東京モーターショー2013の印象

東京モーターショーが有明の東京ビッグサイトで今週末まで開催されています。私は一般公開日の前日の11/22の特別招待日と、昨日の11/27の2回、会場を訪れました。公式発表によると11/22の入場者がプレビューナイトの8,600人を含めて40,000人、11/27の入場者が77,600人ということですが、平日である11/27でも主要なメーカーのブースは人で溢れている状態でした。平日でもこれで、11/23には135,800人とこの倍近い人出があったとのことですから、休日にはまさに立錐の余地もないという状態で、大きな盛況を見せているといってもよいのではないでしょうか。

ご存じの方も多いでしょうが、東京モーターショーは1990年初頭をピークに入場者の減少が続けていましたが、会場を幕張メッセから東京ビッグサイトに移し、また欧州メーカーの出品が復活したことなどもあって前回の2011年には開催期間は縮小しながらも人出が戻ってきていました。これまでの入場者の推移を見ても、今回も前回と同様かそれを超える入場者が見込めそうです。週末の人混みを想像するに、東京ビッグサイトのみでの開催ではこの規模の入場者数が限度のようにも感じます。

さて、今回は八重樫尚史が、東京モーターショー2013について、話題のコンセプトカーや新車等については、多くのメディア等で触れられているでしょうから、すっぱりと割りきってそこには触れず、次世代車や次世代技術の点からショーから見る全体の業界の印象などに極私的視点で書いていこうかと思います。

プラグイン車の存在感の無さ

まず、今回のショーで最も強く印象に残ったのは「プラグイン自動車の存在感の無さ」でした。勿論、自分が次世代自動車に係る仕事をしているので、そういった側面から見ての印象ですが、前回と比較しても明確にプラグイン車(EV、PHEV)の存在感が低下していました。

これは以前からモーターショーの記事などでも触れていることですが、世界のどのモーターショーでも主役は憧れの対象としてのコンセプトモデルや高級スポーツカー等で、それに加えて購入目当ての新型車に乗って触ろうというのがショーの姿だと思います。その中で環境技術を全面に押し出したいわゆる「エコカー」やそうした技術の解説展示などは、自動車メーカーが大掛かりに打ち出しても会場の入場者の視線を集めてはいませんでした。

そうした反応を感じ取ってということでしょうが、今回のショーではメーカー毎に色彩の差はありますが、自動車メーカーはブース自体を映像や舞台建てを駆使してショーアップし「インタラクティブで3次元のCM」に作り上げているという印象を受けました。技術などの解説はその隣にある部品メーカーのブースなどで行い、そうした役割分担がこれまでよりも明確になったように感じます。特に日本市場で大手のトヨタとホンダのブースではそれを強く感じ、ブースの面積の割には展示車を絞りまた技術の詳細解説は最小限にし、全体としてのショーを作り上げていたとの印象です。

本題のプラグイン車についてですが、前回等はブースの良い場所に充電ステーションをおいて充電している姿を見せた車両があったものですが、今回はそうした車両は非常に少なくなりました。EVの旗手である日産のブースでも、主役はコンセプトモデルと量産車ではHVの新型『スカイライン』等で、『リーフ』『New Mobility Concept』『e-NV200』はブースの入り口にあるものの、主役から一段降りた場所にあったという印象です。

日産 eNV200
日産 eNV200

主役にプラグイン車を配していたのはドイツ勢のVW、アウディ、BMWで、VWはディーゼルPHEVの『XL1』『Twin UP!』、アウディもPHEV『A3 e-tron』を雛壇に、BMWも中心にEV『i3』とPHEV『i3』を置いていました。とはいえ、自動車ブースの中で、環境を強く謳って周辺インフラ込みで「スマート」をアピールするような展示は見当たりませんでした。

VW TwinUP!
VW TwinUP!

Audi A3 e-Tron
Audi A3 e-Tron

そうした部分では前回に引き続き「Smart Mobility City」と銘打って、こうしたプラグイン車とその周辺インフラについて自動車メーカー以外の企業などを含めたブースが設置されているのですが、場所は長大なエスカレーターに乗っていかなければならない西棟の上階に置かれ、明らかにこの区画は他の自動車メーカーのブースと比較しても人が少ないエリアとなっていました。(実は私も最初に訪れた際には、その後に予定があったこともあって、ここにこうしたブースがあることを知らず、2度目で初めてこのエリアを見ました。)ただ、これは場所だけの問題ではなく、やはりこうした展示に人気が集まらないという事を示してはいると思います。

ただしホールの一角に電池サプライヤーとして参加していたパナソニックのブースと、非常に小さなブースながら参加していたテスラの『Model S』はそうしたなかでも人を集めていた事は書き残しておきたいと思います。

「離れ」ではなく「日常化」したエコカー

ただし、こうしたEVやPHEVの注目の少なさによって「エコカー離れ」が起こっているというのは早計に過ぎると考えています。というのも既に新車のかなりの割合がHVとなっている日本ではもはやそれは日常であり、また欧州各社もダウンサイジングは当然となっており、そうした技術を大々的にこうしたショーで訴える必要性が無くなったからともいえます。

それを実感できるのは、住み分けているのだろうかと書いた技術展示を中心とした部品メーカー等のブースで見ることができ、そこで展示されているものはエンジンの部品などであっても摩擦の低減等を行って効率性の向上をして燃費を高めるというものが殆どでした。ただし、そうした展示に興味を持つ人の割合は勿論少なく、そういった場所では観覧者もスーツ姿の人が主流でした。あまりにも細かく難しくなってしまったこうした技術と実際の商品が離れていってしまっているというのが、自動車メーカーと部品メーカーの展示の違いとそこに集まる人の違いとして、私の目には強く焼き付きました。

独ZF社 9速AT
独ZF社 9速AT

また更に先の次世代車として注目されている燃料電池車(FCEV)ですが、トヨタが新型のFCEVを大々的に発表したものの、ホンダは新型FCEVを同時期に開催されているLAモーターショーで発表するなど、全体として取り上げられている印象は感じられませんでした。

FCEVについては、規制や導入支援等からカリフォルニア州から発売されるのが既定路線となっており、そちらが優先されるのは当然ではありますが、これまでの報道の量などから考えると肩透かしを感じました。同じく控えめだったのが自動運転や衝突安全技術等で、勿論多くのところで解説や説明があり体験会なども模様されていましたが、主役という程の存在感は無かったかとは思います。これは憶測ですが、大きな話題となったマツダの体験会の事故の影響もあったのかもしれません。

自動車の「現在」を見るモーターショー

東京モーターショーのキャッチコピーは「世界にまだない未来を競え」となっています。しかし、今回のショーで私が強く感じたのは「未来」では無く「現在」です。5年後・10年後の未来がここで提示されたかというとコンセプトモデルも含めてNoだというのが私の感想です。コンセプトモデルも「現在」に存在する非日常のショーとして消化し、直ぐにディーラーに並ぶであろうモデルを日常の現実の目として見ているというのが、今の東京モーターショーの姿なのではないのでしょうか。

ただしこれが悪いことかと考えているかというとそうではなく、おそらくこの「現在」は多く人が考えているよりも緻密で繊細な技術で作り上げられておいる「現在」で、本当の少し先の「まだない」未来はなかなか説明しづらい専門的な知識の海に眠っているのではというのが技術の素人である私の見解です。(あとは厳しい競争を行っている中で、5年・10年後の技術は今まさに最も重要なものであり、それを見せることは無いだろうとも思いますし。)

とはいえ前回もそう感じましたが、平日にもかかわらず多く人が訪れるショー(平日なので若い層は少なかったことは少なかったですが)の姿を見て、自動車の人気はまだまだあるのだと安心感を抱きました。

またモーターショーの関連イベントとしてお台場で様々なイベントを行ったのもよい方向に感じます。今回モーターショーに参加しなかったアメリカ・イタリアの各メーカーもそちらで一部展示を行っていました。こうしたメーカーもまた本体に参加して、今後もっと華やかなモーターショーが戻ってくることを期待しています。

自動車税改正と軽自動車

10/17に総務省の有識者検討会が消費増税に併せた自動車税の改革案をまとめ、その夕方から一斉にそれが報道されました。今回はそれらの報道のされ方が興味深かかったので、それの比較と、税制についての個人的な思いを八重樫尚史が書いていこうと思います。

今回の自動車税改革案の報道は、主要各紙では下のとおりです。

安価な車、燃費性能の高い車に減税を…提言
(読売新聞)

総務省、軽自動車増税の方針 メーカー「弱い者いじめ」
(朝日新聞)

消費税8%時、エコカー減税拡大 総務省が改革案
(日本経済新聞)

消費増税:自動車取得税の軽減、廃止 代替財源、「軽」に上乗せ案
(毎日新聞)

自動車税を見直しへ、燃費・環境性も加味、総務省の検討会が報告書
(産経新聞)

どれも同じ提言書を報じているものですが、見出しを比較するだけでも各紙の取り上げ方の違いが見て取れるかと思います。今回の自動車税の改正案の中身については、図表のある日経の紙面が解りやすいのでそれを参照して欲しいのですが、特に報道で大きなウェイトが置かれているのは、消費税が10%になった時における自動車税(軽自動車税)の取り扱いについてです。

特に色分けが明確なのが、朝日新聞と日経新聞で、朝日は軽自動車税が増税になることを中心に報じ、日経新聞はエコカーが減税になるとし、一見した所で正反対の報道となっています。

自動車関連税については、紙面にもありますが自動車所得税については消費増税に伴って軽減・廃止することは大筋で決定しており、今回の総務省案はそれに伴って自動車税制を変えようとするものになります。報道でも注目されているように特に大きなものは、毎年の負担となる自動車税(軽自動車税)の改正で、そこに取得税の廃止に伴う地方財源確保と、環境負荷低減の為のエコカー減税を適用しようした為に、こうした2つに別れた報道となりました。

特に軽自動車については、安価な自動車税がその人気を支えている部分があり、この増税に対して、軽自動車メーカーや軽自動車ユーザーからは大きな反発があるのは当然です。またTPPへの参加の際に、アメリカの自動車業界より軽自動車を「参入障壁」とした意見が出ており、これにも関係して自動車ニュースやネットニュース等では軽自動車つぶしと捉えられて報じられることが多いようです。

自動車税の簡略化の方向は賛成

さてここからは私の個人的な意見を書いていきますが、取得税の廃止とエコカー減税の自動車税への取り込みについては賛成です。特にエコカー減税ですが、殊に昨今は名前とは裏腹に環境に負荷の少ない自動車を普及させるというよりも、一時的な景気刺激策としての減税ツールとして使用されているとしか見做せないものとなっています。

本当にこれが環境政策と考えるのであれば、長期的な視野に立って自動車の排出ガス削減のロードマップと合わせての恒常的な普及促進案が必要です。そうした視点では、これを自動車税に融合させて、環境負荷(燃費)に併せて比重をつけるという案には基本的に賛成できます。

またEVやPHEVといった次世代自動車についても、エコカー減税と併せて国の補助金と地方の補助金等も含めて販売時の価格が煩雑なものとなってしまっており(昨年『プリウスPHV』の手続きで痛感しました)、これを簡素化して実際の負担価格を分かりやすくすることは必要だと考えています。

あくまで提言段階で具体的な額が示されていませんので、中身についての議論はできませんが、エコカー減税の拡充を自動車業界も求めており、また環境省も「エコカー減税終了でCO2排出量が増えるという試算」を出して側面支援をしており、これはすんなりと進んでいきそうです。(とはいえ、環境省のこの試算は非常に眉唾のものです。)

軽自動車の議論は国際競争力も含めて考えたい

一方で紛糾しそうなのが軽自動車税の取り扱いです。ここで自分の立場を明確にしておきますが、私は基本的には「軽自動車は廃止されるべき」という考え方を持っています。ただしそれは、軽が優遇されすぎているからという理由ではなく、勿論それが参入障壁となっているという理由でも無く、世界的な自動車の技術潮流でダウンサイジング化が進められている中で、日本独特の軽自動車規格にあわせた自動車を追求するより、その枠組を広げて小型車を公平な競争環境の中でしのぎを削って開発したほうが、将来のこの国の自動車メーカーが世界で競争していく際に有意義だと考えているからです。

特に欧州・アメリカ等ではダウンサイジングの中で小型車に排気量が1000cc以下のエンジンを搭載する例も増えてきました。日本の軽自動車メーカーも海外モデルについては、エンジンを800ccや1000ccに載せ替えて販売しており、こうしたエンジンを搭載したほうが技術的には整合性があり、日本でも軽自動車は大型化・重量化が進んでいる中で660ccという枠を取り払ったほうが、燃費や走行性能のバランスの優れた車両が製造されるのではないかと個人的には思っています。また日本の軽自動車にはそうした技術的な地力があるとも確信しています。

とはいえ軽増税で最も大きな意見としてみられる地方や低所得者の足という側面は見逃すことは出来ません。私もこれを一部で言われているように登録車並み、つまり4倍とするのは暴挙だと思っています。一方でエコカー減税という案が打ち出されているのですから、環境性能に優れた小型車(1トン未満1000cc未満)に対する減税を行うことによって、今の軽自動車と比較して負担増を可能な限り減らした形にすることが理想かと思っています。

とはいえこれは軽自動車という名前を残すのかといった事柄や、税収減等についてはあまり考慮に入れていませんので、現時点では難しいかとも考えています。しかし、軽自動車の処置も含む自動車税制については財務省、総務省、国土交通省、経済産業省、環境省等が入り混じっており、縦割り行政の中で抜本的な改善が進められてきませんでした。今回はそうしたものも含めて議論する格好の機会であり、与党・政権の政治力が試される場だとも思っています。

単なる至近な税制論議や景気政策ではなく、環境対応も含めた自動車産業のあり方も含めて、大きな展望の持てる改正になることを期待しています。

2013年デトロイト・ショーを遠くから見て

今回も、八重樫尚史が書かせて頂きます。このブログの右肩にもリンクを新設しましたが、コーディアではメールニュースサービスを開始し、多忙の代表の八重樫武久の代わりにこのブログに登場する機会が今後増えるかと思います、改めましてよろしお願い致します。

回復基調が鮮明なアメリカ自動車市場

さて、現在アメリカ・デトロイトでは、北米国際オートショー(通称:デトロイト・ショー)が開催されています。デトロイト・モーターショーは隔年の東京モーターショーは違い毎年開催され、自動車業界にとっては年始の恒例となっているイベントです。

アメリカの2012年の(大型トラックを除く)乗用車の販売台数は約1478万台で、リーマン・ショックの後で1000万台強まで落ち込んだ2009年を境に翌年から3年連続で年率1割以上の増加となっています。ただし、リーマン・ショック前は毎年1700万台で推移していましたので、まだ回復余地があると考えられています。(アメリカの販売台数はWardsAutoの統計データを使用)

なお、日本の販売台数は軽自動車を含めて約577万台(自販連全軽自協のデータより)、EU27カ国とEFTA(アイスランド、ノルウェー、スイス)を併せたヨーロッパは、金融危機の影響によって前年比-7.8%と1995年以降で最低の数字となり1252万台になります(ACEAの発表データより)。また、中国については正確な数字はわかりませんが、1900万台程度であったと報じられています。

アメリカの市場はその台数の多さもそうですが、地域内のメーカーのシェアが圧倒的な日欧中の市場とは異なり、他国メーカーのシェアがビッグ3と呼ばれる国内メーカーのシェアが50%を割り込む市場であるのも特徴的です。広大な国土を持つためか他と比較して大型の自動車は好まれるという消費者の傾向はあるものの、最もオープンな市場と言って間違いはないかと思います。

「エコが後退したショー」??

さて、そんなアメリカ市場を代表するデトロイト・ショーですが、今年の日本での報道を見ると「エコカーの存在感が無くなり、代わりに大型車やスポーツカーが目立ったショー」として紹介されることが多いようです。

確かに今回のショーでは、ここ数年エコカーの象徴とされたバッテリーEV(BEV)の新車が少なく、あったとしてもテスラの高級SUVEV『Model X』やVIA MotorsのBEVピックアップトラックや大型SUVで、広く普及を目的とするモデルは見当たりません。

おそらくは、そういった状況を見て「エコカーの存在感が無くなった」と報じているのかと思いますが、ショーで紹介されたモデルの詳細を現地報道から追っていくと、そうではないではないかと感じています。私自身、現地に行っては居ないので、その空気感などは解らず、断言などはできないのですが、おそらく「エコカー」の定義の一人歩きによってアメリカ市場の方向性の分析が歪んでいるような気もしています。

さて、個人的に今年のデトロイト・ショーのニュースを通じての感想を言うと「SUVの再拡大の機運が感じられたショー」というものです。こう書くと「つまり、「エコカーの存在感が無くなった」というのは間違いないじゃない。」と思われるかもしれませんが、私はそう感じてはいません。

SUVと特にそのベースとなったピックアップトラックは、今でもベストセラー・カーで、実際に2012年のアメリカでの最量販車はフォードのFシリーズというピックアップトラックです。勿論、これだけ大型のクルマですから、小型自動車と比較して燃費は圧倒的に悪く、「エコカー」とは対極的な存在とされています。

今回デトロイト・ショーで、こうした昔からのピックアップトラックが大手を振っていたのかというと(いや、実際には展示されており、確実に存在感を放っていたのでしょうが)、各社の新モデル技術発表を見ているとそうとは思えませんでした。

代表もこのブログで何度も、自動車の様々な意味での「ダウンサイジング」は「エコ」の基本だということを書いています。「ダウンサイジング」には、近年欧州系メーカーを中心に主流となりつつある小排気量過給エンジンの採用や、車体の軽量化や小型化も含まれます。また、代表も繰り返していますが、ハイブリッドもエンジンへの依存を低減させて「ダウンサイジング」をもたらす技術でもあります。

オバマ政権も燃費規制を厳しく方向性を打ち出し、またガソリン価格が高止まりしている中、SUVといえどもその流れを無視出来るわけがなく、今回のショーの注目モデルの多くはこうした「エコ技術」を採用したモデルでした。

デトロイトで目についたSUV

具体的に挙げていきますと、大型SUVの象徴的モデルであるクライスラー『ジープ・グランド・チェロキー」の新モデルには、3.0lのディーゼルモデルが設定されました。高速ではこれまでの大型SUVと比較すれば非常に良い30mpg(12.75km/l)の燃費を誇るとうたっています。

上に挙げたピックアップトラックのフォード『Fシリーズ』も、既に「EcoBoost」と名付けられたターボ付きダウンサイジングエンジンモデルも用意されており、将来はアイドリングストップ機構を搭載するともされています。

また、VWも『CrossBlue』というアメリカ市場に向けたSUVのコンセプトモデルを展示しました。これは現行のVWのSUVである『ティグアン』と『トゥアレグ』の中間に位置するサイズのクルマで、コンセプトモデルには2.0lディーゼル・ハイブリッドが搭載されています。市販車もディーゼル・ハイブリッドになるのかは疑問ですが、コンセプトや写真を見る限りアメリカ市場での販売の可能性は高そうという印象です。

日本勢でも日産が次期ムラーノかと言われているコンセプトモデル『Resonance』を展示しています。コンセプトにはAWDのハイブリッドパワートレーンを積んでいます。こちらのデザインは市販では変わりそうですが、現時点では『シーマ』や『フーガ』のみとなっているハイブリッドシステムを次はSUVに持ってくるというのは、極めて妥当な方向性です。

ホンダは『Urbun SUV』というフィットベースとされるSUVコンセプトを展示しています。これまでに発売された小型SUVが代を重ねる中で大型化した中、再びこのような小型SUVの登場には期待が寄せられているようです。またホンダは昨年、小型自動車向けの新ハイブリッドシステムを発表していますので、それの搭載も期待されます。

なおアメリカでは、ピックアップトラックと同じくフレーム構造を持つもののみSUVと呼び、乗用車由来のクロスカントリー向けのクルマはクロスオーバー車もしくはCUVと呼ぶケースが多く、上記の『グランド・チェロキー』以外の車種はクロスオーバー車とされます。2012年の販売実績では、大型SUVが、ほぼ全てのセグメントで前年比でプラスなのにも関わらず前年割れしており、こうしたSUVの中でも小型化が求められているのが見て取れます。

本当に「エコ」って何だろう?

ここまで、今回のショーで目についたSUVを並べましたが、こういった車種を見ても果たして「エコ」に目を背けていると見るのでしょうか?確かに、軽自動車の販売台数が拡大し、また登録車ではハイブリッドのシェアが非常に高くなった日本から見ると、多少は燃費が改善されたとはいえどうしても燃費の悪くなるピックアップトラックやSUVが注目を集めるアメリカは「エコ」では無いと見えるかもしれません。

しかしこのブログで繰り返し述べているように、本当の「エコ」つまり化石燃料消費を減らし、温暖化ガス排出の低減をすることを求めるのであれば、1台を電気自動車に代えるよりも、100台の既存車両の燃費を10%上昇させることのほうが効果があります。

また、既存車両の買い替えも、消費者が求めるものでなくてはなりません。それぞれの国・地域がそれまでの伝統などによって形作られた自動車文化を持っており、それを急激に変えることは非常に困難というよりもそれを行った際の反発を考えると不可能でしょう。

その時に自動車メーカーに提示できるものを考えると、これまでの利便性を捨てずに、アメリカで言えば大型車の居住性や堅牢性をそれほど失わずに、なんとかそれの燃費効率を向上させることこそが「エコ」でしょう。その点で見ると、私個人としては、今回のショーは各社とも現時点で可能な技術でこうしたSUV達を何とか次世代でも生き延びさせようと苦心しているところが見え、決して「エコ」に背を向けたショーでは無かったと感じています。

ただし、燃費規制の目標ハードルは非常に高く、これでもまだまだだというのも事実で、ピックアップトラックやSUVが今後も存在し続けるには、更なる技術改良が必要となるのは間違いありません。(これはヨーロッパの高級車にも言えることですが)

EVやハイブリッドが少なかったから「エコではない」というのは、あまりにも表層的な見方だと思います。(それと、ハイブリッドは決して少なくないのでは?)また、シボレーのコルベットの新型が注目を集めたともいいますが、そもそもこうしたスポーツカーは昔からモーターショーの華です。これはアメリカに限らず、僕も自分が実際に見たEVやPHEVが多く展示されたとされたヨーロッパのモーターショーでも、最も注目を集めていたのは高級スポーツカーでした。

2012年のアメリカ市場を見るとピックアップトラックが最量販車であったことは事実ですが、一方では販売車両の平均燃費が過去最高であったという報道もあります。私個人としては、今後の自動車を考える際には、現実的な「エコ」の視点を忘れずに見ていこうと思っています。

電動化と自動運転、自動車の未来は

マツダより新型『アクセラ』の発表がありました。従来の「Skyactive」ガソリンエンジンモデルに加えて、トヨタと協力したハイブリッドモデル、「Skyactive D」ディーゼルエンジンを搭載したスポーツモデルを同時発表し、世界市場に向けたモデルとしてマツダの意気込みが感じられるラインナップとなっています。

昨年に三菱が『アウトランダーPHEV』、今年に入ってスバルが『XV ハイブリッド』、マツダがこの『アクセラ』を発売したことにより、日本の登録乗用車メーカーすべてがハイブリッドを販売することとなりました。ホンダもそれぞれ新開発のパワートレーンを搭載した『アコードハイブリッド』、『フィット ハイブリッド』を発売しており、今年行われる東京モーターショーでは、「いますぐ買える」各社のハイブリッドが展示されることになります。(海外のショーでもハイブリッドコンセプト等は展示されていますが、ボリュームゾーンに向けたハイブリッド車がここまで揃うこと無かったでしょう。)

今回は八重樫尚史が、今後ニュースなどが増えるであろう次代の自動車の方向性等について、とりとめもなく書いていこうかと思います。

共通する「電動化」の流れ

さて冒頭の『アクセラ』のニュースですが、報道をざっと眺めてみるとハイブリッド(HV)モデルがメインでその燃費30.8km/lというのが注目されているように見えます。触れたようにマツダ初のHVであり、また国内の販売台数の上位が『アクア』『プリウス』『フィット』となったようにHVが占めているため、こうした見出しが付けられたのでしょう。

以前このブログでも「日本のハイブリッド車市場がガラパゴス」とした記事に反論したことがありましたが、これまで挙げたHV車種(『』で括られているものです)は全て海外での販売を行っているまたは予定されている車種です。『アクセラ』でもマツダが海外での販売を強化すると述べているように、日本メーカーは世界市場に目を背けてHVを開発していることはありません。

そうした「ガラパゴス」とするような報道の根底には、欧州の小型ディーゼルや過給器付きエンジンの流れとHVが対立しているような構図を作ろうとする意図が感じられますが、その見方は間違っているというが私の考え方です。そうした見方は「ハイブリッド」「従来エンジン」「ディーゼルエンジン」などといった外身(ジャンル分け)にこだわり過ぎで、本当に自動車の開発の中で進行している未来への共通認識を見ていないとも感じます。

自動車の開発の中で進行している未来への共通認識というのは「電動化」であり、また実はこの「電動化」すらも外形の話で、突き詰めていくと自動車の「高効率化」という事になります。「高効率化」とは、自動車に供給されるエネルギーをいかに無駄にせず有効活用するかということです。自動車の効率はそれまで「熱」によって図られていましたが、「電動化」はそれを電気に変換するという道を増やし、より柔軟性の高い電気も使用してより全体での効率を高めるというのがいまの「電動化」の根底にあるものです。

「電動化」は必ずしも電気モーターで駆動することではありません。HVやEVがそうした分野を加速させているのは間違いないのですが、ステアリングやアクセル、ブレーキの「電動化」、エアコン等の快適装備の「電動化」などは、HVやEVだけに留まるものではなく従来エンジン車でも導入されてきています。技術の未来を見通すためには、自動車の分野分けや燃費だけではなく、こうした共通で進化している方向性を見定めることが重要かと思います。

自動車の「電動化」は日本メーカーの得意とされる分野ですが、世界の自動車メーカーもこの分野に進む方向性を明らかにしています。9月にドイツで開催されたフランクフルトショーはまさに「電動化」のショーと言っていいものでした。そこでは欧州最大の自動車メーカーであるVWのトップが「電動化」に主眼をおいたスピーチを行い、欧州も「電動化」に進んでいくという宣言を行いました。

自動車の社会的コストの低減へ

「高効率化」に加えて次世代の自動車に間違いなく求められるのは「安全装備」です。これは目新しいものでも何でも無く、自動車技術にとって最も重要な部分であり、今後も最も重要なものであり続けるであろうということです。

なぜこれらが重要かというと自動車が抱えている社会的コストが、それらによって低減されるからです。社会的コストというのは、自動車会社や自動車ユーザーに留まらず、社会に負担を与える部分をいいます。自動車の利便性や魅力がこの社会性コストを下回ると、自動車の使用そのものが許容されなくなります。大きな視点で言えば、こうした分野での技術革新の努力を自動車のメーカーが怠れば、自動車の未来はありません。

自動車の社会的コストで大きなものは、排気ガスなどによる「環境悪化」、ガソリン等の使用による「エネルギー使用」、そして交通事故による「危険性」となります。「電動化」等を使用した「高効率化」は「環境」と「エネルギー使用」を減らしこれらの社会的コストを抑えるもので、「危険性」を抑えるのが「安全装備」です。

「安全装備」については衝突防止機構等が急速に普及してきており、今後その機能は、シートベルト、エアバッグといった運転者や搭乗者を守るものから更に歩行者等を自動検知してブレーキを作動させるなど、周囲への安全も確保しようとしていこうという流れとなっています。

パッケージではなく中身を見よう

衝突防止機構等はその価値を認められており、昨今のスバルの好評価は「アイサイト」抜きには語れないでしょう。しかし上のHV、EVは外見だけで報道されるとしたように、こうした技術を次世代技術として語られるとそれが「自動運転」になってしまうことに、個人的には疑問を感じています。

「自動運転」については、その実現で最も高いハードルは技術面ではなく法制などの整備であり、技術的に対応できてもそうしたものが主流になるかは読むことは出来ません。しかし「自動運転」の開発は重要で、こうした開発から歩行者安全も含めた「安全装備」や自動車の情報通信の技術進化が生まれてきています。

「電動化」と同じく「自動運転」もそうですが、ほんとうに重要なのは外見のパッケージではなく、その中身です。特に私近的に売れる車・売れない車を見定めるのではなく、大きな技術潮流を見定める際にはこの中身の見定めが必要になります。

しかしいくら美味しい素材を使用しても、うまく見た目も作らなければ食欲をそそらないように、技術を持っていてもパッケージを綺麗に作らなければなかなか普及はしていきません。

かなりまとまりが無くなってしまいましたが、このように様々な視野を変えて見ていくことが自動車に限らず、将来の技術の報道などを見る際に重要かとは思います。

デトロイトの財政破綻

先日、「自動車の街」デトロイトが連邦破産法第9条の申請を行い、財政破綻したというニュースが報じられました。ビッグ3が本拠を置き(GM、クライスラーは市内に、フォードは近郊都市のディアボーンに本社を置いています)、過去にはまさに自動車産業の首都とされていた同市が破綻したという事は、驚きを持って迎えられたようです。

今回は八重樫尚史がデトロイトの破綻について、取り留めもなく書いていこうかとおもいます。今回のニュース、私個人としては、別段に驚きもなかったというのが本音になります。デトロイトの凋落傾向は、昨日今日の事ではなくかなり長期に渡ったものであり、都市人口の低下や治安状況の悪化などについても、数十年前から続くものだったからです。

私は1978年生まれですから、私はその黄金期は知らず、デトロイトは常に衰退を続けてきたとの印象を抱いています。

映画で描かれるデトロイト

父が自動車エンジニアということもあり、私がデトロイトという名を覚えたのはかなり幼少の頃でした。アメリカの都市としては、ニューヨークやロサンゼルスと同じく最初に覚えた地名です。名前を覚えたのは小さな時ですが、物心が付きどのような都市かが解るようになったころには、デトロイトという名には既にかなり影が指していました。

1980年代、日本でデトロイトが登場するニュースのタイトルの多くは「日本車バッシング」の話題でした。そこでは、日本車を巨大なハンマーで壊す人々の映像が繰り返され、まだ経済概念の解る年齢ではありませんでしたが、アメリカと日本が経済的な対立をしており、またそのニュースの背景に映るデトロイトが荒んでいたというのは明確に覚えています。

1980年代に公開された映画で、デトロイトを舞台にしたものに『ロボコップ』があります。『ロボコップ』の映画の設定は2010年で、デトロイトが更に荒廃した後を舞台としています。『ロボコップ』はそのタイトルや主人公のビジュアルからヒーローものに見えますが、凄惨な暴力描写と、当時SFの中で興隆していた人間と機械の融合を描いた「サイバーパンク」的な要素から、カルト的な人気を博した作品です。

2010年のデトロイトが荒廃し犯罪都市となっているというは、ほぼ現実となりました。(治安悪化の原因の一つに、税収不足による警察官の人員不足があるため、これを民営化しようというのも意外と奇想天外のアイデアでは無いのかもしれません。)この映画の設定にリアリティがあったという証左でもありますが、一方でこの映画を撮られている時点でも、こうなることは予見できていたという事でもあります。デトロイトの自動車産業の凋落は既に1970年には顕在化しており、また「ホワイト・フライト」と呼ばれる比較的富裕な白人層が都市郊外へ転出し、都市部には貧しい層が残され、都市部と郊外の隔絶やさらなる治安悪化を招くといった現象は1960年台末には始まっていたともされます。

他にも映画で言うと、私が見たデトロイトを舞台とした映画としてはエミネムを主役した『8マイル』、クリント・イーストウッド監督・主演の『グラン・トリノ』等があります。『8マイル』では白人ラッパーのエミネムの視点からデトロイトにおける富裕層と貧困層、白人と黒人の生活圏の断絶が描かれ、『グラン・トリノ』ではデトロイトの郊外でポーランド系移民の元自動車工とモン族(ベトナム系移民)の少年との交流から、古き良きアメリカ製造業の衰退と世代交代が描かれています。

アメリカの製造業の衰退の中のデトロイト

デトロイトの破綻を報じるニュースでは、日本メーカーによる侵攻によってビッグ3が凋落したことによって負の連鎖に入ったという論調が殆どでした。これは外形的にはその通りですが、デトロイト破綻を理解するにはそれだけでは足りないような気もします。

デトロイトの位置する五大湖周辺は古くよりアメリカの工業の中心地として発展してきたエリアです。五大湖の水運と鉄道路を利用し、ダルース近隣の巨大な鉄鉱山から採掘された鉱石を、ピッツバーグやバッファローといった鉄鋼の街で製鉄し、デトロイトなどで車のような商品を作る。というのが20世紀中頃までの、アメリカの製造業の本場の姿でした。

しかしビッグ3の凋落よりも早く、五大湖周辺の鉄鋼産業は衰退を迎えます。鉄鉱山の枯渇ではなく、鉄鋼需要の衰退と質の低下などによるものとされています。こうした中で、ピッツバーグ等の鉄鋼の街もデトロイトと同じく、雇用の現象と治安悪化に見舞われます。

産業規模としては自動車と比較しても急速な衰退を迎えたと言え、またピッツバーグの都市人口もデトロイトと同じく1950年台をピークに半分以下となっています。デトロイトは1950年台の人口は約180万人だったのが現在約70万人となったのと同じく、ピックバーグは約67万人が30万人となっています。

デトロイトの凋落はこのように視点を少し離して見ると、自動車産業やデトロイトという特殊な要因によってではなく、五大湖周辺の製造業の没落の中で位置づけられると思います。ご存知のようにアメリカではその後、興隆した情報産業や金融業などが経済の牽引役となっているのが続いています。

しかしながら、再び視点を近づけてみると今度は五大湖周辺都市の中でのデトロイトの立ち位置と、本当の問題点が見えてくるように思えます。鉄鋼の街ピッツバーグは同じように衰退し苦しんでいるのかというと、決してそうではありません。ピッツバーグは鉄鋼産業の衰退を受けて、他のサービス業やハイテク産業等に産業構造を変革し、アメリカの中でも有数の経済安定性を持った街とされています。2009年にG20サミットがピッツバーグで開催されたのも、製造業の復活の街であるピッツバーグで開催しようと、オバマ政権が急遽予定を変更したからでした。

五大湖周辺の工業都市の間でも、このように施策の違いによって都市間の格差が生まれています。デトロイトの破綻はこうして見るとデトロイト市が、この地域での自動車産業の衰退を予見しながらも、産業構造変換を出来ずにまた社会問題に抜本的な解決策を見出すことが出来なかった為に起きたことと言えると思います。大きな流れとして自動車産業の衰退は主要因ではありますが、破綻までに至ったのは市を代表とした公共団体の施策の誤りの積み重ねと言えるでしょう。

ただし、ピッツバーグと比較してもデトロイトは大都市であり、また自動車産業が曲がりなりとも経済の中心にあり続けていたという状況、またビッグ3の破綻の大きな要因であった莫大な年金や社会保障費の問題など困難な課題が多かったのも事実で、今回の破綻申請もビッグ3と同じくそうした足枷を外したいとして申請したものなのも見逃してはならないと思います。

製造業の再生に向けて

さて、地方公共団体の破綻というと、日本では夕張市の破綻が記憶に新しい所です。こちらは炭鉱の衰退によって破綻に導かれて行きました。大都市のデトロイトと違い、人口の少ない地方都市でしたので顕著な治安の悪化が起きてはいませんが、産業の喪失による人口流出というのは同じ現象です。また夕張等に代表される衰退した日本の都市とデトロイトの共通点としては、箱物に頼った再生プランというというのも共通しています。成功例であるピッツバーグには、有数の大学であるカーネギー・メロン大学が存在し、箱物ではない人材の供給源があったというのは示唆的かもしれません。

デトロイトの破綻は50年にも渡る衰退の末のことでした、サービス業等と比較しても製造業はその裾野が大きいだけに大きなトレンドが一度起こると、その影響は長く大きな影響を持ち、容易にはその流れを替えることが難しいものとなります。

先日の参院選では争点があまりにも散漫なものとなりましたが、勝利した自民党へは「アベノミクス」の経済政策への支持、また議席を伸ばした共産党へは雇用の安定への支持があったとされています。

これは日本特有の現象ではなく、多くの主要国で最も重要な政策は経済政策と雇用の安定となっています。今年第2期に入ったオバマ政権が年頭の一般教書演説で訴えたのは、アメリカの製造業の復活でした。方策としては次世代技術への研究投資資金を投入し、新しい製造業をアメリカで復活させようとするものです。日本では「アベノミクス」の第3の矢である成長戦略がそれを相当するのでしょう。

どちらとも成功するのかどうかは解りません。しかしながらデトロイトが辿ったような衰退を起こしてはいけないというのは、皆に共通するのは間違いありません。デトロイトが長期的な衰退を食い止められなかったように、製造業においては一時的で近視的な政策ではその大きな流れを食い止めることはできません。長期的な視野に立った政策の実行を期待しています。

「超小型モビリティ」は次世代モビリティ?

今回は代表が様々な原稿に追われている状況ですので、八重樫尚史が代打で書きます。その中には、このブログを読む皆さまの眼に届く予定のもののあり、遠くない内に詳細については発表できると思います。

さて今回は6/14に神奈川県で初めて車両認定が行われ、昨日公道走行が開始されたと報道された超小型車について書いていこうと思います。

今回登録され使用を開始した超小型車は日産自動車の『ニューモビリティコンセプト』と言う車両で、日産はこれまでも各所でこの車両を使用して実証試験等を行なっており、その際は公道走行のために軽自動車として登録し走行していました。今回のニュースは、国土交通省が今年始めに発表した認定制度を利用した初めての認証が行われ、それに則った公道走行が開始されたということになります。

国土交通省では新しい認証を「超小型モビリティ」と名前をつけています。冒頭に出した報道では「超小型車」と表記しており、またNHKでは「超小型電気自動車」と報じており、少し紛らわしいので、まずはこの辺りの整理をして行きましょう。

超小型モビリティとは

国交省の認定制度の文書を読むと、「超小型モビリティ」の対象車は

  1. 長さ、幅及び高さは軽自動車の規格内
  2. 乗車定員2人以下
  3. 定格出力8kW以下(内燃機関は125cc以下)
  4. 高速道路は走行しない

というもので、これに

  • 車幅1300mm以下のものは、ライト、ブレーキ、キーロックを2輪車基準とできる
  • 車速を30km/hに制限した車両は、衝突安全性能とシートベルトの装備・強度の基準緩和

を受けるとされています。

車幅1300mmという数字は軽自動車の車幅が1480mmですからこれと大差なく、「超小型モビリティ」の認定を求めるほぼ全ての車両がこの条項の適用を受けると思われます。なお、今回認定された日産の『ニューモビリティコンセプト』の車幅は1190mmです。速度の条項については逆にこれより小さな車両として「ミニカー」が存在し、こちらは排気量「50cc」以下で「1人乗り」なものの車検不要となっていますので、30km/hのリミッターを設置するよりもこちらの認定を取得するのに向うのではないでしょうか。

このように「超小型モビリティ」は「軽自動車」をベースに、それに機能制限を加えることで一部の緩和を行ったものです。車両認定についても、車両検査を行うのは「軽自動車検査協会」が行っています。昨年夏に導入計画が報じられてから、これほど迅速に試験導入が行えたのも、「軽自動車」の枠内で行ったからなのでしょう。

さてこの「超小型モビリティ」ですが、これが導入されると日本の小型4輪自動車としては、小さいほうから順に「ミニカー」「超小型モビリティ」「軽自動車」という車両種別が存在するようになります。(これら3つの比較についてはWikipediaの軽自動車の項目に対比表があります。)

この中で「超小型車」と呼ばれているものは「超小型モビリティ」「ミニカー」に相当するもので、実際トヨタ車体が販売する小型EV『コムス』は「ミニカー」として車両登録されています。「超小型車モビリティ」の制度は前提としてEVを置いている記述となってはいますが、内燃機関の場合の排気量も定めているようにEVに限定されたものではなく、「超小型EV」=「超小型モビリティ」ではないという点に注意が必要です。

ざっくり把握する方法としては2輪車の並びと比較して、「原動機付自転車(原付)」と「ミニカー」、「第二種原動機付自転車(原付二種)」と「超小型モビリティ」、「普通自動二輪」と「軽自動車」とすると憶えやすいかもしれません。なお、免許は「ミニカー」からすべて「普通自動車免許」が必要です。

「超小型モビリティ」って必要?

さてそのような「超小型モビリティ」ですが、国交省の導入促進についての資料ではこれを

「超小型モビリティは、交通の省エネルギー化に資するともに、高齢者を含むあらゆる世代に新たな地域の手軽な足を提供し生活・移動の質の向上をもたらす、少子高齢化時代の「新たなカテゴリー」の乗り物。」

と書いています。

私の率直な意見は「「超小型モビリティ」に相当する車両区分はあったほうが良い。ただし、これに期待を寄せるのは危険」というものです。さらに、国交省の書くような「高齢者を含むあらゆる世代に新たな地域の手軽な足を提供し生活・移動の質の向上」については、大きな疑問を持っています。

今月、認定された日産の『ニューモビリティコンセプト』は、昨年フランスをはじめとした欧州で発売されたルノー『Twizy』の兄弟車です。『Twizy』の登場は大きな話題となり、日本を含めた他国でも報じられ、今回の「超小型モビリティ」も車両区分の設置に関しても、1号車が『ニューモビリティコンセプト』となったように大きなインパクトを与えているのは間違いありません。

私は『ニューモビリティコンセプト』も『Twizy』も残念ながら実際に乗ったことがないので、車両としての評価は出来ないのですが、こうした新しいコンセプトの車両が登場している中で、国内でもそれを受容する体制を整えるということは必要なことです。ですので『ニューモビリティコンセプト』が「超小型モビリティ」として車両登録されたというのは、好ましく見ています。「あったほうが良い」というのはこういうことです。

しかしながら一方で「超小型モビリティ」という車両区分の新設に纏わる思惑等を考えると、両手を挙げてという気にはなれません。「期待を寄せるのは危険」という部分ですが、先ほども触れましたが「超小型モビリティ」はEVを想定としているのは明らかで、報道などでもそれを前提としたものが多く見受けられます。ただ私はEVを前提とするのであれば、これは現時点では商業的に成立しないと考えています。

商業的に成立しないと考える理由は単純で、車両価格の高さです。日産の『ニューモビリティコンセプト』は一般販売されている車両ではありませんが、『Twizy』の価格が€6,900~€8,490であることを考えると80万~100万円ということになります、こちらは「ミニカー」ですが『コムス』も70万円弱~ですから、これと比較すると安価に見えますが、この価格は最も安い軽自動車と同等となってしまいます。基本的に「超小型モビリティ」は、軽自動車の機能制限版ともいえますので、この価格帯での普及は難しいと言わざるをえません。

勿論、今後バッテリー価格が下がれば車両価格が安くなるという意見はあるかと思います。ただし、バッテリー価格が下がるという見通しについては、根拠が極めて薄いもしくは極度に楽観的なものが多いのが実態です。普通車EVについては現時点で結論を示す段階ではありませんが、これを支えるとされた自動車駆動用リチウム・イオン電池については、産業として非常に苦しい状況にあります。A123に代表されるアメリカのベンチャーの多くが破産に追い込まれ、全てを確認したわけではありませんが、世界的に見てもこの分野で利益を挙げている企業は現時点ではほぼ皆無なことは間違いありません。

また三菱自動車のEVとPHEVでの不具合などで表面化したような安全性についても課題が残り、自動車駆動用電池については次世代のリチウム・イオン電池開発が急務で、それを見越して多くの電池メーカーがアライアンスの再構築に追われている状況です。こうした中で短期的に、安全で品質の高い駆動用リチウム・イオン電池が安価に供給される見込みは薄いと言わざるをえません。

これはあまりにも穿った見方かもしれませんが、「超小型モビリティ」の素早い導入については、普通車EVの普及策が思ったほど進まない中で、EVに対して行った政策や投資の出先・回収のために「超小型モビリティ」を利用しようとしているように見えます。もし、そうなのだとすると、私にはそれは更に傷を拡げる結果となるようにしか思えません。

なおルノーの『Twizy』も、登場当初はフランスだけで月間販売が1,000台を超えるなど非常に好調な滑り出しを見せましたが、登場後の数ヶ月で販売台数は急激に下落し、今年5月のフランスでの販売台数は64台(年初からは250台)、欧州全域でも5月で376台と、今年に入ってから販売が奮っていない状況です。日本では発売時の好調のみが報じられ、その後の報道がほぼなされていないので、欧州で「大人気」として今でも触れられているのを散見しますが、この現状はしっかりと把握しておきたいものです。(ただし、『Twizy』が発売して1年で10,000台を超える販売をしたということは、このような車種としては非常に大きな成果であり、それは評価されるべきものです。)

アメリカでもゴルフ場等の「電動カート」から派生したような「Neighborhood Electric Vehicle(NEV)」という車両区分がありますが、クリーン自動車の情報サイトですらこれを法整備の不備と公道走行での危険性から「中古で購入してはいけない」とする記事を掲載するなど、シニア・コミュニティが多く普及環境の整っていると考えられているアメリカですらあまり期待はされてはいません。

「モビリティ」って何?

このように「超小型モビリティ」について書いて来ましたが、ぶっちゃけ、このネーミングはなんとかならないのでしょうか?

「お前らも「モビリティ」ってよく使っているじゃないか」と言われるかもしれませんが、一応、言い訳をさせていただくと、私は「モビリティ」を使用する場合には「自動車」「自転車」「徒歩」「公共交通機関」を含めた全体を示す意図で使用しています。「移動手段」「交通手段」としてもいいのですが、少し日本語として別の意味に捉えられそうなので、仕方なく「モビリティ」という言葉を使用しているというのが実状です。(「モビリティ」については昔このブログにも駄文を掲載しています。)

そのような考えの中で「超小型モビリティ」という名前を見ると、やはり変です。上で挙げたように(少なくとも私の定義では)「モビリティ」には、「徒歩」や「自転車」も含まれます。「超小型モビリティ」は「4輪自動車」の中では確かに「超小型」かもしれませんが、「モビリティ」全体でみると流石に「「超」小型」ではないでしょう。

細かい言葉の揚げ足を取っているかのようですが、このネーミングには意外と大きな問題が背後に隠れていると思います。それは私の使用している意味での「モビリティ」の捉え方と、国交省の「モビリティ」の捉え方が大きく違うということです。私の解釈がおかしいというのであれば笑い話ですむので良いのですが、国交省がこれを「超小型」と呼ぶということは「モビリティ」を「自動車」の枠組みの中でのみで考えているということの証明のような気もします。いや、実状としては「超小型車」というネーミングではインパクトにかけるから、横文字の「モビリティ」と付けて格好良くしてみたというのが最もありそうですが、それでもやはり「モビリティ」というものに対するスタンスが見て取れるのには変わりありません。

「モビリティ」を「自動車」の中だけで考えているのであれば、これは問題です。「自動車」には「2輪車」も含まれるかもしれませんが、それでも日常にあふれている「徒歩」「自転車」「車椅子」「シニアカー」等が抜け落ちているということだからです。

代表も先週のブログで「超小型EVだけではなく、ママチャリ、自転車、電動アシスト自転車、原付バイク、電動クルマ椅子、シニアカー含めた軽モビリティとして、道路環境整備を含めて取り組むべきものです。」と書いているように、今回の「超小型モビリティ」を考える際には、これらとの住み分けと共生をどのように図っていくのかというのが、最も議論しなければいけない部分です。特に「歩道」を何がどのように使用し、「車道」を何がどのように使用するのかという原則を確立しなければ、将来の道路がどのようにあるべきかを具体的に考えることもできなくなります。

ここで再確認をしますが国交省は「超小型モビリティ」を、「超小型モビリティは、交通の省エネルギー化に資するともに、高齢者を含むあらゆる世代に新たな地域の手軽な足を提供し生活・移動の質の向上をもたらす、少子高齢化時代の「新たなカテゴリー」の乗り物。」と書いています。

特に「高齢者を含むあらゆる世代」という箇所は下線を加えて強調しています。高齢者のモビリティということですと「シニアカー」がありますが、「シニアカー」には現状では多くの問題があることは議論の余地はないでしょう。「シニアカー」は「電動車いす」の一種とされ、基本的には歩道を走行するということになっていますが、歩道の整備がしっかりなされていない道では路肩を走らざるを得ず、一方歩道で使用していても衝突で損害賠償を請求された事例もあるなど、周辺の整備が進んでいません。個人的な体験でも、私の住んでいるマンションで、駐輪場で「シニアカー」を置けないかという申し出があったものの、スペースの問題で結局認められず、申し込みをされた方が購入を見送ったという事もありました。

一方で今回の「超小型モビリティ」は、高速道路を使用できないとはいえ速度は通常の自動車と同じで、「シニアカー」とは全く別のモビリティです。車道を走る既存の自動車との比較でも、地方などでは高齢者の方が軽自動車にもみじマークを付けて走ってらっしゃるのをみかけますが、「超小型モビリティ」の衝突安全性等は軽自動車かそれに劣るもので、どの点で「高齢者を含むあらゆる世代」に「適している」のか、全くわかりません。

本当に少子高齢化時代のモビリティを考えるのであれば、私は「シニアカー」について再検討する方がより建設的なのではないかと考えています。またそれをしっかりと行うことは、障害を負った方の「電動車いす」等の環境を整える事にも繋がりますし、一方では日本では公道での使用が全く出来ない「セグウェイ」等の個人向けモビリティを再検討することにもなる筈です。

超小型モビリティ」はEVに固執するな!

最後にまとめますと、「超小型モビリティ」について、私は(そのネーミングは別として)こうした車両区分を設置することには賛成です。しかし、これを導入・促進しようとする政策については異論を多く持っています。

まず次世代モビリティの中で、こうした車両が重要かというとそうは思えません。必要なのはモビリティ全体を根本的に再構築することです。今回は「シニアカー」のみを取り上げましたが、「自転車」や「2輪車」を含めて再構築が必要です。また更にその上に、日本の交通インフラそのものをどのようにしていくのかが最も重要です。

産業政策だとしても、EVに固執するのであればそれも上に挙げたように成功するとはとても思えません。また、これを推進することで技術育成が図れるかというと、マクロ的に見てそれを期待することは酷でしょう。(モーターやバッテリーの等の技術は、別に「超小型モビリティ」があるから促進されるというものではないでしょう。)

ただし何度も繰り返しますが、車両区分の設置には賛成です。期待したいのは車両価格を抑えた車両の登場です。125cc以下ということで運動性能は限られたものになりますが、大型スクーターの新車価格が60万円台なのを考えても、30~50万円で優れた車両が登場すれば、小さいながらもニーズはあるかもしれません。勿論、そうなるためにはEVに固執しては作れません、おそらくは2輪車から派生したような車両になるでしょう。

省エネやエコを考えるとEVというのは間違いです。例えばそうした車両が登場して普通車や軽自動車をある程度置き換えたのであれば、それは十分エコで省エネです。勿論EVでそれを達成できるのであれば、それは歓迎すべきことで、その時は見解の誤ちを認めて称賛させて頂きます。どんな形であれ、国交省・業界の思惑、メディア等の観測を超え、また私の想像すらを超えた車両が出てくることを心より期待しています。また、そうした「元気で」「生きのいい」製品でなければ、「クルマ離れ」しているとされる若者(私もまだ若いつもりですが)の心は捉えられないでしょう。

自動車とネットワーク

今回は、八重樫尚史の代打の回となります。

基本的に私が代打で書く回は、(私自身、自動車エンジニアではないので)自動車の技術的な事ではなく、カーシェアリング等の周辺分野について触れる際に登場する場合としており、今回はカー・テレマティクスと総称される、自動車搭載の情報機器についてとりとめなく書いていこうかと思います。

モバイル通信の拡大とクルマ

以前、私はこのブログで「自動車と通信(または自動車でネット)」という題でこうした話題について触れたことがあります。(2年前の記事で、一人称も文体も今と全く違うのが、自分でも苦笑ものですが)そこでは、自分のクルマにWimaxの親機を接続して通信していると書いていますが、今やスマートフォン本体のLTE回線とWimaxの回線速度とカバー範囲が同等レベルになったことから、Wimaxの車載使用は行なっていません。

さて、再びこのテレマティクスに触れようと、思い立ったのは、ここに来てこうした分野を取り上げる記事等が増えてきたからです。多くは、「「ナビの普及率が低く、日本と比べてテレマティクスで立ち遅れている」とされてきた海外の自動車メーカー等が、スマートフォンと連携する機能を付け、日本勢の専用カーナビを脅かし始めた、もしくは脅かすのではないか」と述べている記事となっています。これは、私も以前の記事でも同じ事を書いていますし、その考えは変わっていません。

ナビゲーションシステムが、その機能を中心としたものから、情報端末に搭載される1機能(アプリケーション)となることは抗うことの出来ない流れのように感じます。特に海外では指摘にもあるように、専用ナビの普及が遅かったことから、例えば調査会社J.D.パワーが今年1月に行ったアンケート調査でも、既に調査対象の自動車オーナーの47%がスマートフォンのナビを使用していると答え、前年調査の37%から10%の大きなアップをしており、またそうしたユーザーの46%がスマートフォンのナビがクルマの中央部に表示できるのであれば、次は専用のナビは購入しないと答えているなど、急激な変化の兆候が見えています。

そうした流れの中で注目されているのは、フォードが取り組む「AppLink」とi-Phoneの「Siri」等の音声認識システムへの対応です。フォードの「App Link」はナビゲーションシステムとスマートフォンの連携機能の仕様を公開し、サードパーティがその機能を使用しアプリを開発出来るようにするものです。またナビをボイスコントロールする機能は古くからありましたが、先ほどのJ.D.パワーのアンケートでもそれら機能には不満の声が多く、より高機能なスマートフォン側のボイスコントロール機能をそのままハンドルのボタンで使用できるようになってきています。これらは程度の差はあるものの、基本的にはスマートフォンとクルマ(ナビ)の連携機能を強化するという方向性は一致しています。

私個人も国内でのナビとスマートフォンの連携については不満を持っていて、現在もメイン機種として使用しているi-Phoneとナビ(G-BOOK)の通信での連携は出来ず(オーディオとハンズフリーの連携は可能)、一応サブ機種として所有しているandroid端末では可能なのですが、それをするためには今度はナビ側から接続機種の切り替えが必要で、しかもそうすると今度はi-Phone側ではハンズフリーで使用できなくなるなど、結局はG-BOOKは使用しないという判断に至っています。これはBlueToothの採用規格の問題で、i-PhoneにはG-BOOKアプリを用意しそちらを利用して欲しいとのことですが、正直言ってi-Phoneを操作するのであれば別の情報入手手段を使用します。

スマートフォンもナビも情報端末

このように、自動車と情報端末はどんどん接近してきていますが、私としてはこれを「スマートフォン」と「ナビ」といった製品ベースで考えることは、あまり意味のないことではないかと感がしています。勿論、現在その分野でビジネスしている企業にとっては非常に重要なのですが、ユーザーとして考える際や、これからの自動車の方向性を考えるといった場合は、それに固執すると本質を見失ってしまう可能性もあるように思っています。

テレマティクスという言葉は、そもそもが移動体通信そのものを指し示すものであり、今、起っていることは、この概念が現実社会で実現されつつあるというという現象です。結局のところ、「スマートフォン」という、常時通信可能なハンドヘルドコンピューターを個人が所有する事が当然になった為、通信をこちら経由で行う事になったという事に過ぎず、何か概念の大きな変更があったと言うことではないような気がします。(携帯電話でも可能ではありましたが、通信環境がまだまだ貧弱かつ高価でした)

「スマートフォン」が「ナビ」を駆逐するというと、別のカテゴリーの製品が表れてこれまでの製品を追いやる構図に見えますが、そもそも今の「ナビ」は機能特化をさせているとはいえこれもコンピューター(情報端末)であり、あくまでコンピューター(情報端末)同士が、その有効性を同じ土俵で競っているということに過ぎません。これは、スマートフォンやタブレット端末の登場が、PCの販売を大きく落ち込ませたのと同じで、更に遡れば汎用性の高いPCの登場でワープロ等が衰退したといった、情報機器の中での淘汰のサイクルの一環でしかありません。

自動車側からやらなければならないこと

その中で自動車側は何をしなければならないのでしょうか?勿論、形としての「ナビ」を守ることではないでしょう。ただし流されるままで、スマートフォンを受動的に受け入れていくことには、懸念があります。

心配しているのはセキュリティの面と、運転中にドライバーの妨げをしてはいけないという安全面においてです。後者については、フォードの「AppLink」の開発者へのドキュメントでも丁寧に説明されている事で、基本的には音声を使用するアプリとして、動画や動きの激しい画面を使用しないようにとしています。運転中に視線をそらすのは非常に危険なので、極めて真っ当な考え方で、これはアメリカ政府のガイドラインに則ったもののようです。

このように事前に自動車での情報端末の使用方法については、知識の集積がある自動車会社側の方が事前に周知徹底させていくという時組みが必要となると思います。更に出来れば、フォードのように1社で取り組むのではなく、自動車会社が互いに協力しあってこうしたものをどのように入れるのが安全かを検討するのも重要と考えています。

この部分については単にガイドラインだけではなく、政法制も含めた議論が必要だとも考えています。というのも、多くのナビのテレビ機能は車速と連動して画面を消すという機能を持っていますが、そのラインを外して走行中でも視聴可能としているのが常態化しています。またメール等を運転中に確認しているのを見るのも、決して少なくないでしょう。こうしたことが放置されている中で、連携アプリの安全性だけを考えても意味はありません。(同乗者が見るという言い訳がまかり通っているようですが、スマートフォンが普及すれば、視界に入りやすい画面に移さず、同乗者はそちらを見れば良い訳ですし。)

またネットワークに接続されるということは、同時にセキュリティのリスクに曝されるということも意味します。自動車において重要なのは、そこで外部からどの程度のアクセスを自動車が許すのかという部分になります。いま、プラグイン車を中心に、外部から自分の車両の情報等を取得するアプリが使用されています、こうしたアプリでは解錠やエアコン制御をスマートフォンから使用する機能も存在します。ネットワークからの信号でそこまで出来るということは、悪意のあるプログラム等によって鍵を開けられシステムをスタートさせられる危険性が既にあるという事です。

勿論、自動車会社もセキュリティには可能な限りの対策を行うのでしょうが、セキュリティに絶対はありません。ユーザーのメリットの為に、どこまで外部からのアクセスを認め、そして最悪のケースを防ぐためにどこ以上は外部からアクセスできなくするのかを、自動車会社の側も自衛のためにも発信していく必要があると思います。

これまでのように自動車会社の提供するツールのみの場合はセキュリティの面では有利ですが、それをユーザーに満足してもらうことは難しく、また先ほど触れたようにメールの確認等をスマートフォンで行う事を防ぐためには、音声読上げ等と連携することによって安全を確保しながらユーザーの満足を満たす等、外部との連携はフォードのように必須になるでしょう。

本当にとりとめのない記事になってしまいましたが、自動車と通信は今後ますます融合していくことは間違いないことだと思います。今回は触れませんでしたが通信によって、車両情報(プローブ情報)を使用したデータの取り扱い等の可能性と問題もあります。今後も、こういった話題を見続けていこうと考えています。

カーシェアのいま、これから

今回は八重樫尚史が代わりに書かせて頂きます。

昨年「カーシェアに入会しました」というタイトルで、カーシェアリングについて書かせて頂きました。その後も、「BMW ActiveEを借りてみました」という記事でも、このカーシェアサービスを利用してEVを借りた感想を書いています。その中でも触れていますが、現在でも大手3社の会員は続けており、殆ど利用する機会は無くなったのですが、日産の新型リーフ等の新機構を搭載した新車が配車されると時間を作って乗ってみたりしています。

さて、この4/1付で最大手の「タイムズプラス」が「タイムズカープラス」と少し名称を変更しました。この機会に、今日はカーシェアの現在とこれからについてとりとめなく書いていこうかと思います。

カーシェアリングのこれまで

カーシェアリングサービスは、ここ数年で急速に存在感を増して来ました。東京や大阪等の都心部では、多くの時間貸し駐車場に広告や実際の車両が置かれていますので、これまで興味の無かった方にも知られてきている状況といったところでしょうか。

カーシェアの起源というと、多くの解説ではスイス起源と説明されています。自動車の共同保有と考えると、高価だった自動車を共同保有するという概念はその登場初期からあったはずですが(後のJAF等に発展する自動車クラブは欧州では19世紀に発足しています)、カーシェアリングに類する言葉を明記してある程度多数の人にサービスを開始したのはスイス・チューリヒが最初のようです。

日本ではここ数年で急速に拡大したと書きましたがそれは他国でも同じで、一部例外を除けば、今世紀になってから急速に拡大しているという状況です。一部例外というのが、発祥国のスイスとその隣国ドイツで、これらの国ではその前からカーシェアリングサービスが行われていました。日本でもその試みが紹介され、一部で実践したケースがあるようでしたが、これまではなかなか普及が進まないというのが実状でした。

今から数年ほど前、ドイツのカーシェアサービスで話を聞く機会がありました。そこは非営利団体で、店舗に沢山の環境系のパンフレット等があったことからそういった活動と深い繋がりがあるのが伺えました。また、そこでは一定区域内では車両の乗り捨てがOKとしており、それらの回収や車両の整備などはボランティアが行なっているということで、率直に言って「これは「環境運動」であって、「ビジネス」では無いな」という印象を受けました。こうした環境運動の一環としてのカーシェアの考え方は今でもあり、カーシェアのメリットとして他の交通機関と自動車をその都度選択することによって、自動車利用の頻度を低減し、特に都市部の渋滞等を軽減でき、ひいては自動車の総量を減らせるという説明もあります。

日本やアメリカで当初、普及が進まなかったのはスイスやドイツでの非営利組織等のカーシェアがおそらくは従来のコミュニティや環境運動といったものをベースとしているからこそ成立しているもので、そのベースを持たない国では成立しにくいものだったからでしょう。一方ここ数年で急速に拡大した背景には、明確な「ビジネス」として行う事業者が表れ、「サービス商品」として認知されたという事があるのではないかと思っています。

Avisに買収されたZipcar

今年のはじめ、アメリカ最大のカーシェアサービス会社の「Zipcar」がレンタカー大手の「Avis」に5億ドルで買収されその傘下に入ることになりました。「Zipcar」はアメリカにおける商業カーシェアサービスの旗手として知られ、一時は全米の80%のシェアを持っていたとも言われています。「Avis」のライバルである「Hertz」は自社で「Hertz on Demand」を開始しており、「Avis」も同様のサービスを行なっていたのですが広義のレンタカービジネスとしてカーシェアリングを含めたサービス拡充の一環としての買収で、これはカーシェアリングが明確に「ビジネス」として認識されている証明になるかと思います。

日本でも今の大手3社を見てもその流れは明白で、「タイムズカープラス」は時間貸し駐車場大手「タイムズ24」を運営している「パーク24」が「マツダレンタカー」を買収し、引き継いだサービスになります。また「オリックスカーシェア」はその名の通り、リース大手「オリックス」の事業ですし、「カレコ」はレンタカーではありませんが大手商社「三井物産」が始めた事業が源流です。今後、日本でもカーシェアは、レンタカー市場の中で再編のキーとなっていくことがあるかもしれません。

こうした「ビジネス」としてのカーシェアが成立した理由としては、保険や法制度の整備などもあるでしょうが、情報通信技術の広がりによって、クルマを遠隔で管理できるシステムが確立したことが大きく、また予約をパソコンや特に携帯電話・スマートフォンによってリアルタイムで行うことができるようになった事が非常に大きかったと思います。

自動車会社がカーシェアに参入?

先日、日本経済新聞に「トヨタも参入、自動車大手が欧州カーシェア市場で競演」という記事が掲載されました。記事はフランス・グルノーブルにおいて、トヨタがカーシェア会社のCite Libやフランス電力公社(EDF)と共同で超小型EVの実証試験を行うという事を伝え、欧州のカーシェアリングを紹介したものです。

とはいえ、トヨタも参入としていますが、グルノーブルのプロジェクトでカーシェアリングの運営主体は本文にある通り現地のCite Libであり、トヨタは車両を提供と技術支援をするに過ぎず、この見出しは言い過ぎの様な気がします。国内の「ラクモ」で参入というトピックもありますが、こちらもあくまで運営主体はトヨタレンタカーであり、レンタカー会社は地域毎に別会社となっているので、企画や取りまとめをトヨタが行なっているに過ぎない様な気もしますが、どうでしょうか。

ドイツで各社がカーシェア事業を始めており、ダイムラーが行なっている「Car2Go」が単月で黒字化などある程度の成功を収めているのは事実ですが、私個人はカーシェアの歴史が長いドイツでは、「ビジネス」としてのカーシェアを導入するにあたって自動車会社が先導したという印象を抱いています。「Car2GO」で一定エリア以内で乗り捨てが出来るサービスを行なっているのも、上に書いた通りのドイツのカーシェアの伝統に則ったものとして行われているのでしょう。

個人的な意見ですがドイツの自動車会社も、もし傘下のカーシェアリングサービスが今後も拡大し独り立ち出来るとしたら、ある程度独立した存在として切り離すのではないかと思っています。日本でも同じで、系列のレンタカー会社を持つトヨタ、ニッサン等はそれらのサービスを展開するかもしれませんが、自動車会社が主体となってサービスを行うかは疑問があります。

というのも、以前のカーシェアリング紹介でも書きましたが、おそらくはカーシェアリングは人口密集地でなければ、稼働率の観点からビジネスとして成立しません。記事の中に「地方都市などでは「一家に一台」、または「一人で一台」クルマを保有するのが当然という意識」を変える必要性を述べていますが、その為のサービスとしてそもそも「ビジネス」としてのカーシェアリングは適当なものではないのではないでしょう。

では、都心等のみで行うサービスであるとすると、市場規模としては拡大の余地ありとしても、自動車会社が直接乗り出すもしくはそれで事業戦略を変えるという程のインパクトが有るかというと疑問です。勿論、一定の位置を確保するのであれば、それに適した車両やシステムの提供は行うでしょうし、カーシェアリングの今後のためにも自動車側のそうした対応がもっと求められるべきではあります。私自身は、そうした形で自動車会社は側面からカーシェアと連携を深めていくほうが現実的で望ましいものだと考えています。

また日本が普及が遅れているという話ですが、果たしてそうでしょうか?おそらく大手3社の会員数を合わせると20万人~30万人となっている筈です。これは、決して少ない数ではありません。また市場規模が小さいと言っていますが、海外でも市場規模はさほど大きくはありません、最大手の「Zipcar」でも昨年の売上は3億ドル弱でした。

カーシェアはEV普及を促進する?

この記事にもありますが、カーシェアとEVがセットで提供されるという実証試験は特に欧州で多く、代表も何度か触れているパリの「Autolib’」がその代表格となります。こうした中で、カーシェアリングサービス等がEVの普及を促進するという意見を見ますが、果たしてそうでしょうか。

昨年末にイギリスのRAC(日本のJAFに相当する組織)とレンタカー会社の団体「BVRLA」が、自動車レンタルビジネスの今後を検証した『Car Rental 2.0』というレポートを出しましたが、その中ではカーレンタルやカーシェアにおいてEVは「使用後の中古価格が不確定なことも含め、購入価格や維持管理費が高い」「この種の車両にとって最も稼働率の向上において、EVは充電時間の長さや充電場所の確保の必要によってそれが困難」「短い航続距離によって長距離ドライブができない」といった理由で、現時点では適していないと述べています。

私もこの意見に同意で「Autolib’」やダイムラーの「Car 2 GO」における「Smart ForTwo Electric」などの地域が限定された環境では(政府や公共団体等の援助のもと)成立し得る可能性もありますが、完全民間のビジネスとして、現時点ではEVは向いていないと考えています。日本のカーシェアサービスでも各社ともEVを一部導入していますが、EVの場合は使用後に充電のため次の予約を入れることのできない期間を入れざるを得ず、カーシェアの強みである細かな時間での予約管理ができなくなってしまっています。あくまで聞いた噂でしかありませんが、カーシェアリングサービス内で、他のガソリン車と比べてもEVの稼働率は低いものとなっているようです。

将来、EVが改良されてこれらの課題が克服されるのであれば話は変わりますが、現時点ではカーシェアがEVの普及を後押しするというは非現実的です。勿論、将来に向けた実証試験や気軽にEVを体験する機会を設けるといった活動に意義はあるかと思いますが、あくまでそれは社会実験や広報活動の一環で、「ビジネス」とは別の軸で語るべきものです。

カーシェアのこれから

長々と書いてしまいましたが、実のところを言えば、多くの方にとって今回の話はそれほど意味のある話ではなかったかもしれません。利用者側から言えば、自分にとってカーシェアが有益であれば利用すればいいだけで、必要なければ使わないという事でしかありませんからね。

今後も都心やその郊外を中心に、カーシェアは拡大していくと思います。もし、そういった場所にお住まいの方は、すぐに自分のクルマを手放すというのでは無く、一度会員になってみて利用して見ることをお勧めします。場所によって会員の属性も違い、同じライフスタイルを志向する方が多いと、会員のクルマを借りる曜日時間が重なって必要な時に借りられないということもありますので。

自分が利用した経験から語るのですが、今のカーシェアはライフスタイル等が適しているのであれば、十分に考慮の価値のあるものです。また、各社とも増車も含め、サービスの向上に努力されているので、今後さらに便利なものとなる可能性は大きいとも考えています。

ただし、ビジネスや自動車の将来の考えるという観点では、過度な期待を持つべきとは考えていません。今後はレンタカーとの境目がますます曖昧(そもそもカーシェアの定義として「レンタカーとは違い会員制」となっていますが、今のレンタカー各社は無料会員登録で割引などして実質的には会員制のようなものですし)になるのは間違いないでしょうしその分野での変動はあるでしょうが、モビリティや社会を変革するというは過大評価に過ぎると思います。上に書いたとおり、利用者は良い「サービス」であれば使うということにすぎませんから。

とはいえ、それを成し遂げるほどの「サービス」が提案され、それが持続可能なのであればそれは喜んで受け入れようとは思っています。

次世代自動車、2012年備忘録

明けましておめでとうございます。
いつもCordia Blogをお読み頂き有難うございます。
2013年が皆さまにとってよりよき年となることを祈っております。

さて、普段このブログを書いています代表・八重樫武久には正月休みを頂いて、今回は八重樫尚史が代筆させて頂きます。今回は自動車全体の2012年の個人的なまとめを書いていこうかと思います。

2012年はプラグイン車にとって「2年目のジンクス」?

2012年はまずはプラグイン車としては、プリウスPHVの一般販売が開始され、北米でもフォードからPHEV・C-Max(Fusion) Energi、バッテリーEVとしてはフィットEV、テスラ・モデルS等が発売された年でした。その前年の2011年が実質的に「プラグイン車元年」だとすると、「プラグイン車飛躍の年」とその前には期待されていた年です。

そしてそれらのクルマは世界の道を走り始めましたが、残念ながらそのスタートダッシュは鋭いものではありませんでした。それにはインフラ等を含めた様々な要因があるかと思いますが、あくまで数字的結果だけを言えば、年間販売目標を超えたモデルは殆ど無い状況です。スポーツには華々しい活躍をした新人が2年目には苦戦するという「2年目のジンクス」という言葉がありますが、そうした言葉ですっきりとまとめて忘れ去りたくなるような年です。

ただし産業・技術の世界は、もちろんスポーツとは違いますので、2012年についてしっかりと検証して、今後の普及に向けての糧とすることができなければ、今後のプラグイン車の未来を切り開くことは難しくなるでしょう。

様々なクルマが登場した2012年

一方で2012年はプラグイン車以外の、自動車の次世代技術が多く登場・紹介された年でもありました。マツダはSky Activeで日本のディーゼル乗用車市場を切り拓きはじめ、これを搭載したCX-5はみごと日本カー・オブ・ザ・イヤーを受賞しました。また、以前より欧州勢を中心として取り組まれてきた燃費向上の為の小型化エンジン+過給器のシステムは更にバリエーションを増やし、日本でも日産がCVTとこれを組み合わせたノートを発売し、こちらはRJCカー・オブ・ザ・イヤーを受賞しています。

欧州では近年の欧州市場でトップを支配し続けているVWゴルフがフルモデルチェンジを行い、上記のシステムの熟成と大幅な軽量化によって、現状の王座つまり今のスタンダードカーとして評価を続けていくとみられています。

一方の日本勢では、日本市場は販売台数でトヨタのプリウスとアクアが独走している状態で、アメリカでもプリウスが記録的な年間販売台数を達成しました。ホンダも秋にハイブリッド3種を取り揃える意欲的な技術発表会を行い、これからの巻き返しに期待が持たれています。

軽自動車分野でも、ホンダがN-BoxとN-Oneを投入し大きくシェアを拡大して、大激戦の様相となっています。こんな中でスズキがアイドリングストップから一歩踏み出したene-chargeを搭載したワゴンRを発売し、ダイハツも既存のガソリン車の燃費を向上させ更に軽自動車に衝突回避支援機能を搭載するなど、活気のある争いを繰り広げています。

衝突回避支援機能のパイオニアであるスバルは、トヨタと共同開発して作ったスポーツカー86/BRZが注目を集めたのに加え、一年を通じて好調な販売を維持し、東証の主要銘柄のうち株価上昇率で一位を取るほどの一年でした。また、VWが販売した小型車UP!も、いままでのドイツ車からすると驚くような値段で日本でも発売開始され、こちらもその価格で衝突回避支援機能を搭載していることが注目を集めました。

自動車用リチウム・イオンバブルの崩壊

上の章タイトルは、今年秋に見かけた自動車コンサルタント会社の北米支部が出したレポートのタイトルです。2012年は自動車用バッテリー、特に駆動用リチウム・イオンバッテリーを製造している会社にとって極めて厳しい一年となりました。

プラグイン車のスタートのつまづきは、まるで高速道路で先頭のクルマの軽いブレーキが後ろでは大きな渋滞を作ってしまうかのように、そのままこれらの会社の業績に直結し、特に北米のベンチャーはEner1からA123まで軒並み破産申請をして倒産するという事態となりました。またベンチャー以外の企業も業績が厳しく、資金余裕のある会社が他社の電池部門を買収・吸収するというニュースが多く飛び交いました。

これは、自分たちの手で出口の商品(クルマ)を開発できず、普及予測や販売・生産予測をベースにせざるを得ないながらも事前に多大な投資を必要とするという、自動車駆動用電池の産業の難しさを実感させるものでした。

また、なかなか成果を出せないこうした企業に対して眼が厳しくなり、アメリカ政府の投資が急速に絞られたことや、シェール・オイル、シェール・ガスといった新エネルギーの期待が膨らんだことなどが重なった末の「リチウム・イオンバブルの崩壊」でした。ただし、まさに「バブル」というのが象徴しているように、「期待」だけによってパンパンに膨らんでいたのも事実で、厳しい目で言うと単に実態が伴っていなかったからに過ぎないということもできます。

2012年は振り返ると、これ以外にも中国での暴動による影響や、新興国市場に地歩を築こうとする各社の鬩ぎ合いなどもあり、自動車業界にとって刺激的な年だったのではないでしょうか?この2012年を受けた2013年は、おそらく次への一歩を見通す為の一年になりそうです。

アイドルストップ

今週は八重樫尚史の代打の週になります。さて先日、お台場の「MegaWEB」でモデルチェンジした「オーリス」の試乗をしてみました。代表からは代打にあたって、「そのレビューでもしたらどう?」と言われたのですが、自動車全体の出来具合を伝える事は、私の手には余るので、今回は試乗した「オーリス」にも搭載されていた「アイドルストップ」について私見を書いていこうかと思います。

「アイドルストップ(アイドリングストップ、スタート・ストップシステム)」という言葉は、特にその説明がなくても通用する程度に認知度をもつ言葉となっています。最近では、小型車を中心に自動的にアイドリングを停止する「アイドルストップ機能」を持つクルマが多くなってきています。

「アイドルストップ機能」の主目的は、燃料の消費が移動力に全く換算されない「アイドリング」状態をなくすことで、燃費の向上をはかるものです。燃費と環境性能はニアイコールの関係に見られていますので、環境に優しい機能としても紹介されることが多いようです。(ただし正確に言えば、自動車の環境に対する負荷は燃料の燃焼による二酸化炭素の排出だけではありませんので、燃費と環境性能は同じではありません。)

ずいぶん早くなった反応速度

さて、今回乗った「オーリス」の「150X」にはメーカーオプションとして「アイドルストップ機能」が用意されており、私が試乗したクルマにもそれが搭載されていました。赤信号等で停車すると、ブレーキを踏んでいる間はエンジンが停止し、発車しようとブレーキを離すとエンジンが再び動き始めます。

今回の「オーリス」の「アイドルストップ機能」は、ブレーキを離してからエンジンの始動が早く、よほど踏み変えを早く行う人でなければ、アクセルを踏んでからエンジンが掛かるのに待たされるという事はなくなったという印象を受けました。トヨタの車内測定値によるとエンジン始動まで0.4秒とのことです。

この半年ほど、私はカーシェア等を利用して様々なメーカーの小型車を使用しており、その中には「アイドルストップ機能」を持つクルマも結構有りました。中には私の普段の運転スタイル(多分平均よりもスタートが少し早い程度)でも、出足が遅いと感じられるクルマもあり、同じ機能でも各社にばらつきが感じられました。良かった方の具体名を挙げると、マツダの「デミオ」の「アイドルストップ機能」は同社車内測定値で0.35秒とのことで、数字通り反応が早いことは実感できました。

各社ともこれからも反応速度の向上に努力していくでしょうから、近い将来には殆どのクルマが「もたつき」を感じさせないレベルに達するものと思えます。

エアコンと「アイドルストップ機能」

さて、上で「アイドルストップ機能」の目的が燃費向上と書きましたが、今回の「オーリス」でも、「アイドルストップ機能」が付けた場合のJC08モードでの燃費は19.2km/lで、ついていない同モデルが18.2km/lですから、1リットルあたり1kmほどの燃費向上が見られます。他のメーカーでも、「アイドルストップ機能」付きのモデルは1~2km/l程度の向上を達成しているようです。

ただし、この数字はそのまま飲み込みづらい数字と個人的には感じています。というのも、今回の試乗でも、通常の使用を前提とすると「アイドルストップ機能」は作動しなかっただろうと考えられるからです。

先週辺りから夏の暑さのピークがようやく過ぎたと感じられるようになってきましたが、まだまだ日中の暑さは耐えられるものではなく、日中の運転でエアコンを入れないでいられるような状況ではありません。(実際、僕はこの夏に自動車の中で熱中症になりました。)

自動車のエアコンはエンジンの駆動を利用して動作していますので、基本的には「アイドルストップ機能」の作動中はエアコンの冷暖房機能は停止します。そかしそれでは、夏場や冬場の使用で乗員が不快になりますから(上の僕のように危険な場合もある)、逆に冷暖房を掛ける必要のある場合(気温と設定温度の差が大きい場合)には、「アイドルストップ機能」が働かないようになっています。

今回の試乗の時間帯は14:00頃でまだまだ暑い時間帯でしたから、通常の使用を想定するとなればエアコンをオンにしている状態です。試乗車は日陰に置いてあるので、当初乗り込んだ状態ではエアコンはオフの設定でした。この状態だと、エンジンを始動すると始動動作の後「アイドルストップ機能」が働いてエンジンが停止します。「MegaWEB」の試乗はコースを2周しますが、1周目はエアコン無しで「アイドルストップ機能」の機能が働くのを確認できました。

しかし、2周目にエアコンのスイッチを入れると停車中であってもエンジンがエアコンの為にかかりはじめます。この試乗はあまり長い時間できませんので、細かくは確かめられませんでしたが、設定温度を高めにしても「アイドルストップ機能」は働かず、この気温ではエアコンを切らない限りは「アイドルストップ機能」は利用できないようでした。勿論、こういった状況では「アイドルストップ機能」の搭載は全く燃費には寄与していません。

燃費基準とエアコン

これは「オーリス」やトヨタに限ったことではなく、殆どの「アイドルストップ機能」搭載のクルマに共通の「仕様」です。ここで上の燃費基準の話に戻りますが、日本や欧州の燃費基準では、エアコン動作による燃料消費についてはあまり多く考慮されていないので、「アイドルストップ機能」がフルに活躍した場合の燃費向上の数字が出ます。

自動車の燃費は、各国の評価基準によって出た数字しか使用できませんから、カタログでは「アイドルストップ機能」の燃費向上が大きく出ますが、夏や冬にはあまり使用できないことを考えると、実用ではその差異は小さくなります。

これは、エアコンをモーターで動かすハイブリッド車や電気自動車も同様で、エアコンによる電気の消費量は多く、電気自動車ではエアコンの入切によってその走行可能距離が大きく変化します。ハイブリッド車も、電池の余裕が有る場合は停車中に「アイドリング」をせずにエアコンをかけることができますが、その容量が少なくなるとエアコンが使用する電気を発電しようと「アイドリング」を始めます。

アメリカの燃費基準EPAでは、エアコンの燃費に対する影響が大きいと考えており、強くそれを掛けた状態での燃費を測定しています。アメリカでのEPA燃費が、日本の燃費に対してかなり少なく出る要因の一つがこのエアコンの考え方の違いです。また、アイドルストップ機能」の搭載が、日本車や欧州車で先行し、アメリカではまだまだ少ないのもこういった所の影響も大きいと考えられます。

「アイドルストップ機能」のこれから

東京都を始めとした自治体が駐停車中のアイドリングを禁止する条例を施行しているなど、この先もアイドルストップの流れは加速していきそうです。(ただしこれらの条例は、燃費向上の為の「アイドルストップ機能」が行う信号待ちや渋滞での停車中の「アイドリング」は対象にしておらず、あくまで交通の流れから離れた場所での駐停車での「アイドリング」の禁止です。)

「アイドルストップ機能」の機能の向上は日進月歩の状況で、先日発表されたスズキの「ワゴンR」では、エンジンのスタートに使用する補機バッテリーに従来までの鉛電池に加えてリチウム・イオン電池も搭載し、完全に停止する前の低速減速中から「アイドルストップ機能」を駆動させエンジンを止めながら「回生ブレーキ」で電気を溜め、また上で挙げた「アイドルストップ機能」中に冷房機能が止まる事に対しても、エアコン駆動時に冷気を蓄えておき「アイドルストップ機能」が働いているときにも冷気を含んだ風が送られるようにするなど、様々な新機能の搭載が発表されています。

ここまでくると単なる「アイドリング」を止めるという一機能ではなく、これに少しでも駆動にモーターを利用すると少し前に「マイルド(マイクロ)ハイブリッド」と呼ばれていた機構そのものとなります。

技術的な未来見通しとしてみると、この方向性は「アイドルストップ機能」にとって、諸刃の刃もなり得そうな部分です。現時点では、「アイドルストップ機能」はハイブリッドに対してコスト的なメリットがあると言われていますが、要求値が大きくなって様々な機能を組み込むとそのコスト的メリットは少なくなります。今回のスズキのようにリチウム・イオン電池を採用し回生ブレーキを付けるなどすると、これを駆動用にも使用して更に燃費を向上して欲しいとの声も大きくなるでしょう。そうするとそれは、ハイブリッド車になります。

そこまではいかなくても、これから様々な会社から「アイドルストップ機能」に関係して新たな取組が出てくるのは間違いありません。スズキの取った方式とは違ったとしても、私が今回取り上げた「アイドルストップ機能」のデメリットである、エンジン始動までの反応速度とエアコンの問題は、必ず対処しなければならない点です。今後要注意の分野です。