に転落しかかっています。その電力価格は国際競争力を損なうほど高騰しています。

久しぶりの円安で自動車産業の経営は好転していますが、ここでの稼ぎに陰りがでると一大事、稼ぎ分が目減りし定常的な経常赤字が続くと悪い円安が心配になります。科学技術立国を支える日本の生命線である研究開発活動を活発化させるためにも、経済成長とそのための安いエネルギー供給が不可欠です。さらに現代の農業、漁業も化石エネルギーに大きく依存する現状では、国民生活の安定のためにもエネルギー価格の高騰、悪い円安、さらに日本経済のシュリンクにつながる稼げない状況での最悪の円高は願い下げです。

福島第二原発でほとんど無傷の原発建屋と所内の連日の復旧作業を見学し、さらにアウトライズ地震津波への備えまで、カウントダウン・メルトダウンで3.11当時の福二原発の危機一髪の現場で陣頭指揮を執られたで増田所長に説明いただきました。最後に第二原発再稼働の可能性について質問させてもらいましたが、増田所長からは「復旧工事、安全対策が進んでも避難している方々がすべてお帰りにならない限りは、決して再稼働を口にすることはありません」とのコメントをいただきました。浅はかな質問が恥ずかしくなりましたが、すでに暗くなってからの帰路、避難地区の真っ暗な住宅地、国道脇の無人の駐車場にたむろするイノシシの群れを目にし、この増田所長の言葉の重みを痛感させられました。

原発の再稼働は被災地の復興、所在地のものづくりの発展に

東日本の復興を加速させるには、被災地の景気回復が第一、さらに復旧公共工事だけでなく、継続する産業を誘致して職を増やしていくことが必要です。アベノミクスの次の矢がでてこないことにイライラしていますが、まずは景気回復、その景気回復を大都市圏に集中させず、被災地、さらにサプライチェーンとして地方に拡大させていって欲しいと思います。被災した農業、漁業の復興支援とともに、職を増やしていくには安いエネルギー供給が前提になります。製造業の景気回復だけではなく、農業、漁業もの再建にも安いエネルギー供給が必要不可欠です。

トヨタOB、ハイブリッド屋の私としては、被災地区での製造業の期待の星として、トヨタの東日本地区での取り組みに注目しています。昨年車種別販売台数トップとなったトヨタ・アクアはトヨタ自動車東日本岩手工場、また昨年発売を開始したカローラハイブリッドは宮城大衡工場、このアクア・カローラハイブリッドに搭載する初代プリウス以来改良を続けた1NZ-FXEエンジンは宮城大和工場で生産しています。このハイブリッド車に搭載する電池もまたトヨタとパナソニックのジョイントベンチャー、プライム・アースEVエナジー株式会社の宮城工場で生産しており、昨年12月にはハイブリッド車の生産拡大により宮城工場での電池パック生産台数が累計100万台を突破したとのニュースリリースが発表されています。

さらに、アクアはプリウスCの名がつけられ、復旧なった仙台港からアメリカへと輸出され、またフランス工場で生産するヤリスハイブリッド用に電池パックなど、付加価値を高めた様々なハイブリッド部品がこれも仙台港から積み出されています。これらの構成部品もまた、現地生産比率が増えています。この生産拡大によって、職も増えているはずです。

物作りが日本を支え、すそのの広い自動車製造をコアとして、工場群を増やし、職を増やしていきます。東北地区でこの取り組みが着々と進行していることをトヨタOBとして誇らしく感じています。

この自動車製造、その部品製造には多量のエネルギーを消費します。トヨタ自動車東日本も省エネ、リニューアブルエネルギー利用にも積極的に取り組んでいるようですが、やはり安く、低CO2で、さらに安定したエネルギー供給がその発展を支えます。福島第二を除いても、東北には停止中の多くの原発があります。東日本大震災を乗り越えたこれら原発に、最悪ケース、最悪条件をクリアさせ、この大きな教訓をふまえた安全対策を施すことは可能と考えます。日本に多量の使用済み、使用中の核燃料棒が残っていることも目を反らせてはいけない不都合な真実、それを安定的に維持し、安全な後処理方法を生み出すことは、脱原発でも必要です。まさか、原発電力の一大需要地であった首都圏にその燃料棒を引き取るなどとは誰も言い出さないでしょう。

安全を確保したうえで、安定した稼働を続け、被災地、原発所在地ではこの原発稼働を前提に、原発特区として電力料金を大幅に下げるくらいのことを考えて欲しいと思います。ちなみに我が家は、3.11後の省エネを心がけて追いつかない高い電気料金を払っていますが、都市部に住む割増分のさらなる増加は覚悟しています。

筆者の出身は北海道ですが、ルーツは岩手、祖父は宮古の出身、私の小さいころに亡くなっていますが、祖母からは明治三陸津波の被災者だったと聞かされています。まだ、宮古を訪ねたことはありませんが、岩手各地の被災には胸が痛みます。岩手工場でのアクア生産は私にとっても希望の星、東北復興を加速ためにも安い、低CO2電力を使ったアクアの次なる進化を楽しみにしています。

将来自動車エネルギー/次世代自動車 Weekly Mail Newsから

 昨年11月から、弊社コーディアでは会員向け有料サービスとして、自動車関連の燃料・エネルギートピックスとハイブリッド車(HV)、プラグイン・ハイブリッド車(PHEV)、バッテリー電気自動車(BEV)、水素燃料電池自動車(FCEV)等の次世代自動車関連のトピックスを欧米メディア、インターネット情報を収集・選別し、エネルギー、次世代自動車それぞれ隔週毎に配信しています。将来エネルギーと自動車電動化技術が次世代自動車のゲームチェンジャー役であることには異論の余地は殆どないという状況ですが、それでも正確にこの先を見極めることは極めて難しいことは昨今のリチウムイオン電池ベンチャー、EVベンチャーの栄枯盛衰をみていても明かです。

 私も現役時代から、自動車に関わるエネルギー、環境問題とそれに対応する将来自動車技術の情報収集には感度を高めて、パイプも拡げて取り組んできました。もちろん、インターネット時代に入ると、Web経由のさまざまな情報やメールでのやりとりが溢れるほど増え、かえって情報の多さに埋もれてしまい、折角のパイプもその中で取捨選別ができずチョーキングをおこしてしまうことが心配なくらいです。しかし、その多くの情報をしっかり分析し、流れを見、表から、裏から、また関連情報の繋がりから整理すると、さらに過去の経験から振り返ると大きく読みがはずれることはそれほど多くありません。

 その情報の山からいくつかピックアップし、毎週、毎週、会員向けとしてメール配信を続けて居ます。もともとは、自分用の情報収集としてスタートさせたものですが、内部用だけではもったいない、トピックスリストの配信サービスからスタートさせ、その時々の考察とそのトピックスの流れからシニアな自動車エンジニアとしての分析を一般メディア記事とひと味ちがう切り口でお伝えできればと考えています。

一年前とは大きく様変わりした次世代自動車を取り巻く環境

 BEVブームが下火になり、これに入れ込んで政府資金をあてに先行設備投資をおこなった電池ベンチャーは、結局は倒産、もしくは中国あるいは欧州の自動車部品大手に吸収されるかし、今では見る影もありません。BEVでなければ次世代車の夜も明けず、HVは日本のガラカー、トヨタはHVに拘るあまりBEVに乗り遅れる、すり合わせ型のHVよりもモジュール型でシンプルなBEVがゲームチェンジャーと囃した声も、ほんの一年前までは巷間に溢れていたものですが、聞かれることは稀となりました。
 
 一時はグリーン・ニューディールの旗頭として扱われ、政府資金がR&Dと生産設備投資に投入されたMIT発のリチウムイオン電池ベンチャーA123システム社が昨年倒産し、その再建に中国企業が乗り出し連邦議会で国益を損なうと騒がれるなど、間違いなく大きな揺れ戻しがきています。電池に限らず、充電器、BEV/PHV生産、太陽光発電などグリーン・ニューディール関連ベンチャーの経営破たんが続きました。もちろん、次々の新ビジネスを生み出すアメリカの活力は参考にすべきですが、ブームが去ると転身が早いのもアメリカの特徴、大学、国立研究所テーマの盛衰をフォローしていくと、そのドラスティックな切り替わりに驚かされます。

 一方、イナーシャーが大きいのが日本の政と官で、いまのレベルの急速充電インフラにアベノミクスによる景気浮揚を旗印に国家予算が投入されるなど、情報音痴、情報分析不足のままで、ただでさえ財政赤字の中で国民の血税をブームが去った後で投入することにならなければ良いがと心配しています。

 もちろん、BEV全体の未来が消え去った訳ではありませんが、急速充電インフラを拡げていけばBEVの普及が加速するとの見方は、普及が推し進められるCHAdeMOの由来である、15分程度のティータイムで家に帰り付ける50km程度の緊急充電用と説明した東電の方々の当初の狙いから大きくずれています。そもそもの想定では、ここまで大量の資金を投入して急速充電網を準備せずとも、統計上は殆どのユーザーのトリップが短距離で、その範囲の利便性によってBEVが飛び立てるという計画だったはずです。これまでのガソリン車は5分程度の給油時間で500km、ハイブリッドなら1000kmも走れるクルマの代替として15分で50kmでは全体として同じ輸送距離を走らせるとすると10倍~20倍の充電時間、充電スポットが必要との計算となってしまいます。

 電動自転車、電動スクーター、価格次第ですがオールウエザーのコミュータなど電動自動車の活躍の場はあると思います。この別ジャンルのモビリティとして、トヨタがフランスのグルノーブル市でフランス電力公社と組み、政府、地方自治体の支援を受け公共交通機関のターミナルからのラスト・ワン・マイル(Last One Mile)モビリティとしてコミュータータイプのEVカーシェア実証プロジェクト実施を発表しました。このようなEVカーシェアがビジネスとして成り立つのか日本でも過去に何度も失敗したEVカーシェア/レンタカーの二の舞になるのか、パリのEVカーシェア オートリブ(Autolib)など類似EVカーシェアプロジェクトと合わせて注目しています。

 プラグインハイブリッドも現時点では販売状況は思わしくありませんが、この軽BEVとプラグインハイブリッド用ならば、安価なAC普通充電で充分で、集合住宅、勤め先駐車場、ホテル、ショッピングモールなど、出先で簡単に充電できるようになればその充電量にみあった石油消費削減に繋がる筈です。

アメリカ・シェールガス革命の衝撃、激動するエネルギーシナリオ

 化石燃料資源のトピックスでは、シェールガス・オイルのトピックスがひきも切らず、これもこの3年で状況が大きく変化し、一時期盛んだった石油資源の生産ピークは既にすぎ、一気に奈落の底への供給量が減少していくというピークオイル論はほとんど聞こえなくなっています。しかし、エネルギーセキュリティ確保、これまでの国際的な不況対策で地球温暖化対策どころではありませんでしたが、CO2削減への取り組みが不必要になったわけでは決してあしません。ただし、世界レベルでも、3.11後の日本でも、電力の低CO2化が足踏み状態でBEVがCO2削減の決定打にはならないこともBEVブームに水をかける要因にもなったように思います。
 
 さらに、最近の中国PM2.5など広域大気環境汚染問題も、自動車だけの問題ではありませんが、まだまだ次世代自動車としてグローバルに取り組むべき問題としてクローズアップしてきています。中国でのBEV普及は、CO2削減ではハイブリッド比較では逆効果になるばかりか、PM2.5など日本への影響も大きな広域大気環境汚染の悪化まで考える必要があることを示唆しています。

デジャビュに溢れるトピック、過去にも未来への答えがある

 エネルギー資源問題、大気環境問題、地球温暖化問題、自動車だけに留まりませんが、溺れそうなほどの情報の海の中からトピックスの大きな流れを俯瞰しても、なにか過去のデジャビュ(既視感)と感じてなりません。~1950年のロンドンスモッグ、ロス光化学スモッグ、四日市公害問題、東京柳町交差点の鉛公害問題などなど、次世代自動車の流れでも1990年代初めの加州ZEV、それに火をつけながら消えていったGM EV1 BEV、その替わりと騒がれたメタノール、ガソリン改質、そのあげく水素に収斂した燃料電池自動車ブーム、そして今回の第3回BEVブーム、そしてまた水素燃料電池自動車の浮上との繰り返しと感じます。以前から何が変わったのか、どこに進化があったのか、情報の掘り下げがによる、トヨタ流ですが、なぜ、なぜ、なぜの繰り返しで次世代自動車の本命、ゲームチェンジャーを見極めてやろうと思っています。

 このメールニュースについてですが、右肩にメールニュースのサイトへのリンクを張ってあります。そこには、これまでのニュースのヘッドライン部分のみですが掲載していますので、ご興味のあるかたは覗いていただければと思います。

IEA WEO2012を発表

今月12日、国際エネルギー機関(IEA)が、毎年恒例のエネルギー需給の現状および将来展望とエネルギー政策への提言をまとめた『World Energy Outlook 2012年版(WEO 2012)』を発表しました。
http://www.worldenergyoutlook.org/publications/weo-2012/
レポート全体は有料ですが、このHPには日本語版のExecutive Summaryがありますのでご興味のあるかたはそれをご参照ください。

IEAは、第1次石油危機を景気に当時のアメリカ・キッシンジャー国務長官の提唱のもと、産油国がつくったOPEC(石油輸出国機構)に対抗する形で28カ国の先進石油需要国が、安定したエネルギー需給構造確立を目的に設立した国際機関です。先進国全体での石油備蓄推進、また将来エネルギー需給予測、政策提言などを行っています。

非在来型化石燃料の開発で楽観予想に

このIEA WEOは将来エネルギー予測として、先進各国のエネルギー政策策定の指針としても使用されているものです。エネルギー市場の変化や、地球環境問題などエネルギー需給を取り巻く環境変化を反映させ、エネルギー安全保障、経済発展と環境保全を掲げ、気候変動に関するエネルギー政策と市場改革が大きなテーマとなっています。IEA WEOは毎年発行されていますので、この変化を追いかけると、北米でのシェールガス・オイル開発が採掘技術の進展により急激に進み、世界のエネルギー需給バランスに大きく影響を及ぼしていることがよく理解できます。

今回のWEO2012では一時的と但し書き付きの予測ですが、2020年の初めには米国が石油生産量でサウジやロシアを抜きトップに踊りでると述べています。これは2011年までのWEOで述べていた、サウジなどOPECの生産シェアがこれからも拡大するとの予測からの大きな変化となります。2009年版のWEOで天然ガス時代の到来と述べていましたが、この天然ガスもシェールガスなど非在来型の台頭し、これに伴って非在来型石油の生産実用化が予測以上に進展したようです。

このように、天然ガス黄金期、北米での石油生産増産、非在来型石油増産により、2035年までは、省エネ、エネルギー効率向上への取り組みで中国、インドや発展途上国の需要増に対応しても需給バランスがとれるとの楽観的見方に変化しました。この将来需給に対しては、OPEC(石油輸出機構)側も中期的には楽観的シナリオに変化し、私も先月ウイーンのOPEC本部で直接話を聞く機会がありましたが、OPEC側も非在来型天然ガス、石油の資源探査、開発を進め、供給量を増やす可能性があることを示唆していたことが印象的でした。

トーンダウンする脱CO2

気候変動については、人為的影響を否定する意見もあり、IPCCでのデータ捏造のクライメートゲート事件や、このところの世界的な経済不況を受けてトーンダウンしている雰囲気もあります。

今回のWEO2012では、従来の平均大気温上昇2℃以内のブルーマップシナリオにかわり3.6℃以内を目標とする新政策シナリオを提案し、「エネルギー効率の改善により、気温上昇を2℃以内に抑える期限を少し先延ばしできる」と、口調を大幅にトーンダウンさせているのも、先進国諸国の苦しい経済情勢とはかばかしくない気候変動緩和への取り組みを考慮にいれた苦しい表現に思えます。

福島第一原発事故の影響として、日本、ドイツの脱源発、縮原発の動きも考慮に入れたようで、原発拡大が以前のシナリオに比べスローダウンするとする一方、お隣の中国、韓国、さらにインド、ロシアでは拡大すると述べています。ただし、電力需要の伸びがエネルギー全体の需要増比率の2倍と急スピードで拡大しており、原発開発を抑止しながら需要増に答えるのは一層困難になったと言っています。

気候変動対応としての2℃以内抑制はトーンダウンしましたが、エネルギー安全保障と気候変動抑制はまだまだ国際社会として取り組むべき喫緊の重要課題です。各電力会社から2011年の電力CO2排出量の報告がでてきましたが、3.11福島第一原発事故とその後の原発停止によって大幅にCO2が増加しています。この状況では、国際公約の京都議定書2012年目標の達成すら困難な状況です。

今回の総選挙では脱源発のオンパレード、しかし被災地の復興も、不況からの脱出も、さらに経済成長も、いかに節約に努めようとも、また省エネ、新エネ技術が進化しようが安心、安全、安定、安価なエネルギー供給の支えが必要不可欠です。さらに、地球温暖化緩和の取り組みも国際的にも重要な課題であることは替わりません。民主党政権として、鳩山時代の2020年25%CO2削減の目標は撤回しないことを決めたようですが、脱源発の中でどうあがいても実現はできないことは明かです。 

エネルギー政策が本物か見極めよう

IEA WEOでも日本の電力料金が、中国やアメリカに比べても、脱とはいかないまでも縮原発、天然ガスシフトの中で大幅に上昇との予測をしています。これでは、日本での製造業は成り立たず、その輸入代を稼ぐだけの貿易黒字も稼ぎ出せなったあげくのハイパー円安、インフレすら懸念されます。太陽光発電や風力発電への補助金政策であるフィード・イン・タリフも先行して取り入れたドイツ、スペインでは補助金総額の上昇で制度破綻と電力代金高騰により削減の方向で見直しされています。日本の制度もこの道をたどる可能性が高く、さらに電力料金を引き上げる要因となってしまうでしょう。

今回の総選挙では、日本のこれからを誤らないように、選挙目当ての具体策がない付け刃の脱、卒、縮原発か、経済政策、福祉政策か、政策議論をしっかり聞き、その中身を見極めて投票したいと思っています。

地球温暖化対策基本法案が廃案に

守られなかった国際公約

総選挙のニュースに埋もれた形となってあまり注目されていませんが、野田首相の仕掛けた衆院解散により数多くの法案が廃案になりました。その中の一つが、「地球温暖化対策基本法案」です。これは、2009年に当時の鳩山首相が国連総会で宣言した「2020年までの90年比25%の温暖化ガス削減」の国際公約実現を目指して、国内排出量取引の実施などの13年以降の国内対策が盛り込まれる予定の法案です。

この廃案で来年度からの温暖化対策に関する国内対策が空白となり、今月26日から中東のカタール・ドーハで開催される「国連気候変動枠組み条約第18回締結国会議 (COP18)」でも、日本は何の対案なしに臨むことになってしまいました。

約束が守れなかったもう一つ鳩山さんの「普天間基地の最低で県外」と同様で、全くの裏付けも無く方策検討すら不十分状態なで「温暖化ガス25%削減」という、国内どころか国際公約にもなった前代未聞の「大嘘つき」のツケが「沖縄県民」「日本」に回されてきていることを、後任者である「噓」の嫌いな野田さんも自覚すべきです。

この「温暖化ガス25%削減」鳩山公約に対しては、ウォール・ストリート・ジャーナル紙(アジア版)のコラムニスト、ジョセフ・スタンバーグ氏が当時、コラムで「日本の“カーボン”ハラキリ」として、日本経済にとって残酷なジョークと言い切っていました。

その時において経済成長を抑制しない唯一に近い削減策が原発拡大でしたが、これすら3.11福島で吹っ飛び、そのうえ3.11前でも「自殺行為」と言われた国際公約だけは残っていることを忘れてはいけません。

エネルギー政策は全てのベース

地球温暖化対策としてだけでなく、石油資源問題、エネルギー安全保障問題からも、石油に燃料に100%依存していた自動車など輸送機関を筆頭に、暖房、照明、家電、情報機器など民生用、製造業などに使っているありとあらゆる一次エネルギーの化石燃料比率を大きく減少さえていくことが地球人類全体に課せられた課題です。

現代では農業も漁業もこの石油資源に依存しており、人間生活の全てがこの一次エネルギーに支えられて成り立っており、この全ての一次エネルギー源の大変革が迫られている訳です。自動車用代替エネルギーの有力候補に一つが電力、この電力も脱化石燃料の低CO2電力が求められています。

震災復興を含めて日本復活の全ての活動を支えるのも安全を前提とした安定した安価なエネルギー供給です。しかし、3.11から1年8ヶ月も経過したにも関わらず、この将来エネルギー政策議論すら進んでいないまま総選挙に突入していましました。

総選挙の争点のトップに脱原発議論があげられていますが、日本の復興や経済発展を果たすため将来エネルギー議論をパスしての脱原発論には首をかしげるばかりです。2010年のエネルギー白書では、日本の一次エネルギー消費のうち太陽光、風力、地熱、バイオのいわゆるリニューアブルエネルギーはわずか1%以下、水力を入れても5%以下に過ぎません。13.2%が原子力、残り81.9%が石油、石炭、天然ガスといった化石燃料で、この全てを輸入に頼っています。3.11後、この13.2%の原子力が一時ゼロとなり、国民をあげて節電に務めたとはいえ、代替のほぼ全てを化石燃料発電に切り替え、CO2を大きく増やして対応しています。

国内で「温暖化ガス25%削減」との国際公約は、当時以上に実現困難で、「嘘つき」と言われようが、「ハラキリ」となる前に取り下げるべきです。幸か不幸か、COP15での鳩山公約は全く影響力を及ぼさず、以降のCOP16.17でも強制力を持つ国際条約はまとまりませんでしたので、今がチャンスかもしれません。

脱原発を争点にする前に、日本の将来エネルギーをどう持って行くのか、また国際的には日本の代表として民主党の鳩山首相が約束した、今では全く実現不可能である2020年国内ベースで「温暖化ガス25%削減」の修正検討とセットで、脱原発議論をやって欲しいと思います。

「嘘」のない将来エネルギー戦略を

私自身は、3.11福島の原因究明と再発防止策を技術、運営/経営、安全保障、その仕組み作りを徹底すれば安全担保は可能と思います。その上でアメリカ、フランス、英国やIAEA(国際原子力機関)と連携し、地元理解を進めた上で再稼働が必要との意見です。

もちろん、今も15万人以上の方が、ご自宅から遠く離れ避難生活を送られており、貴重な教訓と言うには、今も継続するあまりにも重い現実に目をそらすことはできません。しかし、脱原発を決めたとしても、使用済み燃料の処理は必要で、仮に廃炉にするにしてもその間の使用済み燃料の保管、廃炉処理と長い期間と膨大な費用が必要です。世界が一致して脱原発に向かうなら別ですが、お隣の国では日本に面した沿海部で続々と原発建設が進められようとしています。

3.11福島の起こしてはならなかった大失敗を貴重な教訓に、日本科学技術陣の叡智を集めると、二度とこのような災害を起こさない安全な原発とその運営指針、安全保障体制、組織を作り上げることは可能ではないでしょうか?この重い体験からの再発防止技術、指針、体制を世界に発信していくのが、日本の原子力に携わった科学・技術陣を含む全ての関係者が果たすべき責任だと思います。

「温暖化ガス25%削減」の公約違反の影響は心配ですが、ハイブリッド車、電気自動車など低燃費、低CO2次世代自動車も、また鉄鋼、セメント、電力、さらに自動車製造、部品製造の省エネ化でも世界をリードしてきました。国内「温暖化ガス25%削減」を引っ込めたとしても、この省エネ・新エネ技術を世界に広めていくことで、公約以上の効果を上げることもできるはずです。研究開発、実用化、商品化、技術移転にも安心、安全、安定、安心なエネルギー供給が不可欠です。このエネルギー政策のゆくえが、日本が再浮上できるかどうかの鍵を握っていると言っても過言ではないでしょう。

現実に目をそらさず、各政党の次ぎの「噓」を見抜き、日本沈没とならない政権選択が行われることを信じて、投票したいと思います。新政権発足後速やかに、「噓」でも「夢」でもない、日本のエネルギー戦略とこれも日本が世界の省エネ・新エネ技術創出による「温暖化ガス削減」に実際に寄与していける新しい「地球温暖化対策基本方策」をセット作り上げていくことを臨みます。その土俵の上で、脱原発、縮原発、これからの取り組みを議論していって欲しいものです。

日本の電力事情とプラグイン自動車

日本のすべての原発が止まりました

今週はじめに北海道電力の泊3号機が定期点検のため発電を停止し、これで日本国内の原発は全て発電を停止することとなりました。資源エネルギー庁の出す「エネルギー白書2011」によると、電力、輸送用燃料、産業用など、日本が使用する全てのエネルギー消費の内の11.5%を占め、電力に限れば29%を占めていた原子力エネルギーが0となったということです。原発比率が大きかった関電の原発再稼働騒動、東電の電力料金値上げ騒動、関電、北電、九電エリアで心配されている今年の夏の電力供給不足問題、長期的にも脱原発、縮原発、太陽光、風力、バイオ、地熱などリニューアブル電力(Renewable Electricity: 以下REと表記)への転換を含む日本のエネルギーシナリオの総見直しが求められています。

一次エネルギーシェアで見ると、1973年、1979年の2度に渡るオイルショックを経て、石油による発電を、石炭や天然ガスを経て、原子力へシフトさせ、さらに地球温暖化問題から、その主要因ガスである化石エネルギーの燃焼によって発生するCO2ガスを低減するために、化石エネルギーから非化石エネルギーへの転換を進めようとしている矢先の原発事故でした。

また電力だけの問題ではなく、膨大なエネルギーを消費して、現代の社会生活、社会活動は成立し発展させてきたこの国の根幹が揺さぶられる事態です。ガソリン、軽油を使ってきた自動車の燃料も、効率を高め、燃費を改善させながら、この石油依存を減らし、この非化石エネルギーを使ったものにシフトさせていくことが迫られています。

Source: 資源エネルギー庁「エネルギー白書2011」
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2011energyhtml/index.html

家庭、商店、金融など民生業務、運輸、産業用と、すべてこの一次エネルギー源を使っています。非化石エネルギーへのシフトは、地球温暖化問題の側面だけではなく、化石資源が有限であることからくる要請です。ピークオイル到来と言われたように、まず石油がその生産のピークを迎え、遠からず世界の需要に応えられなくなると言われています。自動車も、飛行機も、船も、まずは高効率・低燃費、次ぎに石油から、それ以外の燃料にシフトさせることが求められています。そのエネルギー転換の有力候補が、電気であり、水素でした。その水素も、非化石エネルギーからの生成としては、原子力、水力、もしくはRE電力からの生成することが必要です。

日本の一次エネルギー需給

上に示すように、2009 年度の全一次エネルギー消費のうち、非化石エネルギーは20%足らずの17.8%に過ぎません。今期待が高まっている水力とRE含めて6.3%、非化石エネルギーの三分の二が1 1.5%の原子力でした。

原発停止で次世代自動車のシナリオも崩れた

自動車の非化石エネルギー転換の現実的な第1ステップとして取り組んだのが、燃費効率を画期的に高めるハイブリッドプリウスの開発でした。その当時からも、ハイブリッドはショートリリーフ、2010年までには水素燃料電池自動車が普及期に入るとも言われてきました。その後、リチウムイオン電池に注目が集まり、ハイブリッドをスキップして電気自動車の普及を基本政策として取り上げる国まで現れました。

このブログでも取り上げたように、プリウスの開発そのものが、当時のニッケル水素電池やリチウムイオン電池技術では電気自動車の実用化は困難との判断にたち、従来車の燃費2倍を目標とした画期的低燃費車の開発が狙いでした。発売当時は、外部充電がいらないことを謳い文句としましたが、電池がもう少し進化し、さらにハイブリッドの普及拡大が実現すれば、ポスト石油への次ぎのステップとしてプラグインハイブリッドへの応用がわれわれのシナリオにはありました。エネルギー密度の大きいバイオ燃料、合成燃料と、非化石エネルギーから発電される電力をうまくミックスさせ使っていこうとのシナリオでした。非化石エネルギーによる電力で最有力候補と考えていたのはもちろん原子力発電です。

そのシナリオに乗って開発を進めた私も、間違いなく日本原子力神話の信奉者でした。将来自動車の講演でも、中国の原発地図を示し、日本の原発事故を心配するぐらいなら中国沿岸部で次々と建築が進んでいる中国の原発を心配すべき、その安全確保には日本原子力技術の総力を挙げてサポートすべきと主張していました。とんだピエロです。3.11までは輸入化石エネルギー依存度の低減、低炭素社会を目指す日本の中期シナリオの柱は、原発の増強であっったことはよく知られています。原発増強により供給余力が増し、さらにCO2が低減する夜間電力をプラグイン自動車充電用に格安で使わせもらうことすらシナリオに描いていました。しかし、3.11福島原発事故が、原子力神話どころか、日本の将来エネルギーシナリオ、低カーボンシナリオ、輸入エネルギー依存からの脱却、エネルギー/環境立国シナリオのなにからなにまで吹っ飛ばしてしまいました。

安全が最優先、現実的に進めよう

福島原発事故が想定外とは思いません、明らかに日本の政、官、学、財、この日本の原子力政策に関わった人たちが砂上に築き上げた楼閣が崩れた人災だと思います。3.11から一年が経過しましたが、今騒がれている、原発再稼働論、廃炉論、供給力不足、節電要請、大幅な値上げなどなどは全て一年前でも容易に予測ができ、その予測の議論もしていた想定内も想定内の話ばかり、一年以上たった今になって当時からほとんど進展もない不毛な議論にうんざりし、憂鬱さが増す一方です。図に示した、一次エネルギーの現状から、私自身は今でも、原子力を将来エネルギーメニューから外しては、シナリオが描けないと思っています。しかし民主党の仙石さんが発言した「原発全停止は集団自殺だ!」論を代表とする、財界筋、電力筋、政界筋の供給力不足と大幅値上げを人質とする再稼働論、には与することはできません。福島原発事故の謙虚な振り返りを踏まえ、徹底的な再発防止検討から作り上げる新基準、新体制、新組織による原発の安全点検、安全チェックなどが何よりも先決。やることをしっかりやらずして脅迫めいた再稼働論と、それにのっかった、ど素人集団である政治家にその決断を任せられないと思うのは私一人ではないと思います。

私の描いていたプラグイン自動車普及のシナリオも大きく狂いました。電力の供給能力不足が叫ばれている時に、その電力の新規需要であるプラグイン自動車の日中充電には躊躇を覚えます。また、原発発電が0になった状態では、夜間電力の発電も化石エネルギー発電にシフトし、その時の発電CO2は大幅に増加していることは明かです。さらに、原発発電の余裕電力を前提とした格安な夜間電力がこの先どうなるかもプラグイン自動車の将来に大きな影響を及ぼします。わが家は、プラグインハイブリッド普及を睨み、原発増設を想定した東電のオール電化普及路線にのって、温水床暖房、給湯、IHIのオール電化に切り替え、クルマもプラグインプリウスに切り替えましたので、CO2削減シナリオが狂うとともに、電力料金の大幅値上げで将来エネルギー費用の増大も心配です。

さらに、ポスト石油として、バイオ燃料、合成燃料の生成にも、電力は不可欠であり、電池の製造にも多量の電力を使用します。節電、効率化を進めたとしても、また現在たった6.3%しかない原子力以外の非化石エネルギーの増強だけでは、家庭、業務、運輸、産業と全ての一次エネルギー需要をカバーすることは、超長期を考えても非現実的です。しかし、ポスト石油、低カーボン社会への軟着陸として、高効率で液体燃料を使うハイブリッドと外部電力を使うプラグインハイブリッド自動車は、電力の安定供給、国際基準の電力価格、低CO2が前提ですが、有力なメニューであることには替わりはないと思います。

先週ブログで紹介しましたが、今回のプリウスプラグインでは、タイマー充電機能が標準設定になっていますので、これを活用し、供給不足が懸念される夏の電力ピーク時には充電せず、夜間だけの充電で済ませるつもりです。今提案されている東電の電力料金値上げ提案と、7月からのRE電力買い取り制による電力料金上乗せ分を入れた夏の昼間料金では、プリウスの場合、ガソリンを使ってハイブリッド走行をするよりも割高となりかねませんので、経済的にも夜間充電に切り替える必要がありそうです。

人が動き、物が動き、物を作り、またそれにつれ、人、物が動き、経済に明るさが戻り、復興が進みます。それを支えるのが一次エネルギーです。その一次エネルギーの安定供給がピンチ、先の明るさがでてきた日本の経済と復興に水を差してしまう懸念が高まっていますが、国民の安全と経済のトレードオフは決してやってはいけないことです。クルマの開発エンジニア人生でも、経済性と安全品質のトレードオフは決してやるなと、上司、先輩から叩き込まれてきました。日本の原発開発では、それをやってしまったことも、福島原発事故の遠因であるように感じます。

今年が猛暑の夏にならないことを祈るばかりですが、今年は節電の工夫での何とか乗り切り、当面はCO2排出には目をつむって化石エネルギー発電にシフトし、新しい安全基準作り、安全チェック体制、組織づくりを急ぎ、その国際基準のもとで、個別に再稼働判断を進めていくことが必要ではないでしょうか?

電力の発電CO2とプラグイン自動車

先月末に、フランスでトヨタと組んで、プラグインプリウスの大規模実証試験を行っているパートナー企業フランス電力公社(EDF)役員との意見交換のためパリに出張してきました。

それまで、電気自動車(BEV)普及を熱心にやっていたEDFが、プリウスハイブリッドに注目し、そのプラグインハイブリッド化の可能性とその共同事業化を提案してきたのは、今から6年前、2005年でした。EDFは1990代の初めから電気自動車の普及に力を注ぎ、電動輸送機関事業部を作りBEVの他、バス、トラム、水上バスなど電動輸送機関の実用化に取り組んでいました。BEVでは、ルノーとPSAグループからクルマの供給を受け、パリやフランス各地のEV共同運営組合を支援し、充電ステーション設置とセットでEVカーシェアプロジェクトを実施していました。しかし、BEVの将来事業展望は拓けず、パートナーであった自動車会社も次ぎのBEV開発をストップし、EDF電動輸送機事業部では会社トップから事業転換を迫られ、そこでハイブリッドプリウスに注目、そのプラグイン化の打診をトヨタに持ちかけてきたのがきっかけです。

1990年代の初めにトヨタを含め、いくつかの自動車会社がハイブリッド自動車(HEV)の開発をスタートさせましたが、そのきっかけはBEVの販売を義務づけるカリフォルニア州ZEV規制の制定でした。とはいえ当時の最新電池技術を駆使しても、今のクルマの代替としてお客様に受け入れていただけるBEVを開発する見通しは全くありませんでした。その代替として、各社が期待したのがHEVであり、多くが想定したのはBEVの延長線上である外部電力充電型、いわゆるレンジエクステンダー型プラグインハイブリッドでした。しかし、ZEVはCO2削減というよりも、ロサンゼルススモッグに代表される大都市の大気環境クリーン化規制のシンボルとしての規制であり、結局レンジエクステンダー型とはいえ、内燃エンジンを搭載するからZEVとしては認められないとの環境派の主張が通り、HEV実用化の機運が一気にしぼんでしまったとのいきさつがあります。

一方でわれわれは、ZEV対応というよりも、将来の石油資源問題、地球温暖化問題から21世紀の自動車には画期的な低燃費が求められるとして、HEVの開発を続けハイブリッドプリウスに結びつけたとの経緯がありました。ZEVは意識しませんでしたし、普及型次世代車ということで当初から外部充電型のプラグインハイブリッドは候補には挙がっていませんでした。しかし、BEV用としての実用化は困難としても電池がもう少し軽く、コンパクトにかつ安く出来る見通しがつけば、プラグインハイブリッドの可能性もありとは考えていました。その将来電池の候補がリチウムイオン電池であったことは当然です。しかし、プラグイン自動車の普及には電池だけではなく、充電ステーション整備も必要、その費用負担を含めて、多くのユーザが経済的なメリットを出すにはまだまだ技術的にも経営的にも高いハードルを乗り越えることが必要です。また、それに使う電力も安価で、かつ低CO2であることが求められます。 

フランスで行うことの意味

フランスでは原子力発電と水力発電の両方で90%以上の発電シェアを持ち、先進国中では世界ダントツの低CO2電力供給国で、3.11前で原発が通常に稼働していた日本の発電CO2の20%以下という、2050年ぐらいに我々が目指さなければならない電力CO2排出量目標を既に達成していました。また、電力料金もオール電化契約の夜間電力料金を除くと、一般家庭用も日本よりも電力料金が安く、一方ガソリン価格は日本よりも高く、CO2低減効果、ユーザの経済メリットの点、さらにクルマの使い方の点でもクルマ文化発祥の地ヨーロッパでのPHV効果の把握とその情報発信に期待をし、EDFとのPHVアライアンスを進めることになりました。

この低CO2電力をクルマの走行エネルギーの一部に使い、長距離ドライブなど電力走行ではまかなえない部分を高効率なハイブリッド走行とすれば、いまからポスト石油や地球温暖化緩和のためのCO2排出削減シナリオの実証スタディーを行うことができます。自動車発祥の地、成熟した自動車社会の欧州で、2020年、2030年、そして2050年の自動車からのCO2排出削減目標を睨みながら、実際のユーザの走行環境での評価を受けながら次世代ハイブリッド車の開発を進めて行くには絶好のチャンスと感じました。この話をもちかけたEDFの重役が実証プロジェクトとして提案してくれたのが、彼の友人が市長を務めているストラスブール市でした。EU議会があり、EU統合のシンボルの街ストラスブール、洒落たトラムと大聖堂でも有名な観光都市で、環境保全政策にも力をいれています。さらに、街の東を流れているライン側を渡るとドイツ、30分足らずで速度無制限のアウトバーンを走ることもできます。

日本とタイアップし、日本のハイブリッド技術を生かし、プラグインハイブリッドの普及拡大と、厳しい欧州ユーザの声を次ぎのハイブリッド開発に反映させて欲しいとの強い思いがありこのプロジェクトのサポートを今も続けています。しかし、3.11福島原発事故はここに大きな影を落とすことになってしまいました。ガソリンの代替として、外部電力によって電池を充電してその電気エネルギーを使うプラグイン自動車の普及を図るには、そのエネルギー分の発電能力を増強してもらうことが必要です。低CO2 化を進めるには、電力そのものも低CO2にしていくことが求められます。

変更を余儀なくされた日本の発電シナリオ

3.11までのシナリオでは日本としてのCO2低減の重点策として原発拡大が掲げられていました。CO2排出の多い、石炭火力や石油火力から原発への転換を図り、オール電化を推進しても有り余る夜間電力の新規需要としてプラグイン自動車用電池の充電に使おうとの構想でした。このシナリオが大きく狂ってしまったことは以前のブログでも述べたところです。オール電化の推進も、原発により余裕がでる夜間電力の新規需要開拓の意味合いが強く、この夜間低CO2電力とヒートポンプ給湯を組み合せ一般家庭の電力拡販とCO2削減を狙う、政府/電力会社合作の一石二鳥シナリオだったと思います。プラグイン自動車もこのシナリオに沿った路線でした。余裕電力の活用として安く設定される筈の夜間電力料金利用も経済メリット拡大として注目していました。

図に発電方式別のCO2排出量を示します。原発の代替として、太陽光、風力といったリニューアブル発電の拡大が叫ばれていますが、現状でのシェアは微々たるもの、思い切ったインセンティブを付けたとしても即座に原発の代替などは不可能であり、原発発電量の減少を補うためには、この図に示す火力発電の増設でしのぐ他はありません。期待が集まっているLNG火力であっても石炭や石油火力に比べるとましですが、大幅な排出削減が求められている日本のCO2排出量を短期的には増加させてしまう懸念さえあります。

発電CO2排出
発電方式別の二酸化炭素排出量
(出典:資源エネルギー庁 やさしいエネルギー解説集)

今週7日、東電から2010年度の発電電力CO2実勢が発表されました。
http://www.tepco.co.jp/cc/press/11110702-j.html
http://www.tepco.co.jp/cc/press/betu11_j/images/111107b.pdf
2010年度ですから、3.11の影響は3末までのわずかの期間しか原発停止の影響は含まれていませんが、発電電力あたりのCO2は前年の0.324kg- CO2/kWhから0.374kg-CO2 /kWhと15%以上も増加しています。よくよく資料を見ると、実際の発電Mixベースでは2009年度もCO2低減基準年の1990年度 380kg- CO2/kWhから微増の0.384、2010年度は少し減って0.375、その差分は他から購入した炭素クレジット分で、2009年度では0.06kg分のクレジットを購入して穴埋めにつかったが、2010年度は0.001kg分しか購入しなかったことによる差です。実態としては1990年度から発電量原単位ではCO2が減っていないとの結果でした。2011年度以降はさらに発電CO2が増加してしまうことは明かでしょう。
その電力を使う訳ですから、BEV/PHVのCO2排出量も増え、また電力料金も上がってきていますから経済メリットも感度は少ないとは云え、減少してきています。福島原発事故を受け、欧州CO2マーケットの排出権クレジットが上昇を始めています。排出権クレジットの購入費用は電力料金に跳ね返り結局は消費者負担、いつまでも続けるわけにはいきません。2010年度でもクレジット購入額を減らしましたが、本年以降はさらに増加分をクレジットでカバーすることは経営的にも許されないでしょう。

エネルギーについて大きな眼で本質的な議論を

プラグイン自動車の電池を電力貯蔵源として活用するスマートグリッド構想によって、リニューアブル発電拡大切り札にしようとの声も耳にしますが、充電電力はクルマを走らせるためのもの、それを転用するシナリオをどう成立させるかが理解できません。電力貯蔵源として使うにしても、その充電電力はこれまでになかった電力の新規需要です。原発の夜間余裕電力が期待出来ない場合、この新規需要をどんなシナリオでまかなうかはこれからの議論です。自動車だけでの議論ではありません。人間の生活、農業、漁業からサービス業、製造業まで、それを支える全ての産業が多くのエネルギーを使うことにより成り立っています。脱化石燃料、低CO2を目指さすとしても、省エネと太陽光発電や風力発電など新エネだけではまかなえないことは明かです。日本の将来のためこれからのエネルギー戦略についてもっと真剣に向き合い、議論を進めていくことが必要と思います。もちろん、原発運転を継続するにしても、もう想定外は許されないことは言うまでもありません。

エネルギーと環境、フランス、ヨーロッパでの取り組み、PHVの実証状況を見守りながら、日本のエネルギー、環境議論にも加わっていきたいと思います。

原発事故とプラグイン自動車の行方

原子力発電のこれまで

東日本大震災発生から3週間が過ぎようとしています。新聞やTVで報道される、この大震災の死者と行方不明の数字もやっとその増加が少なくなってきました。被災地での復興作業のニュースにも日本人の頑張りや団結力の強さを感じさせるもの、また次ぎを担う若者達の真剣な支援活動などが紹介され、少しずつ先に明るさが見えてきたように感じます。

しかし、福島原発事故だけは余分、日本の原子力安全神話がこれほど脆くも崩れ去るとは思ってもいませんでした。正直に言えば、わたしも日本の原子安全神話を信じていた一人でした。地震多発国で唯一の原爆被害国、その上でエネルギー資源のほとんどを輸入に依存するこの日本で、原子力平和利用としての原子力発電設置およびそのオペレーションには、念には念、もちろんヒューマンエラーの排除は当然として、自然災害に対してもその想定基準は万全には万全を期しているのは当然と思っていました。

まったなしに迫ってくるポスト石油時代の自動車用エネルギー源として、中長期的には電力会社から供給される低カーボン電力がその最有力な代替エネルギー手段であり、ハイブリッド普及により石油消費を減らしながら、Liイオン電池の進化を進め、その電池の賢い使い方で、さらに石油消費を減らし、それをバイオ燃料や合成燃料に置き換えていくとのシナリオを描いていましたが、今回の原発事故でそのシナリオが大きく崩れてしまいました。

今回の事故が世界へ与えたインパクトもまた大きいものです。この震災は、アメリカも中国も原子力発電を低カーボン発電の切り札の一つとしてそれを推進し、一時は原発廃止を決定したスウェーデンやドイツでも、最近では低カーボン化の動きの中でその見直しに動き出した矢先のこの事故です。これらの国々では、今回の事故を受けて原子力政策の再度の見直し圧力が急速に高まっています。

日本に目を戻せば、経済に致命的な打撃を与える計画停電を迅速に食い止めるため、タービンを含む火力による発電量を増やすのが大前提となり、一昨年に当時の鳩山首相が大見得を切った2020年温暖化ガス25%削減シナリオどころか、初代プリウスを発売した1997年12月に開催された気候変動枠組み条約第3回締結国会議(COP3、京都会議)で制定された京都議定書での温暖化ガス削減目標の達成も、この原発事故で達成困難になってきました。日本だけではなく、グローバルでの地球温暖化緩和シナリオへの影響も甚大です。欧州のCO2排出権取引マーケットでは、その取引価格上昇がおきています。

見直しを迫られるエネルギー戦略

今は、この福島原発事故のこれ以上の深刻化防止と放射能流出の防止、出来るだけ早い避難解除を祈るのみですが、将来のエネルギーシナリオ、低カーボンシナリオとして原発をどうするのか、犯人捜しではなく、なぜこのような事故に至ったのか、開発時の想定条件からどこがどう狂ったのか、操業開始後にも環太平洋周辺部でおきた様々な大地震、津波災害、直近では2004年12月のスマトラ沖地震、また過去の地震、津波災害の調査がどのように安全設計に反映されたのかなど、そのディシジョンプロセスを明らかにし、情報公開の上、オープンな議論が必要です。

もちろん、安全性に関しては経済性からの妥協はあり得ません。

もともと日本の電力供給計画、またそれをベースにしたエネルギー計画において、原子力の活用はその中心のもとして据えられていました。低カーボンで安定的に電力を発生させる原子力発電を緩やかに拡大してそれをベース電力源として、カーボン排出量の大きい火力発電を様々な手段で代替えしていくというのが震災前においては主流な考え方でした。

電力会社からの電力を使う、プラグイン自動車もその有力なオプションの一つです。その電力利用の前提には、発電力の調整が苦手な原子力発電を増やすと今よりもあまる深夜電力をこの充電に使おうとの狙いもあったようです。電力会社としても、プラグイン自動車の拡大での発電需要の増大による火力発電の増強は好ましくなく、原発拡大による深夜電力有効利用の手段としてプラグイン自動車とくにバッテリー電気自動車普及の後押しをしていたと思います。

図は2009年に独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)のHPに乗っていた、2007年夏、消費電力がピーク記録した日の、一日24時間の発電電力Mixです。平均として約30%が原子力発電ですが、電力需要が下がる夜間はさらに原子力発電の比率が高くなっています。このベースの原子力発電を増強拡大しようとのシナリオでした。しかしこのシナリオは、この事故によって完全に崩壊したと言っても過言ではないでしょう。
バッテリー電気自動車やプラグインハイブリッド自動車も、夜間充電による増設する低カーボン原子力発電の使用を前提とする以上、見直しが必要です。


出典:http://www.nedo.go.jp/informations/events/190205_2/siryo3-4.pdf

将来のポスト石油、低カーボン社会に向かっては、何度も述べてきているように、今のクルマに置き換わり、その用途を完全にカバーでき、普及拡大していくことが重要であり、そこで使う電力も原子力をあてに出来なくなっても低カーボンが必要条件となります。しかし、太陽光、風力、地熱では力不足であることは明らかです。

だからと言って、一部原子力関係者が言い出しているように、このまま原子力に戻るしかないとのシナリオでは国民の、さらに世界の賛同が得られる状況ではありません。

大震災から感じたエネルギーインフラと将来自動車の行方

今回の大震災では、エネルギーインフラとして、電力に集中することが危険であることも明らかになり、また石油供給インフラも過度な集中化と物流のボトルネックがあることも露呈しました。石油燃料供給にボトルネックがあったものの、当たり前の話ですがガソリン、軽油を給油できると、最初に復旧していった道路を使い、被災地への人、物の移動をクルマで行うことが出来ています。やはり、自動車は将来も電気への一極集中ではなく、ゆくゆくはバイオか合成燃料への変換が迫られるでしょうが、液体燃料供給インフラも維持していくことが重要と感じました。

太陽光、風力、地熱、バイオ、それを使った再生可能低カーボン電力、第2/第3世代のバイオ燃料、再生可能エネルギーを使った水素、有りとあらゆる方向からのシナリオ見直しが迫られていることは確かです。今の時点では、ウルトラCの名案は浮かびませんが、何でもかんでもグローバルマーケット主義、科学技術至上主義で過去を振り捨てて突っ走ってきたやり方を見直す時期のようにも感じます。

科学技術フィールドに長く身を置いた一人として、今回の原発事故が科学技術至上主義の結果、科学技術の暴走と言われることが残念です。科学技術の暴走ではなく、結局はそうさせた、政治、経営判断など人の問題に帰結すると思っています。もちろん、その判断に流されてしまった科学者、技術者もその責任から免れないことはたしかです。

この自然災害が多い日本で、安心、安全な社会作りを進めるためには、それでも科学技術の発展が必要不可欠です。最新の科学技術を使いこなすもの人、紙の上、机の上ではない現地、現物、現象ベースの人智の結集、それを支援する科学技術、その知見をベースとする、政治、経済ディシジョンが重要と思います。科学技術に携わってきた一員として、現場視点、人間重視の科学技術発展を後押ししていきたいと願いっています。

この震災、被災地の連絡車、救援車、さらにはボランティアの派遣車として、低燃費でフルタンクでの航続距離が長いプリウスが活躍したとの話を聞かされました。航続距離1000km、途中のガス欠を心配しないで人、荷物の配送ができたと喜ばれたそうです。

次ぎの自動車として、今取り組むことは、ウルトラCの前に地道な効率向上、車両軽量化などオーソドックスなことの積み重ねからのような気もします。エンジンの効率を高めるとハイブリッドの燃費も向上します。従来エンジンも、さらにそれを使ったハイブリッドもまだまだ効率向上、性能向上の余地があります。また、様々なエンジン、クルマのカテゴリへの展開もこれからです。プラグイン自動車用の前に、ハイブリッド車用としてのリチウム電池にも低燃費、効率向上、性能向上が期待できます。

従来技術の改良に着実に取り組みながら、バイオ燃料、合成燃料、水素、さらには低カーボン電力利用の可能性を、安心、安全社会の社会インフラの観点も入れて見直していくなかから、何か見えてくるのではと期待しています。