トヨタ・アクアと東北復興、さらに日本の将来エネルギー

しっかりとオープンに議論してほしい原発再稼働問題

3.11から3年が経過しました。連日取り上げていた、新聞報道やテレビの三年経過した被災地の今に見入っていました。瓦礫の山こそ減ったようですが、なにか復興のスピードが遅いように思えてなりません。さらに、福島第一原発事故が大きく復興に陰をさしているようで、福島第一原発事故の放射能汚染で未だに自宅に戻れず避難している方が10万人強いらっしゃいます、この解決なくして本当の意味での復興はありませんし、日本の次もないと感じました。

原発問題については、何度かこのブログでも取り上げてきました。お亡くなりになった福一の吉田所長を主役とした門田隆将さんの“死の淵を見た男”、当時の原発事故を巡る福一現場、東電本社、イラ管さんが東日本消滅まで頭に浮かべてのイライラぶりから国際的な動きまで取り上げた船橋洋一さんの“カウントダウン・メルトダウン”など、さまざまな著作物、様々な事故調査報告書、さらに原発導入の歴史から原子力むら形成の経緯などの資料もあさりまくって読んでみました。

また機会があり、中電浜岡、東電福島第二も実際に見学させてもらい、東電、中電、関電、北電の方々、さらに何人かの原子力工学の研究者、大学教授の話も聞かせてもらいました。科学技術、工学からは、このブログで紹介した『想定外を想定する未然防止』だと当たり前と考える全電源喪失ケース、地震国日本での津波波高の最悪予測に目、口、耳を閉ざしてしまった『原子力神話』に、大きな怒りを覚えました。変えてはいけない最悪ケース、最悪条件をギブンとして、経済原理にのった対応策を考え出すのがエンジニアの役割です。安全保障条件を経済性とのトレードオフにしてはいけないことは科学技術・工学者としての初歩の初歩と教え込まれ、かつやってきました。今議論されている再稼働議論も、決して以前の『原子力神話』の状況に戻してはなりません。オープン、透明、我慢強く、公正な議論が必要です。

ものづくりの日本の将来は

これまでのブログで自分のポジションを述べているように、現地現物での確認、さまざまな情報の調査、分析を行ったうえでも私自身は原発再稼働は避けて通れない道と考えています。もちろん、日本科学技術、工学の英知を結集した上での安全確保の担保が前提です。その理由は原発なしでの不都合な真実がどんどん明らかになってきていると感ずるからです。まず、気候変動問題です。

環境技術で世界をリードしてきたはずですが、原発停止による化石燃料発電シフトにより日本が排出するCO2は大きく増えています。太陽光発電は急増していますが、それでも役不足であることは明らかで、そのうえ日本の立地条件からも風力発電にも多くは期待できず、地熱、小水力活用を含めても日本の電力供給をリニューアブル発電でまかなうことには無理があります。一方、安全性と経済性をトレードさせてはいけませんが、東日本震災からの復興、日本の成長のためにも国際競争力を維持できる価格のエネルギー供給が必要不可欠です。3.11後、エネルギー供給のほとんどが化石燃料、自動車など製品輸出でカバーできないほど化石燃料輸入が増加し、経常収支すら赤字に転落しかかっています。その電力価格は国際競争力を損なうほど高騰しています。

久しぶりの円安で自動車産業の経営は好転していますが、ここでの稼ぎに陰りがでると一大事、稼ぎ分が目減りし定常的な経常赤字が続くと悪い円安が心配になります。科学技術立国を支える日本の生命線である研究開発活動を活発化させるためにも、経済成長とそのための安いエネルギー供給が不可欠です。さらに現代の農業、漁業も化石エネルギーに大きく依存する現状では、国民生活の安定のためにもエネルギー価格の高騰、悪い円安、さらに日本経済のシュリンクにつながる稼げない状況での最悪の円高は願い下げです。

福島第二原発でほとんど無傷の原発建屋と所内の連日の復旧作業を見学し、さらにアウトライズ地震津波への備えまで、カウントダウン・メルトダウンで3.11当時の福二原発の危機一髪の現場で陣頭指揮を執られたで増田所長に説明いただきました。最後に第二原発再稼働の可能性について質問させてもらいましたが、増田所長からは「復旧工事、安全対策が進んでも避難している方々がすべてお帰りにならない限りは、決して再稼働を口にすることはありません」とのコメントをいただきました。浅はかな質問が恥ずかしくなりましたが、すでに暗くなってからの帰路、避難地区の真っ暗な住宅地、国道脇の無人の駐車場にたむろするイノシシの群れを目にし、この増田所長の言葉の重みを痛感させられました。

原発の再稼働は被災地の復興、所在地のものづくりの発展に

東日本の復興を加速させるには、被災地の景気回復が第一、さらに復旧公共工事だけでなく、継続する産業を誘致して職を増やしていくことが必要です。アベノミクスの次の矢がでてこないことにイライラしていますが、まずは景気回復、その景気回復を大都市圏に集中させず、被災地、さらにサプライチェーンとして地方に拡大させていって欲しいと思います。被災した農業、漁業の復興支援とともに、職を増やしていくには安いエネルギー供給が前提になります。製造業の景気回復だけではなく、農業、漁業もの再建にも安いエネルギー供給が必要不可欠です。

トヨタOB、ハイブリッド屋の私としては、被災地区での製造業の期待の星として、トヨタの東日本地区での取り組みに注目しています。昨年車種別販売台数トップとなったトヨタ・アクアはトヨタ自動車東日本岩手工場、また昨年発売を開始したカローラハイブリッドは宮城大衡工場、このアクア・カローラハイブリッドに搭載する初代プリウス以来改良を続けた1NZ-FXEエンジンは宮城大和工場で生産しています。このハイブリッド車に搭載する電池もまたトヨタとパナソニックのジョイントベンチャー、プライム・アースEVエナジー株式会社の宮城工場で生産しており、昨年12月にはハイブリッド車の生産拡大により宮城工場での電池パック生産台数が累計100万台を突破したとのニュースリリースが発表されています。

さらに、アクアはプリウスCの名がつけられ、復旧なった仙台港からアメリカへと輸出され、またフランス工場で生産するヤリスハイブリッド用に電池パックなど、付加価値を高めた様々なハイブリッド部品がこれも仙台港から積み出されています。これらの構成部品もまた、現地生産比率が増えています。この生産拡大によって、職も増えているはずです。

物作りが日本を支え、すそのの広い自動車製造をコアとして、工場群を増やし、職を増やしていきます。東北地区でこの取り組みが着々と進行していることをトヨタOBとして誇らしく感じています。

この自動車製造、その部品製造には多量のエネルギーを消費します。トヨタ自動車東日本も省エネ、リニューアブルエネルギー利用にも積極的に取り組んでいるようですが、やはり安く、低CO2で、さらに安定したエネルギー供給がその発展を支えます。福島第二を除いても、東北には停止中の多くの原発があります。東日本大震災を乗り越えたこれら原発に、最悪ケース、最悪条件をクリアさせ、この大きな教訓をふまえた安全対策を施すことは可能と考えます。日本に多量の使用済み、使用中の核燃料棒が残っていることも目を反らせてはいけない不都合な真実、それを安定的に維持し、安全な後処理方法を生み出すことは、脱原発でも必要です。まさか、原発電力の一大需要地であった首都圏にその燃料棒を引き取るなどとは誰も言い出さないでしょう。

安全を確保したうえで、安定した稼働を続け、被災地、原発所在地ではこの原発稼働を前提に、原発特区として電力料金を大幅に下げるくらいのことを考えて欲しいと思います。ちなみに我が家は、3.11後の省エネを心がけて追いつかない高い電気料金を払っていますが、都市部に住む割増分のさらなる増加は覚悟しています。

筆者の出身は北海道ですが、ルーツは岩手、祖父は宮古の出身、私の小さいころに亡くなっていますが、祖母からは明治三陸津波の被災者だったと聞かされています。まだ、宮古を訪ねたことはありませんが、岩手各地の被災には胸が痛みます。岩手工場でのアクア生産は私にとっても希望の星、東北復興を加速ためにも安い、低CO2電力を使ったアクアの次なる進化を楽しみにしています。

自動車販売台数からみた2012年

グローバルでは拡大の一途の自動車産業

2012年の日本での新車販売台数は、エコカー補助金の後押しもあり547万台と4年振りの500万台越えました。アメリカもリーマンショックからの回復が顕著で1446万台と、これも5年振りの1400万台突破、また中国では前年比2.5%増と過去がないほど低い伸び率でしたが1850万台を記録、欧州を除くと自動車マーケットとしては拡大基調の一年でした。

今年については、昨年は前年比2.5%の低い伸びに留まった中国も、いよいよ2,000万台の大台を超えるだろうと言われおり、アメリカでも財政の壁を乗り越えれば、景気回復も期待され新車販売の1500万台越えが期待されています。世界全体としては、政治、経済情勢に突発的な大問題が発生しなければ、更なる拡大を予測する声が高まっています。

日本の自動車業界も昨年の大震災やタイ洪水の影響から脱却しました。トヨタは尖閣問題による日中関係の悪化から年後半に中国販売が大きく低下した影響もあって世界1000万台越えは来年に持ち越しとなりましたが、販売台数世界1位に復帰したようで、富士重がアメリカで4年連続販売新記録を更新するなど全体としては先行きに明るさがでてきた1年だったように思います。しかし、足下ではエコカー補助金が切れたあとの販売落ち込みが続いており、なにか浮揚策がなければまた縮小モードに入っていく懸念が強まっています。

今日の話題の次世代自動車への転換を日本勢がリードしていくためにも、その開発拠点である日本マーケットが元気にならなければ開発人材含めてパワーが損なわれてしまいますので、それが気がかりな点です。

ここまで書いてきたように、グローバルで見ればモータリゼーション拡大が続き、保有台数も増加する一方という状況です。日本では保有の長期化、高齢化、若者のクルマ離れなどにより保有台数が減少に転じ、欧米もその伸び率が小さくなっていますが、世界全体では保有台数も大きな伸びを示しています。

図1
図に示すように、2009年には保有台数が10億台を突破し、世界景気の低迷で途上国の保有台数の伸びが小さくなっていますが、景気回復によってはまだまだ大きく伸びることが予想されています。グローバルな視点では、自動車産業はまだまだ伸び率の大きな成長産業ということがお分かりただけるかと思います。

次世代自動車の普及はまだまだ

一方この増加分のほとんど100%のクルマが石油燃料を使うガソリン・ディーゼルといった内燃エンジン車で、保有台数の増加につれ自動車用燃料として消費する石油消費もどんどん増えています。新しい石油資源開発が進み、シェールガス&オイル革命と言われる従来油田ではない石油系資源も開発され、増加する需要をまかなっていますが、いずれ枯渇する地球資源です。また石油を燃やすと地球温暖化の主因である二酸化炭素を排出します。資源的にも環境的にも遠からず今のクルマの延長では成り立たなくなることは明かです。それだけに省資源、低カーボンの自動車の普及を加速させることが待ったなしです。

日本の次世代自動車販売統計は出ていませんが、今日の自販連の発表では、2012年の車種別販売台数1位は4年連続のプリウスで年間317,675台、2位がアクアの年間266,567台とプリウス兄弟で58万台を突破しました。トヨタ/レクサスでのHV比率は40%台となった模様です。

日本全体としては、一昨年にHV比率10%を達成したところですが、2012年は9月までで17%台でありシェアが大幅な増加となっています。一方、PHV/BEVのプラグイン自動車の販売は、結構な額の補助金がついているにも関わらず期待したほど伸びなかったようです。販価、BEVでは航続距離、充電インフラなど普及への課題とその克服をもう一度考え直す時期にきていると思います。さらにHV/PHV/BEVだけではありませんが、補助金だよりの普及には限界があり、エコだけではないクルマとしての魅力アップと販価ダウン、その上でこれからの景気浮揚に期待を掛けたいと思います。

アメリカでは、今週初めに車種別販売台数データが公表されました。

図2

図3

昨年はトヨタHVの復調、Fordの新型HVの発売もあり、2007年35万台を越え、年間50万台に迫る販売新記録となりました。PHV/BEVを加えた次世代自動車全体で、48.9万台と50万台越えには至りませんでしたが普及への勢いがついてきたように感じます。

図2に示すように、2007年には35万台を突破し、日本を越える勢いで販売を伸ばしていたHVも、2008年秋のリーマンショック、さらにトヨタの大規模リコール問題、一昨年の大震災、タイ洪水の影響で販売台数を落としていました。この間、オバマのグリーンニューディール政策の一翼を担うプラグインハイブリッド車GMシボレーボルト(GMはレンジ・エクステンダー型電気自動車EREVと名付けています)や日産リーフの発売がありましたが、販売台数低下を食い止めることがでませんでしたが、2012年はそれに歯止めが掛かった年でした。全米の年間新車販売台数1446万台のシェアでも、2007年の2.99%から3.38%まで増加しています。図3にメーカー別シェアを示します。

昨年は供給不足もあり、60%を切ったトヨタHVシェアも、今年はFordの新型HV車登場もありましたが、プリウスが経年車品質NO1を確保するなどHV品質への信頼回復と、ブランド力で67%までシェアを回復しています。2012年の日本勢としては、ホンダHVの元気のなさが気になりますが、日産と合わせて合計73%と圧倒的シェアを占め、アメリカの次世代自動車マーケットをリードしています。

他のエコカーとしては、CNGが年間1,462台(ホンダシビックCNG)、クリーンディーゼル車が152,255台で、HVの足踏みもあり、まだまだ圧倒的に多いのがガソリン自動車です。車種別販売台数上位は、相も変わらずFord Fタイプに代表されるフルサイズピックアップトラックが占めています。この大型ピックアップと、大型SUVの販売が好調なことが、アメリカ勢の収益回復の源ですが、プリウスの燃費(よくブログでとりあげるEPAラベル燃費)50mpg(約21.3km/リッター)に対し17mpg(約7.2km/リッター)と3倍もガソリンを消費するこのような大型車(これでも小型車のジャンルに入ります)と省エネ・低CO2にどう切り替えていけるかが大きな課題です。

アメリカもPHV/BEVに大きな補助金を出し、日本以上にその普及に力をいれていますが、プラグイン自動車販売台数トップがGMボルトの23、461台、2位プリウスPHV 12,750台、3位日産リーフ9,819台、話題のBEVテスラ社のモデルSの年間2,400台を含め年間総計は図2にあるように5.3万台と、日本同様にその勢いはありません。昨年は、アメリカのBEVベンチャー、それを当て込んだ電池ベンチャーが市場から続々と退場していきました。ユーザー・メリットが不足していることに加え、やはり充電が必要なことが、設置場所の確保、工事費用など普及へのハードルの高さになっているようです。

欧州では、BEV化のかけ声は大きいですが、ここもまだまだ伸び悩み、HV車すら競合相手が現れず米国同様伸び悩みが続いていましたが、昨年はオーリスHVやヤリスHVの現地生産も本格化し上昇に転じたようです。欧州勢のHV車も限定車としての販売はスタートし、ジャーナリス評価は高いですが、価格が高いせいか販売は伸びず、本気度が疑いたくなります。CO2規制対応として、ダウンサイジング過給、アイドルストップ、減速エンジン停止、オルタネータによるベルト駆動回生と、ハイブリッド化の狙いでもあった教科書通りの低燃費メニューを増やしてきていますので、みかけは従来車の燃費向上と見えますが、どこかで本格ハイブリッドに舵を切る必要が迫られると見ています。
中国は2011年の公式発表では年間HV2,580台、BEV 5,579台と、まだ普及シナリオを議論する段階ではありません。昨年の公式発表はまだありませんが、中国政府筋が、次世代自動車普及モデル都市(北京、上海他25都市)として、BEVを中心とする新エネ自動車が計27,400台、そのうち個人所有が4,400台、他はすべて公共サービス分野と公表しました。中国での普及拡大は容易ではありません。しかし、年間1850万台販売と世界一の自動車マーケットでの次世代自動車転換を加速する必要があることも確かです。

このように、2012年の次世代自動車販売では、日本勢が圧倒的なリードを示しています。日本に続き、アメリカもHV普及へと舵が切られそうです。次世代自動車普及への今年の主戦場はアメリカだと思います。ホンダ・アコードHV、ホンダFitクラスの新型スポーッHV、デュアルクラッチCVT方式の日産アルティマHV、これにFord Fusion、トヨタカムリHV、プリウスといったミッドサイズセダン系HVの激烈な競争を期待しています。

次世代自動車の本格競争時代はこれから

マクロに見ると、プラグイン自動車普及の前に、従来型低燃費車の普及、さらにノーマルハイブリッド車の普及拡大が先決です。一時は、「日本のハイブリッドはガラカーか?」とも揶揄されましたが、従来の改良と先の電気自動車や燃料電池自動車への期待先行で次世代自動車への先送りは許されなくなってきます。「トヨタのHV」とまでは言いませんが、「ガラカー」どころか普及する次世代自動車には何らかの「ハイブリッド技術」が欠かせなくなると断言できます。

トヨタがHVでシェアを67%も獲得している現状は、他社がHVに本気で取り組まなかった裏返しです。やっと本格的な競争時代、いかにエコが大事とはいえ、個人の自由な移動手段であるパーソナル・モビリティを将来も残していきたいとの思いでハイブリッドプリウスの開発に取り組んできました。「がまん」「もったいない」も必要ですが、時にはそれを忘れ、山道を、海が見える峠道を、また速度無制限のアウトバーンでのドライブなど、個人の自由な移動空間としての次世代自動車、モビリティの実現を期待しています。このモビリティへの実現には、日本の自動車エンジニアのハード・ワークと知恵の結集、さらにはクルマへの熱い想い、将来モビリティへの夢が必要です。

2013年は、その将来自動車へ向かっての重要なターニングポイントになるような予感がしています。

ハイブリッドと低燃費エンジン

日本ではハイブリッド車がトップ

昨年の年間新車販売台数のトップは1位プリウス、2位アクアとハイブリッド専用車がワンツーフィニッシュし、HV車の販売シェアが登録車(除軽)の10%を超えたのが2011年でしたが、昨年2012年はさらにその倍を超える25%に達した模様です。総販売台数も年間90万台を越え、あと一息で100万台、エコカー補助金の後押しもありましたが、バッテリー電気自動車の販売が低迷しているなか、次世代自動車として普及拡大期を迎えています。

米国、欧州では日本ほどのHVシェアではありませんが、米国、欧州ともにリーマンショックと、トヨタの品質問題、東日本大震災による日本車の供給能力不足から2011年までHV販売台数の現象から昨年はいずれも回復、HV車販売新記録を達成し、今年の飛躍が期待されています。

市販ハイブリッドのほぼ全ては「エンジン・モーター」ハイブリッド

現在市販されているハイブリッド自動車のほぼ100%が、内燃機関エンジンと電気モーターのハイブリッド自動車です。ほんのわずか油圧モーター/ポンプをもちエネルギー貯蔵源として蓄圧タンクを使う油圧方式が使われていますので、ほぼ100%と表現しました。ですからこのHVを含め、世界で販売されているクルマの99.9%までは内燃エンジン自動車です。

シェールガス/シェールオイル革命と騒がれているように、ピークオイルを過ぎたかもしれないと急激な石油資源枯渇を心配する動きもありましたが、シェールオイルに代表される非在来型と呼ばれる石油資源開発に進み、資源問題からは脱石油はトーンダウンしまだまだ内燃エンジンが自動車動力源の主役を占める見通しです。

ハイブリッド車で、エンジン・電気駆動系どちらのウエートが高いかなどの不毛な議論には意味はありません。初代プリウスの広報宣伝資料で使ったキャッチコピー、ハイブリッドの考え方はエンジンとモーターの“いいとこ取り”は今もかわらないハイブリッドの考え方を表現しています。

初代プリウスからの15年を振り返っても、確かに電池、モーター、その駆動用パワー半導体の性能向上、コスト低減は著しいものがありました。この技術進化を生かすかたちでエンジンの役割分担を見直し、その見直された分担範囲に特化した形でエンジン熱効率、出力、クリーン度の改善の合わせ技でここまでの低燃費と走行性能向上を果たしてきたとも言えます。

様々なトレードオフの組合せを見極める必要

この熱効率、出力、クリーン度の改善はいずれもトレードオフ関係にあり、すべてを睨みながら、システム全体としての最適化によりこの進化を実現させてきました。将来もこのシステム最適、トレードオフの構図は替わりないと思います。

エンジン特性への要求も、THSでは走行中に頻繁に発生するエンジン起動停止要求から、ショックの少ない起動停止、さらにエンジン停止モーター走行からエンジン走行への切り替えではエンジン始動から走行に必要なエンジンパワーを出すまで、モーター・アシストでも従来車以上に高レスポンスが要求され、ピストンなど回転部分の軽量化、吸気系のコンパクト化への取り組みがレスポンス向上に効果を上げました。また、エンジン空転時の損失低減も回生効率向上には非常に重要な要素です。

一方、低燃費の追求は熱損失を減らすことになり、冬のヒーター熱源確保のためにエンジン停止ができなくなり、これによる燃費悪化改善も重要な課題でした。2009年プリウスでは排気熱再循環システムを採用しました。さらに熱効率を高め、そのうえプラグインハイブリッドなど外部電力エネルギー走行を増やしていくと、この熱源不足が深刻な問題になっていきます。ハイブリッド用として排気、冷却水、潤滑油全体へと捨てられる熱損失全体の熱設計見直しも必要になってくるように思います。熱源確保に的を絞ったエンジン冷却系、潤滑系設計にも発想の転換が必要な時期です。

低燃費と排気クリーン度の向上もトレードオフ要素です。熱効率向上により排気バルブから出る排気温度はどんどん低くなっています。さらにエンジン停止時間頻度、エンジン起動頻度の増加はクリーン度の悪化につながりかねません。ハイブリッドでのエンジン高効率運転ではスロットル弁全開付近を使いますので直噴でのPMや過給での燃料増量による排気クリーン度悪化も将来ハイブリッド・エンジンとして注意が必要です。

従来エンジンも燃費向上してHVに肉薄している、だが価格も肉薄している。

このハイブリッド車の燃費向上に触発され、コンベ車の燃費性能も大きく向上、それを支えているのがエンジンの低燃費技術とハイブリッド技術の応用です。自動車工学の教科書にあるクルマの低燃費化のアプローチを忠実に実行したのが初代プリウスのハイブリッド開発でした。

従来エンジン車(コンベ車)の低燃費もそのアプローチは同じ、小排気量過給ダウンサイジングとエンジンの機械損失の低減が基本、そのうえエンジン燃費最適運転のためのCVT、多段変速機の採用、エンジン効率ゼロの停車中のアイドルストップも標準メニューとなってきています。さらに、走行パターンに応じて燃費、走行性能、そして排気のクリーン度を高いレベルで両立させるために、コンベ最新エンジンのほとんどでVVT-i、VTC、VTECなど様々な可変動弁機構を採用しています。

またエンジン熱効率を高めるため、高膨張比過給エンジンの採用、高圧縮比化による異常燃焼防止策として吸気系、排気系、直噴化、燃料噴射/点火時期制御など電子制御にさまざまな工夫がこらされています。EV走行機能こそ持ちませんが、ブレーキ減速時にはエンジン回転停止従来オルタネーターによる減速回生を行うシステムまで現れています。電子制御スロットル弁を使うアクセル・バイ・ワイヤも標準となってきており、コンベエンジンの低燃費も、ハイブリッドによる低燃費アプローチを追いかけてきている印象です。

ここでの留意点はコスト増です、THSではハイブリッド用電池、その電気駆動系など、以前のコンベ車と比べるとそれ相当のコストアップを招きました。このコンベの低燃費技術のそれぞれも、コスト増は免れません。アイドルストップでは、エンジン起動停止頻度の増大に対応するため、スタータ、補機バッテリーの強化が必要、パワーステアリングも油圧からモーターPSに変更が必要、小型ダウンサイジング過給もターボ/スーパーといった過給機と圧縮した空気を冷やすためのインタークーラー、直噴ならば高圧噴射系にもコスト増は免れません。もちろん変速機の多段化にもコストが必要。ハイブリッド・エンジンにも使っていますが、VVT-I, VTC,VTEといった可変動弁機構の追加にも、スロットル・バイ・ワイヤやスマートキーにもコストは必要です。

ハイブリッドもコンベも、弛まぬコスト低減を続けて居ますが、そのコスト差はかなり縮まってきており、またエネルギー回生、蓄熱空調、電動エアコンの採用などコンベのハイブリッド機能取り込みもさらに進むものと思います。

低CO2自動車を新興国へ

ここまでくると、いよいよ強力なエネルギー回生とエンジン停止モーター走行と本格ハイブリッドが欲しくなってくるものと、他社のこのところの動きを見て先行したハイブリッド屋としてにんまりしています。もちろん、ハイブリッド・エンジン担当、ハイブリッド・システム担当、電気駆動系担当のエンジニアにもさらなる知恵と汗を期待することは言うまでもありません。

世界の全てのクルマが、すぐにフルハイブリッドになるとは思っていませんが、クルマの低燃費、低カーボン、排気のクリーンと走りの両立を追求していくと、なんらかのハイブリッド機能が必要になり、そのハイブリッド機能を生かすエンジン技術進化がこれからも自動車技術進化の牽引役となるものと思います。

地球温暖化対策としての低CO2自動車へのシフトでは、日本、米国、欧州に引き続き、中国、インド、ブラジル、東南アジアといったモータリゼーション拡大が著しい新興国でのハイブリッド展開期に入ってきたように思います。この現地化もまず低燃費エンジンから、そのうえでハイブリッドとしての電気駆動系の現地化のステップが重要、この現地化を日本がリードしていって欲しいものです。

次世代自動車、2012年備忘録

明けましておめでとうございます。
いつもCordia Blogをお読み頂き有難うございます。
2013年が皆さまにとってよりよき年となることを祈っております。

さて、普段このブログを書いています代表・八重樫武久には正月休みを頂いて、今回は八重樫尚史が代筆させて頂きます。今回は自動車全体の2012年の個人的なまとめを書いていこうかと思います。

2012年はプラグイン車にとって「2年目のジンクス」?

2012年はまずはプラグイン車としては、プリウスPHVの一般販売が開始され、北米でもフォードからPHEV・C-Max(Fusion) Energi、バッテリーEVとしてはフィットEV、テスラ・モデルS等が発売された年でした。その前年の2011年が実質的に「プラグイン車元年」だとすると、「プラグイン車飛躍の年」とその前には期待されていた年です。

そしてそれらのクルマは世界の道を走り始めましたが、残念ながらそのスタートダッシュは鋭いものではありませんでした。それにはインフラ等を含めた様々な要因があるかと思いますが、あくまで数字的結果だけを言えば、年間販売目標を超えたモデルは殆ど無い状況です。スポーツには華々しい活躍をした新人が2年目には苦戦するという「2年目のジンクス」という言葉がありますが、そうした言葉ですっきりとまとめて忘れ去りたくなるような年です。

ただし産業・技術の世界は、もちろんスポーツとは違いますので、2012年についてしっかりと検証して、今後の普及に向けての糧とすることができなければ、今後のプラグイン車の未来を切り開くことは難しくなるでしょう。

様々なクルマが登場した2012年

一方で2012年はプラグイン車以外の、自動車の次世代技術が多く登場・紹介された年でもありました。マツダはSky Activeで日本のディーゼル乗用車市場を切り拓きはじめ、これを搭載したCX-5はみごと日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。また、以前より欧州勢を中心として取り組まれてきた燃費向上の為の小型化エンジン+過給器のシステムは更にバリエーションを増やし、日本でも日産がCVTとこれを組み合わせたノートを発売し、こちらはRJCカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

欧州では近年の欧州市場でトップを支配し続けているVWゴルフがフルモデルチェンジを行い、上記のシステムの熟成と大幅な軽量化によって、現状の王座つまり今のスタンダードカーとして評価を続けていくとみられています。

一方の日本勢では、日本市場は販売台数でトヨタのプリウスとアクアが独走している状態で、アメリカでもプリウスが記録的な年間販売台数を達成しました。ホンダも秋にハイブリッド3種を取り揃える意欲的な技術発表会を行い、これからの巻き返しに期待が持たれています。

軽自動車分野でも、ホンダがN-BoxとN-Oneを投入し大きくシェアを拡大して、大激戦の様相となっています。こんな中でスズキがアイドリングストップから一歩踏み出したene-chargeを搭載したワゴンRを発売し、ダイハツも既存のガソリン車の燃費を向上させ更に軽自動車に衝突回避支援機能を搭載するなど、活気のある争いを繰り広げています。

衝突回避支援機能のパイオニアであるスバルは、トヨタと共同開発して作ったスポーツカー86/BRZが注目を集めたのに加え、一年を通じて好調な販売を維持し、東証の主要銘柄のうち株価上昇率で一位を取るほどの一年でした。また、VWが販売した小型車UP!も、いままでのドイツ車からすると驚くような値段で日本でも発売開始され、こちらもその価格で衝突回避支援機能を搭載していることが注目を集めました。

自動車用リチウム・イオンバブルの崩壊

上の章タイトルは、今年秋に見かけた自動車コンサルタント会社の北米支部が出したレポートのタイトルです。2012年は自動車用バッテリー、特に駆動用リチウム・イオンバッテリーを製造している会社にとって極めて厳しい一年となりました。

プラグイン車のスタートのつまづきは、まるで高速道路で先頭のクルマの軽いブレーキが後ろでは大きな渋滞を作ってしまうかのように、そのままこれらの会社の業績に直結し、特に北米のベンチャーはEner1からA123まで軒並み破産申請をして倒産するという事態となりました。またベンチャー以外の企業も業績が厳しく、資金余裕のある会社が他社の電池部門を買収・吸収するというニュースが多く飛び交いました。

これは、自分たちの手で出口の商品(クルマ)を開発できず、普及予測や販売・生産予測をベースにせざるを得ないながらも事前に多大な投資を必要とするという、自動車駆動用電池の産業の難しさを実感させるものでした。

また、なかなか成果を出せないこうした企業に対して眼が厳しくなり、アメリカ政府の投資が急速に絞られたことや、シェール・オイル、シェール・ガスといった新エネルギーの期待が膨らんだことなどが重なった末の「リチウム・イオンバブルの崩壊」でした。ただし、まさに「バブル」というのが象徴しているように、「期待」だけによってパンパンに膨らんでいたのも事実で、厳しい目で言うと単に実態が伴っていなかったからに過ぎないということもできます。

2012年は振り返ると、これ以外にも中国での暴動による影響や、新興国市場に地歩を築こうとする各社の鬩ぎ合いなどもあり、自動車業界にとって刺激的な年だったのではないでしょうか?この2012年を受けた2013年は、おそらく次への一歩を見通す為の一年になりそうです。

プリウスの生産台数の悲喜こもごも

東京オフィスで使っていた走行距離12万キロの2代目プリウスの後継車として、3月に発注していたアクアが先週やっと納車されました。何とかエコカー補助金が切れる前の納車になったようです。アクアはプリウスの弟分、小型ハイブリッド車として多くの受注をいただき、トヨタ東日本岩手工場でフル生産を続け、さらに緊急能力増強を行ってもまだまだお待ちいただいているお客様が多いとのこと、5ヶ月待ちでの納車とは言え、申し訳ない気持ちで一杯です。

何が生産増のネックになっているのか不明ですが、プリウスに続き、アクアもこのハイブリッド車に対するお客様の強い支持とご要望にお応えできず、長期間納車を待ていただいていることはトヨタの関係者も真摯に受け止める必要があると思います。

トップダウンで生産台数が決められた初代

ハイブリッド車の生産台数を決めるにあたっては、開発陣の悲喜こもごもいろいろなエピソードがあります。初代プリウスの計画スタート時の月間生産台数はわずか200台/月で、限定生産の域をでないものでした。しかしながら当時のトップが「“21世紀に間に合いました、普及を目指す次世代自動車の量産先駆け”と言うからには最低限1000台/月だ」と決断されて大幅に規模を拡大しました、後の流れを見るとこの選択は間違いなく大英断といえます。

2003年の2代目プリウスでは、われわれ開発陣は当然次世代自動車普及拡大の次ぎのステップへのチャレンジとして、初代開発でやり残したいくつもの改良を行い、そしてマーケットでの経験やユーザーの方々からの様々なご指摘にそって開発を行いました。また、燃費性能も走行性能も高い改良目標達成実現を約束し、さらにその上での極めて高い原価低減目標達成へのチェレンジもこの2代目で取り組む課題として覚悟を決めていました。

それら多くの改良、チャレンジ目標を達成するためには、ほとんど1からの開発に近い設計の大変更、生産工程の変更、部品の作り直しが必要でした。自動車開発でここまでの変更を行うと、少量の生産台数ではその開発費を回収できず、生産計画台数を大幅に増やす必要があります。しかし、営業から提示された販売計画台数は、当初原価目標を決められないほどの少ない台数で、特にアメリカからは「このような小型ハイブリッドがアメリカでは売れる筈がない」とのコメントとともに日本よりも少ない台数の提示が届けられました。

当時2000年~2001年時点のアメリカでのガソリン価格は、水よりも安いガロン1ドル~1.4ドル(21円~30円/ 80円/ドル換算)、われわれハイブリッド開発グループでは、ガロン3ドルまで上昇するシナリオまで作り、ガソリン需給のタイト化、地球温暖化抑制からも次世代自動車の口火を切ってやってきたハイブリッド車普及をリードする戦略車としての台数提示を求めましたが、それでも世界全体でも2500台/月との回答。今では隔世の感がありますが、これが営業側の最初の提示でした。

燃費性能、走行性能、さらに車両商品性のジャンプアップを図りながら原価チャレンジ目標を達成するには、モーター・発電機が入ったハイブリッドトランスミッションとそのパワーコントロールユニット、ハイブリッド電池、回生協調ブレーキなどなどハイブリッド用大物部品から様々な小物部品まで、材料、設計、生産技術、検査技術に至る全てのプロセスでの取り組みが不可欠ですが、2500台/月の計画ではこの一大変更の提案すらできません。

そこでいろいろな働き掛けを行い、技術サイドと生産サイドがリスクを背負って決めて、立ち上がりの生産台数を7500台/月まで積み上げました。開発陣としては、次世代自動車の先進性を感ずるデザインも相俟って、これならブレークするとの確信を持っていましたが、我々としてもこの数字が精一杯で、その先のブレークまでは誰一人として読み切れませんでした。

想像以上だった2代目プリウスの売れ行き

開発完了後、2003年4月初旬のニューヨークモーターショーを皮切りに、4月中旬の欧州でのローンチイベント、様々な環境イベント、日本でのほとんどのイベントにも参加し、広報宣伝パンフレット作成の細部にまで口を出させて貰いました。

2代目プリウスは手応え通りの売れ行きを見せ、さらに2004年になるとアメリカのガソリン価格が高騰、2004年ガロン1.8ドル~2005年2.2ドル、2007年には3ドルを超えるレベルにまで高騰していきました。それに伴って、売れないと言われていたアメリカでも誰もが認めるベストセラーカーとしての評価を確立しました。

とはいえ、ガソリン高騰だけが、ハイブリッド普及に拍車を掛けたとは思っていません。そもそも2003年の発売時から受注は好調で、上記の通り営業の提示の3倍の生産規模でスタートさせたのも関わらず、受注残が積み増される一方でした。3代目への切り替えまでに5回以上の生産能力増強を行ったものの、納車まで永い期間お待ちいただくケースも多く、ハイブリッド普及への大きな機会損失もあり、さらにコスト低減についても少しずつ能増の繰り返したために、数の効果を減らしてしまったと推測しています。

2008年のリーマンショック後、世界的に新車販売が大きく落ち込みましたが、ハイブリッド車は比較的好調でした。しかし3代目プリウスで目指していた次世代自動車としての大きな普及拡大へのジャンプが、トヨタ車の予期せぬ加速問題と、それに端を発したプリウスブレーキリコール問題、この一連の騒ぎもハイブリッド普及へのアゲンストの風、コンペティターのハイブリッド導入先送りにも繋がってしまった可能性もあります。

とはいえ今回のアクアの発売等もあり、今年に入ってからは、トヨタ以外の各社の車も含めて日米でハイブリッド車は記録的な売れ行きを誇っており、やっと本格的なハイブリッド車開発競争時代が到来したように感じています。次ぎは機会損失を少なくするように、また逆に競合できず過剰投資にならないだけの商品力を持つ、エコだけではない様々なジャンルのハイブリッド車が求められるでしょう。

まだまだ次世代自動車の「本命」は表れていない

さて、今回納車されたアクアは東京の息子が使う車ですが、すぐ試乗を兼ねて三島まで走ってきたので、私も近くのクルマ試乗の定番コース、箱根峠、伊豆スカイライン、新旧東名の長泉沼津、清水と走ってきました。

以前にも、このブログでも取り上げましたが、いまだにクルマの開発屋の癖が抜けず、そのクルマの粗を隅から隅まで探し回る乗り方をしてしまいます。現役時代では、システム設計のエンジニアの説明を受けながらクルマを乗り回し、また車両評価のプロからの指摘点を自分で確認させて貰い、また時間を作ってはベンチマークとなる様々なクルマを持ち出しては走り回ることを心がけてきました。若い頃は、同僚や先輩達からクルマを持ち出してはどこかでサボっているとも言われていたようです。

私自身、エンジン開発担当が長く、車両走行性能、操安性など車両評価のプロではありませんが、エンジン評価もエンジン単体やシャシーローラに乗っけての実験評価だけではなく、クルマを走らせた状態での評価に重きを置いてきました。ハイブリッドでは、さらに動力を伝える伝達系、回生協調ブレーキ、ハイブリッド駆動力*回生協調ブレーキ*パワーステアリングを協調制御し走行安定性、操舵性能を高めるS-VSC(Vehicle Stability Control)までハイブリッドシステムに含まれ、さらにシステム故障診断、故障時の待避走行機能もハイブリッドシステム設計として保証する必要があり、通常時、高低温、高地、高速から登坂までの限界走行から、故障時までクルマの動きとして確認、保証していくことが必要です。

これまた、自分自身でその限界挙動や微妙な特性を掴める本物のプロキルは持ち合わせていませんが、自分でクルマを走らせ、そうした本物のプロ達の評価スキル、その矜持の高さを知るにつけ、信頼して任せるプロ人材を見極める目を養うことができたように思います。

現役時代と違って、次世代自動車として話題に上がるいろいろなクルマに乗る機会がめっきり減ってしまましたが、機会を見つけてはいろいろなクルマに乗ってみることを心がけています。最近では、VWゴルフTSI、ホンダフィットハイブリッド、BMW アクティブE、先月の欧州出張では残念ながら予約したベンツCクラスクリーンディーゼルではなくVolvo S80ディーゼルをアウトバーンやカントリー路で使う機会がありました。

それぞれの評論は避けますが、次世代自動車へのアプローチとして様々な方向があることを体感しましたが、隅の隅までクルマのあら探しをし、次ぎこそはと終わりのない技術進化に取り組んできたつもりの私としては、この試乗車の中にもエコ性能だけではない次世代自動車として感激を覚えるクルマはありませんでした。

もちろんトヨタOB、トヨタハイブリッド開発の生みの苦しみを味わった私の身びいきを差し引いても、クルマの基本性能+エコ性能のバランスの高さとして、アクアは自信を持ってお進めできるクルマです。しかし、これからの目指す次世代自動車として、クルマ開発評価の本物のプロスキルの五感を駆使しての評価では、コストとの安易なトレードオフ、リアルワールドであと一息のパワーとレスポンス、エンジンの音質、車室内の音作りなど、など、次の進化に向けて厳しい指摘がなされ、この売れ行きに安住することなく高い目標で弛まぬ改良作業が進められているものと信じています。

クリーンディーゼルとプリウス「ガラカー」?

またかの『ガラパゴス論』

私は新聞、雑誌、インターネットで「プリウス」との記事、特に批判めいた記事を見つけるとじっくりと読み込むことにしています。トヨタのDNAの一つとして、大先輩から叩き込まれたのが、良いニュースはあとでいいから、悪いニュース、心配、批判に目を向けからの反応です。

最近では日経ビジネスの最新号の時事深層欄に“プリウスは『ガラカー』か?”との記事を見かけました。今年3月7日の日経新聞にも「ハイブリッドに死角、車もガラパゴス化の懸念」という記事が掲載され、このブログでも取り上げたことがあります。同じ記者の執筆された記事かどうはわかりませんが、日経の方々はこのテーマがお好きなような印象です。

記事の中身をみると、エコカー補助金の後押しで日本のハイブリッド車特にプリウスと弟分のアクアが大幅に販売台数をのばし、新車販売に占めるハイブリッド車の台数が20%を超えたことを取り上げ、昨年ハイブリッド車が1万台も売れなかった中国市場、および以前からなんども言われてきた欧州ディーゼルとの対比で、日本のハイブリッド「ガラカー」論を展開している記事です。初代プリウス発売以来、何度も繰り返し蒸し返されている話題で、またかといった印象で、いまさらこの記事に直接に反論するつもりはありません。もっとも、日本の小型自動車用ディーゼル屋さんがもっと頑張らなければいけないことは確かですし、欧州勢にかまされていることはエンジン屋の端くれとして残念なことです。

ただし、ハイブリッドはあくまでも内燃エンジン車の燃費効率を高める手段であり、組み合わせるエンジンはガソリンでもディーゼルでも問いません。ハイブリッド機能のどこまで使うかは別として、もっと低カーボンが求められるか、こちらのほうが心配ですが燃料価格がさらに高騰するとガソリン、ディーゼル問わず、ハイブリッド化が進むものと考えています。

このハイブリッドメニューの中には、外部電力充電を使い、この外部電気エネルギーを走行に使いその分石油燃料消費を減らすプラグインハイブリッドも含まれ、ガソリン、ディーゼル問わず、ハイブリッドの有効な使い方です。

欧州で「独自進化」するディーゼル

10年ほどまえにも、欧州でハイブリッドの講演やメディア・インタビューでは、たびたびディーゼルが本命で、システムが大規模で販価アップが大きいガソリンハイブリッドはニッチに留まるとの議論をふっかけられました。その時の答えは上述の説明と「世界中でガソリンエンジンは廃止して全部ディーゼルにしてその燃料を供給できると言うならこの議論の意味があるが、そうでないのであれば欧州だけのエゴだ」と言っておきました。

効率と経済性を持って原油から液体燃料を精製しようとすると、原油成分によっても違ってきますが、ある比率のガソリンとディーゼル油が同時に生産されることになります。

アメリカでは、小型自動車ではほとんどがガソリン車ですので、精製効率(Well to Tank)の効率を落としながらもガソリン比率を高めています。欧州では逆で、今はどうかわかりませんが、足りなくなったディーゼル油を輸入し、余っているガソリンを輸出しているとの話を聞いたこともあります。

さらに、車両重量が重く、大出力とトルクが必要な大型トラック、大型バス、さらには建設機械などの大型産業機械はもちろんディーゼルの独壇場です。シェールガスブームに沸くアメリカでは大型車両への天然ガスエンジン適用の動きもありますが、基本はディーゼル、さらに船舶用エンジンでは小型船外機エンジンを除くとこれもほぼ100%ディーゼルエンジンの世界です。このように、世界全体としては、ガソリン、ディーゼルを用途によって使い分けているのが実情です。

日本では、もう少しディーゼル油比率を高めた方が精製効率、経済性が有利との話がありますが、これも将来の石油需給シナリオの中で考えるべきで、ほんの一部の小型自動車のディーゼルシフトではCO2削減効果も微々たるものです。ですから、ディーゼル対ガソリンハイブリッド、どちらが本命などの議論はあまり意味がありません。

確かに欧州、特にフランスではこのところ小型自動車のディーゼル比率が急激に高まっており全体の60%、今年年初来の新車販売に占める割合は83.5%に達したとの報道もあります。この流れは、欧州の自動車CO2規制の影響によるものと見え、欧州自動車メーカー各社が速効性のあるCO2削減手段として、小型ダウンサイジングとディーゼル比率アップを選んだとも言えると思います。

欧州環境庁は今月暫定統計値として、昨年販売登録された新車の平均CO2排出量は135.7g/kmで、前年に比べ4.6g(3.3%)減少したと発表しました。欧州では、新車のCO2排出規制強化として、2015年130g/km、2020年95g/kmがすでに決定済み、ガソリンでもディーゼルでも、従来技術の延長では乗り切れないことは明かで、ハイブリッド化、プラグイン化、電動化合わせて大幅なCO2削減を進めていくことが求められています。

ディーゼルとガソリンの環境特性の違い

ここで、ガソリンエンジン車とディーゼルエンジン車での燃費とCO2性能を比べるときの留意点についても少し述べたいと思います。ディーゼルエンジン用燃料の軽油は、比重がガソリンより少し重く、また発熱量も少し多いので、同じ1リッターでも発生する熱量が多くそれだけでも体積当たりの燃費は良くなります。しかし、その燃費値が良くなった分だけCO2排出量が減る訳ではありません。ご存じのように、石油燃料はカーボンCと水素Hが合成された炭化水素燃料です、ガソリンと軽油では、含まれるCとHの比率がことなり、軽油がガソリンに比べすこしCの比率が多い燃料です。このため、同じ重量の燃料を燃やする、軽油を燃やした時のほうがCO2の排出量が多くなってしまします。

もちろん、燃料代は単位体積あたりですから、日本では燃料のリッター単価がやすく、比重の重い軽油を用いるディーゼルエンジン車は実走行時の効率が高いだけではなく、比重分も消費体積量が少なくなり、燃料代の観点からは有利になります。しかし、CO2排出量に関して言うと、リッター燃費の差ほど効果は持ちません。

ガソリンエンジン車では1980年代にはほぼ全ての車が触媒を採用し厳しくなる排気規制を乗り切ったのに対し、ディーゼルエンジン車排気のクリーン化はディーゼルの燃焼特性や燃料の成分の違い、さらにこれらも影響してガソリンエンジンのような触媒など後処理システムを有効に使えませんでした。

1990年代に入り、後処理システムの性能を劣化させる燃料中の硫黄分の除去などが進められいわゆるクリーンディーゼルと呼ばれるものが登場したものの、永らく微粒粒子成分(パティキュレート)の規制をガソリンエンジンのレベルから緩めるダブルスタンダードが採用されてきました。

これも、2014年には欧州でも新たなディーゼル規制ユーロ6が導入され、ほぼガソリン、ディーゼル同じレベルのクリーン度が要求されるようになります。これに対応できてからが、ガソリン・ディーゼルそしてハイブリッドの本当の勝負の時で。欧州基準であれば、2020年総平均CO2排出量95g/kmを2020年よりも早く達成するように、経済性、燃費性能、CO2排出性能を競いながら技術を進化させて欲しいものです。

ハイブリッド、プラグインの拡大がすすめば、この早期達成も十分可能、またCO2削減は2020年が打ち止めではありませんので、この先の次世代自動車を視野にいれると、ハイブリッド「ガラカー」などとはとても言える状況にはありません。

様々な技術を組み合わせて新たな自動車を

余談ですが、私の大学時代はボイラー燃焼も内燃エンジンを含む、燃焼全般の研究室に所属し、卒業論文は石炭ボイラーの燃焼というよりも燃焼したあとの残骸をボイラーに滓をのこさず融かして排出させる研究でした。このときから将来は自動車会社でエンジン開発が希望し、大学院に入った時に担当の先生に泣きついてエンジン燃焼のテーマに変更してもらった記憶があります。このエンジン燃焼のテーマが、ディーゼルの低温始動時の燃焼でした。

トヨタに入ってからは、ディーゼルエンジンの担当になったことはありませんが、クリーンエンジンの開発リーダーをやっていた92~94年頃には欧州自動車メーカーを回り、ガソリンエンジン用の触媒の活性低下をふせぐクリーンガソリン成分の採用や、ディーゼル用軽油から後処理触媒の活性低下をもたらす硫黄成分の除去などの働き掛けを行いましたので、いまのディーゼルの進化にも影ながら寄与してきたと自負しています。 

2週間ほどまえのブログで取り上げた、豊田佐吉翁が懸賞をだした電池まではいかなくとも、今のリチウム電池の一桁エネルギー量の多い電池が見いだされない限り、また今の3分の1以下のコストが実現できた上で、低CO2/エネルギー効率の高い水素製造、充填インフラ事業採算性がとれる水素燃料電池自動車の実用化に見通しがつけられない限り、重量を増やさず、余分なスペースをつぶさない範囲で電池を賢くつかい、ハイブリッド、プラグインハイブリッドを使って2020年以降もCO2 95g/kmからさらなる低減に取り組んでいくことが求められます。ディーゼルエンジンもガソリンエンジンもさらに高効率化が進むと、そのハイブリッド車の効率はさらに進化します。

もちろん、エコ性能だけではなく、走りの性能、自分が走りをあやつるトラクション性能、操舵性能、音、乗り心地といった感性性能、当然ながらぶつけない、ぶつけられない安全性能も進化した次世代ハイブリッド車へのチャレンジを期待します。進化へ努力を怠れば、もちろん、あっという間にそのハイブリッドシステムは「ガラハイ」になってしまうことを銘記すべきでしょう。

東日本大震災から1年

東日本大震災から1年が経過しました。11日は、最初の地震が発生した14:46分、東京国立劇場で天皇皇后両陛下ご参列のもと行われた政府主催の追悼式をテレビでみながら、その前で黙祷をささげました。TVの特別番組を見、被災地の現状、当時の映像と様々なインタビュー、検証番組をみながら、この1年、そしてこれからの日本を考えながら一日を過ごしました。

この一年間、日本の、そして日本人の強さと弱さの両方を痛感する一年だったように思います。この100年間の世界で発生した地震の規模として五指に入る、地震国日本でも観測史上最大の大地震、最大震度7の大きな揺れと、この大地震が引き起こす大津波被災により、2万人に近い尊い人命を失い、避難者総数30万人を越える、広域大災害となりました。その大きな被害を受けた被災地で、迅速、整然として救難活動、被災者の方々の整然とした、またお互い助け合いながらの避難生活と復旧への取り組みには、海外からも驚きと賞賛をもって不屈の日本人パワーをたたえる声が寄せられました。また、全ての新幹線を安全に停車させるなどの防御を果たしたことも、日本の科学技術レベルの高さを示すものだったと受け止められています。

呆れるばかりの中央の迷走

しかし、この地震と大津波が引き金となった、福島原発事故とその後の対応は、それとは正反対なものでした。原発安全神話の崩壊を目の当たりにし、混迷をさらに加速させた事故後の政府、東電の迷走ぶりには、不屈の日本人パワーと対比して、政治、行政、さらに準国営巨大電力会社経営陣にプロと呼べる人材は全くいないことを露呈させました。そればかりか、被災者の目線、国民の目線、海外からの目線から大きく外れ、右往左往するばかり、あげくの果てに政局論争の足の引っ張り合いを繰り広げるなど、そちらはあきれるばかりの一年だったように思います。いまも海外との付き合いがありますが、そちらからの情報がいま振り返ってみれば、国内の政府発表や国内主要メディアからの発表よりも正確なものでした。

しかし、これは今回に始まったことではなく、くさいものには蓋、科学議論さえ封殺し、有事/リスクスタディーすらやってこなかった付けが一気に噴き出したように感じます。英雄待望論には与しませんが、少なくとも、国の将来、国民の将来、人類の将来を考えるプロフェッショナルな政治家、官僚の登場を待ちたいものです。

一方、政治屋、中央省庁のセクショナリズムに染まった一部の官僚たちから足を引っ張られながらも、住民に軸足を置く地方自治体、さらに生産/経済活動を続けなければやっていけない民間の必死の活動、さらには日本人パワーを発揮したボランティアの活動が、復興を支えてきたいように思います。TVを見ても、原発事故への対応、放射能汚染地区の除洗の遅れだけではなく、がれき処理が遅々として進んでいない様子や、復興への町作り、産業作りへの遅れなどが非常に気がかりです。

現地での復興の兆し

しかし、震災により大きくダメージを受け、サプライチェーンが寸断され生産活動の停止を余儀なくされた産業活動の回復は、産業界をあげた復興への協調路線と、その作業に携わった多くの方々の汗と叡智の結集により、世界を驚かせるスピードで進展が見られました。自動車関連では、東北、北関東地区にハイブリッド部品の生産拠点があり、ハイブリッド車制御用半導体、電池、モーターインバータ部品などさまざまな部品生産を行っていましたが、各社からの応援、専門家集団のチーム編成などその普及への努力もあり、秋口には元のペースにもどしたのも日本人パワーの結集といえます。

今年に入り、ハイブリッドOBとして、東北産業活動のシンボルとしての嬉しいニュースも入ってきました。震災の影響を大きくうけ、生産活動の停滞により落ち込んでいた家日本の経済活動に明るさが差し始め、またエコカー補助金もありますが、自動車の販売が上向き、その中でも東北の拠点で生産を開始したトヨタの新しい小型ハイブリッド車アクアがフル生産をしても追いつかないほどのお客様の支持をいただき、東北で復活生産を始めた部品とともに続々とお客様のもとに送り出しているニュースです。

今週のTVニュースにも、大津波により大きなダメージを受けた仙台港が急ピッチの復旧工事を行い、そこから続々と北米に送られるアクアの積み込み作業が取り上げられていました。発注いただいた日本のお客様に(私もその一人ですが)永い期間お待ちいただくのは申し訳ありませんが、その東北工場での組生産能力をさらに増やす作業も行われています。岩手、宮城、福島の部品工場からの部品生産もピッチが上がっています。その部品の一部はまた仙台港から欧州にも送り出され、今年の夏にフランスで生産を開始する欧州版アクアにも供給されるものと思われます。アメリカでも、欧州でも、東北復興のシンボルとして、また日本の環境次世代車として羽ばたいてくれることを祈っています。

関東自動車岩手工場(金ヶ崎市)生産
トヨタ新型ハイブリッド(HV)
アクア

経済的な復興のために現実的な行動を

人が動き、モノを作り、そのモノが動きだして、復興が、そして実態としての経済活動がスタートし、リアルの景気回復がそれを支えることになります。輸送機関、その一つであるクルマにより、人を動かし、ものを作りだすモノを運び、それにつれてお金も動き出します。その復興、景気回復へのサークルが機能を始めたように感じます。もちろん、無駄の垂れ流し、使い捨て文化ではこれからの人類が立ちゆかなくなるでしょうが、我慢、節約だけでは、人の動き、モノの動きをシュリンクさせ、被災地の復興活動にも支障をきたしてしまいかねません。

その懸念点、人を動かし、モノを作り、モノを動かし、人間活動を活発にするにはマンパワーとしての精神的なエネルギーに加え、電力、動力、熱といった実体エネルギーが必要です。安易な原発再開は許されませんが、現時点ではまだ机上の空論に留まる、太陽光、風力といった自然エネルギーに頼れないことも明かです。ハイブリッド同様、化石燃料を賢く使い、実体としての資源/エネルギーの安定供給を計ることが復興、景気回復の鍵を握ります。

与党、野党を問わず、このご時勢に政局にうつつを抜かす政治家や、自分の都合、組織の都合で動くエゴ官僚、その官僚化した巨大電力会社経営陣には早くお引き取りいただき、国の将来、国民の将来のために使命感をもって立ち上がるプロとしての政治家、プロとしての官僚、プロとしての電力会社経営者が若い世代から出現することを信じたいものです。

モビリティ新時代へ

2011年の自動車販売台数 ―日本勢・次世代自動車の苦戦―

2012年に入り一月が経ち、昨年の新車販売台数などの自動車マーケットの統計データがいろいろ公表されてきています。世界の新車販売台数は、データの出所とカウントの仕方によって僅かなブレなどもありますが、史上最高をまた更新したのは間違いなく、前年比4%の7,750万台ほどのようです。一方、日本国内については、甚大な大震災の被害と、秋のタイ大洪水による影響によって421万台と1980年代の始めの水準にまで落ち込んでしまいました。この大震災・大洪水の直撃を受けたトヨタ、ホンダは減産により大きく生産&販売台数を落としました。

また、ハイブリッド車(HV)・電気自動車(EV)といういわゆる次世代自動車の販売については、日本にはなかなか情報が伝わってはいませんが、世界全体の販売は伸び悩みを続けています。統計データが発表されているアメリカでは、リーマンショック後の自動車マーケット縮小とトヨタ車リコール問題の影響で、2008年をHVの年間販売台数が低下し続けています。一昨年末に発売を開始したGMのプラグインハイブリッド車(PHEV、ただし彼らはレンジテンダー型電気自動車:EREV“Extended Range Electric Vehicleと呼んでいます)Voltの発売を開始、また日産もEVのリーフを発売し、HV/EV時代の到来と言われましたが、北米販売台数は合わせても2万台には届きませんでした。

昨年のアメリカは景気回復気配とリーマン後の販売減少の揺り戻しの影響もあり、新車販売台数は2010年の1,160万台から2011年1,280万台への100万台以上も増加しましたが、その中でHVは5000台減、HVとEV合わせても1.6万台増の286,000台のシェア2.25%に留まっています。

http://www.electricdrive.org/index.php?ht=d/sp/i/20952/pid/20952
(EDTA: Electric Drive Transportation Association HP)

販売回復が期待できる2012年

しかし、年をまたいだ今年は日本では補助金復活の後押しもあり、1月の新車販売台数では日本は前年比36%増を記録しました。もっとも昨年1月はエコカー補助金の打ち切りの影響から大きく落ち込んだ月ではありましたが、とはいえこれは明るい希望を抱かせるものであり、年間販売も500万台の大台に復活することが予想されています。

日本の自動車保有台数は約7,500万台ですから、平均保有期間が15年とすると年500万台ずつの代替マーケットになり、不景気等の影響で保有期間が長期化しているものの、年間500万台超の販売は十分に期待できる数字です。

アメリカの1月の新車販売台数も昨年比11.4%増で、年換算では1400万台越えを見据える数字で、大震災、タイの大洪水の影響から脱した日本勢も販売台数を回復させてきているというデータが出ています。中国のデータはまだ判りませんが、今年は2000万台越えとの景気の良い声も聞こえてきますので、世界全体では8,000万台越えが期待されています。

とはいえ、この世界販売の98%以上が従来車(ガソリンエンジン車もしくはディーゼルエンジン車)であり、まだHV、EVは全体では2%も占めてはいませんので、メディア等で伝えられる次世代自動車の情報の多さの割には、日本以外はまだまだ大きな動きにはなっていなかったというのが実際のところです。

一方日本では今まで販売された次世代自動車の大部分が日本メーカーのクルマで、この15年、日本勢がパイオニアとしてこの次世代自動車普及をリードしてきたということもあり、他国に比べて次世代自動車比率が高い状況となっています。最初に記したように、大震災、タイ大洪水の影響も大きく受け、全体での新車販売台数は大きく減少し、台数ベースではHVとEVもまた減少しましたが、シェアは大きく伸び、通年でも10%を越えた模様です。11月には、単月で14%を越え、HVはもはや“普通のクルマ”となり、EVであるリーフやアイミーブも時々見かけるようになりました。

また、昨年12月26日に発売を開始したトヨタの小型ハイブリッド車アクアの受注は、1月末には12万台を越え、補助金の後押しがあるとは言え、このクラスの本格ハイブリッド車への期待の大きさを今更ながら証明することとなりました。

「普及」の大切さ

ここまで販売台数についてのお話をしてきました。こういった販売台数データというと、どちらかというと企業の業績や状況を見極めるといった、経済ニュースの範疇で扱われているものです。いっぽう次世代車というと、新技術や未来性などを中心として取り上げられる機会が多く、その後の販売台数推移などは、大ヒットをしたという流行商品としてという場合以外においては、関連付けて語られる機会が少ないように感じています。

しかしながら、次世代車の本質を考えると、販売台数は非常に重要な事項です。というのも、次世代車が担うとされている化石資源利用の低減や環境負荷の低下は、従来自動車を数多く置き換えることによってのみ、大きな効果をもつものだからです。

私は以前より講演会等で繰り返し
「環境性能チャンピオンのプロトを作り、テストコースを走らせることは簡単」
「いくら環境性能がチャンピオンでも、ショールームの展示用や、車庫で埃をかぶり滅多に使われない車ではエネルギー保全、環境保全には貢献しません」
「普及しうるエコカーとして、21世紀の先駆けとしてハイブリッド自動車プリウスを開発し、その進化に取り組んできました」
と言い歩いてきました。

日本では、ハイブリッド車が普通のクルマになってきましたが、世界ではこれからが本番、これまでは及び腰だった欧米勢の本気で開発に取り組み、また韓国勢の追い上げも激しく、EVも含めやっと普及に向けた次世代自動車の本格開発競争時代を迎えたと思っています。

日本のマーケットから世界のマーケットへ

自動車産業がいかにグローバルビジネスと云えども、自国のマーケットが元気にならなければ、次世代自動車転換への開発陣も元気にはなれません。自国マーケットが活性化し、そのユーザー、販売店、サービスとの密なコミュニケーション、さらに激烈な競争の中で磨かれて商品は進化していきます。図に1990年以降の日本での車両販売台数推移を示します。

この20年、右肩さがり、昨年は大震災による減産の影響も大きいとは云え、1990年の55%にも届いてはいません。この中で、海外生産比率を増やしながらもハイブリッド車などで輸出台数をキープしつつ、グローバルな成長を計ってきたのが日本の自動車産業です。

この図をみていても、日本社会の経済成長の停滞が如実に判ります。乗用車以上に、貨物車、商用車の販売台数が減少しています。クルマの使用期間が長期化し、また人流、物流ともに縮小してきた日本経済の縮図を見るようです。復興の本格化と、景気回復で人流、物流が活発化することをきっかけに、相乗効果で経済成長を果たし、日本を元気にして欲しいものです。

この中で、自動車マーケットが活性化し、その中で必然的にハイブリッド車、電気自動車シェアが増加していくことが、保有台数の中での次世代自動車比率増加に繋がって行きます。日本がその転換をリードするパイオニアマーケットとなることにより、世界の次世代自動車、モビリティ新時代転換のリード役を続けられるように思います。

一方で、10%のシェアを超えたことは、一部のハイブリッド車だけで普及拡大を図ることからの転換期を迎えたとの見方もできると思います。
乗用車、商用車でもミニバン、ステーションワゴン、SUV、スポーツカーなど、さまざまなジャンル毎に、その用途に応じ、エコ性能は当たり前として、それ以外の走行性能、フィーリング、さらには価格としてお客様に受け入れられるクルマが求められます。大型トラックなど物流用のクルマももっと低燃費、低CO2なクルマへの切り替えが必要です。

しかし現状ではこのような様々なジャンルまでへの品揃えにはまだなってはいません。グローバルマーケットでは、さらにその用途とクルマの性能への要求は多様です。もちろん、日本マーケット限定のガラパゴス次世代自動車では世界をリードできません。様々なジャンル、様々なマーケットでの要求に応える次世代自動車の開発はこれからです。今年が、日本勢が“やせ馬の先走り”にならず、これまでのアドバンテージを生かし次世代自動車転換をリードできるかどうかの転換点になる予感がします。

今年こそ、国内マーケットが活性化し、経済的にも明るい年になることを期待していますが、台数増だけに浮かれすぎず、その中で次世代自動車への次ぎの手、技術進化と様々なジャンルへの展開に手を抜くことなく取り組んでこそ、モビリティ新時代を担い続けられると思います。

Next Generation Mobility

明けましておめでとうございます。2012年が平穏に、そのうえ被災地の復興と日本の飛躍の年になることをお祈りいたします。

今年最初のブログのタイトルとして“Next Generation Mobility”を取り上げてみました。

私が主宰している株式会社コーディアの活動として、昨年から自動車関連のエネルギー、環境動向お伝えし、将来自動車、およびそのビジネス動向研究の場として、この趣旨をご理解いただき、ご支援頂ける方々を対象とした、会員情報サービスとコンサルタント活動をスタートさせています。

その会員誌のタイトルが“Next Generation Mobility Technology & Business Report”としました。活動スタート前の2月に00号を発行し、昨年12月末に発行した10号まで、月1回会員の皆様にお届けしてきました。また、11月には、会員および会員のかたのご紹介者を対象に、名古屋を会場に“Next Generation Mobility Seminar”として、次世代モビリティ講演会を開催させていただきました。

この”Next Generation Mobility”との名称については、なにを対象分野とする活動かわかりにくいとのご意見もいただきましたが、私としては、エネルギー資源問題と環境問題へと従来自動車の大変革が迫られる中で、人間と自由な移動体(Mobility)として発展を遂げた自動車の次ぎ、従来自動車の延長でもまた単なるエコカーでもない、Next Generation Mobility出現の後押しをしたいとの想いから、このタイトルを使うことにしました。

昨年のNext Generation Mobilityを取り巻く環境

昨年は、国内外とエネルギー、地球環境問題とそれに大きく関わる“Next Generation Mobility”を巡り激動の一年でした。また、この激動は収まることなく、こらからも拡大していく予感すらします。日本では東日本大震災とこれによる福島第1原発事故により、深刻な放射能汚染問題を引き起こしてしまいました。

また、大震災による精油所の被災、物流ラインの被害による自動車燃料供給ショート、電力不足による計画停電騒ぎ、夏の節電、休日シフトなど、現代社会が安定かつ膨大なエネルギー供給によって成り立っていることを痛感させられました。日本の外に目を転じれば、昨年1月のチュニジア政変を皮切りにエジプト、リビア、イエメンなど、北アフリカ、中近東諸国の政情不安、年後半にはイラン原爆開発による禁輸問題など主要産油国の政治不安によって、原油供給不足を懸念し、不況下にも関わらず、原油価格が乱高下する一年でした。

地球温暖化問題では、12月に南ア・ダーバンで開催されたCOP17において、やっと温室効果ガスの国際的な削減への取り組みに付いて合意が成立しました。具体的な目標、その日程、実施方策がまだまだ未定で玉虫色の内容ですが、これまでの国際協定である京都議定書に加わっていない、世界最大のCO2排出国である中国、ナンバー2のアメリカ、ナンバー4のインドが加わり、さらにはCO2排出量が急増している新興国を含め世界全体としての温室効果ガス削減を目指す新しい枠組み作りの合意は一歩前進です。

この現代社会生活を支え、またそれがもとで地球規模での気候変動、地球温暖化の原因とされているのが、世界の1次エネルギー全体の87%を占める化石燃料です。さらに、この1次エネルギーシェアのトップ38%シェアを占める石油を燃料として使っているのが自動車を含む輸送機関です。1次エネルギー全体としては、約20%を消費しています。

一次エネルギー消費割合

エネルギー資源問題への対応が先か、気候変動、地球温暖化問題への対応が先かは別として、人間の活動が地球のキャパを越え、このまま化石燃料を使い続けることはできそうもありません。自動車も同様、まず低燃費、さらにポスト石油への適応をはかるNext Generation Mobilityへと進化を果たすことが待ったなしです。

エコ性能は当たり前の世の中へ

昨年来、トヨタのコマーシャルに“Fun to Drive Again”とのフレーズが流れ、昨年12月の東京モーターショーでも、エコとともに”Fun to Drive”なクルマが打ち出されていたように感じました。低燃費、クリーン、エコ性能の高さは当たり前、その上で、移動の自由、自由な旅の手段であり、“Fun to Drive”を体感できるMobilityが、私のイメージするNext Generation Mobilityです。欲を言えば、それを若者世代にも手の届く価格で提供することができれば、また世界のNextモータリゼーションを日本勢がリードできることは確かです。

2009年のホンダ・インサイト、引き続く3代目プリウスの発売で、日本ではハイブリッドが普通の次世代エコカーとして大きく普及拡大を果たしました。しかし、世界的に見ると、景気の低迷もありますが、アメリカ、欧州ではハイブリッド車の販売台数は伸びず、頭打ち状態にあります。


http://www1.eere.energy.gov/vehiclesandfuels/facts/2011_fotw703.html

いまアメリカでは、昔のように大型ピックアップトラックや大型SUVの販売が復活してきています。電気自動車と称するGM VOLTプラグインハイブリッドも、また電気自動車全体の販売状況は決して好調ではありません。これは、またこうしたエコカーの基本性能、商品魅力、そして価格がまだまだ普及をブレークさせる段階にきていないことが原因と思います。

その中で、今年こそ、日本だけはなく世界でのハイブリッド車ブレークに期待しています。
公式発表は有りませんでしたが、昨年末でトヨタハイブリッドの世界累計販売台数は350万台の大台に届いている筈です。今年は、トヨタアクアを皮切りにトヨタのハイブリッドラインアップがさらに拡大され、またプリウスPHVも登場します。

他のメーカーに目を転じても、昨年の東京モーターショーの部品館にはJATCOから次ぎの日産FF車用の機械式CVT変速機を使った2クラッチ1モータタイプのハイブリッドトランスミッションが展示されていましたし、またホイールインモータなどさまざまなハイブリッド駆動系の提案がありました。ホンダも年末に、シリーズハイブリッドベースにクラッチ直結モード切り替えの2モータ新型ハイブリッドの発表がありました。また欧州勢も続々と本格ハイブリッドを導入してきます。競争があって、競い合ってこと技術が進化します。クルマの基本性能、その上での“Fun to Drive”に拘った欧州勢とのハイブリッド技術競争も楽しみです。

いずれにしても、上の図に示したように世界の1次エネルギー需給シェアに大きなパラダイムシフトが起こります。自動車もそのパラダイムシフトの主役中の主役、単にその燃料がポスト石油としてバイオ燃料、電池、水素に替わるだけではなく、その製造から販売、整備、また燃料供給網、カーシェア、リース、公共交通機関へのモダルシフトとその形態が大きくかわっていくように思います。今年も、そのパラダイムチェンジのゆくえとしてNext Generation Mobilityに注目し、このブログでもシニアエンジニアの回顧録とともに、そのトピックスをお伝えしていきたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。

東京モーターショーの印象

人出が戻った東京モーターショー

一昨日(12月6日)、東京有明ビッグサイトで開催中の東京モーターショーを見学に行ってきました。これまではメディアデーや特別公開日の説明員など、出品者側として入場していましたので、一般公開日に、入場券を買って入場するのはなんと40年ぶりでした。
2009年は、残念ながら海外出張と重なり、見学できませんでしたが、それまでの幕張会場から都心から近い有明会場となり便利になったにもかかわらず、リーマンショックの後遺症で海外メーカーは殆ど出品しなかったことも重なり、入場者数が激減し日本の将来自動車マーケット縮小が加速していくのかと心配になった記憶がありました。

今回は平日でまた雨模様の天気でしたが、会場周辺は駐車場へ入るクルマで渋滞、ゆりかもめもラッシュ時間のように混み、会場内もごった返すまではいきませんでしたが、若者からお年寄りまで、大賑わいでした。新聞報道によると、12月3日の一般公開日から5日までの入場者数は、2009年の1.5倍以上を記録し、平日の5日も2009年に比べ2倍以上に増加したそうです。この日も、混み合う状況、人気車には近づくにも時間待ちが必要、乗り込む人はさらに長時間待っている様子でした。

人気は購入候補の国内車と外国車

OBとなっても、展示車の周りに集まっている人の話に聞き耳をたて、その様子を観察する癖が抜けませんが、その観察ではプロトよりも発売間近や、話題の市販車に人気が集まっていたように感じました。次ぎの購入候補を探しに来られて、そのスペックを確認し、乗り込んで見ておられる方も多かった印象です。トヨタOBとしては、まもなく販売を開始する新型ハイブリッド車アキュアが好評のようで、正直ほっとしました。フィットハイブリッドに正対抗し、ハイブリッドマーケット拡大に競い合って欲しいものです。

トヨタ・アクア
トヨタ・アクア

盛況だった理由の一つが、2009年はほとんどの海外メーカーが出品を見送ったのに対し、今回はドイツ、フランスの欧州勢が出品したことも要因と思います。昨年10月のパリAS,今年3月のジュネーブAS、見学はできませんでしたが9月のフランクフルトMSに出品した多くのプロトおよび最新の市販車展示でそのブースは大賑わいでした。

欧州勢のプロト展示は、ジュネーブ、フランクで公開されたものの一部だけでしたが、実際にその大きさ、質感、モックだけか、実体が詰まったものか確認することがで、やはり現地、現物、現車が大切と痛感しました。この中では、フランクフルトMSのトピックスとして紹介したDaimler Smart社のEVとBMWのEVプロト i3を見ることができました。9月29日のブログではi3を含め、今回は展示がなかったVWのe-UP!含め、ドイツ3社は全て従来車の代替ではなく、コミュータEVジャンルに絞ってきたと感想を述べました。

Smart ForTwo Electric
Smart ForTwo Electric
BMW i3
BMW i3

確かに、DaimlerのSmart-ForTwo-Electric-Driveはベース車そのまま実用に近いコミュータEVでしたが、BMW i3は予想以上に大きなサイズのコンパクトクラスのクルマでした。 
カーボンファイバー製ボディーの量産工場を準備しているとの報道もありますが、都市のチョイ乗り車としてどれくらいの価格をつけ、BMWとしてこのクルマをどのように位置づけるつもりなのか興味津々です。

日本マーケットがさらにシュリンクすると、2009年のように、海外勢の東京MSスキップが常態化するのではと心配していました。しかし、今回盛況であったこと、世界に先駆けて若者の自動車離れが進行している日本でも、自動車MSにこれだけの人を集め、自動車に対する熱気と次の自動車に対する期待感を感じたことは嬉しい予想外でした。

次世代自動車でのサプライズは無し

しかし、入場者の熱気、次ぎのクルマへの期待感の高さを感じた一方、次世代自動車の方向性を示すメッセージ性のあるクルマ、またサプライズを与えてくれたクルマは日本勢だけではなく、欧州勢含め正直いってありませんでした。

いずれも想定内、それも期待値の範囲、ビジョン、戦略を打ち出しているはずのコンセプト車ブース、ビジョン発信のセンターブースも、エコ/エコの大合唱、今はやりのスマートグリッド・スマートハウス、緊急給電のV to Gを売りにするか、ノスタルジックなスポーツカー、相も変わらず大排気量ビッグパワーセダン、SUV、ミニバンのオンパレード、カタログ燃費値の高さを謳うエコのクルマと、その対極として若者に対してというよりはクルマにとって良き時代を過ごした高所得中高年向けにエモーショナルなFun to Driveを謳うクルマの二極化の印象を受けたのは私だけではなかったようです。

確かに、今回の東京だけではなく、パリでもジュネーブでも、エコを謳うクルマ以上に多く人を集めていたのは、このようなクルマであったことは事実です。声高にエコを叫び続けることに、すこし飽きとうっとうしさを感ずるようになってきているのではと感ずるのはクルマ屋OBの過剰反応でしょうか?

低燃費高効率、エコ、クリーンは、これからのクルマとしては当たり前、ガソリンの臭いのするクルマや少しでも白煙、黒煙が出るクルマは論外、その上でカントリー路、山岳路などでクルマを走らせる快感を感ずるクルマ、長距離ドライブにも安全にストレスなく出かけられるクルマが目指す方向だと今も頑固に思い続けています。

エコと走りの両立を目指そう

初代プリウスは、21世紀として目指すべきクルマの基本性能として、エコ性能でのサプライズを目指しました。それからの15年間は、エコ性能をさらに高めながら、クルマの走行性能として世界中のさまざまな走行環境の中で、安全、安心に走れるくるまに成長してきたと思います。しかし、ここで述べた低燃費・クリーンの高いレベルのエコ性能を持ちながら、私を含めて(少しノスタルジックな走りへの想いは入りますが)時には右脳でのドライビングを楽しませてくれるクルマの実現が夢でしたが、現役時代にはそのチャレンジにまでは手を広げられませんでした。2極化ではなく、エコと走り、そして走行安全の高いレベルの融合にこれからも日本のクルマ屋としてチャレンジし続けて欲しいところです。

何度か、このブログでも述べてきましたが、自動車のこれからの進化を日本勢がリードしていくには、やはり自国マーケットが活性化し、激しくフェアな開発競争を行い、その刺激で切磋琢磨していくこと、それをしっかりとユーザーに発信してくれるドメスメディアのサポートが必要です。この15年、少子化、若者のクルマ離れ、不景気と日本の自動車マーケットは右肩下がりで縮小するばかりでした。

マイコンエンジン制御、4バルブエンジン、過給エンジン、トラクションコントロール、VVT-i(可変バルブタイミング)など、私が開発を担当した技術、新エンジンはいつもクリーンと高効率、高出力性能の両立を目指したつもりです。その全ての新技術、新エンジンをまずは日本向けのクルマに採用し、その上で、改良を加えて、海外車両に拡大してきました。

初代ハイブリッドプリウスも1997年12月の販売は日本向け、日本のお客様に育てていただいて、その経験をフィードバックし2000年に大改良を行い、同時に欧米導入を図り、お客様に信頼していただき今の普及拡大に繋がったと確信しています。2極化ではない次世代モビリティも日本勢が、日本マーケットから発進・発信し、世界へ拡大していってくれることを熱望しています。